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(論)種苗法改正案に関する論説(2020年9月27日・11月14・16・19・22・23・24・12月4・5・9・25日・2021年4月1日)

改正種苗法施行 不安解消し輸出拡大を(2021年4月1日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

 国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を海外に不正に持ち出すことを禁じる改正種苗法が1日施行された。農産物の知的財産の保護を強化する制度改正だ。

 これまでは、時間と人手をかけて開発し海外市場で人気が出た品種の苗木などが不正に海外に持ち出されたケースが多くあった。人気品種の現地での栽培が可能になり、日本からの輸出の妨げになっていた。今後は無断で持ち出した場合は、生産・販売の差し止め対象になる。

 日本農業は担い手の高齢化や人口減に伴う国内市場の縮小という構造的な問題を抱えている。海外市場の開拓は活性化に向けた戦略の柱だ。

 改正法の施行は各地で取り組まれている魅力的な農産物の開発・生産環境を大きく改善させるだろう。農家のほか自治体、JAなどの関係者には、イチゴやブドウなどの新品種開発をさらに強化し成果を上げてもらいたい。各地での取り組みが集積されれば、農産物の輸出拡大に弾みがつき、日本農業の展望が大きく開ける効果も期待できるのではないだろうか。

 一方、2022年4月からは、登録品種で収穫物から採取した種を次の栽培に生かす「自家増殖」をする場合、開発者の許諾が必要になる。この点に関連し、許諾の料金や手続きについて農家の間で懸念する声も出ている。

 政府は新品種の多くは公的機関が開発しており、高額料金を請求することはないと説明。手続きについては、分かりやすい「ひな型」を示すなどの対応を取るとの方針を示している。

 そうであるとしても、できる限り農家の不安は解消しなければならない。また、改正法を施行する中で、新たな問題点も浮上する可能性も否定できない。しばらくの間は、許諾の手続きや料金水準について監視を続け、必要に応じた対策を迅速に実施することを政府に求めたい。

 農林水産省は法施行を前に、全国の関係者を対象にしたオンライン説明会を開いたが、こうした取り組みは有効だろう。農家の疑問に丁寧に答えていくことが重要だ。状況によっては、同様の説明会を今後も開催することを検討してもいいのではないか。

 今回の規制強化は、人気のブドウ「シャインマスカット」など日本で開発された品種が海外で栽培され、市場に出回っていることへの対応として検討が始まった。イチゴでも「レッドパール」「章姫(あきひめ)」などが韓国に流出し、損失額は年間44億円に上るとの試算もある。

 シャインマスカットは農業・食品産業技術総合研究機構が開発、少なくとも13人の研究者が携わり、33年間の年月を要した知財の塊のような果実だが中国に流出し、多くの省で栽培されている。

 昨年10月、栃木県で開発されたイチゴ「とちあいか」が初出荷された。濃厚な甘さが特長の新品種だ。海外流出への懸念にどう対応するか。改正種苗法がまだ施行されていない段階で、同県が取った戦略は、輸出対象国での「海外登録」だった。米国やアジアで出願した。

 これからはそうした懸念は後退する。その分、世界の各市場別に好まれる味覚を研究・追求するなど開発に力を入れ、日本農業の競争力強化を図りたい。





種苗法改正 ブランド作物は貴重な財産だ(2020年12月25日配信『読売新聞』-「社説」)

 品種改良を重ねた質の高い日本の農作物は、貴重な知的財産である。それを守り、農業の活性化につなげてほしい。

 日本で開発されたブランド農作物の種子や苗木が、海外に流出するのを防ぐための改正種苗法が成立した。

 種苗法は、新品種の知的財産権に関する法律だ。現状は、開発者が登録すれば最長25年、果樹などの木は30年の「育成者権」が与えられ、他の人は許可なく生産や販売ができないと定めている。

 ただ、市販された後の種子や苗木を海外に持ち出すことは規制していない。改正法は、開発者が品種を登録する際、栽培地域を国内に限定できるようにした。違反者には刑事罰が科せられる。

