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精神科病院「B棟4階」のおぞましい虐待(2020年9月10日配信『共同通信』)

看護師らが法廷で明かした真相とは

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患者への虐待事件があった神出病院=神戸市西区

 神戸市内の精神科病院「神出(かんで)病院」で今年3月、看護師ら男6人(現在は全員退職)が患者に虐待をしていたとして、準強制わいせつや監禁などの容疑で兵庫県警に逮捕された。その後、神戸地裁で開かれた公判では常態化した患者虐待のおぞましい実態が次々と明らかになった。だが、浮かび上がった問題はそれだけではなかった。(共同通信=市川亨、山本紘平)

 ▽おとなしそうな青年が

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神戸地裁

 6月23日、神戸地裁。法廷に現れた33歳の元看護師2人はどちらもおとなしそうな、どこにでもいる普通の青年だった。それに対し、検察側が明らかにした2人の行為は、外見からはとても想像ができない内容だった。

 1人は2018年10月の早朝、他の元看護師ら2人と一緒に、60代の男性入院患者を病室でベッド上に押さえつけ、陰部にジャムを塗り、食べ物に執着の強い別の50代男性患者になめさせた。

 もう1人は19年9月の夜、他の元看護師ら2人と共謀し、60代の男性入院患者を布団の上に寝かせ、手すり付きベッドを逆さにかぶせ、閉じ込めた。患者のそばにポテトチップスを置き、手を伸ばす姿を見て面白がった。

元看護師らの公判が開かれている神戸地裁

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 事件の舞台となったのは、重い統合失調症や認知症などの患者が入院する同病院の「B棟4階」。いずれの事件でも現場では、「主犯格」とされる元看護助手(27)がスマートフォンで動画を撮影。LINE(ライン)でグループをつくり、共有した動画を見て仲間内で盛り上がっていたとされる。

 6人の起訴内容はこれだけではない。▽男性患者2人の顔を押さえて無理やり口づけさせる▽患者の顔にホースで水を掛ける▽頭を粘着テープでぐるぐる巻きにする▽鼻の穴に指を突っ込んで引っ張る―など計10件に及ぶ。

 ▽「上司が率先して…」

 なぜそんなひどいことを―。法廷で問われた元看護師らはこう答えた。 「(15年に)病院に就職した最初の頃から、他の看護師たちが暴力行為をするのを見ていて、自分もやるようになった」「『患者をおちょくって一人前』という空気があった」

 検察側の主張によれば、B棟4階では虐待が常態化していた。▽患者を投げ飛ばしたり引きずり回したりする▽車いすごと後ろにひっくり返す▽病室のドアに粘着テープを貼って閉じ込める―といった行為がたびたびあった。

 元看護師の1人は捜査段階で「看護師長ら上司が率先してひどいことをしているので、そういう人が出世していくところなんだと感じ、上層部に言っても仕方ないと諦めていた」と供述したという。

 中には上司に相談した被告たちもいた。だが彼らは法廷で「その上司も虐待に参加していたので、しっかりした話し合いにならなかった」「相談したが、何も変わらなかった」と話した。

 事件を招いた要因について検察側、弁護側の意見は一致した。B棟4階で勤務し始めた時点で既に上司や周りが虐待をしていたので、感覚がまひしてしまったのだ。だが、上司らは罪に問われていない。

 事件が発覚したきっかけは、元看護助手が病院以外の場所で女性の体を触ったとして強制わいせつ容疑で逮捕され、捜査でスマホから虐待の動画が見つかったからだ。つまり「たまたま」であって、病院の自浄作用が働いたわけではない。この別の事件がなければ今も虐待は続いていたかも知れない。

 警察が立件できた理由も、この動画が動かぬ証拠となったからで、重い精神障害がある被害者の供述では、裏付けは難しかったとみられる。実際、6人は被害を訴えることができない重度の患者を狙って虐待を繰り返していたとされる。

 ▽安倍首相の友人が病院グループCEO

 「神戸市の病院」と聞けば、街中に立つ風景を思い浮かべるかも知れない。だが現実には、神出病院は神戸市の外れで林野に囲まれた場所にある。敷地の正門には「関係者以外立入禁止」と書かれ、外部の人間を寄せ付けない雰囲気がある。

 長年続いていた虐待に病院や行政は気付いていなかったのだろうか。3月の兵庫県警の逮捕発表当日、取材に応じた病院の事務部長は「県警から話があった昨年12月に(初めて)知った」と主張。神戸市の担当者も「定期的な調査を毎年してきたが、把握できなかった」と話す。

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神出病院

 ただ、警察の逮捕後に市が病院の職員に実施したアンケートでは、虐待行為を聞いたことがあると答えた職員が数人いた。市の担当者は「そういう声が上に伝わらない組織の在り方に問題がある」と指摘。市は8月17日、院内で相談や報告ができるよう改善命令を出した。

 病院は「虐待防止委員会」を設置して再発防止策を検討し、抜き打ちで夜間に巡回するといった対応を公表した。しかし、上司ら他の職員による虐待や処分については「誤解を招く恐れがあるので回答は控える」と一切、明らかにしていない。

