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緊急事態条項 無用な議論にかまけるな(2020年8月21日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 憲法に緊急事態条項を設ける改憲の動きが再び頭をもたげつつある。感染症の大規模なまん延を緊急事態と位置づける提言を自民党の議員連盟が月内にもまとめ、党に提出する。

 改憲に強い意欲を示してきた安倍晋三首相の党総裁任期は残り1年余りとなった。後継をめぐる政治的な思惑も絡んで強引な動きにつながらないか。注意深く見ていかなければならない。

 武力攻撃や大災害に際して政府に権限を集中させる条項だ。法律で定める緊急事態とは根本的に異なる。例外状況を理由に憲法が無効化され、歯止めなく権力を強大化させる恐れがある。

 提言を主導するのは、次期総裁選をにらんで議連を6月に発足させた下村博文・党選対委員長だ。自ら会長に就き、180人余が加わっている。党の改憲条文案を修正して感染症を明記し、国会の議決を経ずに財政支出を可能にすることも盛り込むという。

 下村氏は新型コロナウイルスの感染が広がり始めた当初から、緊急事態条項について議論すべきだと発言していた。コロナ禍に乗じて、国会で改憲論議が滞る状況を動かそうとする意図が浮かぶ。

 同様の声は他の幹部らからも上がり、安倍首相も、憲法に緊急事態をどう位置づけるかは大いに議論すべきものだと国会で述べている。けれども、改憲の呼び水にしたいがために、感染症と緊急事態条項をひとつながりにくくるのはそもそも無理がある。

 憲法に緊急事態の定めがないことが感染症対策の妨げになっているわけではない。感染症法や改定した特別措置法をはじめ現行法で可能な手だてを尽くし、不備があれば法を見直せば足りる。憲法に手を入れる必要はない。

 自民党が2012年の改憲草案で示した条項は、緊急事態を認定する要件が緩く、政権が強い権限を意のままにできる危うさをはらむ。18年に取りまとめた条文案で大規模な災害に限定したことも、感染症をここで持ち出すのも、場当たりな理由づけで突破口を開こうとしているとしか見えない。

 人権保障や三権分立の憲法原則を逸脱する緊急事態条項が全体主義に道を開いてきたことを歴史は教える。現憲法が条文を置いていない意味もそこにある。改憲ありきの無用な議論にかまけて、目の前で取り組むべき対策や支援がおろそかになってはならない。




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