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簡素化でも夢ある大会に/延期の東京五輪(2020年9月30日配信『東奥日報』-「時論」)

 国内だけでなく、米国や欧州でも大規模なスポーツ大会が活発に開催されるようになった。来年夏に延期となった東京五輪について、国際オリンピック委員会(IOC)は新型コロナウイルスへの対応で何らかの制約はあるかもしれないが、十分に開催できると楽観的になってきた。

 日本側の大会組織委員会とIOCは先ごろ、延期に伴う追加費用を抑制するため、52項目に及ぶ対策について合意した。組織委は間を置かず、聖火リレーをほぼ当初計画通りに実施することを確認し、日程を発表した。

 経費の圧縮について組織委は「聖域を設けない」として、洗いざらい削れるものを探し出す作業を続けた。それでも、IOCが首を縦に振らなかったものもある。

 さすがに早々と消滅したが、五輪とパラリンピックの開会式を一緒にやってしまおうとの大胆な構想があった。これはIOCも国際パラリンピック委員会も、それぞれの独自の式典を尊重してほしいと断った。

 これも実現しなかったが、五輪の開会式入場行進の思い切った短縮案も練られた。選手団数は206もあり、組織委は所要時間があまりにも長いと考えたようだ。

 さらなる税金の投入を避けるために経費圧縮に努めるのは理解できる。しかし、こうした奇策とも言える対応が検討されるのは、参加国とその選手に対する思いやりにやや欠けているためではないか。冷徹なコストカット意識が強すぎる印象を与えている。

 考えてみよう。パラリンピックの選手が五輪の開会式で五輪選手と一緒に入場行進するためには、パラ競技の約1カ月前に普段の練習を中断して東京にやってこなければならない。さらに開会式後、自国にとんぼ返りしてくれということになる。

 また、五輪開会式の入場行進は、選手にとってかけがえのない体験であり宝物だ。メダル獲得争いのレベルに届いていない世界の多くの選手にとって、国旗に導かれ、チームメートと胸を張って五輪スタジアムを行進することは競技生活のハイライトに違いない。

 そうした選手の思いに対して、組織委はしっかりと向き合っているだろうか。選手個人の夢を奪ってはならないし、開会式の伝統と価値を損なうようなことがあってはならない。

 組織委は聖火リレーのルートと期間を短縮することも検討した。全国の自治体が当初計画の骨格を維持することを強く要望し結局、元のさやに収まった。自治体も聖火走者に決まっていた人も胸をなで下ろしているはずだ。

 走者が聖火を誇らしげに掲げ、わが町を走る姿を市民は沿道で見届け、できれば声援を送りたいと望んでいる。その願いを組織委は正面から受け止めてほしい。市民の心の中に五輪と結びつく喜びを広げることは、開催国の運営組織の大切な使命だ。

 3密を避けるため、多くの市民が沿道で重なるようにして声援を送るのは難しいかもしれない。日々の細かな対応については、感染の状況を見極め決めていくことになるのだろう。

 いずれにしても、組織委は祝祭の雰囲気に包まれ、市民の大会への期待が膨らむ環境を作り出してほしい。厳しい状況でも、夢のある心温かい五輪でありたい。




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Author:gogotamu2019
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