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マイナンバーの未来図探る 診療・免許などに活用案(2020年9月4日配信『日本経済新聞』)

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マイナンバーカード

政府は新型コロナウイルスへの対応で浮き彫りになった行政のデジタル化の遅れを取り戻す起爆剤としてマイナンバー制度を活用する。健康保険証と一体化した診療情報の管理や、運転免許証の機能の追加、スマートフォンへの搭載などの案が浮上する。マイナンバーの未来図を探る。

政府は6月、首相官邸で開いたデジタル化に関する会議で、マイナンバー制度をテコ入れすると宣言した。

「コロナを巡り社会全体のデジタル化がいかに重要であるかを改めて認識した。年内に工程表を策定し、できるものから実施していく」

安倍晋三首相の後任を決める自民党総裁選で優勢な菅義偉官房長官の発言だった。

政府は発言を受けて33項目の政策目標を打ち出した。マイナンバーの利便性を高めて「2022年度までにほぼすべての国民にマイナンバーカードを交付する」という目標の達成に向けた取り組みだ。

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一部の案は既に道筋が決まった。まず21年3月に健康保険証とマイナンバーカードを一体化できるようになる。デジタル対応した病院にカードを持っていけば受診の際に保険証を提示する必要はなくなる。同年10月以降はこれまで処方された薬の情報をカードで引き出せるようになる。

将来は過去の診療情報や感染症の予防接種の記録もカードで把握可能にする構想だ。実現すれば病院の診察券、「お薬手帳」、手術歴など多様な情報がカードを使って確認可能になる。病院にはカードさえ持っていけば済む。医師側が過去の治療歴を見て診察できるようになれば医療の効率化にもつながり得る。

活用分野は医療だけではない。運転免許証としての利用やカード機能のスマホ内蔵化といった案も出ている。

グローバル化の対応として外国人の在留カードとしての活用や、日本人が海外の身分証に使えるよう日本政府発行をつけてローマ字表記の氏名にするといった検討もする。

政府が多様な青写真を示す背景にはコロナ対策を巡る反省がある。政府・与党が4月にまとめた経済対策で目玉に位置づけた1人10万円の現金給付の遅れである。

当初はマイナンバーを使ってオンライン申請すれば迅速に受け取れるとの触れ込みだった。いざ手続きが始まると実務を担う市区町村から悲鳴が相次いだ。オンライン申請の内容を確認するために紙に印刷して照合するなど、デジタルとはほど遠いアナログ作業の実態が明らかになった。 作業が煩雑になるとしてオンライン申請を停止した地方自治体が少なくなかった。効率化の切り札のはずのマイナンバーがコロナ禍という緊急時に機能しなかった。

日本総研の岩崎薫里・上席主任研究員はマイナンバー制度について「個人情報保護を重視し、制度設計を厳格にしすぎて不便なシステムになった」と指摘する。「政府が地道に説明して信頼を得ながら利便性を高めていく必要がある」と話す。

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マイナンバー制度は社会保障や税の手続きを効率化するため16年に始まった。日本国内に住民票を持つ全ての人を対象に12ケタの個人番号を付与した。

同時に交付を始めたマイナンバーカードは普及が遅れている。総務省によると、8月1日時点のカード交付率は全国で約2300万枚で人口の18.2%にとどまる。いくら行政側がデジタル化を推進しても、利用する国民側がカードを持たないままでは状況は変わらない。

政府はコロナ禍でデジタル化への関心が高まった今が普及を進める好機とみる。9月1日からはキャッシュレス決済を使うと、1人最大5000円分のポイントが還元される「マイナポイント」事業が始まった。

内閣官房の担当者は「将来的にカードを持っていれば身分証明やほとんどの行政手続きができるようにしたい」と意気込む。

菅氏は6月の会議でデジタル化に集中的に取り組む期間を5年間と設定した。さらに追加のアイデアが出てくる可能性もあり、未来予想図の充実は進んできた。今秋以降は実行に移す段階に入る。

■使い道拡大、根強い懸念も

マイナンバーの使い道拡大には懸念もある。多様な個人情報を盛り込んだ場合、流出した場合のリスクは大きくなる。政府に情報を把握されることへの抵抗感も根強い。

象徴的だったのは政府が5月、金融機関の全ての預貯金口座とマイナンバーをひも付ける仕組みを打ち出した事例だ。災害時などに素早く現金給付する狙いだったものの「個人の所得と資産が筒抜けになる」との反対論が与党内で上がった。

所管する高市早苗総務相が「口座内容を把握するものではない」と説明しても理解は得られなかった。全口座と連動させるのは断念し、1人のマイナンバーに1口座だけ結び付けることにした。

米欧の主要国はマイナンバーのような国民識別番号制度を社会保障や納税などに幅広く活用している。

たとえば米国は新型コロナウイルスへの経済対策で、社会保障番号を使って個人の口座に現金を振り込んだ。かかった時間はわずか2週間だった。

英国には納税情報などを管理する国民識別番号がある。児童手当などの給付額は番号と所得を照らし合わせて調整する。電子政府の先端的な取り組みで知られるエストニアはほぼ全ての行政サービスに国民識別番号を使い、国政選挙もこの番号で管理する。

情報流出のリスクはある。米国では2017年に消費者信用情報会社がサイバー攻撃を受けた。氏名や住所、生年月日などに加えて社会保障番号が盗まれた。

マイナンバーの活用拡大は安全性が前提となる。国民の理解を得るには、情報を活用する民間企業も含めた対策が必要だ。高齢者などデジタル対応が苦手な人への支援体制も不可欠となる。

■〈記者の目〉デジタル化、全国統一方針で


「郵送で申請していただいた方が確実です」。4月に決めた現金10万円給付ではこんな呼びかけをする地方自治体が相次いだ。政府がマイナンバーカードを使った給付申請を呼びかけても、実務を担う自治体側の作業が追いつかなかった。

経済官庁の幹部に原因を聞くと「中央省庁の作業のしやすさを基準にデジタル化を進めたからだ」との答えが返ってきた。各行政機関が個別にデジタル化に取り組んだ結果、異なるシステムの狭間を手作業で埋める状況が生じたのだという。

新型コロナウイルス対応で問題は顕在化した。これを奇貨として行政側でも利用者目線を重視しようとの意識は高まった。政府はマイナンバーカードという共通の道具を使って、全国で統一的なデジタル化を進めるべきだ。

(藤田祐樹)




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