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「黒い雨」訴訟で控訴に関する論説(2020年8月14日)

「黒い雨」訴訟で控訴 援護拡大の道筋を示せ(2020年8月14日配信『茨城新聞』-「説」)

「黒い雨」訴訟で国が援護対象とした区域の外にいた原告84人全員に被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決を巡り、国と広島県、広島市は控訴した。国からの法定受託事務として交付申請の審査を担い、被告の立場に立たされた県と市はこれまでも国に区域拡大を求め、原告全面勝訴判決を受けて控訴を望まない意向を示していた。

 加藤勝信厚生労働相は記者会見し「十分な科学的知見に基づいたとは言えない判決だ」と控訴の理由を述べた。その一方で、対象区域について拡大も視野に入れ、検証を進める方針を明らかにした。厚労省は専門家らから成る組織を立ち上げる。これを踏まえ、県と市は苦渋の決断をした。

 原告らの落胆は大きい。高齢者が多く、大なり小なり病気や障害を抱える。残された時間は少ない。高裁で裁判が続くことになり、一緒に闘ってきた仲間が欠けていくのをこれ以上見たくないという強い思いと焦りがにじむ。加藤氏が「スピード感を持って進める」とする区域検証・見直しの先行きは見通せない。地裁判決は、当時の気象台の調査を基にした国による線引きの妥当性を否定。黒い雨を浴びたとする原告の証言について「不自然で不合理な点はない」とした。原爆投下から75年の大きな節目に国は科学的知見にこだわりすぎず、早急に援護拡大の具体的な道筋を示すべきだ。控訴取り下げも選択肢の一つだろう。

 国は1976年、原爆投下直後の気象台による調査で大雨が降ったとされる地域を援護対象区域に指定。区域内にいた人は無料で健康診断を受けられるようになった。一定の病気になれば被爆者健康手帳が交付され、医療費の自己負担分がなくなり、各種手当も支給される。だが区域外だと、たとえ目と鼻の先で体の不調を訴えても、被爆者とは認められない。

「詳しい調査もせずに線引きした」との批判は前々からあったが、地裁判決は気象台の調査について「原爆投下後の混乱期に限られた人手によって実施され、調査範囲や収集できたデータには限界がある」と指摘。「区域にとどまらず、より広範囲で降ったと確実に認めることができる」と述べた。その上で、降雨域の全体像を明らかにするのは困難としながらも、原告らの証言をつぶさに検討し結論を導いた。

 さらに黒い雨による健康被害を巡っては、直接雨を浴びることによる外部被ばくに加え、雨水が混入した井戸水や食物が原因とされる内部被ばくの可能性を念頭に置く必要があるとしている。もう一つの被爆地・長崎でも、原爆投下に遭遇しながら国の指定地域外にいたため被爆者と認められていない「被爆体験者」らが裁判を続けている。これまで2度、最高裁まで争ったが、敗訴した。長崎市も国に指定地域拡大を求めている。

 今回、加藤氏は「蓄積されてきたデータを最大限活用し、最新の科学技術を用いて可能な限りの検証を行う」とした。医療費などの支出を伴う以上、被爆者認定に一定の条件や根拠が必要なのは理解できるが、黒い雨の影響には未解明の部分も多い。月日がたてば、病気との因果関係の証明はますます困難になる。

 科学的根拠にこだわりすぎるあまり、救済を必要とする人たちが取り残されてしまうようなことがあってはならない。



「黒い雨」再検証 国は救済範囲の確定を急げ(2020年8月14日配信読売新聞』-「社説」)

 原爆投下から75年がたち、被害者に残された時間は少ない。国は援護対象区域の再検証を急がねばならない。

 広島への原爆投下後に降った「黒い雨」を浴びたとして、原告84人全員を被爆者と認定した広島地裁判決に対し、国と広島市、広島県が控訴した。国は援護区域の拡大を視野に再検討することも表明した。

 原告以外にも救済の道が開ける可能性が出てきたと言えよう。

 国は1976年に援護区域を指定した。区域内で雨を浴びた人は無料で健康診断を受けられ、放射線の影響が疑われるがんなどになれば、被爆者健康手帳が交付されて医療費が原則無料になる。

