FC2ブログ

記事一覧

自民党総裁選あす告示/安倍政権の功罪総括不可欠(2020年9月7日配信『河北新報』-「社説」)

 自民党総裁選は8日、告示される。安倍晋三首相(党総裁)が築いた歴代最長政権後のかじ取り役を決める重要な局面を迎える。
 7年8カ月に及んだ第2次安倍内閣の功罪をどう総括するのか。何を引き継ぎ、変えるのか。投開票される14日の両院議員総会まで、大いに論戦を繰り広げてほしい。

 総裁選には、岸田文雄政調会長(63)、石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)が名乗りを上げた。3氏による戦いの構図がほぼ確定している。

 岸田氏は安倍首相が当初、後継と目を掛けていた人物。石破氏は安倍政権下で重職を担いながら対峙(たいじ)する関係に至った候補。菅氏は「安倍1強」と言われた長期政権を支えた女房役だ。

 総裁選の手続きに関し、党則は「特に緊急を要するとき」は党員・党友投票を省略できると定める。選出方法を一任された二階俊博幹事長は「政治の空白、停滞は一刻も許されない」として簡易方式を選択した。

 国会議員票394、都道府県連票141の計535票を巡る争いになる。党員投票が見送られた分、3氏は丁寧な政策の説明に徹し、党の地方組織は多くの党員、国民の声に耳を傾ける責任がある。

 政策上の喫緊の課題は新型コロナウイルス対策にほかならない。感染防止と経済再生の両立を図る考えは踏襲されるだろう。幅広い業界団体が注視する検査・診療体制の強化策、知事の裁量・権限を拡充する特別措置法の改正、支援事業「Go To キャンペーン」の今後の運用方法などについて、方向性が明示されることを期待する。

 安倍首相は退陣を表明した8月28日の記者会見で、北朝鮮による日本人拉致問題を解決できなかったことに触れ「痛恨の極み」と表現した。ロシアとの平和条約締結、悲願だった憲法改正は「志半ばで職を去ることは断腸の思い」と省みた。

 総理総裁を担う任期は、安倍首相が残した1年だ。一朝一夕にはいかない内政、外交の課題といかに向き合い、短期、中長期的にどういう戦略を立てているのか。国民は注視している。

 国有地が学校法人「森友学園」に格安で売却された問題は財務省の公文書改ざん、同省職員の自殺という事態も生んだ。学校法人「加計(かけ)学園」の獣医学部新設計画も含め、安倍首相、首相夫人の交友関係が絡んでいた。

 「桜を見る会」招待者への費用負担に関する法的責任の説明は消化不良のままだ。河井克行前法相夫妻の選挙違反事件で浮上した資金の出どころを巡る疑念もなお、払拭(ふっしょく)されていない。

 「安倍1強」は「政治の私物化」と批判を招き、忖度(そんたく)政治を生んだ。総裁候補者は長期政権の弊害、負の遺産に対する見解も明確に語るべきだ。



検証安倍政権原発政策/問題先送りの責任は重い(2020年9月7日配信『神戸新聞』-「社説」)

 東日本大震災で起きた東京電力福島第1原発事故は、日本が原発依存から再生可能エネルギーの普及にかじを切る契機になる可能性があった。しかし、安倍政権は原発推進の方針を維持した。国民の根強い原発不信や被災地の現状を直視せず、課題を先送りしてきた責任は大きい。

 政権の姿勢を象徴するのが2013年、五輪開催都市を決める国際オリンピック委員会総会での安倍晋三首相の発言だ。福島第1原発の汚染水漏れについて「状況はコントロールされている」と世界に向けて言い切った。

 実際には、原子炉内に残る溶融核燃料(デブリ)を冷却した汚染水は増え続け、それを浄化した処理水は120万トンを超えた。処理水を保管するタンク群の容量は、2年後に限界に達するとされる。

 処理水は海洋放出する案などが検討されているが、放射性物質トリチウムを含むため、地元漁業者などが風評被害を懸念している。当時も今も、コントロール下にあるとはとても言えない。

 原発事故から9年、福島県内の帰還困難区域では避難指示が一部解除された。だが多くの住民はいまだに帰還できず、避難生活を強いられている。除染で発生した汚染土は1400万立方メートルあり、今後も増える。国は県外で最終処分する方針を示しながら処分地は決まっていない。

 一方、第1原発の廃炉作業は高い放射線量などに阻まれて工程が遅れ、完了への道筋は見通せない。来年、2号機のデブリ取り出しに着手するものの、1号機ではデブリの現状さえ確認できていない。

 18年、4年ぶりに見直したエネルギー基本計画で政府は、原発を「重要なベースロード電源」と位置づけ、電源構成比率で20%以上とする目標を堅持した。

 それには20~30基の再稼働が必要となるが、事故後に再稼働したのは5原発9基のみだ。テロ対策施設の完成遅れなどでその後の運転停止も相次ぐ。この先も原発に依存する計画の破綻は目に見えている。

 使用済み核燃料を再処理して使う核燃料サイクル政策の行き詰まりも明らかになっている。各地の原発などには1万8千トン以上の使用済み核燃料がたまっている。再処理工場は稼働しておらず、その後に残る「核のごみ」も行き先が定まらない。

 エネルギー政策を巡っては、日本は石炭火力発電も維持する方針で、国際的な「脱石炭」の流れからも後れを取っている。

 従来の政策を踏襲するだけでは無責任と言わざるを得ない。次期政権は持続可能なエネルギー確保の展望を明確に示すべきだ。



新政権と外交 難題の解決へ総力結集を(2020年9月7日配信『山陽新聞』-「社説」)

