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先住権確認訴訟 議論前進させる機会に(2020年8月19日配信『北海道新聞』-「社説」)

 「アイヌ民族には川でサケ漁を行う先住権があるのに不当に漁を禁止されている」―。

 十勝管内浦幌町のアイヌ民族団体「ラポロアイヌネイション」(旧浦幌アイヌ協会)がこう訴え、漁を規制する国と道を相手取り、サケ漁を行う権利の確認を求める訴訟を札幌地裁に起こした。

 アイヌ民族の先住権の確認を求める訴訟は初めてだ。北海道開拓以前にアイヌ民族が持っていた権利を回復させようという歴史的訴訟であり注目される。

 昨年5月施行のアイヌ施策推進法は、法律で初めてアイヌ民族を「先住民族」と明記したが、先住権には触れていない。

 一人一人が問題提起を真摯(しんし)に受け止め、先住権への理解を深めて議論を前進させねばならない。

 訴状によると、十勝川下流域のアイヌ民族は江戸時代、集団(コタン)ごとにサケ漁を営んでいたが、明治政府が漁業権を無視して侵害したと主張する。

 漁業権は各集団の子孫でつくる原告が引き継いでいるという。

 長根弘喜会長が「私たちの先祖は明治以前から生業としてサケを捕ってきた。その集団としての権利を認めてほしい」と訴える。

 漁猟によるアイヌ民族の生業を奪い、格差や差別を招いた歴史を振り返れば、理解できよう。

 河川でのサケの捕獲は法律や道の規則で原則禁じられている。道はアイヌ民族による伝統儀式の継承などに限って認めている。

 ただ、原告が求めているのは経済活動としてサケ漁を行い、経済的に自立することだ。一方でサケ漁を現在生業とする人もおり、利害対立が起こる可能性もあろう。

 2007年に国連が採択した先住民族権利宣言は第26条で先住民族は伝統的に所有、使用してきた土地や資源に対して権利を有するとした。日本も賛成票を投じた。

 衆参の国交委員会は国連宣言の趣旨を踏まえるよう推進法の付帯決議に盛り込んだ。政治のリーダーシップが求められよう。

 権利回復は世界の潮流である。

 カナダは先住民族の漁労を推奨し土地を返還している。米国も居留地での漁猟を認め、ニュージーランドでは先住民族の学校があって言語が公用語になり、フィンランドには議会があるという。

 これに対し、日本は国連人種差別撤廃委からアイヌ民族の土地と資源への権利を十分保障すべきだと勧告を受けている。世界の権利回復に関する先例に学び、多様で豊かな北海道を築きたい。




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