 政府は、農林水産物の輸出拡大を成長戦略の柱の一つに掲げている。ブランド農作物の流出は輸出に打撃を与えることになるため、防止策を強化するのは当然だ。

 国の機関が開発に33年かけた高級ブドウ「シャインマスカット」は、種がなく皮ごと食べられることで人気を呼び、香港や台湾への有力な輸出産品になった。

 ところが、中国や韓国に苗木が流出して栽培され、東南アジアなどに輸出される例が相次いだ。

 イチゴの「紅ほっぺ」やサクランボの「紅秀峰」の持ち出しも確認されている。農林水産省は、日本産イチゴが韓国に流出したケースでは、5年間で最大220億円の損害が出たと推計している。

 改正法で、こうした被害を食い止める効果が期待される。

 一方、国内農家には不安の声も出ているという。登録品種の収穫物から得た種子などで、次の栽培を繰り返す「自家増殖」に制限をかけ、許諾制とするためだ。

 開発者が流通を管理しやすいようにし、流出の抜け穴を塞ぐ目的だが、農家の間には、許諾料の負担が膨らむことや、自由に自家増殖できなくなることへの懸念がネットを通じて広がった。

 農水省は、主な輸出品目の開発者は国や都道府県などの公的機関が多く、許諾料は低いと説明している。野菜や果物の登録品種の割合は1割程度で、ブドウの「巨峰」のようななじみがある品種の大半は規制の対象外だという。

 改正法の狙いを浸透させるためにも、農水省は丁寧に説明を尽くし、許諾料の高騰を監視する仕組みなどを検討する必要がある。

 気候変動や病害虫への対応に、今後も品種改良は重要だ。改正法で開発者の意欲を高め、日本の農業の競争力を強化したい。





改正種苗法 農家の懸念拭う手だてを(2020年12月9日配信『山陽新聞』-「社説」)

 国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を、無断で海外に持ち出すことを禁じる改正種苗法が成立した。来年4月に施行される。

 開発者の“知的財産権”を守る狙いだが、一方では農家の負担が増すなどの懸念も指摘されている。どう調和を取って日本農業の競争力を高められるかが問われよう。

 改正種苗法は新品種の海外流出を防ぐため、農林水産省への登録時に開発者が輸出先や国内の栽培地域を指定できることが柱だ。違反すれば、生産・販売の差し止め対象となり、悪質なケースでは罰金などの刑事罰を科せられる。

 また、農家が収穫物から採取した登録品種の種苗を次の栽培に生かす「自家増殖」にも、2022年4月から開発者の許諾が必要になる。農家から第三者に渡るリスクを抑えるためという。

 改正の背景には、日本で開発された登録品種の相次ぐ海外流出がある。例えば、高級ブドウの「シャインマスカット」は苗木が中国や韓国などへ流出して無断栽培され、さらに第三国へと輸出するケースもあった。安い価格で日本に逆輸入されれば、国内生産者にとってさらなる痛手となろう。

 ブランド品種は、長い年月や多額の開発費用をかけて生み出した努力の結晶である。この貴重な財産を海外流出によって損なうことは看過できない。法の不備を改め、開発者の権利や利益を守るのは当然だ。

 一方、賛否が分かれているのが、農家に原則認められてきた「自家増殖」への許諾制導入である。高い許諾料や手間が増えて負担が重くならないかと、農家の不安は募る。

 これに対し、農水省は登録品種は全体の1割程度にすぎないと指摘。その多くは公的研究機関が開発し、普及を目的としているから高額の許諾料にはならないという。

 だが、17年に制定された農業競争力強化支援法や、翌年の主要農作物種子法の廃止からは、新品種開発へ民間企業の参入を促す政府の意図がうかがえる。許諾料を目当てにした海外の多国籍企業による寡占化が進み、種苗価格が跳ね上がらないかと懸念する声もある。

