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「たゞあつし起てもゐてもころんでも」…(2020年8月14日配信『毎日新聞』-「社説」)

 「たゞあつし起てもゐてもころんでも」。どんな姿勢をとろうと、ともかく暑い!と閉口する正岡子規(まさおかしき)の句である。子規はよほど暑さが苦手だったらしく、1893(明治26)年の夏、暑さを詠んだ句を量産した

▲以前にも小欄でこの話にふれたが、その数79句。「暑さ哉(かな)八百八町家ばかり」「あら壁に西日のほてるあつさかな」「さはるもの蒲団(ふとん)木枕皆あつし」「頭陀(ずだ)一つこれさへ暑き浮世哉」……前に紹介できなかった妙句はいくらでもある

▲子規はすでに結核を発病していて、「病中」と前書きした「ぐるりからいとしがらるゝ暑さ哉」「猶(なお)暑し骨と皮とになりてさへ」もある。後年、病が進み寝たきりとなった折、弟子のつくった手動の扇風機を喜んだ逸話(いつわ)は有名である

▲さいわいエアコンを使える今日だが、暑さの方も子規の時代よりはるかに厳しさを増している。加えて今年は新型コロナ禍のせいで「暑さ哉八百八町マスクばかり」である。熱中症の脅威も例年にない様相をみせる酷暑の夏となった

▲医療関係者を悩ませるのは、倦怠(けんたい)感、発熱、頭痛など、コロナの感染症と熱中症の症状の類似という。すぐに重症化する熱中症は迅速な処置が求められる。患者が増えると、厳重な感染防止策をとる医療現場には大きな負担がかかる

▲つまりは適切な水分補給などで防げる熱中症にかからないことが、コロナ対策でも世のため人のためとなる今夏の猛暑日である。酷暑を句にしてしのぐ消夏法もあろうが、「病中」の前書きは避けたい。




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