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自民総裁選告示に関する論説(2020年9月9日)

論戦スタート ひずみ正す姿勢乏しい(2020年9月9日配信『北海道新聞』-「社説」)

 自民党総裁選が告示され、新総裁選出が有力視される菅義偉官房長官と、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長が立候補した。

 史上最長の安倍晋三政権の路線継承を鮮明にする菅氏に対し、岸田氏はアベノミクスの軌道修正を打ち出す。石破氏は国のあり方の「グレートリセット」を掲げ、転換を図る姿勢をにじませる。

 ただ、いずれも安倍1強体制であらわになった政治のひずみをどう正すかといった視点は乏しい。

 選挙戦を消化試合にしてはならない。国民の疑問と向き合う論争を交わしてもらいたい。

 長期政権の弊害の象徴とされる森友・加計問題と桜を見る会を巡る疑惑について、菅氏は「(森友のような)文書改ざんは二度と起こしてはならない」と述べた。

 これらは自らが政権中枢で深く関わった問題である。再発防止には検証が欠かせないが、再調査には後ろ向きだ。これでは言葉だけと疑われよう。

 岸田氏は問題に直接言及せずに「説明責任を果たすのが大事」と語るのみだった。石破氏は「文書改ざんを行うような政府は変えないといけない」と強調したが、再調査などには踏み込まなかった。

 初日は立会演説会と共同記者会見だけで言い放しに終わった。今後の論戦で、政権の負の遺産についても互いの見解を明らかにし、是正策を深掘りする必要がある。

 菅氏は「現場の声に耳を傾けて大胆に実行する」と主張し、自ら手がけた洪水対策のダム事前放流を例に省庁の縦割り行政の見直しを公約に掲げた。

 だが、その上でどんな国づくりを目指すのかは明確でなかった。国のかじ取り役を担うにふさわしい骨太な施策を語ってほしい。

 岸田氏は改憲について、9条への自衛隊明記を含め安倍首相の方針を引き継ぐと明言した。

 岸田氏はリベラル色を伝統としてきた宏池会(岸田派)を率い、かつては「9条は改正する必要はない」との認識を示したこともあった。

 改憲を推進する考えに至った経緯を説明しないと、総裁選で党内の支持を集めるために迎合したと見られても仕方がない。

 石破氏は安倍政権で担当閣僚として推進した地方創生を独自色の政策に挙げた。

 地方創生は交付金で自治体を競わせ、かえって地方を疲弊させた。その反省を踏まえた地方分権の方策が求められる。



 「地方の銀行は数が多すぎる」(2020年9月9日配信『東奥日報』-「天地人」)

 政治において、選挙への出馬を表明する場での発言は極めて重い。当選を果たせば政策実現に力を尽くさなければならないし、それを怠るようだと約束が違うと批判される。

 「地方の銀行は数が多すぎる」。菅義偉官房長官は自民党総裁選への出馬を表明した2日の記者会見で、こう発言した。地銀の経営環境が人口減少や超低金利などで厳しさを増す中、再編が必要との認識を示唆したとみられる。

 菅氏は出馬表明の時点で、既に優勢が伝えられていた。新総裁は事実上、次の首相でもある。発言の影響がいずれ本県にも及ぶのではないかと考えを巡らしていたところ、日を置かずに青森銀行とみちのく銀行が経営統合を検討していることが分かった。

 両行は包括的連携の協議は進めているものの「経営統合を前提とした協議は行っていない」とコメント。とはいえ、政府は独占禁止法による合併制限を緩和する特例法を成立させるなどして再編を後押しており、県内の動きに菅氏の意向が関係しているのではと勘ぐりたくもなる。

 きのう、自民党総裁選が告示され、菅氏と石破茂氏、岸田文雄氏が立候補を届け出た。7日には立憲民主、国民民主両党などが結成する合流新党の代表選が告示された。せっかく与野党の主な顔ぶれが何人も登場したのだから、国政選挙さながらに、国民の耳目を集めるような論戦をしてほしい。



自民党総裁選告示/「やっている感」より中身だ(2020年9月9日配信『河北新報』-「社説」)

 この7年8カ月余り、政治の移ろいは何をもたらしたのだろう。

 「1億総活躍社会」など政策看板を絶え間なく掛け替え、官邸を中心に「やっている感」を醸し出して支持をつなぎ留めてきた。

 しかし、経済と雇用の安定以外に、過去の長期政権のような後世まで語り継がれる中身は思い浮かばない。

 熟議を軽んじる不寛容さのほか、官僚のすり寄り、公文書改ざん、閣僚の不祥事と首のすげ替えも目立った。

 きのう告示された自民党総裁選には、3人が立候補した。現状を続けるのか、ひずみを総括して刷新するのか、徹底した政策論争を望みたい。

 総裁選は、国会議員票と地方票の合計で争われる。菅義偉官房長官は派閥相乗りの支援を得て、優位に立つ。

 ここまでの流れをみると、いち早く勝ち馬に乗って、閣僚などのポスト配分で優遇されたいとする派閥力学が働いている。

 衆院で小選挙区制になってから人事、選挙の公認、資金まで党本部が強大な権限を握ることとなった。

 大派閥といえども、総裁を担ぐ側の「主流派」に居続けなければ冷遇されると踏んだのだろう。

 「議論の消えた党」を象徴し、「物言えば唇寒し」を地で行く展開だった。かつては、蛮勇タイプの若手がいたものだが、談合協議のような進め方を吹き飛ばす活力はどこへ行ったのか。

 3人ともコロナ対策を最優先にする。感染防止と経済を回す景気刺激策をどう両立させるのか、国民の誰もが知りたがっている。明確に語ってほしい。

 ここにきて、論争とまでは言えなくても、それぞれの政策に異なる点も見えてきた。

 経済政策で、菅氏はアベノミクスの継承をうたう。岸田文雄政調会長は、大企業と中小企業、地方との格差が広がったとして中間層への配分を提起する。

 石破茂元幹事長は個人所得の低迷に触れ、「低所得者の収入を増やす」と違いを際立たせる。

 政策の柱として、地方に目を向ける。たたき上げを自任する菅氏は、農業や観光産業を元気にしたいという。

 岸田氏は、コロナ禍をきっかけに「デジタル田園都市構想」を発表し、ITによる遠隔勤務と医療を打ち出した。

 かねて地方創生に取り組む石破氏は、東京一極集中を見直す担当大臣とともに防災省の創設を訴える。

 現政権の看板倒れとされたテーマだ。言葉だけでなく実現への道筋を示してもらいたい。熱い論争になれば地方票が反応し、全体票に影響する余地も出てこよう。

 党員・党友投票は見送られ、開かれた総裁選とは言えないものの、派閥主体の寒々しい光景と一線を画した論戦を期待する。



自民総裁選告示 政権構想、国民に明示を(2020年9月9日配信『秋田魁新報』-「社説」)

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が告示された。立候補したのは届け順に石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の3人。投開票が行われる14日の両院議員総会に向け政策、政権運営を巡って論戦が始まった。

 事実上、新首相を決める選挙。最大の争点は新型コロナウイルスへの対応だ。新型コロナをどう収束させるのか。具体的かつ実効性の高い施策が求められる。一方で経済が大幅に後退する懸念が高まっている。感染防止と経済回復の両立をどう図るかが問われている。

