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シベリア抑留 実態の解明は終わっていない(2020年8月19日配信『読売新聞』-「社説」)

 第2次世界大戦で日本が降伏を表明した後に起きた悲劇を風化させてはならない。政府は、シベリア抑留の実態解明や犠牲者の遺骨収集の取り組みを加速させる必要がある。


 旧ソ連の指導者スターリンは1945年8月23日、旧満州(現中国東北部)などにいた元日本兵らの抑留を命じた。

 厚生労働省の推計では、約57万5000人が旧ソ連やモンゴルに移送された。酷寒の地での重労働や飢えなどにより、約5万5000人が死亡したとされる。

 今年も23日に、東京・千鳥ヶ淵の戦没者墓苑で犠牲者の追悼集会が開かれる。生存者の平均年齢は100歳近い。苦難の体験を次世代に伝えることが重要だ。

 政府の責任は、2010年に成立したシベリア抑留者特別措置法に明記されている。日本国籍を持つ元抑留者に特別給付金を支給することや、国が全容解明に本格的に乗り出すことが定められた。

 法の施行から10年が過ぎて、課題が明確になってきた。

 厚労省はロシアなどから提供された資料を日本側資料と突き合わせ、死亡者の身元特定を進めている。10年度に1572人だった判明数は、昨年度は188人まで減り、ペースが大幅に落ちた。約1万5000人は不明のままだ。

 収集できた遺骨も約2万柱にとどまる。昨年は、日本人以外の遺骨を取り違えて持ち帰っていたという不祥事も発覚した。

 厚労省は、モスクワに偏っていた抑留資料の調査をロシアの地方都市や旧ソ連からの独立国にも広げ、職員を派遣するという。遺骨の鑑定体制も強化し、再発防止を図るとしている。

 だが、厚労省に任せきりの体制では限界がある。身元特定や遺骨収集がいつ終わるのか、めどが立たない。抑留の経緯や収容所での処遇、強制労働などに関する実態の全容解明は道半ばだ。

 どのような経緯で連行され、亡くなったのかが遺族にも知らされなければ、抑留の苦難は歴史の中に埋もれてしまうだろう。

 ロシア側の抑留資料は厚労省が日本語に訳しているが、有効活用されているとは言えない。政府は外務省や国立公文書館、民間団体やロシア側の専門家も含めて資料を共有し、実態解明に向けた体制作りを強化すべきではないか。

 ロシアなど関係国に対しても、政府は問題の重要性を改めて提起し、機密資料の開示や遺骨収集で協力を得られるよう働きかけを強めてもらいたい。




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