 農水省は、日本の競争力が圧倒的に高く心配する必要はないという。だが、今後の運用によっては、日本の農業や食料事情に暗い影を落としかねない。

 改正法には農家の懸念を踏まえ、「制度見直しの丁寧な説明」や「種苗が適正価格で安定的に供給されるよう施策を講じる」との付帯決議が入っている。それらをどう担保していけるか、農家の不安を払拭(ふっしょく)するためにも具体的な手だてを示す必要があろう。

 国内農業を守るためとする法改正が、農家の意欲を失わせては元も子もない。国には運用後の推移を十分チェックし、問題点があれば柔軟に改めていくよう求めたい。





潮江菜(2020年12月5日配信『高知新聞』-「小社会」)

 近所のスーパーで時々、「潮江菜」が売られているのを見かけるようになった。高知市潮江地区で栽培されたことから、そう呼ばれる。土佐の在来野菜で、葉と茎を食用にする。

 煮てもへたらない味の強さに定評があるが、1970年代末には作られなくなっていた。それが近年復活したのは牧野富太郎博士から伝統野菜の調査を言いつかった県内の元高校教諭が、種子を保存していたおかげ。譲り受けた潮江の農家が栽培を再開した。

 農家が収穫物から種を取って次の作付けに利用する。そんな「自家増殖」を連綿と繰り返して品質を向上、安定させていく。人間の古くからの営みであり、農業の根源的な姿といえよう。

 臨時国会で改正種苗法が成立した。国内で開発されたブランド果実などの種や苗木を、海外へ不正に持ち出すことを禁じる。それはいい。気がかりなのは原則自由だった自家増殖が制限されること。一部の品種を自家増殖する際、開発者の許諾が必要となる。

 国は在来野菜を含む大半の農作物は、対象にはならないとする。とはいえ、将来的に対象作物が増えたり、支払う許諾料の負担が重くなりはしないか。農家の懸念には根強いものがある。

 旬を迎える高知市春野町の弘岡カブ、安芸市の入河内大根…。時代を超えて受け継がれてきた伝統野菜は少なくない。小さな農家がこれからも、地域に根差した作物を作り続けられるよう願う。





四つの企業に握られてしまうぞ(2020年12月4日配信『河北新報』-「河北春秋」)

 ノルウェー領のスバールバル諸島に「世界種子貯蔵庫」という種を保存している施設がある。ここは北極圏の永久凍土。施設は地下に建造され、世界中から集めた300万種類の農作物の種子が厳重に保管されている

▼建設に奔走したデンマーク人の植物学者を描いたスーザン・ドウォーキン『地球最後の日のための種子』。同書は「世界を災厄が襲い、地上から作物が一掃されても、ここの種子で農業を復活させ、食糧を確保する」と施設の目的を述べている

▼作物の種は人類が長い時間をかけて改良を加え、守り育てた公共財だ-。そんな考えが学者たちのこうした行動の背景にはあった。一部の大企業が種子の遺伝子情報を特許で守り、供給を独占しかねない状況に危惧を抱いていたという

▼日本では改正種苗法が先日成立した。海外流出を防ぐために罰則を新設した点は当然、賛成できる。問題なのは農家が種を採取するのにも制限を加えたことだ。許諾料や育成権の問題などが非常に分かりにくく、曖昧さも残る

▼農家の自家採種によって長く引き継がれてきた「在来作物」。地域の宝さえ企業の利潤の標的とならないか。前掲書で植物学者は「気を付けないと、全世界の種子の供給は、たった四つの企業に握られてしまうぞ」と語っていた。





種苗法改正案 農家の不安減じ成立図れ(2020年11月24日配信『産経新聞』-「主張」)

 ブランド果実などの海外への不正な持ち出しを禁じる種苗法改正案が参院で審議入りする。

 長年の努力で品種改良を積み重ねてきたブランド果実は国や自治体、開発者らの努力の結晶であり、日本の財産だ。

 それが海外に不正に持ち出され無断で栽培されたのでは、開発者だけでなく、輸出している生産農家にとっても大きなダメージである。

 現行法に不備があるなら改正して、優良品種の海外流出を防止する手を打つのは当然だ。

 法整備により、開発者と農家がともに種苗開発と育成に従事し、国際競争力を高められる環境を整えてほしい。

 改正案は、開発者が農林水産省に登録した新品種について、国内限定などの利用条件を付けられるようにした。衆院で可決した際、種苗が適正価格で安定供給されるよう施策を講じるとする付帯決議も採択された。

