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週のはじめに考える リスク、ゼロにできない(2020年9月6日配信『東京新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染がこの夏、再び拡大し、一方で過剰ともみられる反応も報じられています。流行が始まって八カ月。積み重なってきた情報をもとに、コロナに対する姿勢をどうするべきか、考えてみましょう。

 東京の近郊都市では、8月初め、1人の中学生がコロナ陽性と判定されたことで、その自治体のすべての中学校の部活動は、10日間にわたり、すべて中止とされてしまいました。市の教育委員会は「念のための措置。学校休業日と重なっており、各校から異論は出なかった」と話しています。

 東京から青森県に帰省した人の家に「さっさと帰ってください」と紙が置かれた件でも、「ビラの内容はまっとうだ」と擁護する意見が多く見られました。

◆感染防止対策の副作用

 コロナ抑止を何よりも大事だととらえ、対策はやりすぎくらいでいいとする雰囲気に満ちていたのです。

 十分な補償もないまま、飲食店に休業を要請する自治体も見受けられます。そんな中、頑張って店を開けていたら、どうして休まないのか、と言われます。この半年で、多くが閉店を余儀なくされました。

 コロナ対策で、経済・社会を激変させたための副作用といえるでしょう。

 ただ、今年初めと現在とでは、違う点が多々あります。

 新型コロナウイルスの性質については、いろいろなことが分かってきました。遺伝子や感染メカニズムはかなり解明され、効果的な治療法も、試行錯誤の末、編み出されてきました。

 春の時点では「国内で最大40万人が死亡する」という見通しが流れてきました。当時は本気になって心配したものです。今それを信じる人は、そんなにいないでしょう。

 病気で苦しむことと同様に、社会的な制裁を受けることもコロナの恐怖になってきたと感じます。

◆すり鉢状の死亡率分布

 世界各国でワクチンの開発が進み、次々と大規模な臨床試験に入っています。治療薬については、魔法の弾丸といえるものはありません。それでも既存の薬の転用や、アビガン、レムデシビルの導入が進み、初期に有効な薬と、重症化した際に適した薬の使い分けができるようになりました。

 さらに最後の治療手段として、人工肺「ECMO」が、まずまずの成績をあげています。

 国内の新型コロナによる死者はこれまで1300人。さらにコロナの間接的な影響で死亡した人が数百人いるとみられます。

 それに対し、熱中症による死者は例年500人から1500人。またインフルエンザによる死者は、間接的な影響も含めた場合、年間1万人程度と考えられています。単純な比較はできませんが、桁違いに危険なものではないということは分かります。

 新型コロナウイルスは、昨年突然生まれたものではなく、米ペンシルベニア州立大の研究者によると、40年前から70年前に、コウモリのウイルスから分岐したようです。その場所はおそらく中国南部です。

 人口比の死亡率は、巨視的にみると、中国を中心とする「すり鉢」状の分布になります。感染爆発の発端となった湖北省を除く中国が最も低く、南北アメリカ大陸が最大です。遠隔地ほどウイルスが暴れているようです。

 免疫がないはずの新型ウイルスでも、過去に類似のウイルスに感染したことがあれば、それを免疫系が記憶していて、重症化を防ぐ仕組みが発動される可能性があるそうです。日本を含む東アジア、東南アジアの人々は、この恩恵を受けているのかもしれません。

 もちろん感染を防止する努力は必要です。この病気で重篤になるおそれが高い人、とくに高齢者を守るために、手を尽くさなくてはなりません。新型ウイルスにおそれを感じるのも当然です。

◆誰もが感染する可能性

 しかし「絶対に感染させない」というのは無理です。

 感染症対策に携わってきた押谷仁東北大教授は「リスクゼロを求めると、社会や経済の活動を著しく制限せざるを得なくなる。新型コロナを正しく評価し、どこまでリスクを許容するか真剣に考えていく必要がある」としています。

 規則をよく守り、行儀のいい日本人は、自粛を当たり前として受け入れます。それらは感染の拡大防止に寄与したことでしょう。半面、危険性を過大にとらえすぎると、コロナ禍からの回復を遅らせることにつながります。

 誰もが感染する可能性を持っている。そのリスクを受け入れることを前提に、社会の活気をより早く取り戻す方策も考えていきたいものです。




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Author:gogotamu2019
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