 安倍政権の路線を継承するのか、それとも軌道修正するのかも重要な論点だ。大企業や富裕層を除くと、アベノミクスによる景気拡大の恩恵は広がっていないとされる。雇用は増加したが非正規の比率が高く、格差拡大が進んだとも指摘される。外交・安保問題も含め、安倍政権の総括は避けて通れない。

 石破氏は「成長を実現する構造改革は道半ば」と指摘。東京一極集中の是正に関し「東京は集積の限界点を超えた。負荷を減らせば東京や地方の利益になる」などと述べ、担当相設置を掲げる。

 岸田氏は格差是正策に優先的に取り組む方針。具体的には、中間所得層への教育費支援や最低賃金引き上げなどを挙げる。省庁の縦割りを排し、ビッグデータ活用を推進する「データ庁」の創設などを提唱している。

 これに対し菅氏はアベノミクスをはじめ安倍政権の継承を強調し、「さらなる前進」を図ると訴える。本県の農家の長男という生い立ちから、地方の活力を生み出したい意向も前面に押し出している。

 菅氏が5派閥および無派閥議員の支持を取り付けて優勢だ。地方票も着実な獲得を目指している。新総裁の任期は安倍首相の残り任期で、来年9月には再度、総裁選が行われる。衆院議員の任期の来年10月までには衆院選も実施される。菅氏は新首相に就任した場合、暫定政権ではなく本格的な内閣をつくる意欲を示した。1年限りの「つなぎ」の政権にはしないとの意思表示だろう。

 安倍首相の退陣表明直後の世論調査で自民党の政党支持率、内閣支持率はともに回復した。このため、新政権発足直後の衆院解散、総選挙を期待する声が党内にある。そうした可能性を考えればなおさら、3氏の論戦を通じ、新政権がどんな考えの下に政策を実行していくか、全国民に示す大きな責任が自民にはあると言える。

 しかし、菅氏を支持する5派閥間では、大臣ポストや党内人事を巡る思惑も絡んで主導権争いが始まっている。そんな内向きの動きを見せつけられては、国民の新政権に対する期待や信頼感は損なわれかねない。3氏は派閥の論理にとらわれない国民第一の政権の姿を明示するべきだ。



事実上、首相を決定する選挙(2020年9月9日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

 自民党総裁選に予想の3氏が立候補し、午後からは立会演説会、共同記者会見も行われた。きのうのテレビのニュース番組が総裁選一色になったのは事実上、首相を決定する選挙ゆえのことだ

▼石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の三つどもえの争い。それぞれ派閥を率いる石破、岸田両氏に対し、派閥を持たない菅氏が党内5派閥の支持を得て優勢な戦いだ

▼その前日には立憲民主党と国民民主党の合流新党発足に伴う代表選が告示されている。自民党総裁選の陰に隠れて注目度がいまひとつなのは何だか気の毒だ

▼100人に届かなかった野党第1党が、合流によって約150人の規模になる。立候補した国民の泉健太政調会長(46)と立民の枝野幸男代表(56)のいずれかがその代表に就く。新党の名称を決める投票もあり、こちらからも目が離せない

▼湯沢市出身の菅氏の総裁選出馬で本県初の首相誕生が現実味を帯びている。県民の関心は高まる一方で、湯沢市では有志による銅像建立の機運が高まっているそうだ。銅像というのはいくら何でも気が早過ぎるが、矢も盾もたまらない気持ちなのだろう

▼かと思えば、佐竹敬久知事(72)は「菅官房長官が頑張っているなら、そういう気持ちもないでもない」と、来春予定の知事選について前向きとも受け取れる発言だ。「学年で一級下」の菅氏に刺激を受けたのか。歴史的な出来事に際しては、いろいろなことが起きるのかもしれない。



自民党総裁選告示 消化試合にしてはならない(2020年9月9日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選は、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄党政調会長の3人が立候補、選挙戦が始まった。14日の両院議員総会で国会議員と各都道府県連代表が投票する短期決戦だ。

 事実上の首相選びにもかかわらず、議員にも、党員にも、わくわくするような高揚感が乏しいのはなぜか。候補者が掲げる政策を吟味する前に、最大派閥の細田派はじめ、麻生、竹下、二階、石原の5派が菅氏支持へ雪崩を打ち、勝敗は決したとの空気が党内を支配しているからだ。菅氏優位の状況が一気に構築されたのは、総裁選後のポスト配分などをにらむ派閥の思惑にほかならない。

 総裁選で最大の争点にしなければならないのは、7年8カ月に及んだ「安倍政治」の総括だ。長期政権がもたらした功罪を真正面から論じ、何を引き継ぎ、どこを改めていくのか、3人の候補者が明確に提示し、議員らの判断を仰ぐ、これが首相交代の意義ではないのか。

 迷走した新型コロナウイルス感染症対策、株高、円安の効果を生んだアベノミクスの真の評価、長期間続く大規模な金融緩和の出口戦略の行方と財政健全化の展望、人口減少や少子高齢化の加速を踏まえた持続的な社会保障政策の確立や一極集中の是正…。この国は待ったなしの内政課題が積み上がっている。

「戦後外交の総決算」を掲げながら、北方領土問題や日本人拉致問題の解決は暗礁に乗り上げ、日韓関係は最悪の状態に陥っている。日米同盟は強化されたとはいえ、引き換えに高額な防衛装備購入が続き、米軍普天間飛行場の移設を巡る沖縄県との対立は解消されていない。外交・安全保障の懸案もめじろ押しだ。

 とりわけ、安倍政治の「負の遺産」に目を向けることが欠かせない。森友、加計両学園問題や桜を見る会など、行政の公正さに疑念を招きながら、安倍首相は説明責任を果たさず、官僚も公文書を改ざん・廃棄して真相解明にふたをした。

 さらに、行政監視の役割を担う国会を軽視、論戦から逃げ、三権分立が大きくゆがんだ。3候補のみならず、個々の議員はこうした過去を真摯(しんし)に振り返る必要がある。民主主義に対する見識が問われていると言っても過言ではない。

「安倍政権の継承・前進」を打ち出す菅氏に対し、石破氏は「納得と共感の政治」、岸田氏は「分断から協調へ」をそれぞれ訴え、憲政史上最長の1強政治の評価は分かれている。ならば選挙戦で徹底的に討論するのが不可欠だろう。

 だが、菅氏が国会議員票で大きく先行する状況から、自民党内の関心は、はや総裁選後の執行部体制や組閣の人事に移っている。この総裁選を「消化試合」に終わらせるのはもってのほかだ。

 今回の総裁選は、「速やかに後継を決める」ことを理由に党員投票を見送った。議員票の比重が高くなったが、多くの県連で党員の予備選挙を行うという。

 簡略型の選挙となった上、コロナ禍によって街頭演説などは実施されないとはいえ、3人が論戦を通じて、安倍政治の負の側面をあぶり出す、コロナと共生する社会、経済活動の在り方などについて骨太の論議を尽くす。それが政権与党の使命だ。議員一人一人の矜持(きょうじ)が試されている。



自民総裁選が告示 安倍政治の総括が不十分(2020年9月9日配信『毎日新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の辞任表明を受けた自民党総裁選が告示された。7年8カ月に及ぶ安倍政権の功罪を検証し、何を引き継ぎ、何を変えるのかを明確にする必要がある。

