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夏の終わりに(2020年8月22日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 雲間からの日差しを浴び、日本海が鈍い銀色にきらめいていた。お盆の終わりに留萌市の黄金岬を訪ねると、磯場で戯れる親子連れのはるか向こう、小平から増毛にかけての沖合は凪(な)いでいた

▼75年前のきょうあの海で樺太(サハリン)からの引き揚げ船3隻(小笠原丸、泰東丸、第二新興丸)が旧ソ連潜水艦に攻撃された。1700人以上の犠牲者を出した「三船遭難事件」。終戦から1週間後、女性や子どもら計5千人余を運んでいた

▼札幌市東区の稲村和雄さん(91)は、沈没をまぬがれた第二新興丸に乗っていた。蒸し暑い船倉から甲板に出ると、猛烈な衝撃とともに体が宙を舞った。潜水艦の魚雷が船に命中したと後で知る。「爆風でマストにだれかの遺体がぶら下がり、セーラー服の女学生が甲板で黒焦げになっていました」

▼思い出したくない光景だった。だが、老境に入り、次第に考えるようになる。生き延びた自分にできることは何か。「戦争はこうだよ、と子どもたちに伝えなければ」。紙芝居を携えて学校や児童館で語ってきたが、今夏はコロナ禍で断念した

▼石垣りんの詩「弔詞」に戦死者への痛切な呼び掛けがある。<みんな、ここへ戻って下さい。/どのようにして戦争にまきこまれ、/どのようにして/死なねばならなかったか。/語って/下さい>

▼体験者の多くが世を去る中、後に残る私たちはどうすればよいか。戦後75年の晩夏、いま一度考えたい。



キャプチャ
当時の記憶を元に描いたスケッチ「留萌港にたどり着いた第二新興丸」

郷愁スケッチ・あの日の記憶 ~樺太引き揚げ 三船遭難の悲劇~(留萌市)➡ここをクリック



「三船遭難」解明遠く 留萌沖、旧ソ連軍攻撃 日ロ外交動かず(2020年8月19日配信『北海道新聞』)

キャプチャ

 終戦直後、樺太(サハリン)からの引き揚げ船3隻が現在の留萌管内沖で旧ソ連軍の潜水艦に攻撃され、民間人1700人余が犠牲となった「三船遭難事件」から間もなく75年。民間有志による犠牲者名簿の更新が今も続くが、遺族は減り伝承者不足も深刻だ。遺族はロシア政府に謝罪を求める活動を続けるが、政治レベルの動きはほとんどなく、関係者の危機感は強い。

 事件は1945年(昭和20年)8月22日に発生。緊急疎開船3隻の乗客は女性や子ども、高齢者が大半だった。92年にロシア側の軍事日誌などからソ連軍の関与が判明するまで、誰が攻撃したかは「国籍不明」とされた。ロシア政府は現在も公式に認めていない。

犠牲名簿1594人

 道が外務省の調査を基に67年にまとめた犠牲者名簿は重複者らも多く被害の全容は、はっきりしていない。長年、究明に取り組む元札幌テレビ放送(STV)ディレクターで、札幌の映像プロデューサー中尾則幸さん(73)が昨年、新たな犠牲者名簿を作成。その模様が報道されると関係者から連絡があり、この1年で新たに25人分が判明し、名簿は1594人分になった。

 祖母や母ら7人が亡くなったことを中尾さんに伝えた空知管内上砂川町に住む91歳の女性は「船倉は血の海。地獄のような光景は今も頭から離れません」と語ったという。200人以上の身元はいまだに手がかりがない。

 多くの民間人が犠牲になった事件にもかかわらず、日本政府の真相解明に向けた動きは鈍い。日ソ両国が国交回復する56年までシベリアに抑留された兵士帰還が優先されたことや、攻撃側が長年、国籍不明とされた経緯もあり、62年の国会では担当閣僚が「疎開をする際の事故」と表現したこともあった。

国会論戦なく

 92年に日本の研究者の調査でソ連軍の攻撃と判明後、93年に河野洋平官房長官は「このような問題があることを改めて知った。ロシア政府が資料を一日も早く公開してほしい」と国会で答弁。しかし、95年4月を最後に国会論戦でこの問題は取り上げられていない。

 2018年の逢坂誠二衆院議員の質問主意書に対し、政府は「ソ連軍の攻撃」かどうか、ロシア側に事実確認をしたかさえ明かさなかった。外務省は取材に対し「(状況に)変化はない」(ロシア課)と答えた。

 富田武・成蹊大名誉教授(74)=日ソ関係史=は、政府の対応を「戦時の民間人の被害が放置される典型だ。ロシアとの北方領土交渉を抱える中、戦時の被害を持ち出して相手を刺激したくない弱腰外交が続いてきた表れ」と指摘する。

 近年、遺留品や犠牲者が判明する動きもある一方、遺族は高齢化し伝承者も数少なくなった。3年前には樺太引揚三船遭難遺族会会長を25年間務めた永谷保彦さんが死去、外務省への訪問も途絶えた。毎年8月21日に樺太引揚三船遭難遺族会が催す留萌市の法要の参列者も減少。今年は新型コロナウイルスも影響し、案内を出した人はピークの1割の約30人にとどまる。永谷さんの遺志を継いだ妻・操(みさお)さん(79)=札幌市在住=は戸惑う。「事件を知る人は年々いなくなり、どう後世に伝えればいいのか」(古田夏也)