 登録品種は高級ブドウ「シャインマスカット」など、全体の1割程度という。開発者に育成者権と呼ばれる知的財産権を認め、違反すれば、個人で懲役10年以下、罰金1千万円以下、法人は3億円以下の罰金が科される。

 焦点となっているのは、改正案が登録品種について、農家が自家増殖する際に開発者の許諾を必要とした点だ。自家増殖は、農家が収穫物から取った種子を次の栽培に使用する栽培法である。許諾制にして流通管理の強化を図る狙いがあるという。

 だが、一部の農家には負担増への不安が募っている。立憲民主党も衆院での審議で「許諾料が高くなり、農家の負担が重くなるのではないか」との懸念を示した。

 農水省は、登録品種の多くは国や自治体が開発し、普及を目的としているから高額の許諾料にはならないという。適正価格による安定供給をどう担保し、価格上昇をいかに抑えるかなど、具体的な施策を示すべきだ。

 改正されると、許諾料目当てに海外の多国籍企業による種子の支配が進むとの懸念もある。

 農水省は、日本の競争力が圧倒的に高いことを理由に心配する必要はないというが、説得力に欠けるのではないか。

 衆院の審議時間はわずか7時間だった。育成者権を守りつつ、農家の不安を払拭するためにも、参院で徹底した審議を求めたい。





種苗法改正案 農家負担の懸念消えぬ(2020年11月23日配信『北海道新聞』-「社説」)

 登録された農産物の種子や苗を海外へ不正に持ち出すことを禁じた種苗法改正案が、衆院を通過した。あす参院での審議に入る。

 農林水産省は国内農業を守るのが目的と強調する。日本弁護士連合会は意見書で「優良品種は知的財産」として保護を求めた。

 一方で、収穫物から種子を採取して使う国内農家の「自家増殖」は原則自由だったのが、今後は許諾料負担などが増す懸念がある。

 農家の間でも法案への反応は分かれ、実質2日間の衆院審議で疑問が解消されたとは言い難い。さまざまな関係者の意見を聞く必要もある。今国会成立にこだわらず、継続審議も検討すべきだ。

 農水省の9月の調査では、中国と韓国の種苗販売サイトで日本の36品種が了解なく掲載されていた。高級ブドウ「シャインマスカット」が無断栽培され、東南アジアに輸出された例もある。

 改正案への賛否にかかわらず、優良品種が不正に流出する事態を食い止めるべきなのは当然だ。

 改正案は、新品種の開発者が栽培地を国内や特定の都道府県に限定し、違反行為について裁判所に差し止め請求できるようにする。

 登録品種すべてに許諾制を導入することで、開発者が自家増殖の実態を把握でき、第三者に渡るリスクが減るとする。

 しかし、流出阻止を図るなら、海外で品種登録した方が近道で効果もある。国は現地での登録費用を一部補助しているが、この枠組みを拡充した方が現実的だろう。

 農家が種や苗を次期作に使うことは「種の権利」として国際的にも認められている。海外では登録品種でも主要作物の一部に自家増殖を認めるなど例外規定もある。

 農水省は国内では大半が許諾不要の一般品種で、登録品種はコメで17%という。だが「道内で実際に作付けするコメの82%は登録品種」という研究者の指摘もある。農家が不安を感じるのは当然だ。

 気がかりなのは、今回の改正が2年前の主要農作物種子法廃止を受けた動きに見えることだ。

 都道府県に種子開発を義務付けた同法を廃止し、新法で研究成果を民間へ提供するよう促した。「公のもの」だった在来種の交配を重ね、新品種として国内外の企業が登録すれば独り占めできる。

