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ナイチンゲールと統計学(2020年8月10日配信『福井新聞』-「論説」)

データ活用の精神に学べ

 今年は近代看護の生みの親として知られる英国の看護師フローレンス・ナイチンゲール(1820~1910年)の生誕200年。今月没後110年を迎える。戦地での献身的な看護から「天使」と称されたが、統計学者としての顔も持つ。医療現場でのデータ活用や衛生管理に力を入れ、現在の感染症対策にも生かされている。新型コロナウイルスが世界的規模で流行する今、彼女の功績を改めて見つめ直したい。

 19世紀のクリミア戦争に従軍し、看護団を率いて負傷兵の手当てに尽くした。当時の野戦病院はネズミが走り回り、負傷兵の衣服はシラミやノミだらけという劣悪な衛生状態。ナイチンゲールは病院内を清掃するなど療養環境を改善して死亡率を下げるのに貢献した。緊迫した戦地でも冷静に状況を把握していたことに感嘆させられる。

 懸命な看護にもかかわらず多くの兵士が悪化して死ぬのに疑問を持ち、帰国後に死者や傷病者のデータを分析。戦闘で負った傷よりも不衛生な環境でコレラやチフス、赤痢などの感染症で死亡するケースが多かったことを突き止めた。社会的にはまだ感染症への知識が乏しかった時代だけに貢献度は高い。

 ナイチンゲールは誰でもひと目で理解できるように、1カ月ごとに死亡原因を色分けした円グラフを作成。公衆衛生対策によって死者を減らせることを視覚的に訴えた。グラフはその形から「コウモリの翼」や「鶏のとさか」と呼ばれるが、データは分かりやすく示すのが重要なのだろう。

 ベルギーの統計学者アドルフ・ケトレーと親交があったナイチンゲールは、ケトレーが立ち上げた国際統計会議に出席し、病院の統計手法を標準化させることを提案した。病院ごとのデータを比較分析することが、医療の向上のためには不可欠だと考えたためだという。先進的な視点が世界の医療や福祉の改善につながったのは間違いない。

 医療データは客観的であるべきだが、当時は政治的な意向が反映されることがあった。ナイチンゲールはこれを厳しく批判し、真実を公にすることに力を注いだ。毅然(きぜん)とした態度は素晴らしい。

 新型コロナウイルスに目を向けると、国は現場から上がってくるさまざまなデータを詳細に分析し、数字的な裏付けに基づいた対策を国民に示すべきだが、現状は不十分だ。今こそナイチンゲールの発想、精神を見習って、真摯(しんし)な姿勢で命を守るための政策を打ち出すことが求められる。




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Author:gogotamu2019
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