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雇用情勢悪化 長期化想定し持続可能な対策を(2020年9月4日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 雇用情勢の悪化が顕著で、好転の兆しが見えない。厚生労働省が、新型コロナウイルス感染拡大に関連する解雇や雇い止めが見込みも含めて5万人を超えたと明らかにした。

 7月の有効求人倍率(季節調整値)は1.08倍で、前月から0.03ポイント落ち込んだ。7カ月連続悪化で2014年4月以来、6年3カ月ぶりの水準となっている。政府はこれまで巨額の財政出動で、雇用の悪化を食い止めようとしてきた。雇用を守るのは国の責務だ。感染拡大による経済低迷は長期化を想定する必要があり、持続可能な雇用対策を構築しなければならない。

 厚労省は2月から新型コロナによる解雇や雇い止めを集計しており、累計では5月下旬に1万人、6月上旬に2万人を超えた。以降、月に約1万人のペースで推移し、8月31日時点で計5万人超になった。ただ、この数字は都道府県の労働局やハローワークに相談があった事業所の報告に限られているため、実際はもっと多いとみられる。

 状況の悪化は地方への拡大も進んでいる。新型コロナに関連する解雇や雇い止めが千人を超えているのは、14都道府県に上る。産業別でみると、製造業が最も多かった。感染拡大当初は外出自粛や休業要請の影響を直接的に受けた宿泊業が中心だったが、最近は業種に広がりがある。国は幅広い業態の状況を注視し、遅滞なく対策を講じるようにしてほしい。

 こうした情勢を踏まえれば、従業員に休業手当を支払った企業に支給する雇用調整助成金に関する政府の決定は妥当だ。新型コロナ感染拡大に伴う特例措置の期限を9月末から12月末に延長することを決めた。特例は6月末の期限を9月末に延長しており、与野党からは再度の延長を求める声が相次いでいた。

 助成金による雇用維持は政府の対策の柱である。これまで災害時などに特例的に拡充されてきた。今回は支給額や対象が過去最大級に拡充されている。完全失業率の悪化が欧米より小幅にとどまっており、一定の効果が見られる。一方で度重なる手続きの変更で支給事務を担う現場が混乱し、支給に時間がかかる事例も起きている。円滑で迅速な運用に努める必要がある。

 年明け以降の特例について、加藤勝信厚労相は「休業者や失業者が急増するなど雇用情勢が大きく悪化しない限り、段階的に通常の制度に戻していく」と縮小する考えを示した。タイミングを見誤らないよう慎重に判断することが肝要だ。

 新型コロナの感染状況を考えると、雇用情勢はさらに厳しくなる恐れもある。1日に発表された7月の完全失業率は2.9%だったが、年末までに4%台になるというエコノミストの予測がある。雇用を守ろうとしても企業の体力がいつまで維持できるか分からない。政府は助成金拡充に注力するとともに新たな雇用を創出するといった方策も模索しなければならない。



コロナで採用手控え 人材確保へ柔軟な対応を(2020年9月4日配信『琉球新報』-「社説」)

 琉球新報が県内売上高上位企業に2021年度の新規学卒者の採用計画を聞いたところ、回答を得た90社のうち5社が新型コロナウイルスの感染拡大による影響で採用を中止したことが分かった。今年より採用人数を減らすとした企業は25社で、新型コロナの一定の影響が見られる。

 経済の停滞による業績悪化などコロナ禍で企業の窮状が表れているとはいえ、学生の職業選択の機会が失われることは最小限に食い止めなくてはならない。雇用を守るため政府は企業支援に全力を挙げるとともに、学卒者の就職機会を保障する柔軟な対応を企業側にも求めたい。

 学生優位の「売り手市場」で進んできた近年の就職活動だが、今年は新型コロナで状況が一変している。

 リクルートキャリアの調査によると8月1日時点の全国大学生の就職内定率は81・2%で、前年同月に比べ10ポイント低下している。緊急事態宣言に伴う選考活動の一時停止などで各社の採用スケジュールが後ろ倒しとなった影響で、学生の内定遅れや就職活動の長期化が生じている。

 さらに、旅客需要の激減が長引く航空業界が選考の再開を断念するなど、本年度の新卒採用を見送る業種が出始めている。

 新卒一括採用が主流の国内にあって、学卒時に就職の機会が狭まる影響は計り知れない。バブル崩壊に伴う「就職氷河期」の就職難が現在まで尾を引いているように、新卒採用の縮小は影響が長期に及んでしまう。

 将来を担う人材の確保を止めることは企業の成長においてもマイナスで、苦渋の判断だろう。コロナの収束後に採用の再開に向かう際は、新卒一括採用にこだわらず人材獲得の幅を広げるなど、21年3月卒の学生が不利益にならない策を検討してほしい。

 企業の業績悪化から従業員の雇用を守るため、政府は雇用調整助成金の12月までの延長を決めた。国は経済対策や雇用支援に躊躇(ちゅうちょ)なく財源を出動することだ。民間の採用が狭まる懸念がある中で、国や自治体など公的部門で臨時採用を増やすといった緊急的な対策も有効なはずだ。

 他方で、新型コロナで私たちの働き方や生活は大きく変わり、その流れは今後も続く。コロナ後の社会で成長が見込める分野に雇用を誘導することは経済の成長戦略にもなる。感染症に強い経済や社会に向けて、現在の感染症対策でネックとなっている医療人材の拡充を政策的に後押しすることも欠かせない。

 就職活動を続ける学生にとって不安は大きいだろう。コロナ禍だからと就きたい職業を簡単にあきらめる必要はない。一方で、働く場所や会社の規模などにこだわらず、広く職種や企業を見つめ直す余裕も持ちたい。コロナ後の新しい経済社会に求められる資格、能力を磨くことを含め、前向きに行動してほしい。





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