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ハンセン病訴訟 家族の救済と支援を急げ(2019年6月30日配信『山陽新聞』ー「社説」)

 ハンセン病元患者の家族が国の隔離政策による被害の救済を求めた集団訴訟で、熊本地裁が本人だけでなく家族も深刻な被害を受けたと認め、原告541人に計約3億7600万円を支払うよう国に命じた。家族が起こした訴訟で賠償を命じたのは初めてで、画期的な判決である。

 多くの家族が結婚や就職で差別を受け、地域で孤立してきたことは元患者本人と変わりあるまい。社会に偏見を広げた隔離政策の過ちが、改めて断罪されたと言える。

 元患者本人による訴訟では2001年、やはり熊本地裁が隔離政策を違憲とし、国に賠償を命じた。その後、補償制度が設けられた。

 そのため、ハンセン病問題は解決したという印象があるかもしれない。だが、補償の対象は本人の被害だけで、家族は含まれなかった。問題はなお終わっていない。

 家族訴訟の原告の主な訴えは国が家族にも謝ることと、いまだに苦しめられている社会の偏見や差別をなくしてほしいということである。これに対して、国は家族を社会から排除したことはなく、家族への差別解消の義務も負っていないなどと主張した。首をひねらざるを得ない。

 判決は国や国会が違法な隔離を続け、1996年までらい予防法を廃止しなかったことが家族の被害につながったと明確に認めた。家族が受けた差別として、就学や就労の拒否、結婚などを具体的に挙げ「個人の尊厳に関わる『人生被害』で、不利益は回復困難だ」と指摘した。

 ハンセン病の感染力は弱いにもかかわらず、隔離政策が家族は患者予備軍という偏見の枠組みをつくり出したと専門家も指摘している。社会の中の居場所を奪われ、隠れ住むことを余儀なくされてきたことなどを考えれば、訴訟を起こすことにすら勇気が必要だったに違いない。

 元患者本人の訴訟では、違憲判決に当時の小泉純一郎首相が政治判断で控訴を断念し、国は謝罪した。これ以上の救済の遅れは許されず、今回も控訴して争うのではなく、被害回復を急ぐことを検討するべきだ。原告に加わらなかった家族に救済を広げることも大きな課題だろう。

 瀬戸内には瀬戸内市の長島愛生園と邑久光明園、高松市の大島青松園の3療養所がある。原告が求めた、偏見や差別をなくす取り組みにはとりわけ無関心ではいられない。

 両親と姉2人が長島愛生園へ隔離されたため、1歳から9歳まで岡山市の児童養護施設で育った原告副団長の黄光男(ファングァンナム)さん(63)=兵庫県尼崎市=はおとといの判決後、「人生は取り戻せない。心の底からは喜べない」としながらも、壊れた家族関係を取り戻すきっかけになると受け止めていたという。

 そうした取り組みをどう支援し、いわれなき差別に苦しむ人々に寄り添うのか。社会の在り方も問われる。




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