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東京パラへ1年 「共生社会」着実に前へ(2020年8月24日配信『東京新聞』-「社説」)

 東京パラリンピックの開幕まで1年となった。新型コロナウイルスの感染拡大で大会の先行きは見通せないが、障害者と健常者の「共生社会」へ向けた歩みは、着実に前へ進めたい。

 パラリンピックを目指すアスリートにとって、コロナ禍は健常者以上に大きな試練となった。

 下半身まひで車いすを使う選手は、肺機能が弱いケースがある。感染すれば重症化する可能性が否定できない。

 視覚障害がある場合、周囲の「三密」状態を確認するのが難しい。街中で手すりや点字表示板を触れるのも、感染リスクを高めてしまう。

 健常者以上に外出を控え、練習もままならないアスリートが多かったのではないか。

 何より、大会開催が不透明なことが不安の中心にある。マイナーだった競技でも、大会が契機となって企業などが支援し、練習に専念できる環境が整ってきた。

 企業が業績悪化や大会の不透明さを理由に、安易に支援を縮小することのないよう求めたい。

 スポーツだけではない。ここ数年、大会の理念に合致する健康や人権への取り組みは、世界の先進レベルを目指して進んできた。

 受動喫煙の害を防ぐ改正健康増進法。性的少数者(LGBT)の差別を禁じる東京都の人権尊重条例。そして、障害者差別解消法もその一つである。

 しかしコロナ禍で、理念に逆行する事態が起きている。2月から6月に解雇された障害者は約1100人で、前年同期より16%増えた。同条件で比較できる健常者の統計はないが、障害者がより安易に解雇されていないか懸念がある。

 また、障害者の法定雇用率を0・1%引き上げて来年1月から2・3%とする案を巡っては、経営者側が先送りを求めた。テレワークなど働き方を工夫し、雇用を進めるべきだろう。

 コロナ禍による社会の分断は、私たちの身の回りでも起きているかもしれない。障害者が外出先でちょっとした手助けを必要とする場面で、健常者が過敏に感染を恐れれば、コミュニケーションが取りにくくなるからだ。

 世の中のあらゆる場面で、新たな生活スタイルの模索が続く中、障害者が暮らしやすい「バリアフリーの新様式」の議論も必要だ。

 大会開催がぐらついたとしても、多様性(ダイバーシティー)と包括(インクルージョン)は社会の基礎として大切にする。その目標を再確認したい。



パラまで1年 開催に向け選手の支援を(2020年8月24日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルスの感染拡大により延期となった東京パラリンピックは、来年の8月24日に開幕する。

 世界の感染状況が沈静化する兆しはまだ見えない。だが、われわれは東京五輪と同様に、大会開催への強い意志を持ち続けたい。

 東京大会の開催決定を機に、街のバリアフリー化は進んだ。障害がある人々への公共サービスも、招致決定前より明らかに向上した。「多様性」や「共生」のキーワードが、国民の意識を大きく変えたからだろう。

 日本パラリンピック委員会(JPC)の河合純一委員長は「ハードではなく、ハートのレガシーを残そう」という。この流れを、次の世代へと確実に引き継いでいかなければならない。

 開催に向けたハードルは高い。パラ選手には呼吸器系の基礎疾患を持つ人も多く、コロナ感染で重症化する危険性は小さくない。各国の選手たちが訪日に不安を募らせているのも事実である。

 ワクチン開発に進展があったとしても、コロナへの懸念は消えない。世界の選手たちを「安心、安全」に迎え入れるためにも、大会組織委員会は感染防止策に万全を期してもらいたい。

 パラ競技団体には延期に伴う財源の不安もある。予定していた大会が開催できず、スポンサー企業の協賛権利が履行できないケースは増えている。契約の継続や新規スポンサーの獲得が難しくなっており、競技団体の活動は先行きが見通しにくい。

 国はパラスポーツ界の自助努力に委ねるだけでなく、支援の枠組みを検討してはどうか。社会を前向きに変える力は、五輪よりもパラの方が格段に大きいからだ。

 現時点では、観客数の大幅な削減が避けられない。とはいえ、器具を使いこなして競技力に結び付けるパラ選手の技術、パラ競技の持つ迫力は、画面越しの観戦だけでは十分に伝わらない。

 パラ競技の魅力を多くの人々に届けるためにも、組織委は観客数の確保に向けて可能なかぎり検討を重ねてもらいたい。

 パラ選手たちは感染防止に神経をすり減らしながらも、日々の鍛錬に励んでいる。彼らの活躍はコロナ禍で疲弊した社会に、前に進む力を与えてくれるはずだ。われわれも強い期待感をもって、選手の背中を押し続けたい。



東京パラまで1年(2020年8月24日配信『福井新聞』-「論説」)

五輪との融合も探る機に

 新型コロナウイルスの感染拡大により延期された東京パラリンピックの開幕まで1年となった。障害者のリハビリの一環として始まったパラリンピックは今や、世界最高水準のスピードと技を競う大会である。22競技539種目にわたる競演を期待したい。

 五輪同様「安全・安心」が大原則だ。組織委員会には感染防止対策を徹底してもらいたい。基礎疾患を抱える障害者アスリートもおり、感染した場合には重症化リスクを背負う。式典の簡素化は言うに及ばず、選手の滞在期間の短縮なども想定せねばなるまい。選手はコンディションの維持が困難かもしれないが「新しい日常」での障害者スポーツのあり方を探る手だてだと考えてほしい。

 パラリンピックがスポーツとして発展するにつれ、選手や競技団体と社会との関わりは多様化してきた。企業がスポンサーとなり支援するケースが増え、プロとして活動する選手も出てきた。しかし、新型コロナは障害者スポーツの未来にも影を落とそうとする。業績悪化によって企業の支援が先細り、競技団体や選手の財政基盤が不安定になれば、競技の普及も競技力の向上も望みにくくなる。

 そこで考えたいのは、健常者と障害者の競技団体の協力体制の構築だ。五輪とパラリンピックは一体化した組織委員会が運営するようになった。世界を見渡せば、五輪・パラリンピック両委員会が統合するデンマークや、健常者と障害者の全ての競技団体が統合したノルウェーの例もある。ともに支え合う仕組みを国内でも探るべきだろう。

 競技面でも将来的に融合を図れる部分はないか。2012年ロンドン五輪に出場したオスカー・ピストリウス選手(南アフリカ)や16年リオデジャネイロ五輪出場を望んだマルクス・レーム選手(ドイツ)のような障害者アスリートは今後も現れる。「男女平等」の観点から東京五輪では柔道団体や卓球ダブルスなど男女混合が9種目増えた。では、オリンピアンとパラリンピアンの混合種目も将来は実現可能ではないか。

 成り立ちも意義も異なる五輪とパラリンピックを一つにまとめるべきだとは思わない。ただ、東京五輪・パラリンピックは「スポーツには世界と未来を変える力がある」を大会ビジョンとし、基本コンセプトの一つに「多様性と調和」を掲げる。目指すのは共生社会を育む大会である。

 すべてのアスリートが結束し、私たちも支えることが未来を変える力になる。そこから将来の五輪・パラリンピック像が見えてくるはずだ。延期となった1年間を含め、そうした礎を考え、築いていく時間と捉えたい。








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