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自民党総裁選に関する論説(2020年9月10日)

自民党総裁選 新型コロナ対策 再拡大見据えた準備を(2020年9月10日配信『北海道新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの感染拡大は収束の見通しが立っていない。しかも今冬に向けて再流行が予想されている。インフルエンザとの同時流行も懸念される。万全な対策が急務だ。

 安倍政権のコロナ対策にはさまざまな批判や不満があった。

 PCR検査の拡充は、首相が言及したように「目詰まり」があり、なかなか進まなかった。医療現場や保健所など最前線へのサポートも足りなかった。

 医療機関への経営支援も十分とは言えまい。

 検証をした上で立て直さなければならない。新たな政権を担う新総裁の責務である。

 首相は辞意表明をした会見で「冬までに1日20万件の検査体制を目指す」と述べた。しかしインフルエンザの流行時には30万件の検査が必要という指摘もある。

 総裁選の3候補とも感染対策と経済活動を見据え、PCR検査の拡充を訴える。早急な実施が求められる。

 効果的な抑止策を打つためには新型コロナ特措法の見直しも欠かせない。

 特措法の課題は休業要請に対する損失補償がないことだ。一方、要請に従わない事業者への罰則規定には慎重でなければならない。

 過度な私権制限に注意しながら、国会での議論を急ぐべきだ。

 特措法については3候補の主張に違いがある。中でも新総裁に一番近いとされる菅義偉官房長官は早期改正には否定的だ。

 感染が収束した後で法整備に動きだすのでは遅すぎる。

 新型コロナは指定感染症の位置づけで危険度が5段階で2番目に高い「2類相当」だ。政府はインフルエンザと同じ5類への引
き下げを検討している。

 この見直しで検査や入院の公費負担がなくなれば、軽症者や無症状者の把握に影響が出かねないだろう。

 政府はワクチンについて来年前半までにすべての国民に提供できる量の確保を目指す。

 だが供給元の英製薬大手アストラゼネカが開発中のワクチンは副作用が疑われ、治験を中断した。

 治療薬候補のアビガンを巡っては、首相が「5月中の承認」を目指すと発言した。だが、明確な有効性を示すデータを得られずに、現在に至っている。

 裏付けがなく安易に見通しを示せば国民を惑わす。

 総裁選でワクチンを争点にすることは慎重であるべきだ。



自民党総裁選 教育改革 現場の声 重視すべきだ(2020年9月10日配信『北海道新聞』-「社説」)

 押し寄せる「改革」の波に教育現場は翻弄(ほんろう)され続けた。

 通算9年弱に及ぶ安倍政権は「教育再生」を掲げ、改革を進めた。教育基本法改定、全国学力テスト、道徳の教科化など枚挙にいとまがない。

 学校現場の実態に配慮しないトップダウンの施策が多く、拙速が目立った。混乱が極まり撤回に追い込まれた施策すらある。

 自民党総裁選が告示され、立候補した3氏による論戦が始まったものの、教育政策を巡るそれぞれの主張が見えてこない。

 安倍政権の負の側面に向き合い、正すべきは正さなくてはならない。さらに現場の声に耳を傾け、当事者こそが主人公となる教育を進めるべきだ。

 第1次政権は「戦後レジームからの脱却」を旗印に、教育分野では教育基本法を標的にした。

 教育を国家統制した戦前の反省から制定され、戦後半世紀以上、教育行政の柱だったが、短期間で改定された。教育の目標に「愛国心」が盛り込まれたのは一例だ。

 1次、2次を通じ、公教育に競争原理を持ち込んだ点も問題だろう。全国学力テストは自治体や学校に序列化をもたらした。

 国立大学は運営交付金を減らされ、資金獲得に奔走せざるを得なくなった。落ち着いて研究に打ち込む気風は薄れ、「科学立国」日本は風前のともしびだ。

 最近では、道徳を小中学校の正式な教科に格上げした。国家が個人の内面を侵犯することにつながりかねない復古的な動きである。

 迷走も相次いだ。大学入学共通テストへの記述式導入や英語民間検定の活用、9月入学はいずれも見送った。新型コロナ対策でも、全国一斉休校の唐突な要請が学校や家庭の混乱を招いた。

