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ハンセン病家族訴訟 人生被害、国は救済急げ(2019年6月29日配信『中国新聞』ー「社説」)

 ハンセン病問題を巡って、取り残されてきた課題とされる「家族被害」にようやく光が当てられることになった。

 長年にわたるハンセン病患者の隔離政策を巡る集団訴訟で、熊本地裁は、元患者だけでなく家族への人権侵害についても国の責任を認め、総額3億7千万円の賠償を命じた。

 家族に与えてきた過酷な苦しみを直視し、社会全体できちんと向き合う機会としなければなるまい。国は一刻も早く責任を認め、「被害者」である家族に謝罪するとともに、救済する仕組みづくりに動くべきだ。

 かつてハンセン病と診断されれば、仕事や家庭などの社会基盤を奪われ、死ぬまで療養所に隔離された。残された家族も「身内に発病した人がいる」と知られただけで、人生が変わるほどの差別に遭ってきた。

 地域や学校でいじめに遭ったり、職場から突然解雇されたりした。離婚を強いられ、妊娠すると堕胎するよう言われた人もいた。口頭弁論などで激しい差別の実態が明らかになった。

 地裁判決が「個人の尊厳に関わる被害で、不利益は生涯にわたって回復困難だ」と指摘したのも当然だろう。さらに「隔離政策が、大多数の国民から患者家族が差別を受ける社会構造をつくった」と国の責任を明確に認定したこともうなずける。

 事実上、家族ら原告側の全面勝訴といえる内容である。同時に、差別に加担した「大多数の国民」にも改めて反省が求められていると重く受け止めなければならないだろう。

 ハンセン病問題の救済では、国の隔離政策を憲法違反と断じて元患者への賠償を命じる判決が2001年に確定した。

 ハンセン病問題基本法や補償法が施行され、患者本人に対する救済の仕組みが動きだした。ただ家族の差別被害に光を当て、救済する措置までは設けられなかった。

 家族は隔離の対象ではなく差別や偏見を直接助長していないと、国は裁判で主張していた。すでにハンセン病に対する社会の理解は進んだとも訴えた。

 だが、感染力が弱く薬で完治する病にもかかわらず、漫然と隔離政策を続けた国の責任が元患者の家族に及ぶのは当然だ。

 地裁判決も「差別や偏見の除去に向けて、厚生労働相や法相らには人権啓発や教育を行う責任があった」と指摘した。らい予防法の隔離規定を1996年まで廃止しなかった国会の過失まで認定した意味は重い。

 今回の集団訴訟を起こした背景には、4年前の鳥取地裁の判決があった。鳥取県に住む元患者の遺族が国家賠償を求めた。時効成立などで請求は棄却されたものの「患者の家族に対する社会的偏見を排除する必要があった」と国の責任に言及した。

 沖縄県を中心に全国から集まった原告の家族は561人に上る。その多くが匿名である。今なお、差別を恐れ、身内に元患者がいることを、明かせないでいる人は多い。

 家族らは誤った国策が招いた偏見と差別が今日もまだ残っているとも訴えている。元患者と同様に被害を受け苦しんできた家族の痛みをこのまま放っておけない。それぞれの人生の被害に対し、謝罪も救済もなしでは許されまい。国は責任ある対応をすべきだ。



家族への思い(2019年6月29日配信『中国新聞』ー「天風録」)

 「あんそろじー」という欄が月1度、本紙文化面にある。中国地方の郷土誌から短歌、俳句などを選び紹介する。かつて担当記者だった頃、ページを繰るうち、目の潤んでくる一冊があった。「愛生」という

▲瀬戸内市の国立療養所長島愛生園で編まれる。かつてハンセン病を理由に隔離された人たちが、園の暮らしや望郷の念を詠む。旅立ちを見送る電車最後まで(島秀善)。14年前の句は脳裏から消えない父母と別れた日の光景だろう

▲親や子どもと引き裂かれる。つらい思いをしたのは家族も同じ。そして患者と同じく社会の偏見や差別にさらされ、口外できぬまま歳月が過ぎる。隔離政策に違憲判決が下されたのは21世紀に入ってから

▲元患者に対しては賠償や名誉回復が図られてきた。一方で、家族らの苦悩は顧みられず、あがなわれてこなかった。1世紀近くに及んだ隔離政策。きのう熊本地裁は国に家族への損害賠償を命じた。これで癒える傷ではあるまいが

▲ほととぎす他人ばかりが拾う骨(谷本眉静)。ことし届いた愛生誌に、園友の死に接し詠んだ句があった。葬送にも家族の姿がなかったのを哀れんだのだろう。「国策」の罪深さをあらためて思う。





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