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デーケンさん(2020年9月12日配信『高知新聞』-「小社会」)

 心に深く残った体験が、進むべき道を教えてくれることがある。6日に88歳で亡くなった上智大名誉教授のアルフォンス・デーケンさんは、1970年代から「死への準備教育」を提唱してきた。死生学と呼ばれる研究に打ち込んだのは、母国ドイツでの体験が大きなきっかけとなった。

 来日前の50年代半ば。大学生のデーケンさんは、西ドイツに亡命してきた男性の臨終に病院のボランティアとして立ち会った。みとる人がいなかったからだ。

 亡くなるまでの約3時間。初対面の2人にほとんど会話はなかった。デーケンさんは男性の手を握り、「一人ぼっちではないよ」という思いを伝え続けた。

 病室には静かな時間が流れた。突然の体験で感じた思いが、そこで駆け巡る。人の死とは、生きるとは…。根源的な問いがデーケンさんの将来を決めた。

 何年か前から、終活やエンディングノートといった言葉を普通に耳にするようになった。身の回りを整理したり、望む医療や介護について書いたり、活用している人はいるだろう。とはいえ、死を恐れ、タブー視する雰囲気は当然残っている。

 あと半年の命としたら、どう過ごしますか―。大学の授業でデーケンさんは学生に問い続けた。難しい質問にもかかわらず、学生は真剣に捉えていたという。「死について学ぶことは、死までの時間を『どう生きるか』を学ぶこと」。こんな講義を直接聞きたかった。




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