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コロナ対策パッケージ 軽症者への配慮怠るな(2020年9月7日配信『茨城新聞』-「論説」)

政府は新型コロナウイルス感染症対策パッケージをまとめた。コロナ感染者には原則として入院勧告している感染症法の運用を見直し、病床は重症者に振り向け、軽症・無症状者には自宅やホテルでの療養を徹底する。

今冬の季節性インフルエンザとの同時流行に備え、病床逼迫(ひっぱく)を防ぐ狙いだ。だが現場を抱える都道府県は「対応する法的権限が知事になくなる」(大野元裕埼玉県知事)と軽症者らのフォローが減ることによる感染再燃に懸念を強める。政府は軽症者への配慮をなお怠らないようにすべきだ。

新型コロナは感染症法上、危険度が5段階のうち2番目に高い「2類相当」に位置づけられている。感染者には医療機関への入院を勧告し、従ってもらうのを原則としているが、感染者数の増加に伴い医療機関や保健所の負担が重くなった。

各都道府県は新型コロナ感染のピークに備えた病床確保計画を策定。それによると、全国の入院患者数が最大2万780人になる推計に対し、確保の見込める病床数は2万7350床だ。症状だけでは見分けがつかないインフルエンザ患者も増えてくれば、都市部を中心にあっという間に病床の逼迫が現実化する。

コロナ感染者の8割は軽症・無症状のまま治癒し、重症化する人は2割という実態も踏まえれば、限られた医療資源を重症者に集中させる見直しには、一定の合理性がある。

しかし地方は戸惑う。埼玉県では4月、軽症とされた感染者2人が自宅待機中に容体が悪化し、相次ぎ死亡するケースがあった。これを機に同県は、軽症者を自宅ではなく原則ホテルでの療養に切り替えたが、宿泊を拒否する人が多く苦慮。今回の法的位置づけ見直しで検査や入院費用に自己負担が生じれば、感染者の協力がさらに得られなくなると心配している。

政府は地方との意思疎通を深め、それぞれの地域事情を吸い上げる態勢づくりを急いでほしい。対策強化が目的のパッケージが、逆に感染拡大につながることがあってはならない。そのためには感染者を広く、早くに見つけだし二次感染を止めることが肝要だ。パッケージに盛り込まれた、抗原簡易キットによる1日20万件の検査能力確保を着実に達成すべきだ。

またパッケージは、開発中のワクチンを来年前半までに全国民へ接種できるだけの数量を確保すると打ち出した。世界中で「争奪戦」の状況にあることから政府は、副作用による健康被害への賠償で製造販売業者に生じる損失を補償する法的措置も講じる。緊急時とはいえ、企業への異例の優遇であり国民への丁寧な説明が必要だ。

日本は英米2社からそれぞれ1億2千万回分のワクチン供給を受けることで基本合意している。ただ、いずれも実用化の実績がまだない新技術を使っており、安全性や有効性には不確定要素が多い。確保の手は尽くすべきだが、ワクチンへの過大な期待は避けたい。

新型コロナとインフルエンザの同時流行になれば、双方の患者を受け入れなければならない医療機関は、施設や人員の配置などで難しい対応を迫られる。大都市圏とそれ以外では医療現場の事情も異なるだろう。地域本位の検査、治療態勢が早急に整備できるよう、政府は都道府県との調整に努めてほしい。



コロナ対策パッケージ 軽症者への配慮怠りなく(2020年9月7日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 冬季に予想される新型コロナウイルス感染症とインフルエンザの同時流行に、どう備えるか。政府が打ち出した対策パッケージは、コロナの無症状者や軽症者に入院勧告している感染症法の運用を見直すことにした。病床を重症者に振り向け、医療体制を維持する狙いだ。だが、容体急変の事例もあったことなどから見直しには懸念の声もある。軽症者らへの配慮を怠らないようにしてほしい。

 政府は新型コロナを感染症法に基づく「指定感染症」とし、5段階の危険度で2番目に高い「2類感染症」と同等以上の扱いをしてきた。医療現場はこれに従い、感染者全員の入院を原則としてきた。このため感染者数の増加にともない、医療機関や保健所の負担が重くなっていた。入院費用は公費で負担されてきた。

限られた医療体制

 各都道府県はコロナ感染のピークに備え、病床確保計画を策定している。全国の入院患者数の推計は最大2万780人で、確保病床数は2万7350床。症状だけでは見分けのつかないインフルエンザ患者が増えれば、病床が逼迫[ひっぱく]する恐れがある。

 熊本県は400床を確保。クラスター(感染者集団)の発生で一時は病床稼働率が4割近くにまで上がったが、5日時点の入院者は57人で病床稼働率は14・3%となっている。

 対策パッケージでは感染症法の運用を改め、無症状や軽症の感染者は自宅やホテルで療養してもらうことを基本とする。既にそうした運用は始まっているが、実施を徹底するため政令を改正する。

 コロナ感染者の8割は軽症や無症状のまま治癒し、重症化する人は2割とされている。限られた医療体制を重症者に集中させ、医療機関の負担を軽減させるには、運用の見直しは妥当だろう。

全国知事会の懸念

 ただし、軽症でも容体が急変する場合があることを忘れてはならない。埼玉県で4月、自宅待機中だった軽症の2人が相次ぎ亡くなった。これを機に同県は、軽症者にも自宅でなくホテルで療養してもらうよう改めた。ところが患者に宿泊を拒否されるケースも多く、苦慮しているという。

 政令改正によって、知事に入院勧告などの権限がなくなり、軽症・無症状者の入院費用に自己負担が生じるようになれば、協力がさらに得にくくなる恐れがある。

 全国知事会は対策パッケージに対し「仮に入院勧告や医療費負担、積極的な疫学調査の適用が一律になくなれば、新型コロナ封じ込めに支障を来す」とのコメントを発表。運用見直しに、地方の意見を十分反映させるよう求めた。

 大都市部と地方では感染状況や保健所・医療提供体制も異なる。地域の実情に即した運用を可能とし、必要に応じて知事が入院勧告できる権限を残すべきだろう。

 パッケージは、簡易キットを使った検査を1日に20万件実施できる体制の整備も盛り込んだ。感染拡大を防ぐには、感染者を広く見つけ出さなければならない。検査能力の着実な強化を望みたい。

実績がない新技術

 コロナのワクチンについては、2021年の前半までに全国民に提供できる数量を確保すると打ち出した。日本は英米2社からそれぞれ1億2千万回分の供給を受けることで基本合意している。ただ、いずれも実用化の実績がない新技術を使っており、安全性や有効性に不確定要素が多い。

 副作用に対し、ワクチン製造販売業者に賠償責任が生じる場合、「国が補償できるよう法的措置を講じる」ことも決めた。世界でワクチン開発・争奪競争が激化している中とはいえ、企業への異例の優遇措置となる。政府は臨時国会などで、国民に丁寧に説明していくべきだ。





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