 石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3人が立候補した。

 石破氏は、国のあり方を作り直す「グレートリセット」を主張し、菅氏は安倍政権の「継承」を掲げた。岸田氏は、政治の「聞く力」の重要性を強調した。

 ただ、初日の論戦を聞く限り、安倍政権の総括をめぐる議論は不十分だ。

 菅氏は、新型コロナウイルス対策をはじめ、経済、外交政策も安倍政権を継承すると語った。

 しかし、政府のコロナ対応については国民の不満が強い。アベノミクスは成長戦略の成果が上がらず、コロナ禍の前から行き詰まっていた。「継承」というだけでは説得力を欠く。

 石破氏と岸田氏は、アベノミクスの恩恵は中小企業や地方に届いていないとし、格差是正に取り組むと主張する。菅氏は、こうした結果が出せていない点についても認識を示さなければならない。

 森友学園や加計学園の問題、「桜を見る会」などの疑惑について国民の不信は解消されていない。

 岸田氏は、政府は説明責任を十分果たしていないと指摘し、石破氏は解明に取り組む考えを示している。菅氏は、問題は解決済みとの姿勢を繰り返しているが、それでは済まされない。

 事実上の次期首相を選ぶ総裁選だ。他の候補の主張で良いアイデアがあれば取り入れ、実現を目指す前向きな論戦を期待したい。

 菅氏は党内7派閥のうち5派閥から支持を受け、圧倒的に優位な情勢だ。候補者選びは派閥の都合で進み、女性候補は出馬できなかった。

 党執行部は、「コロナ下で政治空白は許されない」として党員投票を見送った。両院議員総会を開き、国会議員と都道府県連代表による投票で選出する。国民に近い党員の声に耳を傾けるため、党員投票を実施すべきだっただろう。

 国民に開かれた総裁選にする必要がある。個別の政策だけでなく、どんな国造りを目指すのか、中長期の展望を示すべきだ。



「群して党せず」…(2020年9月9日配信『毎日新聞』-「余録」)

 「群(ぐん)して党(とう)せず」――広く交わっても党派を組まないのが「君子」だった昔である。「党」といえば国の統一を乱す「徒党」「私党」を意味した時代に、「政党」の意義を世に知らしめるのは難事だったろう

▲民撰(みんせん)議院設立建白書(けんぱくしょ)を出した日本初の政党が「愛国公党」と名乗ったのも、党が国を分断するものでも、私的利益を追求するものでもないことをアピールしたかったのだろう。政党とは公的理念にもとづく結社なのを示したのである

▲政党の英語名パーティーは部分の意味のパートに由来する。社会の一部分しか代表しない政党への徒党視は西欧にもあった。しかし、そんな「部分」相互の対抗が生むダイナミックな政治が社会全体の時代への適応をもたらしたのだ

▲事実上の次期首相選びとなる自民党の総裁選が告示され、予定通り石破茂(いしば・しげる)、菅義偉(すが・よしひで)、岸田文雄(きしだ・ふみお)の3氏が立候補した。また立憲民主、国民民主などが結成する合流新党の代表選も泉健太(いずみ・けんた)、枝野幸男(えだの・ゆきお)の両氏の間で争われ、10日投票という

▲誰が選ばれるかは、それぞれの党内事情でほぼ決まっている選挙だ。だがことは好悪や利害がものをいう徒党ではなく政策や理念が問われる公党のトップ選びである。国民もここは各氏の経綸(けいりん)を聞き、後々のために心に留めておこう

▲ともあれポスト安倍政権の新たな政治のステージを構成する各「部分」が決まっていくこの1週間となる。それぞれの投票権を行使する議員らには、あらためて国民に対する責任を胸に呼び起こしてほしい。



自民総裁選告示 危機乗り越える戦略を論じよ(2020年9月9日配信『読売新聞』-「社説」)

 感染症がもたらす危機をどう克服し、新たな国家像を描くか。経済と社会の再生に向けて、日本が進むべき道を明示しなければならない。

 自民党総裁選が告示され、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長、石破茂元幹事長の3氏が立候補した。14日の両院議員総会で、新総裁が選出される。

 菅氏は党内5派閥の支援を取り付け、優位に立っている。政策が継承されるという安心感が広い支持につながっているのだろう。

 3氏は安倍政権の政策を総括した上で、何を発展させ、どう修正するかを議論してほしい。

 安倍政権の最大の成果は、政治を安定させたことだ。後継政権も強固な政治基盤を築き、果断に政策を遂行すべきである。

 新型コロナウイルスの感染拡大を防ぎ、日常生活に安心を取り戻すことが喫緊の課題だ。

 菅氏は演説で、来年前半までに全国民分のワクチンを確保するとし、「メリハリの利いた対策を行う」と語った。岸田氏はPCR検査を拡充するとし、石破氏は特別措置法の早期改正を訴えた。

 感染症が流行する冬に備え、対策を徹底する必要がある。感染状況に応じて、機動的に対処する危機管理能力が問われよう。

 同時に、新政権が早急に取り組むべき課題は、経済を中長期的な安定成長に導くことだ。国内総生産(GDP)成長率は戦後最大の落ち込みとなり、企業の倒産や失業者の増加が懸念されている。

 当面は雇用維持や事業継続の給付金などでしのぐにしても、経済を力強く底上げするには成長戦略が不可欠である。

 菅氏が経済最優先を主張するのは評価できるが、経済成長を促す施策は安倍政権から引き継ぐものが目立ち、物足りない。

 菅氏は行政のデジタル化推進、岸田氏は「データ庁」新設を提案している。日本が後れを取るデジタル化への対応は急務だろう。

 3氏とも地方を重視し、岸田氏は格差の是正、石破氏は地方創生を掲げている。地方活性化は長年の懸案だ。困難を打破する具体策を示すことが重要である。

 米国と中国の覇権争いが深刻化し、国際情勢が不透明感を増す中で、外交や安全保障政策の論議が深まらないのは残念だ。

 長く外相を務めた岸田氏、安保政策に精通する石破氏に比べ、菅氏の外交手腕は未知数である。

 日米同盟の強化やアジア外交の将来展望について、大局的に論じてもらいたい。



自民総裁選の告示 日本の針路を示す論戦を(2020年9月9日配信『産経新聞』-「主張」)

 ■当たり障りのない話はご免だ

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3人が立候補を届け出た。

 394票の国会議員票と141票の地方票(都道府県連各3票)の計535票が14日に投開票され新しい総裁が決まる。事実上、首相を選ぶ選挙である。

 国会議員の支持動向などから菅氏優勢が伝えられる。そうであったとしても、首相の座を目指す候補らが本格的な政策論争を行い、日本の針路について語り合うならば、意義は大きい。

 ≪「世界が関心」踏まえよ≫

 新型コロナウイルス禍のため党主催の全国遊説は見送られる。3候補はネットや公開討論会、テレビ出演、個別の遊説などを通じて発信に努める必要がある。

 7年8カ月余続いた安倍第2次政権の次を担うのは誰か。安倍首相が国際社会の中で重んじられたリーダーだっただけに、今回の総裁選は日本のみならず世界からも関心を集めている。