 今回の原告は、その区域外にいた住民らだ。訴訟では、黒い雨の降った範囲が争点になった。広島地裁判決は、原告らの証言の信用性を認め、雨は援護区域より広い範囲で降っていたと認定した。

 高齢化する原告の救済を優先した側面もあるのではないか。原告は平均年齢が82歳を超え、判決までに16人が亡くなっている。

 国から手帳の交付事務を受託する市と県は、以前から援護区域の拡大を求めてきた。これに対し国は、「広げるのは困難」とする有識者検討会の報告書を踏まえ、拡大を見送った経緯がある。

 市と県は控訴断念を求めたが、国は「判決は科学的知見に基づくとは言えない」として控訴に踏み切った。過去の調査では高濃度の放射性物質が降り注いだ事実は認められておらず、承服しがたいということであろう。

 黒い雨とは別に、長崎県でも被爆地域外の住民らが手帳の交付を求めた訴訟があり、最高裁は原告の訴えを退けている。今回の判決が、最高裁の判断と整合性が取れない点も考慮したとみられる。

 国は控訴する一方、救済範囲の再検証を決めたことで、市や県の要望をくみ取った。バランスを取った形だが、訴訟を続けながら救済の道を探る手法は、分かりにくい面があることも否めない。

 援護区域の再検証は、AI(人工知能)なども活用し、科学的に進めるという。市などの要望通りに区域が広がれば、救済対象は数千人程度増える見通しだ。ただ、検証方法や結論を出す時期など、不透明な部分は少なくない。

 安倍首相は「筆舌に尽くしがたい経験をされた皆様の支援策にしっかりと取り組む」と語った。

 検証結果を公表する際には、被害者が納得できるよう、国は丁寧な説明を心がける必要がある。



続く黒い雨訴訟 被爆者救済の道を広く(2020年8月14日配信『北国新聞』-「社説」)

 広島市への原爆投下に伴う「黒い雨」訴訟が、国側の控訴でなお続くことになった。黒い雨による健康被害を訴え、一審で全面勝訴した高齢の原告にとっては非情だが、法制度について冷徹に判断しなければならない政府の立場を示した。

 国側は控訴の一方、黒い雨が降ったと推定し、援護対象とした「特例区域」が妥当かどうか検証する方針を明らかにした。最新の知見、データに基づき、対象区域を拡大の方向で見直し、被爆者救済の道を広げるよう求めたい。

 黒い雨の被害者救済のため、国は1960年代以降、雨による残留放射線量が多い地域を指定し、段階的に援護対象を拡大した。76年には原爆投下直後の調査に基づき、無料で健康診断を受けられる特例区域を定めた。

 一審の広島地裁判決は、複数の専門家の意見や原告の供述を重くとらえ、国の指定した特例区域外でも黒い雨が降った可能性は否定できないとして、区域外での被害を訴えた原告全員を被爆者と認定した。原爆の放射線被害を、他の戦争被害と異なる特殊な被害ととらえ、国の責任において救済するという被爆者援護法の理念に沿った判決ということもできる。

 これに対して国側は、原告の被害認定を含めて「十分な科学的知見に基づいた判決とは言えない」として控訴した。税金による国の援護措置は、合理的な根拠や基準に基づいて厳正に実施されなければならない。その点を曖昧にしたままでは、今後の救済や賠償関係の訴訟に禍根を残すことになりかねないという判断であろう。

 厚生労働省はこれまで、黒い雨の降雨域に関する有識者会議で検討を重ね、「科学的観点から降雨域の特定は困難」と結論付けた経緯がある。広島地裁は特例区域指定の根拠とされる調査について、原爆投下後の混乱期に限られた人手で実施され、範囲やデータに限界があると指摘した。

 広島県と広島市は、裁判では国と同じ立場であるが、独自調査による試算を基に区域の拡大を求めている。国は地元の声を真摯に受け止めなければなるまい。



「黒い雨」控訴(2020年8月14日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 て辛(つら)くて厭(いや)な月だ…とりわけわれわれ世代に八月は重い」。イラストレーターの山藤章二さんが昨年刊行したエッセー集にそんな言葉がある