 歴代最長政権を維持した安倍晋三首相は、「地球儀を俯瞰(ふかん)する外交」を掲げて80カ国・地域を歴訪した。国際会議で主導的な役割を果たすなど、世界の舞台で日本の存在感を示した。一方、成果が得られたテーマはごく限られており、多くの課題は新政権に引き継がれることになる。

 米国との間では、安倍首相がトランプ大統領と個人的に親密な関係を構築し、日米同盟の強化につなげた。北朝鮮の核やミサイル開発、中国による尖閣諸島への圧力など、安全保障上の問題を抱える中で、同盟の基盤強化は日本にとって安心材料になった。

 半面、日本は集団的自衛権の限定的行使を容認する安全保障法制を成立させた。米国の軍隊が危険を冒して片務的に日本を守っているとの批判が強まったことなどが背景にあったとされるが、憲法とのかかわりの議論を尽くさないまま、反対の声も強かったのに強硬に押し切った。大きな禍根を残したと言えよう。

 心配なのは、米国と中国の緊張が経済分野から安全保障分野にまで拡大しつつあることだ。米国は中国からの輸入関税の引き上げをはじめ、情報通信にかかわる中国企業の排除に踏み込む。最近は中国との経済的な分断にまで言及している。互いに領事館を閉鎖し、南シナ海では両国のにらみ合いも続いている。

 日本と中国の関係は、安倍政権のもとで修復に向かっていた。訪日外国人観光客の多くを中国人が占め、自動車をはじめ多くの企業が中国に進出。関係を深めていたが、中国発の新型コロナウイルスの世界的な感染拡大や、香港への国家安全維持法導入で波風も立ってきている。

 11月3日に迫る米大統領選の結果も踏まえながら、米中の対立に、どのような立ち位置で臨むのかが最大の懸案である。新政権は、欧州や東南アジア諸国、インドやオーストラリアなどとも連携し、国際社会の分断につなげないための手だてを模索しなければならない。

 一方、最優先課題と位置付けられた北朝鮮による拉致問題は解決の糸口さえ見つけられなかった。米国とも連携して経済制裁を強化する一方、金正恩(キムジョンウン)朝鮮労働党委員長に条件をつけずに話し合う用意があると呼びかけたが、なしのつぶてだった。北朝鮮関係の情報を共有してきた韓国とは、いわゆる「元徴用工問題」などをめぐり、関係が冷え込んだままだ。

 安倍首相は、ロシアのプーチン大統領との個人的な関係を強調し、何度も会談を重ねた。悲願の北方領土返還について、「4島返還」から「2島返還」に方針を切り替え、日ロ間の平和条約の締結も視野に入れて交渉したが、前進は見られていない。

 多くの難題が並ぶ。首脳間の個人的な関係に頼るのでなく、新政権は国の総力をあげて、解決への道筋を見いださなければならない。



[検証・安倍政治 社会保障] 「痛み」避け 安心見えず(2020年9月7日配信『南日本新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の第2次政権は、次々と政策スローガンを掲げて5度の国政選挙に勝ち続けた。

 「女性が輝く社会」「1億総活躍社会」、そして最大のチャレンジと位置づけた「全世代型社会保障」。いずれも日本の人口減少と少子高齢化によって生じる数々の問題解消につながる社会保障に関わる政策だが、成果は十分に上がっていない。

 とりわけ昨年末に自ら打ち出した、一定所得のある75歳以上の高齢者が病院の窓口で支払う医療費を1割から2割へ上げる案など、痛みを伴う改革はほとんど先送りされたまま退場する。残された課題は大きく重い。

 働く人の減少、高齢化が進むと人手不足などで生産性が落ちる。年金で質素に暮らす高齢者が増え、国内で物が売れない。若者が減れば斬新な発想によるイノベーションも起きづらく、経済成長率は低下してしまう。

 日本は現在、国内総生産(GDP)の6割を占める個人消費が伸びない半面、家計の金融資産残高は1800兆円を超す。将来に対する不安で、たとえ「持てる者」であっても老後の備えに努めるからだ。

 年金、労働、医療、介護といった社会保障制度の持続性の確保が安心を生むことで初めて、コロナ禍の中でも経済、社会が低迷から抜け出す道筋が見えてくると言っていい。そこに、この問題の重要さがある。

 2018年度に121兆円の社会保障給付費は、団塊の世代が全て75歳以上になる25年度には140兆円に上り、40年度は190兆円に膨らむ。新たな財源確保など本格的な社会保障制度改革は急務だ。

 ところが「安倍1強でなければできない」(厚生労働省幹部)と難題解決を期待された安倍政権は、強い意志を欠いた。消費税こそ2度上げたものの、常に選挙を意識し、負担増の議論を避けてきた政権は世論を最も恐れた。

 印象的だったのは昨年、公的年金の将来見通しを示す財政検証の公表が7月の参院選「前」が見込まれていたのに、結局は「後」になったことだ。選挙への悪影響を懸念して時期をずらしたと野党は反発した。

 子育て環境の整備へ幼児教育・保育無償化は始まったが、目標としていた本年度中の待機児童ゼロ達成は断念せざるを得なくなった。深刻な出生数減少には歯止めがかからず、希望出生率1.8の実現も見えない。

 一方で、非正規労働者の待遇を改善する働き方改革関連法成立は、有望な種をまいたと一定の評価ができよう。社会保障の安定のためにも、働く人の4割を占める非正規の支援などは、しっかりと引き継ぐ必要がある。







スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