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ストーカー規制法の落とし穴 最高裁判決でGPS追跡「見張りではない」 情報技術悪用の抑止を(2020年9月9日配信『東京新聞』)

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<寄稿・内澤旬子さん>

 7月末、最高裁はストーカーが衛星利用測位システム(GPS)で居場所を追跡してもストーカー規制法の「見張り」には当たらないと判断を下した。ニュースの見出しだけ見ていると、まるでGPSで相手を追跡しても合法、つまりしても構わないと喧伝しているようにも聞こえる。実際に判断が下された2件の事件被害者たちの絶望と孤独を思うと胸が痛む。

 私がストーカー被害に遭ったのは2016年4月。逮捕後示談をして不起訴となったが、10月に再犯、翌年4月に再逮捕となる。2回ともSNSのメッセージ機能を利用して罵詈雑言や脅迫的文言を大量に浴びせられたのであるが、当時のストーカー規制法ではSNSのメッセージ機能は電子メールに当たらないとして同法は適用されなかった。

 2回目の被害を警察に相談している真っただ中の16年12月、ストーカー規制法の一部を改正する法案が国会で成立し、翌年1月より施行されることを知る。しかし法律はさかのぼっては適用されない。私が受けた被害はほんの数日の差で、ストーカー規制法は適用されなかった。必死の思いで立件してもらえるように証拠を集めて警察に通ったにもかかわらず、だ。

 そもそもSNSが日本で利用されるようになったのが09年。11年の東日本大震災では電話よりも繋がりやすく情報を取得できるメディアとして多くの人がツイッターを始めた。社会に浸透していった年といえよう。おそらく同時期に、投稿された写真背景に写る建物や山の稜線で住所を特定したりストーキングに悪利用する者も出てきたのに、法改正まで5年は放置されていたことになる。せめてあと3年早く改正されていればという苦々しい気持ちでいっぱいである。

 私の被害は脅迫と名誉毀損で逮捕・起訴された。ストーカー規制法よりも重い刑なのだから良かったという意見もある。けれどもストーカー規制法であれば犯罪前にも警告や接近禁止命令を出してもらえる。犯罪が起きたとしても接近禁止命令は1年ごとに聴聞を経て更新されるので、加害者が刑期を終えて出所した後も被害者は少しは安心していられる。何年間も同じ相手に執着して殺人に至った事件もある。不安で仕方がなく、隠れて暮らし続ける被害者もたくさんいるのだ。

 また、他の罪で裁かれると、加害者は自分がストーカーだという自覚も持てない。現在ではストーキングを依存性の精神疾患として治療することも可能になってきたのに、治療に結び付く機会すらも失ってしまう。

 せっかくできたストーカー規制法が正しく運用されるためにも、GPSの使用を「見張り」と認定する法改正を、一刻も早くしてほしい。ストーカーは、ストーカー規制法で裁かれてほしいし、疾患レベルの執着があれば、被害者のためにも治療に結び付けて無害化する仕組みをしっかり構築していただきたい。

 今後も高性能情報収集機器や情報ツールは、発展・小型化・簡便化する。そのたびに悪用するストーカーが出現する。法改正までの時差で、守られず孤立する被害者を一人でもなくしたい。情報技術を悪用した犯罪が実際に起きる前に法改正できるよう、定期的に専門家や技術者を交えた検討会議を開く必要がある。

 そもそもストーカー規制法は、犯罪被害者の悲しい犠牲によって成立した。あれから20年。犠牲者を出す前に対策を講じていく仕組みに変わってほしいと願うのは、おかしいだろうか。刑法は、すべての国民を犯罪から守るためにあるはずだと、信じている。 

 <うちざわ・じゅんこ>=文筆家・イラストレーター、著書に『ストーカーとの七〇〇日戦争』など多数



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ネットで知り合った男性との交際から8カ月。
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