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誤った政策により刻まれた傷は、どれほど大きく、深いのか(2019年6月29日配信『新潟日報』ー「日報抄」)

 久しぶりに伯父の家を訪れた男性の前に料理が並んだ。しかし男性は最後まで手を伸ばすことはなかった。「自分の手はこんなでしょう。手を出したら、みんなが病気に気付いてしまう」

▼本県出身のこの男性は10代でハンセン病を発症し、瀬戸内海に浮かぶ小島にある療養所に隔離された。ただ比較的症状が軽く、ある時、一時的に帰省を許された。伯父は病気のことを知っていたが、家族には伝えていなかった

▼「自分の病気が世間に知れたら、親戚に迷惑が掛かるから」。数年前に取材に応じてくれた男性は、70年余り前のことを思い浮かべて曲がった指をさすった

▼ハンセン病は感染力が極めて弱く、完治するようになった。しかし、その後も国は患者を人里離れた場所に隔離し続けた。それによって人生をゆがめられたのは患者本人だけではない。家族や親戚もまた、差別や偏見にさらされることになった

▼国は家族の苦しみに向き合い償うべきではないのか。そんな家族の訴えを裁判所が認めた。熊本地裁で審理された訴訟の原告には、本県で暮らしたことがある女性もいる。患者だった父が療養所に連れて行かれ、母は勤め先を辞めさせられた。収入を絶たれ、母は幾度となく「死のう」と口にした。そのたびに泣きながら止めた

▼患者は家族と引き裂かれ、社会との断絶を強いられた。子どもを授かることも許されなかった。その家族も絶望の淵に突き落とされた。誤った政策により刻まれた傷は、どれほど大きく、深いのか。




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