 有無を言わせぬ指示が要因だったことは言うまでもなかろう。

 官邸直下の教育再生実行会議などの提言が絶対視され、中教審は追認機関と化した。専門家の知見や現場の声が反映されなかった。

 自民党総裁選に立候補した3氏は、安倍政権の教育政策をどう評価するのか明示してほしい。

 喫緊の課題はコロナ禍に揺れる教育への対応だ。子供たちが学ぶ権利をどう保証していくのか。

 日本の教育への公的支出が先進国で際立って低い点も、改善を急ぐべき根本的な問題だ。

 拡大し続ける教育格差を是正するためにも十分な予算を投じ、だれもが分け隔てなく成長できる環境を整えなければならない。



総裁選とアベノミクス どう転換するかが焦点だ(2020年9月10日配信『毎日新聞』-「社説」)

 コロナ禍で戦後最悪の落ち込みとなった経済の立て直しは、次期政権の最重要課題の一つだ。

 自民党総裁選を争う石破茂元幹事長、菅義偉官房長官、岸田文雄政調会長の3氏はアベノミクスについて、おおむね評価している。

 だが、金融緩和や財政出動に続く「第三の矢」の成長戦略を欠いた結果、政策はコロナ以前から行き詰まっていた。国内総生産(GDP)の2倍超に膨らんだ公的債務や格差拡大など弊害は深刻化した。アベノミクスをどう転換するかが焦点となる。

 安倍政権の継承を掲げる菅氏は「アベノミクスを前進させる」と訴えている。金融緩和と財政出動を続けつつ、インバウンド(訪日外国人)需要の復活やデジタル化推進で経済再生を目指すという。

 「経済優先」の姿勢は鮮明で、新型コロナウイルスの感染収束を待たずに観光需要喚起策「Go Toトラベル」の実施を主導したのも菅氏だった。

 成長戦略では中小企業の再編など構造改革にも言及している。背景には市場競争を重視する新自由主義的な発想もうかがえる。

 日本経済がバブル崩壊後30年近く続く低迷から抜け出すには、構造改革が必要なのは確かだ。

 だが、中小企業はコロナで甚大な打撃を受けている。雇用の7割を担う中小企業が淘汰(とうた)の波にさらされれば、経済基盤が崩れる恐れがある。再編よりも企業や働き手が安心して競争力向上に取り組める環境の整備が先決だ。

 アベノミクスは恩恵が大企業や富裕層にかたより、雇用拡大も非正規が中心だった。このため、コロナ下では解雇や雇い止めがすでに5万人超にものぼっている。

 岸田氏はこうした負の側面を認め、税制や教育・住宅支援の充実など分配政策で「格差是正を図る」と主張する。石破氏も「低所得層の可処分所得を増やす」と強調している。競争と分配のバランスは経済論戦のポイントとなる。

 ただ、3氏の主張はいずれも各論レベルにとどまっている。少子高齢化が進む中、持続可能な経済成長や社会保障制度をどう確保し、住みやすい国をつくるかという肝心のビジョンを示せていない。将来世代の生活を見据えた責任ある議論が求められる。



自民党総裁選 成長戦略をどう強化するか(2020年9月10日配信『読売新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスの流行で打撃を受けた経済の再生は、自民党総裁選の大きなテーマだ。各候補は、納得できる具体策を競ってほしい。

 安倍内閣の経済政策である「アベノミクス」は、大胆な金融緩和と財政出動によって企業業績を回復させ、雇用を増やした。

 金融緩和について、菅義偉官房長官は、続けるべきだとの考えを表明した。岸田文雄政調会長と石破茂元幹事長も、当面、維持することを支持している。緩和継続の方向性は、妥当である。

 コロナ禍で、観光業や外食産業などの多くの企業と、その従業員らが苦境に陥る中、給付金などの財政支出も行う必要がある。

 重要なのは、金融・財政政策に続く「第3の矢」である成長戦略を進化させていくことだ。

 日本経済の実力を表す潜在成長率は現在、1%弱にとどまり、成長戦略の成果は乏しい。課題を再点検し、打開せねばならない。

 菅氏は、行政のデジタル化を強力に推進するという。役所の縦割り打破に向けた「デジタル庁」の創設も打ち出した。岸田氏も、ビッグデータを活用する「データ庁」の設置を唱えている。