 帯広市議会は先月「特定の事業者による種子の独占」懸念を払拭(ふっしょく)するよう意見書を出した。各地方議会も慎重審議を求めている。

 改正案は社会的関心も高い。時間をかけた丁寧な審議が必要だ。





【種苗法改正】農家の懸念と向き合え(2020年11月22日配信『高知新聞』-「社説」)

 日本で開発された果物などは海外でも人気が高い。それゆえということだろう、優良品種が不正に持ち出されて栽培されている。

 新品種は長い時間をかけて開発される。開発者の権利がないがしろにされてはならない。輸出に活路を見いだす日本農業への打撃も大きい。

 そうしたことを背景とする種苗法改正案が、賛成多数で衆院を通過した。今国会で成立する見通しだ。ただ、農家の負担増への警戒など、慎重論も根強い。3月に通常国会に提出されたが、懸念の広がりに押されて継続審議になった経緯がある。参院での丁寧な説明に基づく審議が実効性を高めていく。

 種苗法は、国や都道府県の研究機関など開発者が農産物の新品種を登録し、販売権などを保護する。

 しかし、海外への持ち出しに対する規制が十分ではなかった。このため輸出産品として期待されるブドウのシャインマスカットの苗木が中国や韓国に流出し、その生産物がさらに東南アジアに輸出されてきた。イチゴやサクランボも持ち出されて栽培されているという。

 改正案では、農林水産省に登録した品種について、その開発者が栽培地域や輸出先を指定できるようにする。さらに、農家が収穫物から種子を取って次の作付けに利用する自家増殖に関して、登録品種では開発者の許諾が必要となる。

 焦点となるのはこの自家増殖の扱いだ。これまでは原則自由だった。許諾制になると、種苗代に許諾料が上乗せされたり、高額化したりするのではないかという懸念がある。自家増殖の制限が農業経営を圧迫しては元も子もない。

 許諾の対象は登録品種だけで、農産物の大半を占める一般品種にはこの規制は及ばないというのが農水省の説明だ。また、許諾料について、公的な研究機関は普及を目的に品種の開発をしており、高額な許諾料を請求することは通常はないとの認識を示す。

 種苗などを巡っては、2017年に制定された農業競争力強化支援法に、公的機関の研究成果を民間に移転することが盛り込まれた。翌年には、民間企業の参入を促すとして、公的機関による稲、麦、大豆の種子の開発や普及を後押しした主要農作物種子法が廃止された。

 民間に主導させようとする思惑は一方で戸惑いや反発を招いた。多国籍企業による種苗の寡占化が進むことで、農家の種代の負担が増えたり権利侵害で訴えられるのではないかという将来不安もくすぶり、農政不信へとつながる一因となっている。

 菅義偉首相は、日本の農産品の輸出を2030年までに5兆円に増やす目標を掲げた。この輸出戦略には知的財産を守ることが不可欠で、その思いは共通している。

 同時に、種苗を取り巻く国内環境を整えていくことも重要だ。バランスのとれた施策で、農家の不安を取り除きながら、地域農業を守ることが求められる。





種苗法の改正(2020年11月19日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 国内で開発されたブランド果実などを海外へ不正に持ち出すことを禁じる種苗法改正案が衆院農林水産委員会で、立憲民主党と共産党を除く与野党の賛成多数で可決した。きょうにも衆院本会議で可決し、参院に送付される見通し。

 改正案は先の通常国会でも提出されたが、農家が収穫物から種を取って次の作付けに利用する「自家増殖」に制限がかかるとしてインターネット上などで慎重論が拡大。議論が進まず、見送りとなっていた。

 開発者が多額の費用と時間をかけて生み出した優良品種の流出防止は急務だ。一方で、規制強化による農家負担にも配慮が欠かせない。権利と保護のバランスが必要な問題だけに丁寧な審議を求めたい。

 改正案は開発者が栽培地域や輸出先を指定できるようにするほか、農家が自家増殖をする際は開発者に許諾を取ることを求めるのが柱。指定地域外で栽培したり、無断で海外に持ち出したりした場合、生産・販売の差し止めや罰金の対象になる。