 3候補が当たり障りのない話に終始しては時間の無駄だ。世界で高まった日本の存在感を損なってもいけない。

 なぜ自分が政権を担うべきなのか。時局に対する問題意識と政策をしっかりと説く候補が現れれば内外で評価が高まり、党の活力も増すだろう。

 アベノミクスをはじめとする「安倍政治」を見直すのか。継承するなら、それをどのように広げていくかが問われている。

 菅氏は、安倍政治の「継承と前進」を掲げている。官房長官として支えてきたのだから当然といえるが、具体的にどの政策分野で一層の前進を図るかを明快に語るべきだ。与党の政策責任者として政権を支えてきた岸田氏は「分断から協調へ」を掲げるが、どこが分断を招き、どのように改めるのか詳しく説かねばなるまい。

 石破氏は「納得と共感。」をスローガンにした。「モリ・カケ」問題などへの安倍政権の姿勢に批判的だが、政府・自民党がさらにどのような対応をとるべきかを具体的に説いたらどうか。政策転換が必要な点があれば、代わるべき政策の提示が求められる。

 新政権が取り組むべき政策課題は多い。新型コロナ感染症の問題はその最たるものだ。

 総じて安定した国政運営をしてきた安倍政権だったが、コロナ問題では批判が集まった。

 医療や検査態勢の充実は3候補に共通するが、石破氏は新型インフルエンザ等対策特別措置法の早期改正を唱えている。

 8月28日に安倍政権は、今冬の新型コロナとインフルエンザの同時流行に備えた対策などを打ち出した。さらなる対応についても徹底した論議を求めたい。新型コロナ問題の行方は、厳しい状況にある経済の復調や来年の東京五輪・パラリンピック開催にも大きく影響する。

 ≪新型コロナをどうする≫

 平成29年の衆院選で自民党が訴えた北朝鮮の核・ミサイル問題と少子高齢化という国難は、いまだに突破できていない。

 菅氏は国の基本として「自助・共助・公助」を掲げた。特に喫緊の課題である社会保障改革でどこに力点を置くのか。

 外交安全保障では、日米同盟の強化と対中政策、拉致問題が重要となる。

 中国は香港や新疆ウイグル自治区で弾圧を続け、台湾に圧力をかけている。南シナ海では人工島の軍事化を進め、日本から尖閣諸島を奪おうとしている。米国などは全体主義の中国の覇権志向を抑えようと動き出している。東西冷戦終結以来、およそ30年ぶりの国際情勢の大転換が始まっている。

 日本は、防衛力の充実と日米同盟の強化を進め、対中融和政策から転換すべきだが、3候補とも外交安全保障をめぐるグランドデザインを示していない。

 石破氏は防衛通とされる。菅氏は官房長官として「外交の重要な案件に常に関与してきた」と語った。岸田氏は外相を長く務めた。日本の目指す国際秩序についてもっと語らなくてはだめだ。

 憲法改正は自民党の党是である。3候補に聞きたいのは憲法改正の実現に向けた取り組みだ。国民投票法改正案は6国会にわたり継続審議となっている。10月にも召集される臨時国会で成立させる決意を示してほしい。



自民総裁選告示 国の在り方きちんと示せ(2020年9月9日配信『新潟日報』-「社説」)

 事実上、次の首相を決める選挙である。3氏には政権を担う土台となる国の在り方についてビジョンをきちんと示し、新しい時代をどう築くのかを語ってもらいたい。

 安倍晋三首相の突然の辞任を受けた自民党総裁選が8日告示され、予定通り、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長が立候補した。

 安倍政権を継承するかどうかが争点となる。

 今回の総裁選は、通常の選挙で行われる党員・党友投票を省略した簡略方式で、14日に投開票される。国会議員票394、地方票141の計535票で争われる。

 党内5派閥の支援を受ける菅氏が依然として有利な情勢にある。石破氏と岸田氏が巻き返しを図るのか、菅氏が地方票も含め圧倒的な支持を得るのかも焦点となろう。

 論戦で注目したいのは、新型コロナウイルス禍など目前の課題への対応だけでなく、目指す国の将来像だ。国をどう導こうと考えているのか。骨太の論戦を展開してもらいたい。

 告示を受けた演説会と記者会見で、石破氏は「グレートリセット」として社会、経済構造の変革を訴えた。東京一極集中を是正することで地方に雇用をもたらすとし「この国の設計図を書き換えたい」と強調した。

 菅氏は「安倍政権の経済政策は私が引き継ぐ」と述べ、アベノミクスの継承を前面に打ち出した。中央省庁の縦割り打破や、ウイルス禍を踏まえたデジタル化の促進策として「デジタル庁」の新設を表明した。

 岸田氏はデジタル時代に向けた成長戦略の再構築を課題に挙げ、「デジタル田園都市構想」としてビッグデータを活用した施策に取り組むとした。

 石破氏が国の骨格を変えると強調したのに比べ、菅氏と岸田氏は守りの印象が強い。

 とりわけ菅氏は2日に行った出馬会見とほぼ同じ内容にとどまり、資料に目を落として実績をアピールする姿勢が目立った。リーダーを目指すなら「菅カラー」をもっと見せてほしい。

 演説会で石破氏は「真実を語らない政治家を国民は信じない」として信頼回復の必要性を訴え、岸田氏は「国民の声を聴く力を政治に取り戻す」と繰り返し強調した。

 首相はじめ政権がこれまで、森友、加計学園や「桜を見る会」を巡る疑惑に十分な説明責任を果たしてこなかったことを意識したのだろう。

 菅氏は「国民から信頼される政府、国民のために働く内閣をつくりたい」と語った。

 国民の信頼を得るというのなら、残る疑念への説明責任をきちんと果たすことが不可欠だ。

 論戦は始まったばかりだ。経済、社会保障、外交・安全保障などを含め、もっと議論を深めるよう求めたい。

 地方からは新総裁の「正統性」を問う声も上がる。そうした懸念を払拭(ふっしょく)するためにも、新たなリーダー選びにふさわしい選挙戦としなければならない。



自民党総裁選告示(2020年9月9日配信『福井新聞』-「論説」)

国民の声をすくい上げよ

 事実上の新首相選びとなる自民党総裁選がスタートした。ただ、原則である全国一斉の党員・党友投票は実施されず、選挙期間も投開票日を含め7日間しかない。加えて、候補者の政策を吟味する前に、最大派閥の細田派をはじめ、麻生、竹下、二階、石原の主要5派閥が菅義偉官房長官支持へ雪崩を打ち、勝敗は決したも同然の状況だ。

 議員や予備選が行われる党員はまだしも、投票権のない国民に至っては高揚感などまるでないのが現状だろう。8日に行われた立会演説会や共同記者会見を視聴した人はどれほどか。自民党内の関心は、はや総裁選後の人事に移っているという。これでは盛り上がらないのも当然だ。安倍晋三首相の突然の退陣表明という緊急時だからこそ、自民党はこの総裁選を「消化試合」に終わらせてはならず、国民の声をすくい上げる努力を求めたい。

 総裁選には石破茂元幹事長と菅氏、岸田文雄党政調会長の3人が立候補した。「安倍政権の継承・前進」を打ち出す菅氏に対し、石破氏は「納得と共感の政治」、岸田氏は「分断から協調へ」をそれぞれ訴え、憲政史上最長の安倍「1強」政治への立ち位置は分かれている。ならば選挙戦では7年8カ月に及んだ安倍政治を総括し、徹底的に討論を尽くす必要がある。

