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ナチス犯罪に時効なし 久保田正広(2020年8月21日配信『西日本新聞』-「オピニオン」)

 トム・クルーズ氏主演の映画「ワルキューレ」(2008年)。第2次大戦中の1944年に起きたヒトラー暗殺未遂事件という実話に基づく。

 主人公のドイツ国防軍大佐は総統大本営の会議室に爆弾入りのかばんを置き、退出。計画通りに爆発したがヒトラーは軽傷で、クーデターを起こそうとした大佐と仲間たちは銃殺刑に-。

 事件から76年となる今年7月20日、ベルリンで追悼式典が開かれた。敗戦直後は大佐のグループを反逆者と見なす向きが多かった。次第に評価は変わり、現在は独裁体制に抵抗した勇気ある行為との見方が定着。式典では国防相が「勇敢な人々の良心は意義あるものだ」とまで述べた。

 ナチスの過去に向き合い続けるドイツ。ヒトラーを礼賛するかのような極右勢力が台頭する今も、その基本線は守られているように見える。

 ベルリンの式典の3日後、北部ハンブルクの裁判所で、ナチスの強制収容所の看守だった93歳被告に執行猶予付き禁錮2年の判決が出た。ユダヤ人が殺害された収容所の看守だった当時、被告は10代の元親衛隊(SS)員。少年法で裁かれた法廷で、無罪を主張したものの退けられた。

 ドイツは時効を廃止し、強制収容所関係者の訴追を続けている。戦後75年。関係者も高齢となり裁判に耐えられなくなってきた。ハンブルクの裁判は生存するSS隊員が関わる最後になる可能性もあり、注目された。

 ドイツ国内には生き残ったナチスの犯罪者は今も例外なく裁くべきだとの世論がある一方、本当に罪のある者が責任を問われず高い地位に就いているとの疑問の声もある。

 事実、公職や大企業幹部を務めたSS幹部がいる。そこに迫ったのが弁護士作家フェルディナンド・フォン・シーラッハ氏のベストセラー小説「コリーニ事件」。映画化され今年、日本で公開された。

 詳述は控えるが、ドイツに本当にあった「法の抜け穴」が描かれる。今は少年看守も訴追するほどだが、かつてはナチス犯罪に問われるのはヒトラーやSS長官ヒムラーら最高幹部に限られ、それ以下の幹部らには時効が成立するような抜け穴があった。

 この小説の告発を受け、ドイツ法務省は2012年、ナチス時代の再検討委員会を設けている。驚くことにシーラッハ氏の祖父はナチス幹部で青少年組織ヒトラー・ユーゲントの指導者だったという。

 ドイツの過去の清算には「ナチスに全てを負わせている」との批判もある。ただ、その蓄積は深い陰影を感じさせる。 



キャプチャ

解説
国家に忠誠を誓った軍人シュタウフェンベルクだったが、ヒトラーの独裁政権に絶望し、祖国のために総統暗殺を企てる。第2次大戦中の1944年7月20日、ナチスのクラウス・フォン・シュタウフェンベルク大佐を首謀者として決行されたヒトラー暗殺計画を、ブライアン・シンガー監督、トム・クルーズ主演で描く歴史サスペンス。共演にケネス・ブラナー、テレンス・スタンプ、ビル・ナイ、カリス・ファン・ハウテンら豪華キャストが集結( 映画.com)。

2008年製作/120分/アメリカ
原題:Valkyrie








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Author:gogotamu2019
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