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医師1335人アンケートで見えた いま医師が望む「医療崩壊防止」「新型コロナ対応」策(2020年8月21日配信『AERA.com』)

小長光哲郎,井上有紀子

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新型コロナウイルス対応で経営難に陥る医療機関もあれば、受診控えによって苦境に立たされた医療機関もある(撮影/写真部・東川哲也)

 医師たちが医療崩壊への危機感を募らせている。崩壊を防ぐ鍵となるのは、軽症者や無症状者への対応だ。AERAが実施した1335人への大規模アンケートや専門家、現場取材で苦境や課題が浮かび上がってきた。「医療崩壊」を特集したAERA 2020年8月24日号から。
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 医療崩壊に警鐘を鳴らす医師は少なくない。どうすれば、苦境を乗り越えられるのか。

 医師1335人へのアンケートによると、発熱外来のある医療機関の医師からは、PCR検査の拡充やPCRセンター設立を希望する声が多くあがった。PCR検査拡充の是非は、国内では議論が続いている。7月16日、政府の新型コロナウイルス感染症対策分科会が、無症状者にPCR検査を公費で行わない方針で合意、政府に提言した。

 医療ガバナンス研究所理事長の上昌広医師は「世界の潮流から外れている」と指摘する。

「PCR検査は、陽性を見つける感度は感染初期は確かに低いといわれていますが、誤って陽性と判定する特異度はほとんどありません。科学誌『ネイチャー』は7月、『コロナの検査は感度より頻度』という記事を掲載しました。世界の専門家の間では、定期的にPCR検査を行うことが常識になりつつあります」(上医師)

 第1波では、6月末までに都内で新型コロナで亡くなった人の半数超が、病院内や福祉施設で感染していた反省もある。

「医師や看護師ら医療関係者にPCR検査をし、院内感染を抑止すべきです。警察官や自治体職員などエッセンシャルワーカーにも必要だと思います」(同)

 東京都杉並区の河北総合病院は、4月から都の要請で入院患者を受け入れている。同院を運営する河北医療財団の河北博文理事長(70)は、「感染者数の増減に一喜一憂せず、重症者や死亡者に的を絞るべき」と語る。

「そのためにも軽症者や無症状の陽性者は一定期間、病院ではなくホテルなどでの隔離を徹底すべきです。それを徹底する法律を、国会を開いて早急に決めてほしい」

 医師アンケートでも、軽症者や無症状者に対して自宅やホテルで療養を求める声が目立った。

 埼玉医科大学総合医療センターの岡秀昭医師は、軽症者の健康観察こそ重要と考える。

「新型コロナは、確かに軽症から急に重症化するケースがあり、健康観察支援が求められています。電話やオンラインで開業医などをあて、診療報酬をつけてはどうか」

 国や自治体にしてほしいこととして、医師アンケートで得に多かったのが「金銭的補助・支援」だ。新型コロナ対応や受診控えによる減収に対し、対応を求める切実な声が寄せられた。

 だが、厳しい意見もある。

 都内の大学病院に所属する30代の男性勤務医は言う。

「大学から『収益を上げるために、積極的に患者を入院させろ』と言われています。本来は必要性の低い患者も、病床稼働率を上げるために積極的に入院させるよう指示されている。大学はコロナのせいにしているが、元の経営の問題だと思う」

 前出の上医師は、「患者をフル回転で受け入れているのに経営難という病院に配慮が必要」としたうえで、「患者が来ないのなら、医療機関が変わらなければならない」と話す。

 すでに起こっていたことが加速しただけ、と考えるのは、NPO法人医療制度研究会の本田宏副理事長(66)だ。

「もともと診療報酬は公定価格で、儲けを出しにくい構造でした。医療秘書や病棟クラークの業務が診療報酬にあまり反映されず、医師や看護師の人手不足や過重労働も問題になっていました。赤字ギリギリで現場を回していたところへ、新型コロナ感染拡大が起こり、限界が明らかになっただけのことです」

 大学病院から派遣され、クリニックで在宅医をする40代の男性は、「今までの医療に無駄があった証拠」と指摘する。

「外来待合室で長時間待って数分で診療するシステムは、高齢患者の社交の場としてはよかったかもしれないが、無駄が多すぎた。患者一人の診療報酬が少なく数をこなすしかなかった面もあるが、今後は必要な人に必要な医療を届けるオンライン診療や在宅医に可能性を感じます」

 医療崩壊を防ぐため、私たちにできることはあるのか。アンケートでは、「節度ある受診を」「嘘をつかないで」といったモラルを求める声や、「感染者を差別しないで」「落ち着いて」といった声も目立った。

「極端な情報に振り回されず、地道にできる感染対策をし、適切に受診し、診断されたら淡々と治療を完遂してほしい」

 そんな“当たりまえ”が求められている。(編集部・小長光哲郎、ライター・井上有紀子)

※AERA 2020年8月24日号




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