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戦没者の遺骨収集 帰還へ取り組みの加速を(2020年8月27日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの世界的な感染拡大で海外渡航が制限される中、戦没者の遺骨収集の作業が足踏みしている。遺骨収集は、終戦から75年を経てなお未解決の戦後処理の一つだ。帰還を望む遺族に残された時間は少なく、政府は取り組みを加速させなければならない。

 厚生労働省によると、先の大戦による海外戦没者は240万人。その半数近い約112万人の遺骨が戻っていない。最多のフィリピンで約37万人分、ノモンハンを含む中国東北地方で約20万人分、テニアン島など中部太平洋で約17万人分が未収容とされる。

 未収容のうち海に没した遺骨が約30万人分、北朝鮮や中国など現地の事情で収容の難しいものが約23万人分あり、収容可能とされるのは最大で59万人分だ。

 戦後の当初、遺骨の収集は主に激戦の生存者や遺族の手で始まった。熊本では1966年、ブーゲンビル島への遺骨収集団が現地を訪ね、初めて207人分を持ち帰っている。

 しかし本来は、遺骨を収容して身元を特定し、遺族に引き渡すのは国の責務である。2016年に成立した戦没者遺骨収集推進法はそのことを明記した。遺族は高齢化しており、急いで進める必要がある。

 国は24年度までを収集の集中実施期間としているが、過去4年間の実績は約3千人分にとどまっている。本年度は現地調査を増やすはずだったが、新型コロナのため今のところできない状態だ。

 昨年には、あろうことか遺骨の取り違えが発覚した。厚労省がロシアから持ち帰った遺骨460人分とフィリピンの10人分が、再検証で日本人の可能性が低いと判定された。収集方法のずさんさや当初の判定に問題があったのは明らかで、厚労省は05年から疑義を指摘されていたにもかかわらず対応を先送りしていた。日本人遺族への背信行為というだけでなく、相手国の死者の尊厳まで損なう重大な過ちである。

 再発防止策として厚労省は今年7月、新たに「戦没者遺骨鑑定センター」を省内に設置。外部の専門家を登用し、遺骨の科学的な鑑定や研究を行うことにした。

 また、現地で骨を焼いて持ち帰るという方法も転換。DNA鑑定のためにまず一部を検体として採取し、結果が判明するまで現地で残りの骨を保管することにした。対策を徹底し、確実な収集に向けて仕切り直してもらいたい。

 今月15日の終戦の日にあたり、70代の遺族男性は「待つ側には1年が貴重。国はなんとか力を尽くしてほしい」と早期の収集再開を訴えていた。

 安倍晋三首相は同日の全国戦没者追悼式の式辞で「いまだ帰還を果たされていない多くのご遺骨のことも、決して忘れません。一日も早くふるさとにお迎えできるよう、国の責務として全力を尽くしてまいります」と述べた。

 その言葉通りに、最大限の努力をしてほしい。




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