 後手後手に回ったと評される新型コロナウイルス対策をはじめ、株高・円安を生んだアベノミクスの功罪、人口減少や少子高齢化を踏まえた社会保障政策、地方創生と東京一極集中の是正など待ったなしの課題が山積している。

 暗礁に乗り上げた北方領土や日本人拉致問題、最悪の状態にある日韓関係、強化の一方で高額防衛装備品の購入などが続く日米同盟、米軍普天間飛行場の移設を巡る沖縄県との対立など、外交・安全保障の懸案もめじろ押しだ。

 とりわけ、森友、加計学園問題や桜を見る会など安倍政治の負の側面にも向き合う必要がある。さらに、行政監視機能を担う国会の軽視、公文書の改ざん・廃棄といった民主主義の根幹を揺るがした問題については3候補のみならず、個々の議員、党員も真摯(しんし)に振り返るべきだろう。

 1955年の自民党立党宣言の書き出しには「政治は国民のもの」とあり、現行綱領もこれを引き継いでいる。今回の総裁選では、立党の原点である国民目線をいま一度確認しなければならない。簡略の選挙となった上に街頭演説なども行われないというが、3候補にはこの視点に立った骨太の論戦が求められている。派閥の主導権争いなどに終始するなら、次期衆院選での国民の反発は不可避と覚悟すべきだ。



総裁選スタート/安倍政治の総括が不可欠(2020年9月9日配信『神戸新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の後任を決める自民党総裁選がきのう告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長が立候補を届け出た。

 実質的に新しい首相を選ぶ選挙である。待ったなしの新型コロナウイルス対策だけでなく、7年8カ月続いた「安倍政治」の何を継承し、何を見直すかが焦点だ。3氏は政策論争に真摯(しんし)に臨み、自らが目指す政治の姿を明確に語らねばならない。

 主要5派閥の支持を得て優位に立つ菅氏は、経済政策アベノミクスをはじめとする安倍路線の継承と前進を掲げた。象徴的だったのは、共同会見の冒頭で「卓越した指導力と判断力に賛辞を送る」と首相を称賛した場面だ。官房長官として政権を支えた手腕の自画自賛に等しい。継承ありきで「1強政治」の問題点に向き合えるのかが懸念される。

 首相と距離を置いてきた石破氏は「納得と共感の政治」を掲げた。「真実を語り、政府を謙虚に機能させ、公正な政策を実行する」とし、安倍路線を転換する「グレートリセット」を訴えた。

 外相や政調会長として首相を支えた岸田氏は「分断から協調へ」を唱え、「聞く力」の重要性を強調する。安倍政権の経済、外交政策を評価した上で、格差の拡大やデジタル化の遅れを指摘した。

 財政健全化や社会保障改革など安倍政権が先送りしてきた政策に関する議論も深める必要がある。

 安倍政権後半では、森友・加計学園や桜を見る会を巡る疑惑や公文書の改ざんなどが発覚し、政治不信を広げた。長期政権のひずみを是正し、国民の信頼を取り戻すのは次期政権の使命といえる。

 石破氏は「真相解明のため再調査が必要」とし、岸田氏も「話を聞くことは当然する」とさらなる説明を求める考えを示した。

 これに対し、菅氏はいずれの問題も「既に結論が出ている」とし、官房長官会見と同じ答えを繰り返した。これで国民との関係を築き直すことができるかは疑問である。

 党執行部にも、その危機感は薄いようだ。総裁選を簡略化し、党員投票を見送った結果、地方票は全体の4分の1に圧縮された。多くの都道府県連が投票先を決めるために予備選を実施するが、その結果が正確に反映されるかは不透明だ。

 100万人超の党員の声を聞くどころか、われ先に「勝ち馬」に乗り次期政権での主導権争いに明け暮れる。国民不在の「派閥の論理」にも長期政権のおごりが表れている。

 安倍政治の功罪に向き合い、民意とのずれをただす。今回の総裁選の意義はそこにある。「国民政党」を掲げる自民党の真価が問われる。



自民党総裁選告示 国民のための政策競え(2020年9月9日配信『中国新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の後任を決める自民党の総裁選が、きのう告示された。石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長が立候補した。14日に新しい総裁が選ばれ、さらに16日に開かれる臨時国会で新首相が決まる見込みである。

 全国一斉の党員・党友投票は見送った。多くの都道府県連が予備選挙を行うとはいえ、大勢は国会議員の票で決する。五つの派閥が支持を決めた菅氏の優位は動きそうにない。

 政策そっちのけで勝ち馬に乗ろうとする派閥の動きを見るとポスト狙いの打算や領袖(りょうしゅう)によるボス政治がよみがえったようだ。派閥の弊害から脱するため政策集団に生まれ変わったとの党の主張が色あせて見える。

 主流派にならなければ、組閣や党人事で干されてしまう。そんな懸念が広がっているのだろう。衆院選が小選挙区中心になって、公認権や資金を握る党本部の力が強大になったことの裏返しかもしれない。自由闊達(かったつ)に意見を戦わせる場とすべきなのに、消化試合になりそうだ。せめて各候補は、公開討論会などを通じて国民のための政策論争を展開してもらいたい。

 石破氏は「納得と共感」をスローガンに、防災省新設や内需拡大などを目指す。官房長官として安倍政権を支えてきた菅氏は、路線の継承と前進を主張。岸田氏は「分断から協調へ」を唱え、地方復権やソフトパワー外交などを訴えている。

 国民が聞きたいのは、安倍政権ができなかった課題にどう取り組むかだろう。アベノミクスで株価は高騰したが、地方や中小企業にもたらされる「トリクルダウン」は実現しないままだ。恩恵は主に富裕層にしか届かなかったのではないか。

 コロナ禍で傷ついた経済を立て直し、幅広い国民に豊かさを実感してもらうため、安倍政権とは違うどんな政策を打ち出すつもりか。石破、岸田両氏は具体的な道筋を示してほしい。アベノミクスの継続を訴える菅氏には、好景気でもできなかったのに、どうやって可能にするのか。丁寧な説明が求められる。

 地方に住む私たちには、道半ばの地域活性化も急いで進めてもらいたい。石破氏は東京一極集中是正担当大臣の創設、岸田氏はデジタル技術により地方の暮らしの利便性向上や経済再生を目指す「デジタル田園都市国家構想」推進を掲げる。菅氏は、頑張る地方の支援を訴えているが、一極集中をどう是正するかについての考えも聞きたい。

 菅氏には自らも関わってきた安倍政権の負の政治遺産にどう向き合うかも問われる。公文書の隠蔽(いんぺい)や改ざんをはじめ、官僚の不祥事が相次いだ。国民ではなく、官邸を見て仕事するようになった現状のままで良いはずはあるまい。政権への忖度(そんたく)という悪弊をどう断ち切るのか。明らかにすべきである。

 安倍首相は、森友・加計学園問題や桜を見る会など政権の私物化疑惑も国民に生じさせた。本人が十分説明せずに退くのであれば、後を継ぐ人の対応も問われるべきだろう。第三者機関による調査などに踏み出せるか国民の厳しい目が注がれよう。

 限られた時間しかないとはいえ、残された課題や負の遺産にどう対応するか。自民党として国民の前で議論する責任があることを忘れてはならない。



グレート・リセット(2020年9月9日配信『中国新聞』-「天風録」)