質問本文情報
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平成三十年三月二十九日提出
質問第一八六号

北海道「留萌沖三船殉難事件」に関する質問主意書
提出者  逢坂誠二



北海道「留萌沖三船殉難事件」に関する質問主意書


 昭和二十年八月二十二日の早朝、南樺太(現サハリン南部)から逃れる邦人を乗せた三隻の船が北海道留萌沖で当事国籍不明とされた潜水艦に攻撃され、小笠原丸、泰東丸が沈没し、第二新興丸も大破した。この潜水艦による攻撃で、千七百名以上の邦人が亡くなった。
 この潜水艦は長い間国籍不明とされていたが、一九九二年、拓殖大学の秦郁彦教授の調査で、ソ連国防省戦史研究所からの回答で、ソ連太平洋艦隊の潜水艦による攻撃であったことが確認された。攻撃を行った潜水艦は、ウラジオストクのソ連太平洋艦隊所属のL一二ならびにL一九であると承知している。
 北海道留萌市立図書館の所有する、一九四五年八月十九日のソビエト海軍艦隊人民委員部発の「ソ連太平洋艦隊第一潜水艦隊司令官宛命令書 NO OP/〇〇四五五」(「本命令書」という。)では、「敵の海軍は積極的な戦闘を行っていない。だが、サハリン・シムシュ・パラムシル諸島においては、貴重品を本国に搬出しようと抵抗を続けている」「第一極東方面軍は、北海道北部占領の任務を負う」と示された上で、「艦隊には次の任務が課せられる。八月二十四日未明、占領軍の留萌上陸予定」、「L級潜水艦を二隻派遣せよ」、「航行中の敵船舶はすべて撃滅する。具体的潜水艦統率は、貴下が行う」と命じられている。
 太平洋戦争後、七十年以上経過したが、「留萌沖三船殉難事件」(「本事件」という。)の真相は未だ十分に解明されておらず、樺太引揚三船遭難遺族会がロシア政府に事実を認め謝罪するように求め続けているものの、誠意ある回答は得られていない。関係者の高齢化は進んでおり、このままでは本事件が未解決のまま忘れ去られてしまう可能性も否定できない。
 平成三十年三月二十四日、世耕弘成経済産業大臣はロシアのゴロデツ副首相らと大阪市内で会談した。会談後、ゴロデツ副首相は記者からの取材に応じ、安倍総理が五月二十六日にロシアを訪れる見通しだと発言した。また安倍総理のロシア訪問では、プーチン大統領との首脳会談が行われることも明らかにされた。
 これらを踏まえ、以下質問する。

一 本事件について、これまでソ連政府およびロシア政府に事実の照会を行ったことはあるのか。あるとすれば、どのレベルの担当者間で、あるいは、どの程度の回数であるのか。政府の見解如何。

二 一九九二年の拓殖大学の秦郁彦教授の調査では、本事件はソ連太平洋艦隊の潜水艦による攻撃であったことが確認された。小笠原丸、泰東丸、第二新興丸への攻撃を行った潜水艦は、ウラジオストクのソ連太平洋艦隊所属のL一二ならびにL一九であるとの理解でよいか。

三 本命令書では、「敵の海軍は積極的な戦闘を行っていない。だが、サハリン・シムシュ・パラムシル諸島においては、貴重品を本国に搬出しようと抵抗を続けている」「第一極東方面軍は、北海道北部占領の任務を負う」との記述があるが、政府はこれを承知しているか。政府の見解如何。

四 本事件は、ソ連太平洋艦隊所属の潜水艦による攻撃であるとの理解でよいか。政府の見解如何。

五 本命令書でいう「L級潜水艦を二隻派遣せよ」、「航行中の敵船舶はすべて撃滅する。具体的潜水艦統率は、貴下が行う」との命令が本事件の根拠になっているとの理解でよいか。政府の見解如何。

六 本事件の関係者は高齢化しており、残された時間は少ない。安倍総理が五月にプーチン大統領と会談するのであれば、ロシア政府に本事件についての事実の照会を行い、あるいは謝罪を求め、その回答を得るべきではないか。政府の見解如何。
 右質問する。



平成三十年四月六日受領
答弁第一八六号

  内閣衆質一九六第一八六号
  平成三十年四月六日
内閣総理大臣 安倍晋三

       衆議院議長 大島理森 殿
衆議院議員逢坂誠二君提出北海道「留萌沖三船殉難事件」に関する質問に対し、別紙答弁書を送付する。

衆議院議員逢坂誠二君提出北海道「留萌沖三船殉難事件」に関する質問に対する答弁書

一について
 外交上の個別のやり取りの詳細について明らかにすることは、相手国との信頼関係を損ねるおそれがあることから、お答えすることは差し控えたい。

二について
 御指摘の調査については、私人が独自に行った調査であり、政府として見解を述べることは差し控えたい。

三及び五について
 御指摘の命令書については、政府としてお答えする立場にない。

四について
 お尋ねについては、事実関係を直接確認する手段がないことから、お答えすることは困難である。

六について
 お尋ねの会談の詳細については、現在調整中であり、その内容について予断をもってお答えすることは差し控えたい。






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