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安倍改憲 国民との乖離見据えねば(2020年9月10日配信『新潟日報』-「社説」)

 憲法を改正すること自体が目的化したような独り善がりの前のめり姿勢が生んだ、当然の帰結だろう。なぜ世論との乖離(かいり)が生まれたのか。そこを真摯(しんし)に見据えるべきだ。

 7年8カ月に及んだ第2次政権の後半、安倍晋三首相が強い意欲を見せたのが改憲だった。しかし目的を果たせぬまま、首相は退陣する。

 辞任を表明した先月28日の記者会見の中で、首相は改憲について「国民的な世論が盛り上がらなかった。それなしには進めることはできないと痛感している」と振り返った。

 先の大戦の反省から生まれた平和憲法は9条に戦争放棄や戦力の不保持を定め、戦後日本の背骨ともなってきた。それを変えるというのは容易ではない。

 首相は、そうした極めて繊細な問題だという認識が鈍すぎたと指摘せざるを得ない。

 そもそも、安倍首相による改憲スケジュールの提起は唐突だった。2017年5月、「20年を新しい憲法が施行される年にしたい」と表明し、9条に自衛隊を明記する案も提唱した。

 背景には、16年の参院選の結果、自民党を中心に「改憲勢力」が衆参両院で改憲の国会発議に必要な3分の2を超えていたことがある。

 首相の意をくんだ自民党は18年3月、9条への自衛隊明記に、緊急事態条項、参院選の合区解消、教育の充実を合わせ改憲案4項目をまとめた。首相は野党に国会の憲法審査会での論議を繰り返し呼び掛けた。

 その中で伝わってきたのは、野党が論議に応じるのは当然だとでもいうような「1強」政権の自己中心的な態度だ。

 18年9月に総裁選で連続3選すると、首相は改憲に関わる党の主要ポストに側近を起用したが、その側近は憲法論議に消極的だと野党を批判、議論すべき相手を硬化させた。

 改憲には国会が発議し、さらに国民投票で過半数の賛成を得る必要がある。

 本気で改憲を成し遂げようとするなら丁寧に議論を重ね、国民の理解を得ていくことが不可欠なはずだ。だが「安倍改憲」を巡っては、首相のはやる姿勢ばかりが目についた。

 安倍首相は辞任会見で改憲や拉致問題、北方領土問題について新体制でしっかり取り組むよう期待を表明した。

 だが改憲について言えば、求められるのは国民の思いをしっかりと受け止めた上で「改憲ありき」や「スケジュールありき」から脱することではないか。

 総裁選告示を受け共同通信が8、9の両日実施した世論調査で改憲に積極的な安倍首相の姿勢を引き継ぐべきかどうかについて、「引き継ぐ必要はない」は57・9%となった。「引き継ぐべきだ」は36・0%だった。

 首相の辞意を受けた自民党総裁選に立候補した石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長はいずれも改憲に意欲を表明しているが、他の重要課題が山積する中で優先すべきとは思えない。



[検証・安倍政治 憲法改正] 強引な手法が議論阻む(2020年9月10日配信『南日本新聞』-「社説」)

 安倍晋三首相が悲願とした憲法改正は、7年8カ月にわたった長期政権でも実現しなかった。

 振り返ると、改憲に前のめりな首相の姿勢が目立った。自らが旗振りをしながら、野党などとの議論は一向に進まなかった。
 辞任表明の記者会見で「国民的な世論が十分に盛り上がらなかった」と述べたが、丁寧な議論の積み重ねを怠ったことが改憲の機運が広がらなかった一因とみていいだろう。

 その一方で、憲法解釈の変更で集団的自衛権の行使を容認し、安全保障関連法を制定したほか、武器輸出禁止政策を転換し、自衛隊と米軍の運用一体化も進めた。憲法の条文は変えられなかったが、その基本理念である「平和主義」は変質したと言える。

 退陣を機に安倍政権下での改憲論議を総括し、今後の日本の安保政策はいかにあるべきか、国民の間で幅広く議論する必要がある。

 政権復帰直後の2013年1月、国会答弁で安倍首相は「まず96条改正に取り組む」と明言した。衆参両院の議員の「3分の2以上の賛成」が必要とする改憲の発議要件を過半数にすべきだとの主張である。だが、改憲のために改憲するというやり方に憲法学者らから「裏口入学」と批判が噴出し、96条改正論は立ち消えになる。

 次に打って出たのは「解釈改憲」だった。歴代政権が堅持してきた集団的自衛権行使に関する憲法解釈を国会での議論を経ることなく、14年7月の閣議で変更。これをベースに15年9月に安保関連法を制定した。民主主義の手続きを無視した強引さである。

 17年の憲法記念日には「20年を改正憲法が施行される年にしたい」と表明し、戦争放棄と戦力不保持を定めた憲法9条の1項と2項は残したまま、「自衛隊」を明記する案を提起した。自民党内ですら議論されたことのなかった首相の独自案である。

 目標期限にまで踏み込んだ背景には、16年の参院選で「改憲勢力」が衆参両院とも3分の2の議席を超えた状況がある。自民党は18年に首相の意をくんだ改憲案4項目をまとめ、国会論議を呼び掛けたが、野党は反発し改憲論議は膠着(こうちゃく)状態に陥った。

 首相が独自案を提起するまで、衆院の憲法審査会はテーマを絞った議論を実施していただけに、強引な手法が熟議の環境を壊したことは否定できない。国民の意識と乖離(かいり)した改憲への意欲が裏目に出たと言えるだろう。

 自民党総裁選に臨む3氏も表現の違いはあれ、それぞれ憲法改正に取り組む姿勢を示している。安倍首相の下で行き詰まった憲法論議をどう進めるのかも問われる。





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