 ただ、具体像は描き切れていない。社会全体のデジタル化は、国が約20年前から取り組みながら停滞してきた。実現への道筋を国民にわかりやすく説明すべきだ。

 地方創生による経済の活性化も各氏が訴えている。石破氏は、東京一極集中の是正を政策の柱に据え、予算や税制で支援することで、21世紀中頃までに約300万人の地方移住を実現するとした。

 岸田氏は、最新技術による「デジタル田園都市国家構想」を掲げ、ネットを使って地方でも仕事ができ、医療や教育が受けられる環境を整える考えを示している。

 菅氏は、ふるさと納税や農産品の輸出増などの実績を強調し、一段と加速させるという。

 問題はその実効性であろう。安倍内閣も地方創生に注力したが、逆に地方から東京圏への転入超過が拡大した。流れを変える実行力をアピールしてもらいたい。

 中長期的な経済成長には、国民の将来不安の軽減が不可欠だ。

 3氏が社会保障を支える消費税の減税を否定している点は評価できるが、持続可能な年金・医療制度などに関する論戦が低調では困る。社会保障費の増大で、財政運営はさらに厳しくなっている。

 給付と負担の見直しなど、国民の痛みを伴う改革についての論議も避けてはならない。



総裁選と経済 足らざる政策論じ尽くせ(2020年9月10日配信『産経新聞』-「主張」)

 新型コロナウイルス禍がもたらす経済危機を克服し、経済再生の歩みを再び強める。自民党の新総裁に求めるのは、中長期的に経済を安定的な成長に導く戦略である。

 それには安倍晋三政権の経済政策を検証し、足らざる部分を適切に改善しなくてはならない。これは、安倍路線の継承を掲げる菅義偉官房長官を含めて論議を尽くすべきことである。

 第2次安倍政権発足後のアベノミクスで、デフレに苦しんできた日本経済は息を吹き返した。民主党政権時代の極端な円高が是正され、株価は上昇した。企業収益や雇用環境も大きく改善した。

 他方で企業は利益を投資に回すより貯(た)め込む傾向が強く、賃金も期待ほど増えなかった。消費は低調で、多くの人が景気回復の実感を得られぬままコロナ禍となったのである。問われているのは、これをいかに打開するかだ。

 総裁選候補のうち菅氏は、安倍路線を引き続き推進し、こうした懸案の解決を図る構えである。そのため役所の縦割りをなくし、デジタル化や地方創生などでさらなる改革を目指すという。

 これに対して石破茂元幹事長は東京一極集中の是正による都市・地方間格差の是正や低所得者への支援などを掲げた。岸田文雄政調会長も、アベノミクスの恩恵を十分に享受していない中間層の復活や格差是正に力点を置く。

 3氏のアベノミクスに対する間合いの取り方は異なるが、いずれの論点も、かねて指摘されてきた懸案である。それなのにこれまで対処できなかった原因は何か。懸案解決のため乗り越えるべき課題は何か。こうした点についても十分な議論を行うべきである。

 例えば格差是正のために行う分配政策は、予算のバラマキにつながりがちである。3氏には、聞こえのいい政策を羅列するだけでなく、実現可能性を踏まえた深みのある政策論議を求めたい。

 忘れてはならないのが、感染症対策と経済対策の両立である。家計調査によると、6月に持ち直した消費支出が7月に再び減少幅を拡大した。感染の再拡大が影響したようだが、消費を刺激しようとすれば感染リスクが増す。菅氏が旗を振った「Go To トラベル」事業を持ち出すまでもなく、コロナ禍での経済活性化策の実施には難しい判断がいる。この点についても明確にしてほしい。



犬笛戦術(2020年9月10日配信『中国新聞』-「天風録」)

 犬の訓練に使われる犬笛は、人間には聞き取りにくいが、犬の耳には明瞭に届く高周波の音が出せる。転じて欧米では、支持者だけに伝わるよう意図された政治家の発言を「ドッグホイッスル」と呼ぶ