 月に7日以上も深夜勤務をこなし、休みは2日しかない。それでも収入は5年前より25%も減った―。コンビニ店主の苦しむ姿がまたも浮き彫りになった。公正取引委員会が全国調査であぶり出した

▲人手不足や人件費高騰でアルバイトを雇う余裕はなく、負担を背負い込まざるを得ない。6割以上が「つらい」と答える働き方は尋常ではない。24時間営業を本部が無理強いすれば、独禁法違反になりうるとの見解を公取委が示したのもうなずける

▲コロナ禍も影を落とす。都心や観光地では、売り上げが消えた店も多い。便利な生活を支えてきた仕組みが限界を迎えているのかもしれない。これまでのやり方を見直す時だろう

▲「グレート・リセット」という言葉が注目されている。コロナ危機は、世界をつなぐグローバル経済のもろさを見せつけた。子どもから教育を奪い、医療体制の不備もあらわにした。古い社会経済の仕組みをいったん白紙に戻し、公正で持続可能な未来の構築につなげる考え方だ

注;石破氏=石破茂元幹事長は党本部で出陣式を行い、「正しい歴史認識に基づきグレートリセット。日本を作り変えていく。全身全霊を尽くして、この戦いに挑みたい」と語った。

▲きのう告示された自民党総裁選でも口にする候補がいた。7年8カ月もの安倍政治のどこに限界があったのか。何をリセットしなければならないのか、示してほしい。



自民総裁選告示 安倍政権総括と政策論争 不可欠(2020年9月9日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の後継者を選ぶ自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏が立候補を届け出た。次の首相を事実上決める選挙となる。

 14日に開票され、選挙期間は投開票日を含めて7日だ。短い期間とはいえ、自民は選挙を通じて7年8カ月に及んだ長期政権の功罪を総括しなければならない。その上で候補者はそれぞれが描く国の将来像を明確に提示し、活発な政策論争を繰り広げてもらいたい。

 今回の総裁選は、国会議員票394と、47都道府県連に3票ずつ配分された地方票141の計535票を3氏が奪い合う形となる。党内の5派閥の支持を得る菅氏は無派閥議員約30人の支援も受けリードする。石破、岸田両氏が追う展開で、党員への働き掛けを強めている。

 菅氏優勢の構図は、菅氏の正式な出馬表明がない段階で主要派閥が支持を打ち出して固まった。旧態依然の「派閥政治」の動きと言わざるを得ない。さらに全国一斉の党員・党友投票は首相の突然の辞任表明に伴う総裁選のため「政治の空白は許されない」として見送った。これまで国民を軽視した内向きの姿勢が目立つだけに、告示後、3氏には自身の主張を分かりやすく国民に発信する責務がある。

 選挙では、安倍政権の基本路線を継承するかどうかが争点となる。菅氏は「安倍政権の取り組みをしっかり継承する」と強調している。政権を官房長官として支えており、継承は既定路線なのだろう。加えて中央省庁の縦割り打破や規制改革に取り組む姿勢も示すが、独自色は不鮮明だ。

 対して、石破氏はスローガンに掲げた「納得と共感」が政治には必要だと呼び掛ける。岸田氏は「分断から協調へ」を唱え「トップダウンとボトムアップを使い分ける」と訴える。2氏共に、「安倍1強」体制で浮き彫りになった異論を許さない強引な政治手法を念頭に置いて主張しているように映る。

 安倍政権の経済政策についても受け止めに違いがある。菅氏は「アベノミクスを引き継ぎ、さらに前に進めたい」と言明する。石破氏は地方創生担当相の経験を踏まえ東京一極集中の是正を前面に出す。岸田氏は「成長の果実が中小企業、地方に分配されていない」と格差是正を求める。各候補とも明快な主張を打ち出し、従来の政策を徹底的に検証する必要がある。

 次のリーダーが誰になっても新型コロナウイルス対策に全力を尽くさねばならない。感染拡大防止と社会経済活動の両立を目指すという難題だ。迅速かつ状況に応じた柔軟な対応が求められる。同時にコロナ後に目指す社会像も示すべきだ。

 今回、全国一斉の党員・党友投票は見送られたが、多くの都道府県連が党員対象の予備選を実施する。自民には、党員の声に十分に耳を傾け、最大限開かれた選挙とするよう求めたい。



居抜きの功罪(2020年9月9日配信『高知新聞』-「小社会」)

 和菓子やカレーで有名な東京の中村屋の創業者は実業家、相馬愛蔵・黒光夫妻だ。なぜ中村屋なのか。120年近く前、東京帝大前にあった同名のパン屋を店舗だけでなく、かまどや職人まで居抜きで買い取ったからだという。

 なかなか繁盛していた店なので屋号も変えなかった。前の経営者は米相場で失敗。相馬夫妻はそれを教訓に「営業が相当目鼻のつくまで衣類は新調せぬこと」(石川拓治著「新宿ベル・エポック」)といった地道な方針を立てた。後の隆盛を考えても、居抜きの成功例に違いない。

 ビジネス本には、居抜きの功罪が書いてある。初期投資が少なく、営業を早く開始できる。その半面、集客しにくい立地や設備のトラブルなど前の経営者が失敗した理由がある。まずその理由を明確にしておくことが大事という。

 こちらの経営者交代はどうなるだろう。きのう始まった自民党総裁選。大半の派閥がついた菅官房長官の優位が伝えられる。長く安倍政権の中枢にいたから当たり前かもしれないが、目立つのは「継承」の2文字だ。

 ただ、1強政権には「負の遺産」といわれる要素がある。お友達重用の側近政治。首相官邸に人事権を握られた官僚の忖度(そんたく)。あまりにも継承をいわれると、そんな権力構造まで居抜きをするのではと心配する。

 久しぶりの経営者交代だ。「前の店」の教訓も正面から見据え、次に生きるような論戦を聞いてみたい。



自民総裁選告示 継承と改革、論戦で示せ(2020年9月9日配信『西日本新聞』-「社説」)

 幕が上がったら、もうドラマは終わっていた-そんな総裁選にしてはならない。正々堂々の政策論争で次の首相選びに直結する新総裁を選出できるか。政権党の真価が問われよう。

 安倍晋三首相の後継を選ぶ自民党総裁選が告示され、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏が立候補を届け出た。最長政権の何を引き継ぎ、どこをどう変えるか。論戦で明らかにしてほしい。

 「自助・共助・公助」を掲げて安倍路線の「継承」を目指す菅氏に、安倍首相に批判的な立場で「納得と共感」をキャッチフレーズとする石破氏、首相の経済政策「アベノミクス」の成果を土台に「分断から協調へ」を唱える岸田氏が挑む構図だ。

 ところが、既に「勝負あった」などと永田町では公然と語られている。党内5派閥の支持を取り付けた菅氏の圧倒的な優位は動かないというのだ。

 「政治空白を避ける」という大義名分により国会議員票と同数を持つ党員・党友投票が省かれたことで、派閥次元の「数の力」がものをいった。そう表現できる。うんざりするような「派閥政治」の復活である。

 この状況を是とするか非とするかも「もう一つの争点」と言っていい。派閥の合従連衡で事前に新総裁が事実上決まるようであれば、総裁選の意義と価値が根本から問われるからだ。