▲昭和12年生まれ。戦時下の「どん底」と戦後の「前向き」の二つの時代を体験してきたと振り返る。どちらに力点を置いて語り継ぐべきか。夢も希望もなかった悲惨な世を想像してもらうには限界があり、戦後の発展を誇らしく語るには抵抗感がある。葛藤をにじませる

▲こちらは「重い8月」に答えを出さなければならなかった。戦後75年たっても全ての被爆者の救済は見通せない。広島への原爆投下後に降った「黒い雨」。それを浴びたと訴える住民全員を被爆者と認めた地裁判決に対し、国と広島県、広島市が控訴した

▲黒い雨による救済対象とするかどうか、国は投下直後の気象調査に基づき機械的に線引きしてきた。控訴と並行して、その線引きの見直しも検討するというが、とりまとめ時期は未定。高齢化が進み、一刻も早い救済を望む原告にとって慰めにはなるまい

▲立ち返るべきは「国の責任」を明記した被爆者援護法の理念である。原爆被害の深刻さを重視し他の戦争被害とは異なる「特殊の被害」として市民を救うことにあった。国の対応は法の趣旨に背いていると言わざるを得ない

▲被爆者に真の安穏が訪れるのはいつなのか。本気で救済する気があるのなら、控訴せずともできるはずである。



「黒い雨」国控訴 救済なしに戦後終わらぬ(2020年8月14日配信『西日本新聞』-「社説」)

 原爆による被害の全容は被爆75年となる今も科学的に明らかにされていない。史上唯一2度にわたり投下した米国が積極的に公表せず、日本政府も総合的な調査を実施しないためだ。

 広島原爆後に降った「黒い雨」を巡り、国が設けた援護対象区域外にいた原告84人全員を被爆者と認めた広島地裁判決について、国は広島県、広島市と共に控訴した。その理由を加藤勝信厚生労働相は「十分な科学的知見に基づいたとは言えない判決だ」と述べた。

 そのまま国にお返ししたい言葉だと原告団の多くが思っていよう。そもそも国の援護対象区域が十分な科学的知見に基づいているとは言えないからだ。

 放射性物質を含んだ黒い雨が強く降ったのは爆心地からおよそ南北19キロ、東西11キロの楕円(だえん)形の地域とされる。国が被爆者健康手帳を交付する対象である。

 気象台の技師ら数人が1945年9~12月という被爆と終戦後の混乱期に、市民への聞き取りでまとめた報告が根拠とされる。廃虚の被爆地をはうように実施した調査対象は百数十件にとどまり、爆心地から離れた場所ほど手薄になったという。

 原告84人はその楕円形の外にいた人々だ。自身がいた地域でも「黒い雨が大降りとなった」などと証言しており、国が原爆症認定の基準とする11種類の病気のどれかを発症している。

 2010年までに気象研究者や市の調査で、実際の降雨地域は援護対象区域の4~6倍とする結果が公表されたが、これを国は受け入れなかった。

 どちらがより科学的なのだろうか。広島地裁判決は、原告に被爆者健康手帳を交付せず、医療費を支援しない行政側の措置を「違法」と断じた。

 安倍晋三首相は控訴するだけでなく、援護対象区域の拡大も視野に入れて検証すると表明した。事実上、現行制度の問題点を認めたとも取れる内容だ。目の前で苦しむ人の救済より、行政の体面を優先した解決先送りではないのか。理解に苦しむ。

 原爆被害者の高齢化が進んでいる。首相の言う援護対象区域の検証や拡大は、どのような道筋で進むのか。せめてその点は早期に明らかにすべきだ。

 この夏、広島平和記念資料館はコロナ禍で街が閑散としていても、老若男女の入場者が途切れない。昨年のリニューアルで被爆者の実名、年齢、被爆当時の遺品など「人としての証し」が中心に据えられ、見る者の心を捉えて放さないからだ。

