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総裁選でピエロになった石破と岸田 無様と無残、その大罪(2020年9月2日『日刊ゲンダイ』)

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 2020年9月1日は歴史の転換点になるのではないか。自民党の談合派閥政治が完全復活。安倍首相が7年8カ月にわたって築き上げた「暗黒の政治構造」が常態化した一日としてである。

 自民党総務会は1日、総裁選の党員・党友投票見送りを決めた。中堅・若手議員から異論が相次いだが、党執行部は突然の安倍退陣表明が党則の「緊急を要するとき」に当たるとして、押し切った格好だ。

 呼ばれもしないのに、総務会に現れた後に小泉進次郎環境相は「党に多様な声があることが改めて証明された」とテレビカメラの前で語ったが、相変わらず危機感ゼロの“詩人”である。

 少なくとも有権者の声に近い党員・党友投票を省略すれば、両院議員総会では主要派閥の動向だけで新総裁、つまり次期総理が決まってしまう。事態はこうした手続き論だけでは済まない。

 菅官房長官は2日夕方、“真打ち登場”とばかりに記者会見し、総裁選出馬を表明。菅は「安倍政治の継承」を打ち出し、自らも中心を担った「長期政権の総括」などには見向きもしない。

 やっているのは、党内を裏で牛耳る“妖怪”や“長老”にひたすら首を垂れるのみ。安倍の辞任表明の翌日に菅は二階幹事長と密会。以前から「出たらどうか」と総裁選出馬を勧められていた二階に、菅は「よろしくお願いします」と支援を求めたという。

 31日午後には、かつて「参院のドン」と呼ばれた青木幹雄元参院議員会長と面会。政界引退から10年も経つのに、今なお青木が参院自民党に隠然と影響力を持っていることに驚くが、そんな腐敗構造に疑問も挟まず、菅は「ご指導よろしくお願いします」と頭を下げたようだ。

■妖怪と長老が牛耳る古い政治

こうして安倍路線の継承者然として振る舞い、コメツキバッタのごとく実力者に取り入る菅に、主要派閥は雪崩を打つ。二階派(47人)が真っ先に「菅支持」を打ち出すと、安倍の出身派閥で党内最大の細田派(98人)、麻生派(54人)なども軒並み支持。青木の支配下にある竹下派(54人)も支持する見込みだ。

 既に菅は国会議員票(394票)の過半数を固め、アッという間に盤石の構え。自前の総裁候補を持たない派閥に支持される構図は、長期政権が人材育成を怠ってきたツケ。常に安定を求め、寝首をかきそうな「ポスト安倍」候補を潰してきた皮肉な結果の表れでしかない。法大名誉教授の五十嵐仁氏(政治学)はこう言った。

「『妖怪』や『長老』と称される実力者に総裁候補がこびを売り、一握りの大物が党員投票すら潰し、派閥中心の多数派工作を先行させる。まさに密室談合・派閥政治の古い自民党そのものです。そもそもコロナ対策も経済政策も行き詰まり、政権を放り投げた『安倍路線』を引き継がれても、国民にはマイナスでしかない。それでも『勝ち馬に乗れ』と党内が菅支持一色に染まるのは、安倍路線から政治的枠組みを変えずに既得権益を守りたいだけでしょう。これで国民も『よし』とすれば、ただでさえ7年8カ月の安倍政権でガタガタの日本の民主主義へのトドメとなります」

 菅は次の総理の大本命に躍り出たことに喜びを隠せないのか、定例会見でも笑みをこぼす場面が目立つ。この冷笑こそ、民主主義崩壊へのシグナルである。

正々堂々と挑んでも「汚れ役」には勝てない

 それにしても、だ。まるで菅の「前座」のように、1日総裁選への出馬会見を開いた2人は無様だ。石破元幹事長は「政府を謙虚に機能させる、国会を公正に運営する」と訴え、岸田政調会長は「格差問題にもしっかり立ち向かう」「今の日韓関係は大変残念だ。対話を行う環境整備が大事」と主張。今さら2人に安倍路線との違いを強調されても、「時すでに遅し」の感は否めない。