 地方重視を掲げる石破氏は、東京一極集中を是正する担当相を置くという。自然災害の防止へ「防災省」の創設も訴えている。いずれも重要な政策課題だが、「屋上屋を架すのでは」という懸念も指摘される。ぜひ論戦で中身を深めてほしい。

 官房長官として首相を支えた菅氏が「安倍政治の継承」を訴えるのは理解できるが、それだけでは物足りない。携帯電話料金の値下げや地方銀行再編といった持論の詳細な説明とともに、長期政権の弊害や副作用をどう認識しているのか聞きたい。

 岸田氏は、経済成長の果実を中間層や中小企業へ手厚く分配する一方、先端技術で地方活性化を図る「デジタル田園都市構想」を提唱している。大平正芳内閣が打ち出した「田園都市構想」の現代版という。財源を含め具体像を示してほしい。

 誰が総理・総裁になってもコロナ禍対応の優先度が高いのは言うまでもない。「特別措置法を収束前に改正する」(石破氏)「社会経済活動との両立を目指す」(菅氏)「社会と経済を回すPCR検査態勢の充実」(岸田氏)など主張はそれぞれだが、克服への確かな道筋を描く総裁選ともすべきである。



「相」の字は多くの意味を持っている。手元の辞書によれば…(2020年9月9日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 「相」の字は多くの意味を持っている。手元の辞書によれば「くわしく見る、うらなう」がその一つ。「手相」「観相」などに使われる

▼新聞でも毎日、「相」を目にする。大臣のことである。この字は「係り、主任者」の意でも用いる。「財務相」「環境相」とは、各分野の担当責任者を表すことになる

▼総理大臣は「首相」である。「相」は「補佐する」の意味も含む。首相とは中国では古来、君主を助けて政治を行う側近を指した。主権在民の今日に当てはめれば国民に仕え、国民の幸福のために汗するリーダーのこと、と言えよう

▼安倍晋三首相の辞任表明を受けて昨日、自民党の総裁選が始まった。3氏が立候補したが、どうやら後継総裁は自民党内の相談で大勢が決まっているそうだ。この言葉に「相」が使われているのは、「互いに」の意味があるため。なるほど、党内の派閥が互いに損得を計算した結果のようにも映る

▼「相好を崩す」とは表情を緩めて顔をほころばせること。思惑通りに事態を進めて、「相棒」同士ほくそ笑んでいる国会議員も多いだろう。けれど、政策論議を望む党員や国民との感情の「相違」は広がってはいないか

▼かつて自民党は、密室で人事などを進める政治が批判された。その再現のような古い体質もこの漢字で言い表せる。「相」は動詞の前に置いて、語調を強める際に使うそうだ。「相変わらず」というように。



自民党総裁選告示(2020年9月9日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 1996年11月の大相撲九州場所は、史上初の5人による優勝決定戦となり、当時大関の武蔵丸が曙や若乃花らとの争いを制して優勝した。振り返ると、当時は「絶対王者」不在の「戦国時代」が続いていた

◆5人の争いといえば、安倍晋三氏ら5人が立候補した2012年の自民党総裁選を思い出す。1回目の投票では決まらず、安倍氏と石破茂氏による決選投票の末、安倍氏が当選した。あれから8年。絶対王者だった安倍氏の後任を選ぶ自民党総裁選がきのう告示され、石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)が立候補を届け出た

◆自民が野党だった8年前と違い、今回は総裁選に勝てば首相の座も約束された「総理総裁選」。なのに候補者は少なく、派閥の論理がうごめく一昔前の争いに映る

◆江戸末期から明治にかけての禅僧で歌人の天田愚庵(あまだ・ぐあん)に〈新玉(あらたま)の年は龍年(たつどし)立ててみよ其(その)名(な)に負へる猛(たけ)き政府を〉という一首がある。1904年の辰年(たつどし)の正月に詠んだ歌。この年は日露戦争が始まる年であり、「えとの龍のように強い政府を望む」と解釈される

◆時代は変わって今、日本はどうだろうか。戦争は不要だが、コロナ禍を乗り越え、国際社会でもリーダーシップをとれる力強い政府であってほしいと思う。その鍵を握る新総裁。3候補の主張に耳を澄まそう。(義)



自民総裁選告示 「派閥」より論戦で判断を(2020年9月9日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相の辞任表明に伴う自民党総裁選が8日告示され、石破茂元幹事長(63)、菅義偉官房長官(71)、岸田文雄政調会長(63)の3氏が立候補を届け出た。14日の投開票に向け、選挙戦がスタートした。

 党内7派閥のうち5派閥が菅氏支持を表明したため、告示前から「勝負あり」の様相を帯びるが、次期首相に就く新総裁が内向きの「派閥の論理」だけで決まるようなことがあってはなるまい。

 7年8カ月の安倍政治の功罪を明確にした上で、何を継承し、どこを改めるのか。コロナ後も持続可能な社会をどう描き、つくり上げるのか-。3氏は日本の進むべき針路を真正面から論じて、議員らの判断を仰いでもらいたい。

 最大の争点は、安倍政権の基本路線を継承するかどうか。「継承・前進」を明確に打ち出す菅氏に対し、石破氏は「納得と共感の政治」、岸田氏は「分断から協調へ」を訴え、安倍政治との距離の取り方は分かれる。

 告示後の所見演説で、政権と距離を置いてきた石破氏は「グレートリセット」を掲げ、「国の在り方を見直す必要がある」と主張。「防災省」の創設や地方創生への再挑戦を訴えた。

 菅氏は「安倍首相の取り組みをしっかり継承し、前に進める」と改めて強調した上で、コロナ禍で立ち遅れが目立った行政のデジタル化を担う「デジタル庁」を新設すると表明した。

 岸田氏も「デジタル技術とデータの活用で新たな成長エンジンをつくり、地方活性化にもつなげる」などと主張する一方で、「国民の声を聴く政治を取り戻す」と語った。

 持続可能な社会保障制度や財政再建の議論も進んでおらず、憲法改正や外交問題など課題は多岐にわたる。論戦を通じて具体的な道筋を示してもらいたい。

 森友、加計の両学園問題、「桜を見る会」を巡る疑惑への対応も争点となる。安倍首相は一貫して関与を否定してきたが、国民の納得は得られていない。辞任でうやむやにするのでは、新政権の信頼も揺らぎかねない。再調査の検討や政策決定、文書管理の在り方の検証など、自身の政治姿勢を示す必要があろう。

 今回の総裁選は全国一斉の党員・党友投票を見送り、国会議員394票、地方141の計535票で争う。国民世論に近いとされる地方票は全体の約4分の1で、47都道府県連が各3票を投じる。

 菅氏が国会議員票で大きく先行する状況から、自民党内の関心は既に執行部体制や組閣の人事に移っているようだが、総裁選を形だけのセレモニーで終わらせてよいのか。

 総裁選での論戦を受けて、議員一人一人、そして各都道府県連も「この政策、政治姿勢に賛同するからこの候補者に投票する」というそれぞれの判断を国民に明確に示してほしい。それが次期首相選びを任せられた政権与党の責務である。



政治にモヤモヤは付き物という声も聞こえてきそうだが、それでいいのか(2020年9月9日配信『熊本日日新聞』-「新生面」)

 本紙にも度々登場する言い回しだけになるほど、と思ってしまった。「日本最大級」は便利な言葉、と歌人の穂村弘さんは言う。「日本最大」とは言い切れないが、それに近いという意味で使われる