 同病院は大阪、兵庫で病院や介護施設などを手広く展開する「錦秀会グループ」の一つ。グループの籔本雅巳最高経営責任者(CEO)は安倍晋三首相の友人で、たびたびゴルフや会食をする仲だが、その社会的地位に照らすと、病院の説明責任の果たし方には疑問が残る。

 公判で検察側が読み上げた供述調書で、被害を受けた患者の家族はこう話していた。「病院の医師や看護師に問いたいです。あなたたちはこんなことをするために医師や看護師になったのですか。あなたたちは同僚の虐待に本当に気付いていませんでしたか」

 8月末現在、元看護師ら6人のうち3人は神戸地裁で有罪判決を受け、残り3人は公判が続いている。

 ▽取材後記


 起訴された元看護師らを法廷で見ていると、彼らのほとんどは就職した病院が違ってさえいれば、今でも普通に働いていたのではないかと思わざるを得なかった。そう考えると、彼らもある意味では被害者のように思えてならない。病院の上層部は本当に虐待に気付いていなかったのか。本当だったとしても、これだけ異常な事態に長期間気付くことができない組織もまた異常だろう。神戸市のチェックも、果たして機能していたのかどうか。罪に問われるべきなのは、6人だけではないはずだ。



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2020年3月18日

医療法人財団兵庫錦秀会神出病院における虐待・暴力事件に関して(声明)

全国「精神病」者集団

 私たち全国「精神病」者集団は、1974年5月に結成した精神障害者個人及び団体で構成される全国組織である。

 医療法人財団兵庫錦秀会神出病院(兵庫県神戸市西区)において、入院患者対して虐待・暴行を行ったとして、看護師ら6人が2020年3月4日に逮捕された。一連の報道によると、看護師らは、患者同士でキスやセックスを強要させその様子を動画撮影していた。当事者が経験した屈辱を知るに私たちの怒りの炎は消えることはない。患者への献身が期待されているはずの看護を担う者たちよ、恥を知れ。

 本事件は、被疑者の別件での刑事事件が発端となり明るみに出てきた。これはまさに精神科医療の自浄作用の限界の露呈そのものである。昨年の11月には、神戸市は病院への実地指導をしているが、これだけの大問題を把握することはできなかった。監督者としての行政の責任も極めて重い。事件の真相究明と被害者の救済及びこのような事件を二度と生じさせいような厳格なチェック機能を整備することを強く求めたい。

 神出病院は、近隣の病院群で市民グループの訪問活動を拒絶し続けてきたと聞く。地域移行が潮流とされる時代においてもなお、密室的・収容的な精神科病院は、数多い。密室の隠ぺい体質を有している病院内ではこのような事案は氷山の一角に過ぎないのかもしれない。あまつさえ、障害者虐待防止法は病院内での虐待を通報義務としていない。地域の障害者団体や人権団体等の訪問活動を拒絶するような病院は、これを機に、むしろ医療の本旨を証明し、また発揮するためにも態度を改めるべきではないか。また、エリアに関わる当事者団体をはじめ関係諸団体が一体となり、各病院内の監視と人権救済に取り組む担保が与えられることが必要である。

 精神科病院では、これまでも数々の暴力・虐待・人権蹂躙が行われてきていることからもわかるように、この国のどこかで同様な事件が起きていると私たちは考えている。神出病院が母体なる錦秀会グループは、「やさしく生命を守る」を基本理念に掲げ、神出病院は方針として「社会の求める質のよい医療を提供します」を掲げていると聞く。これほどの言行不一致には、もはや薄気味悪さすら感じる。グループの創始者である籔本秀雄は、法人税法違反、業務上横領、私文書偽造、同行使、診療放射線技師及び診療エックス線技師法違反により有罪判決を受けており、また医師免許の取り消し処分を受けているが、これまで数々の医療法人に対して買収を繰り返し、時にはそれまで地元で評判のあった医療を崩壊させてきた。金権主義に血脈をあげた巨大な民間経営医療法人の末路を私たちは目撃している。錦秀会グループに良心のかけらがあるならば、病院経営を公に移譲し、その座から引き下がるがよい。

 最後に、私たちは、長らく精神科病院における人権問題の多くが精神保健福祉法下の帰結の問題だと繰り返し訴えてきた。精神医療審査会が当事者からの退院請求を年間およそ98%以上認めていないこと、曲がりなりにも身体拘束の運用管理を担うとされている精神保健指定医が現場対応を追認してしまっている実態など、人権制約を監視する機能が働いていないことには枚挙にいとまがない。また、上述の通り障害者虐待防止法は病院内での虐待事案を通報義務の範囲としていない。これらの法が内在する問題は、無視され長らく放置されている。このことに立法府は猛省し、即時然るべき法の撤廃、改正の対応をすることを強く求めるものである。

以上



精神疾患の入院患者虐待 元看護助手に懲役4年 首謀者とは認めず 神戸地裁判決➡ここをクリック






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