 戦争を遂行し、甚大な結果を招いた国の責任で、犠牲者を救済する-被爆者援護法の基本理念だ。救済なくして被害者の戦後は終わらない。



「黒い雨」訴訟控訴(2020年8月14日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 仲代達也さんが死刑囚の男性、樹木希林さんがその母親を演じた「約束―名張毒ぶどう酒事件 死刑囚の生涯」。三重県で1961年に起き、無罪から逆転死刑判決が出された同事件をテーマにした映画だ。

 公開は2013年。このとき、えん罪を訴える男性は80代後半だった。男性の余命、そして一度は決定した再審を取り消すなど腑(ふ)に落ちない裁判所の判断。これらを踏まえた寺島しのぶさんの終盤のナレーションが印象に残る。「司法は何を狙っているのか―」。

 「黒い雨」訴訟で、国が援護対象とした区域の外にいた原告全員に被爆者健康手帳の交付を命じた広島地裁判決。国と広島県、広島市はおととい、控訴した。その一方で、加藤勝信厚労相は援護対象となる区域について「拡大も視野に入れて、検証を進めたい」と表明した。

 「拡大を視野に入れた検証」といえば原告に寄り添った感じがするが、これはそもそも県や市が求めてきたものだ。それを判決後に「控訴」とセットで言われても原告としては「何を今さら」という感じだろう。国の意向に従い控訴する広島市の松井一実市長は「毒杯を飲むという心境」と語った。

 原告の年齢を考えると、残された時間は少ない。国はせめて援護対象拡大の検証の時間的な見通しぐらいは示すべきだ。「国は何を狙っているのか」と勘繰られないためにも。仲代さんが演じた男性は映画公開のわずか2年後、再審請求中に亡くなっている。



[「黒い雨」控訴] 早急に救済の枠組みを(2020年8月14日配信『南日本新聞』-「社説」)

 75年前の広島への原爆投下直後に降った放射性物質を含んだ「黒い雨」を巡る訴訟で、国の定める援護対象区域の外にいた原告全員を被爆者と認めた広島地裁判決について、国と広島県、広島市は控訴した。

 加藤勝信厚生労働相は「十分な科学的知見に基づいていない判決」と控訴理由を述べた。援護対象区域に関しては「拡大も視野に入れ、検証を進める」と言明、40年以上前に指定された区域が広がる可能性が出てきた。

 早期救済を願った原告らの落胆は大きい。高齢者が多いのに、厚労省幹部は区域拡大の結論を「年度内は困難」としている。国は裁判とは別に迅速に議論を進め、救済の枠組みを早急に構築すべきである。

 広島地裁判決は、国が援護対象とする「特例区域」を、原爆投下後の混乱期に限られた人手で収集された乏しい資料に基づく線引きと指摘。黒い雨を浴びたとする原告の証言について「不自然で不合理な点はない」とした。

 広島県と広島市もこれまでの住民調査を基に降雨域を「市域のほぼ全域と周辺部」と試算し、国に特例区域を現状の5~6倍に広げるよう求めてきた。このため、裁判では被告の立場であっても控訴しない意向だった。

 これに対し、国は長崎に投下された原爆で国の指定地域外にいた「被爆体験者」らが被爆者と認定するよう求めた訴訟で最高裁が2度にわたって原告の訴えを退けたことなどから、あくまで控訴の方針を変えなかった。

 安倍晋三首相は2013年の原爆症認定訴訟や昨年のハンセン病患者家族訴訟で政治判断によって控訴を断念した。与野党から早期救済を求める声が噴出した今回も、控訴見送りを決断する道は探れなかっただろうか。

 結局、国は区域拡大の検討を条件に県と市を控訴へ説得した。松井一実市長は会見で「毒杯を飲むという心境」と苦しい立場をにじませる一方、国に「科学的知見を超える政治判断をしてもらいたい」と改めて要請した。

 今後の焦点は当事者が納得する区域拡大がいつできるか、に移る。ただ、対象区域の検証はこれまでも試みられてきたが、話が進まないまま援護対象から漏れた多くの人が亡くなっている。救済は時間との闘いである。

