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佐賀県内にわずか8人 手話通訳士の現状(2020年9月22日配信『西日本新聞』)

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山口祥義知事(右)の隣で発言を手話通訳する香田佳子さん

県知事会見に導入

 聴覚障害者に新型コロナウイルス感染症の情報を迅速に伝えることをきっかけに佐賀県が4月、知事の記者会見などで手話通訳を導入した。県内では2018年、県議会が手話の普及を目指す条例を九州の議会で初めて制定するなど聴覚障害者を取り巻く環境は変わりつつある。一方、県内の手話通訳士はわずか8人で、担い手確保や後進の育成など課題は多い。現状を追った。

 4月28日、会見する山口祥義知事に手話通訳士が初めて同席した。ちょうど新型コロナの第1波のさなか。それまでの会見ではマスクで知事の口元が見えず、通訳の導入を求める要望が県聴覚障害者サポートセンター(伊東康博センター長)に相次いでいた。

 センターによると、県内の聴覚障害者は約3600人。要望を踏まえて県は導入を決めた。県障害福祉課の担当者は「通訳士が見えづらいとの声もあったが、それだけ注目されているということ」と効果を語る。日本手話通訳士協会県支部の香田佳子会長は「会見を見てくれるろう者がいる。しっかり情報を伝えたい」と力を込めた。

 通訳士はその職責だけではなく、心身ともにハードな仕事だ。手と腕、表情をフル稼働するため体力の消耗が激しい。情報を正確、的確に伝えるための集中力、瞬発力も求められる。特に1時間に及ぶことも珍しくない知事の会見では2人が10分ごとに交代する。伊東センター長によると「英語の同時通訳に体の動きを加えるイメージ。本当に大変」なのだという。

雇用環境の改善不可欠

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 手話通訳には都道府県認定の「手話通訳者」と、厚生労働相認定の「手話通訳士」がある。通訳士は政見放送や裁判員裁判などでも通訳するため、より高度な技術が求められる。通訳者になった上で通訳士に挑戦するケースが一般的だが、社会福祉法人聴力障害者情報文化センターによると、通訳士試験の過去31回の合格率は平均で15%にとどまり「超難関」(香田会長)とされる。

 全国の通訳士は7月末現在で3830人。同センターが2019年に実施した実態調査では60代以上が約4割を占め、ここ10年で4倍になった。若い世代の資格取得が減少傾向にあり、高齢化が進む。超難関をパスしても、安定した雇用がないことが背景にある。「若い世代の取得意欲を促す雇用環境の改善が不可欠。通訳士資格の取得に平均で10年かかる現在の養成システムにも課題がある」と担当者は話す。

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 県内で8人という通訳士の人数は全国最少。協会の県支部は2018年5月に設立されたばかりだ。ただ、24年に県内で開催される見込みの全国障害者スポーツ大会ではアスリートを支える約400人の手話ボランティアが必要という。

 香田会長は「通訳士の育成は『促成栽培』ではできない。外国語を学ぶのと同様に、聞こえない人とともに手話に触れたり、学んだりする機会をもっとつくらないと」と訴える。 協会県支部の清田大輔さんは手話に関わるようになって約20年。テレビ番組がきっかけで興味を持ち、サークル活動を経て通訳士に。「長く続けられたのは、視覚で伝える言葉は口語よりもきれいで魅力的に感じたから。多くの人が手話に触れて通訳士が増えてほしい」と話した。 (金子晋輔)

「給与安く生活できない」

 給与が安く生活できない-。社会福祉法人聴力障害者情報文化センターが2019年、手話通訳士に実施した調査では、こうした実態が浮き彫りとなった。

 調査では3714人のうち1884人が回答。30代は前回2009年から8・6ポイント減の5・7%。40代は15・2ポイント減の17・8%だった。逆に60代は21・7ポイント増の32・6%、70代は6・6ポイント増の7・1%で高齢化の進行が顕著だ。性別でも偏り、女性が89・5%。職業別では専業主婦22%、パート・アルバイト13%だった。資格を生かして就労しているのは37・6%。就労していない理由は「職業とは考えていない」が最多の29・6%で、「給与が安く、生活できない」が14・6%で続いた。

 こうした結果を踏まえ、調査報告書は「最大の課題は雇用問題。雇用や報酬に結びつけば、若年層の増加、手話通訳の拡充につながる」と指摘している。




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