 石破本人は二階と菅との関係を強化。2人の後ろ盾を得て支持を拡大するつもりがアテ外れ。まさか、菅自らが総裁候補に名乗り出ることは想定外だったのだろう。読みが甘い。甘すぎる。

 安倍からの禅譲を期待していた岸田に至っては、実に無残だ。31日午前に官邸で安倍に支持を仰ぐと、「自分の立場からは個別の名前を出すことは控えている」と素っ気ない答えしか返ってこなかった。

 この日は菅の当選同期組として出馬を求める一員に、竹本直一IT担当相の姿があった。昨年の内閣改造で岸田が安倍に頼み込んで就任。岸田派の“入閣待機組”だったベテランに裏切られるなど、情けないエピソードが積み上がる。

 大体、7年8カ月もの長期政権下で2人が権力を奪い取る気概を示す場面は一度もなかった。ハナから禅譲狙いの岸田は論外として、石破も常に暗い目つきで腕組みするのみ。デタラメ尽くしのコロナ対策にも、遠方からチョット小言を言うばかり。6月の国会閉会以降、まるで仕事をせず政治空白を生じさせた安倍に「そこをどけ」と迫ることもなかった。

 体調不良に付け込むのは不謹慎という党内批判を恐れたのか、退陣をじっと待つつもりだったのか、それとも「私ならこうする」と言うべき主張もなかったのか。恐らくその全部なのだろう。

 その点、菅の立ち回りは狡猾だった。次期総裁選出馬について「全く考えていない」とおくびにも出さなかったクセに、裏ではポスト安倍政局の舞台回し役となった二階と会談を重ねた。

 7月初旬に菅と二階が「地方創生」と「防災」に関する派閥横断の議員連盟結成を呼びかけたのも、いま思えば「石破潰し」の布石だ。

「地方創生」も「防災」も、石破が総裁選に掲げようとしたテーマ。政策をパクって争点化をかわす狙いもあったのではないか。

■長期政権の不正を暴くぐらいの気概を示せ

 安倍の健康不安説が強まっても「任期を全うする」「体調は変わらない」と菅はシラを切り通した。謀反を働くそぶりを見せない一方でメディア露出の頻度を増やし、毎週どこかのテレビ局に出演。「安倍退陣後は菅政権か」と既成事実化をじわじわ進めた結果、国会議員票圧倒の流れを生んだのだ。高千穂大教授の五野井郁夫氏(国際政治学)はこう指摘する。

「結局、岸田氏も石破氏もケンカ下手のボンボンだったことが露呈しました。菅氏も二階氏も安倍政権の中枢メンバー。7年8カ月もの間、国政を私物化してきた“汚れ役”に、正々堂々と権力闘争を挑んでも勝ち目はありません。政権中枢から遠ざかっていた石破氏はともかく、岸田氏だって安倍政権の中枢にいました。ならば表では正当な手続きでの総裁選の実施を世論に強く訴えつつ、裏では石破氏と共闘。候補を一本化し、長期政権の不正を暴露するぞと、二階・菅コンビを恫喝するくらいの気構えを見せなければ、権力闘争には勝てないのが現実でしょう。岸田、石破両氏とも『負けに不思議の負けなし』の状況に陥っています」

 今やピエロと化した石破と岸田の罪は重い。この総裁選で惨めな2人の政治生命が抹殺されれば、本当に日本の民主主義は崩壊しかねない。

「既得権益を手放したくない権力亡者がはびこり、それに皆がすり寄る。この腐敗構造のまま、菅政権が誕生し、長期化しようが、短命で終わろうが、自民党が変わらなければ同じことです。今回、出馬を辞退した新しい世代の候補が次の総裁選に名乗り出ても、権力亡者にひれ伏す構造が温存されれば何も変わりません。政治を変える目が必ず封じ込まれてしまうだけです」(五十嵐仁氏=前出)

 時代に対応して変化する自浄能力を失った政治に未来はない。次の総選挙で自民党が下野しない限り、菅暗黒政権を生み出した構図は永遠に続くことになる。




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