 ブドウのサンシャインマスカットやイチゴのあまおうなど、国内で開発された人気品種が、海外流出する事例が後を絶たない。改正の背景には政府が力を入れる輸出戦略への悪影響を無視できなくなったことがある。

 現在、農家による自家増殖は原則自由だが、許諾制にするのは農家から第三者に種苗が譲渡されるリスクの低減を図るためとしている。農家にとって既存権利の縮小であり、開発者から高額な許諾料の支払いが迫られれば、経営を圧迫しかねないと心配する声が上がる。

 農水省は農産物の9割前後は従来通り種取りが可能で、許諾が必要なのは種苗法上の登録品種だけと説明。国や県の研究機関は普及を目的に品種開発しているため、高額な許諾料を請求することは通常ないとする。

 それでも懸念が十分に払拭(ふっしょく)されているとはいえない。許諾が必要な新品種の登録は増えることが予想され、世界的には穀物メジャーによる種苗の寡占化の流れもある。衆院委では種苗が適正価格で安定供給されるよう政府に施策を求める付帯決議が採択された。取引の監視強化など必要な措置を検討していかなければならない。

 一方、開発者の権利保護についても法改正だけでは限界がある。本来効果的なのは相手国で品種登録を行うことだが、手間やコストの面で進んでこなかった。海外での申請を後押しする政策の充実が不可欠だ。

 政府は2年前にも稲、麦、大豆の種子の安定供給を各都道府県に義務付ける種子法を廃止した。民間活力を利用するためとして当時多くの反対を押し切った。種苗法の改正に慎重論が根強いのもこれまでの農政に対する不信感の表れと受け止めるべきだ。幅広い担い手の意見をくみ取りながら、地域農業を守り育てる政策議論を深めなければならない。





種苗法改正 不安の種を取り除け(2020年11月17日配信『東京新聞』-「社説」)

 品種登録された農作物の“種取り”を禁ずる種苗法改正案が、衆院委員会で早々と採決される見通しだ。審議入りから1週間足らず。農家や消費者を置き去りにしたままの強行は許されない。

 現行の種苗法などでは、登録品種であっても、国内に限り稲などの種を自家採取したり、芋などの苗を自家増殖させて増やしていくことが認められている。ところが審議中の改正案では一律禁止され、違反すれば、個人には十年以下の懲役、または1千万円以下の罰金、農業生産法人に3億円以下の罰金が科されることになる。

 目的は開発者(育成者権者)の保護である。農林水産省の研究機関が開発した高級ブドウ、シャインマスカットが中国や韓国に流出し、安い値段で流通していることが契機になった。

 自家採取、自家増殖が禁止になれば、農家は毎年、大量の種や苗を買うか、開発者に許諾料を支払わなければならなくなる。

 「登録品種は農産物全体の一割程度。都道府県の農業試験場など公的機関で作出された安価な種子などが多く、農家の経済的負担は限定的だ」という見方もある。

 しかし、農林水産省が5年前、全国の農業経営体を対象に実施した「自家増殖に関するアンケート」によると、登録品種の自家増殖をしていると答えた農家は52%に上る。また、北海道や青森県で作付けされる米の7割以上を登録品種が占めるという。

 農業競争力強化支援法は、民間の参入意欲を高めるためとして、自治体が持つ種苗生産のノウハウを民間に開放するよう求めており、それに基づいて、都道府県に米などの優良品種の開発を義務付けた主要農作物種子法を廃止した。公共の安価な種子がいつまでも手に入るという保証はない。

 現行の種苗法は既に、収穫物を許可なく海外に持ち出すことを禁じているが、法改正によって出元が特定しやすくなり、国外への流出防止効果は高まるだろう。ただ仮に、今より持ち出しにくくなるにしても、国内農業に与える影響を考えれば、妥当な方策か。意見が分かれるところだ。