 加藤氏は「最新の科学技術を用いて可能な限りの検証を行う」とする。医療費などの支出を伴う以上、被爆者認定に一定の条件は要るだろう。だが科学的根拠にこだわるあまり、救済の必要な人々を取り残しては意味がない。

 高裁判決を待たず、国は援護拡大の具体的な道筋を示さなければならない。「他の戦争被害とは異なる特殊の被害であることにかんがみ」対策を講じるという被爆者援護法の理念に立ち返り、当事者の声に耳を傾けるべきだ。



「黒い雨」の控訴(2020年8月14日配信『しんぶん赤旗』ー「主張」)

被爆者の声にどこまで逆らう

 広島への原爆投下直後に降った「黒い雨」の被害をめぐる訴訟で、国は、住民ら84人全員を被爆者と認めた原告全面勝訴の広島地裁判決を受け入れず、広島県・市とともに広島高裁に控訴しました。「控訴断念」を求める原告をはじめとする被爆者の悲痛な声にあくまで背を向け、裁判を長引かせる安倍晋三政権の姿勢は重大です。控訴を取り下げ、被爆者の幅広い救済に即刻踏み出すべきです。

破綻した主張に固執し

 広島地裁判決(7月29日)は、「黒い雨」を浴びて被害を受けた人たちの援護対象区域を狭くした国の不当な線引きを退け、被爆者の被害実態にもとづき広く救済することを国に求めた画期的な内容です。内部被ばくの影響も加味した健康被害の検討も指摘するなど、国のこれまでの被爆者援護行政を根本から問うものでした。

 国は、同判決は「十分な科学的知見」はないと強調します。しかし、国の指定した区域外で住民が原爆に起因する病気に苦しみ、亡くなった事実は、裁判を通じ明らかになっています。広島地裁判決も被害をめぐる住民の陳述は合理的と認めています。国の言い分はもう成り立ちません。

 国が控訴と合わせ、援護区域の拡大を視野に入れた再検討を表明したのも、これまでの主張の行き詰まりの反映です。援護区域が実態に合わないと認めるのなら、控訴をやめ、高齢化した原告全員に直ちに被爆者健康手帳を交付し、すべての「黒い雨」被爆者の早期救済に力を尽くすのが筋です。

 国が控訴に固執するのは、同判決が、原爆被害を「過小評価」してきた従来の基本姿勢を否定する中身だからです。1980年、被爆者援護運動の高まりに対し、政府は「戦争という国の存亡をかけての非常事態」では、その犠牲は「すべての国民がひとしく受忍しなければならない」として原爆被害への国家補償を認めない立場を示しました。そして、被爆者支援を放射線障害の一部に限る方向を示した「原爆被爆者対策基本問題懇談会」答申を基調にしました。

 アメリカの核戦略下で進められた日米軍事同盟の強化路線が背景です。原爆投下の違法性とその補償を認めれば、アメリカの核政策の障害となると判断したのです。

 1954年の南太平洋ビキニ環礁でのアメリカの水爆実験では、多くの日本漁船員が被ばくし、放射線障害に苦しんだにもかかわらず、日本政府は「政治決着」をはかりました。被害の全容解明と責任追及をやめたのは、核兵器の非人道性が明らかになり、反核世論が強まることを恐れたアメリカの意向に追随したためでした。

 原爆被害を矮小(わいしょう)化し、被爆者に冷たい行政を続ける日本政府の態度は、アメリカの「核の傘」に依存し、核兵器禁止条約への参加を拒む姿勢と深く結びついています。被爆者の悲願に応える新しい政治を一刻も早く実現することがいっそう重要になっています。

幅広い救済の立場をとれ

 被爆者の長年のたたかいは、被爆者援護行政の矛盾を浮き彫りにし、根本的転換を迫っています。実態に合わない狭い基準でなく、高齢化した被爆者を早く幅広く救済する方向へ転じる時です。国家補償にもとづく援護と被爆者施策の抜本的改善に取り組むことが政府に課せられた責任です。




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