▲国境を越えて入ってくる移民や難民を「侵略」と非難する。白人警官による黒人銃撃への抗議デモが先鋭化すると「法と秩序」の言葉で抑え込む。そんな政治家の物言いを支持者たちは、「白人第一」というメッセージとして受け止めるというのだ

▲米大統領選は二大政党の直接対決とあって、相手との違いを際立たせるほど自らの支持が固まるようだ。真っ先に現職が、犬笛戦術との批判は先刻ご承知とばかりに、これでもかと社会の分断をあおっている

▲永田町はどうだろう。最大与野党のトップ選びがたけなわなのに、いずれも結果の見えかけた仲間同士の争いゆえか、まるで盛り上がらない。国民はもっと社会の分断や格差解消をめぐる本格論議を聞きたいはずだが

▲永田町に犬笛が響いたと耳にしたためしはないが、渦中の政治家たちのメッセージにも、さまざまな「裏」があることだろう。「現政権を継承する」とは、「官邸は強くありたい」といった具合に。



闘う政治家(2020年9月10日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 「闘う政治家」と「闘わない政治家」。政治家を見るとき、こう分類しているという。辞任を表明した安倍晋三首相が著書「新しい国へ」で持論を述べている。首相が「闘う政治家」を理想としたのはよく知られる

▲対して「闘わない政治家」とは、「あなたのいうことは正しい」と同調するものの決して批判の矢面に立とうとしない人と定義する。首相は、否定的に位置付けた「誰かに同調するだけの人」が周囲に多いと感じていないだろうか。自民党内で自由に意見を述べ合う風潮が薄れたと言われるようになって久しい

▲その自民の新しいリーダーを決める総裁選が始まった。立候補した3氏はそれぞれ「納得と共感」「継承」「分断から協調へ」を掲げる。新型コロナウイルス対策をはじめとした多くの課題で持論を詳しく聞きたい

▲告示後、3氏の討論を何回か聞いたが、主張を一方的に訴える場面が多い。形式や時間の制約はあろう。ただ議論をもう少し深められないのか

▲相手の意見を尊重する議論をしてほしい。近年異論を許さない政治を見てきたから余計に思う。最近の首相は、記者会見を開かなかったり、国会答弁を閣僚に任せたり、批判から逃げる姿勢も目立つ。それはかつて自身が戒めた姿勢ではないか

▲選挙で自民は長期政権の総括をする必要がある。「闘う政治家」の集団であろうとするならば、自らの負の遺産にも逃げずに向き合ってもらいたい。



看板の継承は?(2020年9月10日配信『琉球新報』-「金口木舌」)

 カラン、コロン、カラン、コロンと、げたで歩く音がする。幽霊になった女が思った男の家に通う、おなじみの怪談「牡丹灯籠」の1シーン。昔から夏になるとよく聞いた

▼「四谷怪談」「番町皿屋敷」と並んで有名だが、これが落語家の創作と知ったのは随分後になってから。明治から幕末に活躍した三遊亭円朝が中国の小説を基に作った。怪談話のほか人情話など多くの創作で名を残した

▼落語中興の祖とされ、三遊派の一枚看板として今も円朝の名は語り継がれる。ではこちらの「看板」はどうなるだろう。日本の看板として次の首相が決まる自民党総裁選が始まった

▼所見演説会で石破茂元幹事長はグレートリセットを掲げ、菅義偉官房長官は現場の声に耳を傾けると言い、岸田文雄政調会長は聞く力を政治のエネルギーにと訴えた。ただ派閥の支持の行方から、後継が誰になりそうか予想は確定的ではある

▼党の演説会や記者会見、討論会では米軍普天間飛行場の名護市辺野古移設や日米地位協定への言及はなかった。ただ、これまでの閣僚経験などを振り返れば、3候補者とも辺野古移設を推進してきた立場だったのはご存じの通り

▼「円朝」はその名の大きさゆえか、現在継いでいる落語家はいない。次の政権が、沖縄の「基地負担軽減」という偽りの看板を掲げた安倍一強政治を継ぐのかどうか、県民は見ている。





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