 種子の購入量が増えることで、海外の種子メジャーによる市場支配が進み、農家が痛手を受けるのではという不安の声も多くある。

 農家を守るという法改正が、多くの農家にとって不安の種になっているという現状を直視して、さらに議論を尽くしてほしい。





種苗法改正案 農業の多様性に関わる(2020年11月16日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 中国や韓国で勝手に作られるのを放置できないという分かりやすい説明の陰に、根深い問題が潜んでいる。

 開会中の臨時国会で審議入りした種苗法改正案である。通常国会で成立が見送られ継続審議になっていた。

 農作物の品種を開発した者の知的財産権を強め、海外への不正な持ち出しを禁じる内容だ。国内の農家が収穫物から取った種を次の栽培に生かす「自家増殖」も、開発者の許諾が必要になる。

 改正によって農家が高い許諾料を払わされたり、少数の大手メーカーが種の供給を支配する方向に進んだりしないか。農業関係者の間に強い懸念がある。

 国は早期改正が必要だと強調するが、問題は農業の将来を大きく左右する。国民の理解も深まっていない。立ち止まり、改正の影響と効果を十分に論議すべきだ。

 根底には、種が持つ公的な側面と私的財産の側面のどちらをより重視するか、という課題がある。作り手重視か開発者重視か、と言い換えることもできる。

 開発者が公的機関なら問題とはならないだろう。だが政府は2018年、コメなどの主要作物について都道府県に品種開発を義務付けた種子法を廃止した。理由は民間企業の参入促進である。

 新品種の開発は、遺伝子操作など技術の発達で資本力のある大企業の優位性が増している。政府の言う「企業が活動しやすい国づくり」の先に農業の多様性が失われていく事態を想起するのも、杞憂(きゆう)とは片づけられまい。

 農水省は9月、中国と韓国のネット通販サイトに、日本で開発された計36品種が無断で掲載されていたとの調査結果を発表した。ブドウのシャインマスカットなど人気のブランド果実が目立つ。確かに見過ごせない。

 だがそもそも、こうした動きを今回の改正案できちんと止められるのか疑わしい。罰則があってもこっそり持ち出す行為を防ぐのは限界があるのではないか。

 効果的なのは相手国で品種登録を進めることだ。政府は開発者に海外での登録を促し、ノウハウの支援などに力を注ぐべきだ。

 許諾料について同省は、登録品種はまだ少なく大部分は未登録の品種であるため、農家の大きな負担にはならないと説明する。現状がそうでも、将来は新品種の登録が増えていくのではないか。

 それぞれの地域の風土に合った農業を育てる姿勢が、政府に欠けている。農家の視点から種子関連の政策を見直すよう求める。





種苗法改正案/農家の批判を直視せねば(2020年11月14日配信『神戸新聞』-「社説」)

 臨時国会で、焦点の一つとされる種苗法改正案の審議が始まった。

 国内で開発したブランド果実などの種や苗木が海外に流出する例が相次ぎ、対策を講じて国内農業を守ると農林水産省は狙いを説明する。

 ところが農家の中に、反発や疑念の声が聞かれる。政府は通常国会に改正案を提出していたが採決に至らず、継続審議となっていた。

 国民生活の根底を支える農業の振興は、与野党の枠を超えて取り組むべき課題だ。批判を直視して議論を深め、必要な点は修正するなど立法府の責務を果たしてほしい。

 改正案の柱は、農産物の開発者が栽培地域や輸出先を指定することができ、違反行為に罰則を科す点だ。

 一方、栽培した作物の種を採種して再び育てる自家増殖について、農水省に登録された品種は開発者の許可を義務付ける。

 懸念はこの点に集中している。種苗の購入や許諾料の支払いが必要になるとみられ、コストや手間が増える可能性があるためだ。

 農水省は、全品種に占める登録品種の割合がコメで16%などとし、大半の農家に影響しないと主張する。しかし北海道や青森県ではコメの作付面積の7割以上を登録品種が占めている。影響を過小評価したととられかねない。

