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休業要請解除(2020年8月18日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆検証重ね対処能力向上を◆

 新型コロナウイルスの感染拡大を受けた、県全域の飲食店対象の休業・時短営業要請が17日、解除された。これに合わせ、西都・児湯、延岡・西臼杵の両地域は「感染状況が厳しい圏域」から「新規感染者が限定的な圏域」に引き下げられ、「できる限りの外出自粛」を緩和。社会経済活動が再開されるが、いまだ収束は見通せない。県の警報レベルである感染拡大緊急警報は継続された。ウイルスとの共存を前提に検証を重ね、感染症に耐えうる社会を築いていかなければならない。

 県内では3月に1例目の感染が確認されて以降、いったんは沈静化。しかし7月に入り、高鍋町と延岡市でクラスター(感染者集団)が発生するなど感染が急拡大した。感染者は現在、300人に迫る。まずは、今も治療に当たる医療従事者、検査や相談業務の最前線に立つ職員らに感謝を伝えたい。

 休業協力や外出自粛によって私たちの生活は様変わりした。移動や集会など広範な自由が保障された「個人の権利」が「公共の福祉」の観点から制約され、外出もままならない。これまでの「非日常」が「日常」になった。感染リスクを減らすためには私権制限もやむを得ない、と県民の多くが理解を示し行動に移した。その結果、一時期爆発的な数字を示した感染者数はようやく落ち着いてきた。

 2度の「非日常」を経て、自由が保障される日々のありがたさを感じた県民は多いだろう。また、「自己防衛、他者にうつさない」という意識で新たな生活様式を実践した誰もが、公共の一員であることを改めて認識したに違いない。人との物理的距離を強いたウイルスだが、逆に、他者を思いやる公共の精神が根付き、社会に変容を促す機会になることを願う。■    ■    ■

 市民の自由と権利を制限し、経済、教育、文化などあらゆる活動を停滞させる強権発動は緊急時の一時的なものであるべきだ。強制力を持つ公権力の乱用は社会を萎縮させかねない。

 公と私がせめぎ合うこの状況下で、対応の難しさが表出したのが個人情報の扱い方だった。感染が確認された県内市町の首長から県に対し、感染者に関する迅速な情報開示を求める声が上がった。

 その一方で、感染症法はハンセン病やエイズウイルス感染者らが差別や偏見を受けた教訓を生かし、感染者の人権を尊重する趣旨を充実させてきた経緯がある。

 感染拡大防止に資するには積極的な情報公開が欠かせない。その点、感染症法に基づく人権への配慮は「壁」ともいえる。半面、矢面に立つことになる感染者側からすれば「盾」である。立場によって見方が分かれるが、いつ逆転してもおかしくないのが現実だ。絶対の正解がない中では、双方が納得する最大公約数的な最善をその都度求めるしかない。立場に違いがあることへ思いを至らせ、一人一人が冷静な言動を心掛けていきたい。

 情報開示の程度は都道府県によって差があり、本県の場合、国基準を先行し早期に市町村ごとの公表に踏み切った。治療や感染経路の追跡を円滑に進めるため、了解なしに個人情報は公表しない。接触者が不特定多数と考えられる場合は詳細を公表するが、特定される場合は公表しない方針だ。

 概して「盾」を固守し、「壁」を最大限排除しようとする姿勢。試行錯誤の末の方針だが、求められるのは判断に至った背景や状況の分析だ。疑義を呈している首長の訴えに誠実に向き合い、説明を尽くすことも欠かせない。■    ■    ■

 本県は観光立県であり、人の往来には寛容な土地柄だ。その分、感染症対策には万全を期さねばならない。感染拡大防止と経済活動の両立については議論百出し、その限界も周知された。命と健康を守ることが社会経済活動の基盤であることは言うまでもない。

 県独自の今回の休業要請は、感染が再拡大する第2波で全国に先駆けた措置だった。前例がなく要請の中身について賛否もあったが、最も感染リスクの高い会食場面を封じ込め、奏功した。事態の後追いではなく、先手の対策がいかに重要かを物語っている。

 本県は医師少数県であり、医療体制には地域格差もある。重症者が出た場合の病床数やマンパワーが乏しく、重症化しやすい高齢者の割合が高いことが懸念材料として残る。脆弱(ぜいじゃく)ではあるが、医療現場がフル稼働し連携して乗り切ってきた。重症患者の転院や患者の受け入れに医療圏を越えて協力し合い、クラスター発生後に延岡・西臼杵の医療機関が増床にすぐさま応じるなどした。

 医療界だけではない。クラスターが発生した飲食店では来店者名簿を作成し店名を公表したおかげで早期に接触者追跡を完了できたし、公表に応じた個人や事業所も複数あった。本県で疫学調査支援を行った厚生労働省クラスター対策班は他県と比べ、「発症日から検査診断までが明らかに早い」と評価。これは県民総力戦のたまものといえる。

 県内のコロナ対策の経験値は上がったが、山積する課題から目をそらすわけにはいかない。クラスターや重症患者が出た際に即応できるか、再流行の予兆を感知するためPCR検査体制は十分か、地域経済の再生をどう図るか、首長のリーダーシップは発揮されているか。感染症への対処能力を高め、強靱(きょうじん)な地域社会を築くときだ。




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