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窓口で十数年、職場での呼び名は「嘱託さん」 非正規公務員の嘆き(2020年9月16日配信『中国新聞』)

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イラスト・大友勇人

 国や地方自治体の公務員の5人に1人は非正規で働いていることをご存じだろうか。この10年で1.4倍に膨らんだ。多様化する住民ニーズに応えるため、現場では経験やスキルも要求されるが、待遇はなかなか改善しない。「非正規公務員」たちの胸の内に迫る。

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■「頭を使わない仕事でいいね」平然と放つ正職員も

 「嘱託さん」。それが職場での呼び名だ。広島県内の40代の女性は、離婚後に役所の窓口で働き始めて十数年。嘱託職員の私の名前を、同僚の何人が知っているんだろう。「何のリスペクトもない。自己肯定感は地に落ちてます」とため息をつく。

 窓口には毎日多くの住民がやってくる。相談内容に耳を傾け、必要な書類を用意する。笑顔で、丁寧に―。「住民にとっては、窓口の私たちが『行政』ですから」。責任を持って仕事に向き合ってきたつもりだ。

 でも、現場に寄せられた声を基に業務の見直しを提案しても「嘱託さんはそこまでやらなくていい」とすげなく言われる。生活苦を訴える人のために支援制度を調べようとしたら「窓口は聞かれたことだけ答えて」。創意工夫は求められない。

 クレーム対応は「感情労働」なのに評価されない。「制度がおかしい」「税金取り過ぎだろ」と苦情やストレスをぶつけられ、神経を使う。いちいち怒ったりせず、なるべく共感しながら、分かってもらえるように細やかな説明を心掛けている。

 それでも、同僚からは「誰でもできる受付係」と軽んじられている気がする。「頭を使わない仕事でいいね」「試験に合格した公務員と、非正規では待遇が違って当然」と、平然と言い放つ正職員もいる。

 公の機関は「より働きやすく」「差別をなくそう」と呼び掛ける側のはずだ。でも実際には、自分たち非正規が見下されているような感覚がぬぐえない。

 1日6時間の勤務は濃密だ。窓口と電話対応、書類仕事をこなし、新人のフォローもする。その対価は、手取り月12万円ほど。正職員の3分の1しかない。十数年たつのに昇給もほとんどない。「ただの事務補助に『経験値加算』は要らないだろ」。かつて正職員から投げつけられた言葉が忘れられない。

■職安相談員「自分も不安定、なのに仕事を探す人を支援…」

 窓口業務の扱いに理不尽さを感じているのは、国が運営するハローワーク(公共職業安定所)の相談員も同じだ。

 原則1年更新で働き、3年目は任用試験を受け直さないといけない。自分も不安定なのに、仕事を探す人の就職を支援する―。カウンターを挟んで、やりきれなさをぐっとこらえる相談員は少なくない。

 「あすは、わが身…。そんな思いで、やりがいを持って働けるんだろうか」。中国地方のハローワークの正職員男性は、非正規の相談員たちをおもんぱかる。

 経験が求められる仕事という。相談窓口に来る人の歩き方、表情…。つぶさに感じ取って一人一人に寄り添い、新たな仕事につないでいく。「一朝一夕ではこなせない。正職員を補助するような容易な業務でもありません」

 誰が切られるのか―。更新時期が近づくと、男性の気持ちもざわつく。相談員たちのつらい胸の内が耳に入ってくるからだ。効率的に仕事をしていると評価されているか。上司に嫌われていないだろうか…。周囲の目に過敏に反応してしまうのは、不安の裏返しに違いない。

 男性はつぶやく。「日本の雇用政策の最前線を担う働き方が、これでいいんでしょうか」





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Author:gogotamu2019
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