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空襲被害者 救済の法整備急がれる(2020年8月9日配信『北海道新聞』-「社説」)

 先の大戦では戦場の兵士だけでなく、民間人にも多数の犠牲者が出た。中でも米軍の空襲で亡くなった人は50万人とも言われ、1945年7月の北海道空襲での死者は2900人以上を数える。

 重い障害に悩まされたり、親を失い戦災孤児となったりして苦難の人生を歩んだ生存者も多い。

 だが国は元軍人・軍属や遺族には恩給などを支給してきたが、民間の空襲被害者は置き去りにされた。被害者は長年、国に補償を求め裁判を闘ったが敗訴が続き、立法措置も進まなかった。

 こうした中で、超党派の議員連盟が2017年、救済法案の素案をまとめた。

 空襲で障害やケロイドが残った生存者に1人50万円の一時金を支給することが柱だ。

 十分な内容ではないが、厚い壁に風穴をあける一歩にはなる。だが、国会に提出はされていない。

 戦後75年がたち、被害者は高齢化が進んでいる。これ以上、切実な訴えを放置してはならない。早急な法整備が求められる。

 米軍の空襲は国際法違反の無差別爆撃だったと指摘されるが、サンフランシスコ講和条約で日本は賠償請求権を放棄している。政府には無謀な対米開戦に踏み切り、被害を拡大させた責任がある。

 戦時下の防空法制が、空襲からの避難を禁止し、初期消火を義務づける驚くべき内容だったことも甚大な犠牲を出した一因だ。

 ところが政府は、民間の戦災者は軍人・軍属のような「国との雇用関係がなかった」として補償を拒否してきた。

 責任逃れの口実ではないか。戦争の犠牲になったことは軍人も民間人も同じで、差別があってはならない。欧米では民間人にも補償をしている国が少なくない。

 また1987年の最高裁判決は、戦争という非常事態の下での被害は国民が等しく受忍すべきだとする「受忍論」を持ち出した。

 国の過ちの責任を国民に押しつけるかのような考えだ。

 被害者の訴えはその後も続き、2009年の東京地裁判決は受忍論を採らず、救済は立法を通じ解決すべき問題だと位置付けた。

 そうした流れを受けた議連の素案は支給金額が少なく、障害のない被害者や戦災孤児は対象外だ。関係者には不満が根強いが、早期成立を優先させ、内容で譲歩した苦渋の選択だったとされる。

 司法の指摘を踏まえ、被害者に寄り添い一日も早く救済を実現することが立法府の責務である。




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