 法改正の必要性を示す一例として農水省が挙げるのは、高級ブドウ「シャインマスカット」だ。国内で開発した苗が中国や韓国に流出して栽培され、国内産より安価な値段で近隣に輸出されている。

 だがこれには、海外での農産物の品種登録を開発者が怠ったのが原因との指摘もある。農水省は自家増殖を許可制にする理由を、増殖実態の把握や適切な流通管理のためとしているが、実効性は見通せない。

 開発者の権利を守ることに異存はない。それには海外での登録促進や不正栽培の監視などの対応を格段に強める方が効果的ではないか。

 農水省は2年前、食の根幹を支えるコメや麦、大豆などについて、種子生産と農家への普及を都道府県に義務付ける種子法を廃止した。民間の種子開発を促す狙いとされる。

 今回の種苗法改正と重ね合わせ、農水省は小規模農家や食の安定供給を軽視している、と農業者が不安に思うのもうなずける。

 種子法廃止を受け兵庫など20以上の道県は、公共の種子を守る条例を設けた。種苗法改正についても三重県議会や札幌市議会などが慎重審議を求める意見書を可決済みだ。

 農政の転換に、地方が次々と異議を申し立てている。そのことを政府は真剣に受け止め、農業者との対話を重ねる必要がある。





[種苗法改正案] 優良品種流出防がねば(2020年9月27日配信『南日本新聞』-「社説」)

 小説や音楽に著作権があるように、農作物や花の新品種にも「育成者権」という知的財産権が設けられている。開発者に利益を還元し、さらなる開発を後押しする狙いがあるが、優良品種の海外流出が後を絶たない。

 政府は歯止めをかけるため、開発者の権利を保護する種苗法の改正案を通常国会に提出したものの、農家の負担が増えるとの慎重論が広がり、審議入りしないまま成立を断念した。

 気候変動や消費者の嗜好(しこう)に対応した新品種の開発は、生産性や付加価値の向上につながり、農業の発展に欠かせない。海外に販路拡大を目指す鹿児島の農業にとっても重要な法案といえよう。次期国会では法改正による影響の有無について、丁寧な説明と熟議を求めたい。

 新品種の開発には長い時間と多額の費用がかかる。例えば、皮ごと食べられる人気のブドウ「シャインマスカット」は、国の機関が交配試験開始から品種登録まで18年を要した。にもかかわらず、苗木が中国や韓国に流出して産地化し、東南アジアの市場で販売されていることが確認されている。

 農作物は種苗法上、育成者権の効力が一定期間及ぶ登録品種と、それ以外の一般品種に分けられる。シャインマスカットは前者、巨峰やデラウェアは後者だ。

 ただ、登録品種の種苗はホームセンターでも販売されており、購入後に海外へ持ち出しても現行法上、違法ではない。農産物の輸出強化は成長戦略の一つであり、この「抜け穴」をふさぐのは急務である。

 改正案では、開発者が新品種を登録する際に輸出先国や栽培地域を指定できるようにし、海外への不正な持ち出しを防ぐ。違反した場合、刑事罰の対象になり得る。

 販売後の種苗にも網を掛ける。収穫物から種や苗を採取し、翌年の栽培に使う「自家増殖」の見直しだ。農家は例外的に原則自由だったが、登録品種に限り開発者の許諾が必要になる。誰が自家増殖をしているか実態を把握することで不正流出を防ぐためだ。これに対し「農家の負担が増えるのではないか」と懸念する声が上がった。

 もっとも登録品種は主要農作物の1割程度で、改正後も多くはこれまで通り自由に種取りができる。農林水産省は、反対意見の中には誤解があるとして「事務負担や許諾料の増加は想定されない」と理解を求める。

 慎重論が拡大した背景に、環太平洋連携協定(TPP)をはじめ農業分野の規制改革を推進した前政権への警戒感もあったとされる。路線継承を掲げる菅政権だが、次期国会では農政の指針を明確に示してほしい。国会審議を通じ、知財保護の重要性についても理解を深めたい。




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