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新政権と憲法 冷静な議論の土台つくれ(2020年9月12日配信『山陽新聞』-「社説」)

 憲法改正に意欲を燃やした安倍晋三首相の退陣で、自民党の党是でもある改憲は来週発足する新政権に引き継がれる。総裁選に立候補した3氏は、いずれも実現に向けて積極的に取り組む姿勢を明確にし、論戦の焦点の一つとなっている。

 改憲の議論は、改憲派が多数の議席を得たことを受けて安倍首相が前のめりな姿勢をあらわにしてきた。これを警戒する野党との溝が深まり、与野党が国会で真摯(しんし)に協議を積み上げる雰囲気は損なわれた。政治的な思惑や駆け引きを離れ、まずは冷静に議論ができる土台からつくり直していくことが求められよう。

 自民党は2018年に、緊急事態条項など4項目の改憲案をまとめている。

 これに対し、石破茂元幹事長は、12年の党改憲草案に立ち返るべきだと主張する。戦力不保持をうたう9条2項の削除などを盛り込んだものだ。臨時国会の召集についてきちんと憲法に書くことなども訴えている。菅義偉官房長官は4項目を基に、衆参両院の憲法審査会を進めていくとし、岸田文雄政調会長も4項目は議論を進める材料とした上で、自衛隊の明記も重要な課題と位置付ける。

 憲法に基づく「専守防衛」の理念との整合性が問われる敵基地攻撃能力の保有問題も重要なテーマとなっている。

 憲法は今年、施行から73年を迎えた。ここ数年、自民党などの改憲に向けた動きはかつてないほど現実味を増している。ただ、国民の関心がそれほど高まっているとは言い難い実情もある。

 共同通信社が今週行った世論調査では、改憲に積極的な安倍首相の姿勢を「引き継ぐべきだ」は36・0%で、「引き継ぐ必要はない」が57・9%だった。首相の訴えが十分に理解されているとは言えない。自民党の改憲4項目についても、多くの国民がその必要性や緊急性を感じるには至っていない状況が別の世論調査で示されている。

 今年の通常国会は、憲法改正の賛否を問う国民投票の見直し作業が足踏みをしたまま終わった。駅や商業施設で投票できる仕組みの導入など、投票の利便性を公選法に合わせる法改正だが、それ以前に野党は、投票前に流すCMに規制を設けるべきだと主張して溝が埋まらなかった。

 資金量の差が投票結果に影響を与える恐れがあるという懸念からだ。有権者の意思を適切に反映できる制度はどうあるべきか。しっかり論じ合ってもらいたい。

 新政権の行く手には、新型コロナ対策や経済再生など喫緊の問題が山積している。改憲というテーマはやや後景に退いた感はあるものの、いま改憲が必要なのかどうかも含めて極めて重い政治課題であることに変わりはない。事を急いだり、改憲自体が目的化したかのような動きに陥ることなく、丁寧に議論を進める姿勢が欠かせない。




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Author:gogotamu2019
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