▼その背後には「『日本最大』って断言してるわけじゃないんだから、万一違ってても文句言うな」という意識が感じられる、と穂村さん。「級」をつけることで他者の突っ込みに対しバリアーを張っている、と。何とも耳の痛い指摘である

▼「手打ち風」の「風」や「自分的」の「的」も同じだという。決して言い切らずモヤモヤ感が残る。だが、そうした感覚は言葉遣いに限らぬようだ。きのう告示された安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選にもモヤモヤ感がつきまとう

▼3氏が届け出たが、結果は初めから見えているよう。全国一斉の党員・党友投票を見送り、国会議員票の割合を高めた上に、党内7派閥のうち5派閥が菅義偉官房長官の支持に回った。早くも2位争いが焦点ともいわれ、鼻白む思いがする

▼モヤモヤといえば、森友、加計両学園や桜を見る会、党本部から前法相側への1億5千万円等々、安倍政権が抱える数々の疑惑、疑問も残ったままだ。首相本人はもう説明する気はなさそうだし、菅氏も「既に結論が出ている」とつれない

▼政治にモヤモヤは付き物という声も聞こえてきそうだが、それでいいのか。次の総裁・首相がまずやるべきことは、安倍政権の検証、総括と、皆が納得できるような説明である。無理だろうけど…。



自民党総裁選告示
2020年9月9日


◆「消化試合」に終わらせるな◆

 安倍晋三首相の後継を決める自民党総裁選は、石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄党政調会長の3人が立候補、選挙戦が始まった。14日の両院議員総会で国会議員と各都道府県連代表が投票する短期決戦だ。

 事実上の首相選びにもかかわらず、議員にも、党員にも高揚感が乏しい。政策を吟味する前に、最大派閥の細田派はじめ、麻生、竹下、二階、石原の5派が菅氏支持へ雪崩を打ち、勝敗は決したとの空気が党内を支配しているからだ。菅氏優位の状況が一気に構築されたのは、総裁選後のポスト配分をにらむ思惑にほかならない。

 総裁選で最大の争点にしなければならないのは、7年8カ月に及んだ「安倍政治」の総括だ。長期政権がもたらした功罪を真正面から論じ、何を引き継ぎ、どこを改めていくのか、3人の候補者が明確に提示し、議員らの判断を仰ぐ、これが首相交代の意義ではないのか。

 迷走した新型コロナウイルス感染症対策、アベノミクスの真の評価、長期間続く大規模な金融緩和の出口戦略の行方と財政健全化の展望、人口減少や少子高齢化の加速を踏まえた持続的な社会保障政策の確立や一極集中の是正…。待ったなしの内政課題が積み上がっている。

 「戦後外交の総決算」を掲げながら、北方領土問題や日本人拉致問題の解決は暗礁に乗り上げ、日韓関係は最悪の状態に陥っている。日米同盟は強化されたとはいえ、引き換えに高額な防衛装備購入が続き、米軍普天間飛行場の移設を巡る沖縄県との対立は解消されていない。

 とりわけ、安倍政治の「負の遺産」に目を向けることが欠かせない。森友、加計両学園問題や桜を見る会など、行政の公正さに疑念を招きながら、安倍首相は説明責任を果たさず、官僚も公文書を改ざん・廃棄して真相解明にふたをした。

 「安倍政権の継承・前進」を打ち出す菅氏に対し、石破氏は「納得と共感の政治」、岸田氏は「分断から協調へ」をそれぞれ訴え、憲政史上最長の1強政治の評価は分かれている。ならば選挙戦で徹底的に討論するのが不可欠だろう。

 だが、菅氏が国会議員票で大きく先行する状況から、自民党内の関心は、はや総裁選後の執行部体制や組閣の人事に移っている。この総裁選を「消化試合」に終わらせるのはもってのほかだ。

 今回の総裁選は、「速やかに後継を決める」ことを理由に党員投票を見送った。簡略型の選挙となった上、コロナ禍によって街頭演説などは実施されない。とはいえ、3人の候補者が骨太の論議を尽くす。それが政権与党の使命だろう。



密室談合(2020年9月9日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

「首相を選ぶ権利を国会議員から国民に手渡す。これは政治の構造改革、政界の規制緩和だ」。2001年4月、小泉純一郎首相は就任直後の記者会見で、そう言って首相公選制をぶち上げた。

 2カ月後に発足した懇談会は翌年、国民が直接投票する「大統領型」など3案を提言した。当時の世論調査では8割近くが公選制導入を支持した。日本のリーダーが政党の派閥の密室談合で決まることに不満が高まっていたからだ。

 安倍晋三首相の事実上の後任選びも何ら変わっていない。きのう告示された自民党総裁選は、主要派閥が早々に支持を打ち出した菅義偉官房長官が、政策を競う前から本命視されている。

 党員・党友投票は準備に時間がかかるからと見送られた。地方の声が届くのかという懸念はどこ吹く風。新型コロナ対策のため全国遊説も行われない。7年9カ月ぶりのトップ交代に熱気は感じられない。

 「政治の構造改革」は憲法改正が必要で、ポピュリズム(大衆迎合主義)を招きかねないといった問題点も指摘された。結局たなざらしのまま、最近は話題にも上らない。国民は選挙で意思を示すほかない。

 新総裁の任期は残り約1年で、解散風がいつ吹き始めてもおかしくないだろう。あすは立憲民主、国民民主両党などによる合流新党の代表も決まる。日本の針路を占う政界の動きを冷めて見ているわけにはいかない。



菅の常套句「問題ない」に問題あり(2020年9月1日配信『日刊スポーツ』ー「政界地獄耳」)

★自民党は首相・安倍晋三が突然辞任表明したため総裁選挙を。野党はやっとひとつの塊をつくることになり合流手続きとともに代表選挙を。コロナ禍で政治空白を作ってはいけないと言いながらコロナの記事はどんどん小さい扱いだ。それどころか今度は早ければ今月中に解散総選挙だという。政治家のお口と行動は別というものの、ここまでやり放題を放置しているのも驚く。

★6日、共産党委員長・志位和夫はツイッターで総裁選挙の騒動を「メディアは『叩き上げ』だの何だのと愚にもつかない話でなく、きちんと聞くべきことがあるはず。赤木さんの妻・雅子さんの訴えにどう答える? 2度の消費増税が経済に与えた影響をどうみる? PCR検査の実施数が世界150位の理由はどこにある? 辺野古基地、武器爆買い、思いやり予算をどうする?」と問うた。

★官房長官・菅義偉の会見の常套句(じょうとうく)は「問題ない」「全く当たらない」「問題ないという報告を受けている」「指摘は当たらない」。いずれも答えているようで、問いに全く答えず、その理由の説明さえしない。答えではなく「答えない」と答え、すべてのやりとりをここで止めてしまう。この対応とたたき上げの相関図を教えてもらいたいくらいだ。丁寧に答えるとは安倍政権がよく使う言い回しだが、ここには丁寧さのかけらというより、コミュニケーションをとるという姿勢すら見受けられない。今後は安倍政権の継承と言いながら「既に終わったこと」「解決済み」「結論は出ている」を予算委員会や会見で言うのだろうか。さしずめそれを閣議決定していくことが安倍政治の継承なのだろうか。安倍外交はひとつの売り物だったが、このやり方では外交は通用しない。

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