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ペット事業に初の数値基準設定へ “悪質な事業者 排除を”(2020年103日配信『NHKニュース』)

劣悪な環境で動物を飼育する事業者を排除しようと、環境省は、犬や猫を飼う「ケージ」の大きさや飼育できる動物の数について、初めて数値基準を設ける方針です。動物愛護団体などからは歓迎の声が上がる一方、一部の事業者からは経営が成り立たなくなるという声も出ています。

狭いケージに動物を閉じ込め、十分に世話をせずに飼育する悪質なペットショップやブリーダーを排除しようと、環境省は、ケージの大きさや、飼育できる動物の数について、初めて数値基準を設ける方針です。

その素案では、ケージの大きさについては、運動スペースが別にある場合、犬や猫には、縦が体長の2倍、横が体長の1.5倍の長さが必要などとしています。

また、飼育できる数は、いずれも従業員1人当たりで、ブリーダーの場合、犬が15匹、猫が25匹まで、ペットショップの場合、犬が20匹、猫は30匹までなどとなっています。

基準に違反し、改善されない場合には罰金が科されることもあり、動物愛護団体などからは歓迎の声が上がっています。

一方、ペットの業界団体の調べでは、基準を守るために飼育数を減らしたり、従業員の数を増やしたりすると経営が成り立たなくなると考える事業者も少なくなく、団体は、「犬や猫が行き場を失わないよう国や自治体は対応策を示してほしい」としています。

環境省は今月7日の有識者会議で数値基準の案を正式決定したいとしていて、一般からも意見を聴いたうえで、来年6月から規制を始める方針です。

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環境省が示した基準の素案

犬や猫の適正な飼育環境や飼育方法とはどんなものなのか。
環境省が示した基準の素案を見ていきます。

【ケージの大きさ】

ケージの大きさについては、運動スペースが別にある場合、犬、猫ともにに縦が体長の2倍、横が体長の1.5倍の長さが必要だとしています。そのうえで、高さについても、犬は、体の2倍、猫は、体の3倍という基準を示しています。
ケージについては数値基準以外に、原則として金網を床材に使うことを禁止することも盛り込んでいます。

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【飼育できる数】

飼育できる動物の数です。
いずれも従業員1人当たりで、ブリーダーの場合、犬が15匹、猫が25匹まで、ペットショップの場合、犬が20匹、猫は30匹までなどとしています。そして、接客だけを担当する販売員はこの場合の「従業員」には含めないとしています。

【繁殖回数】

むやみに繁殖させ、メスの犬や猫に過度な負担をかけることがないよう交配についても基準を示しています。犬と猫のメスは、交配させるのは原則として6歳までとし、出産回数に応じて、例外的に7歳まで認めるとしています。また、犬については一生の間に出産できる回数を6回までに限定しています。

【健康診断義務化・虐待禁止】

獣医師による年1回の健康診断を義務づけるほか、爪が伸びたまま放置するといった動物虐待とみられる行為を禁止するとしています。

【違反した場合は】

こうした基準に違反した事業者に対しては、自治体が改善命令や業務停止命令を出すことができ、それでも従わない場合は100万円以下の罰金が科されることもあります。

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動物愛護団体などから強い要望

今回、環境省が適正な飼育環境や方法について初めて数値基準を設ける方針を決めた背景には、動物愛護団体などからの強い要望がありました。

東京都内にある動物愛護団体で、公益財団法人の「動物環境・福祉協会Eva」には、動物が劣悪な環境で飼育されているという内部告発がペットショップの従業員などからたびたび寄せられるといいます。

おととし、埼玉県内のペットショップの元従業員から寄せられたという写真では、キャリーケースや、モルモットやハムスターを飼うための小さなケージに犬や猫が閉じ込められ、飼育されている様子が分かります。

元従業員の話では、1日当たり2人ほどのスタッフが接客もこなしながら合わせて40匹から50匹の犬や猫をバックヤードで飼育していて、世話は十分に行き届いていなかったということです。

また、栃木県内のブリーダーの飼育拠点を写したという写真では犬が入ったケージが山積みされています。

団体によりますと、このブリーダーは1人でおよそ200匹の犬を飼育し、ケージが置かれていた小屋は雨風を防ぐこともできず、この写真を撮影した別の動物愛護団体が現場を確認したときには、衰弱して死んでいた犬もいたということです。

「動物環境・福祉協会Eva」の松井久美子事務局長は、「こうした情報を自治体に提供し指導してもらうよう求めてきたが、なにが『適正な飼育』なのか、具体的な基準がないため、なかなか改善につながらなかった。数値基準が設けられることは大きな意義がある」と話していました。

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業界団体「事前に対応策提示を」

環境省が素案で示した規制が適用されれば、どんな影響が出るのか。

全国ペット協会などの業界団体でつくる「犬猫適正飼養推進協議会」などはことし7月、全国の犬や猫のブリーダーを対象にアンケート調査を行い、1100余りの事業者から回答を得ました。

それによりますと、素案で示された従業員1人当たりの飼育数の基準について、犬のブリーダーのおよそ65%、猫のブリーダーのおよそ32%が飼育数が「基準を超える」と回答しました。

これらのブリーダーに対応策を複数回答で尋ねたところ、

犬のブリーダーでは、
「飼育頭数を減らす」が75%、
「廃業を検討する」がおよそ50%、
猫のブリーダーでは、
「飼育頭数を減らす」がおよそ61%、
「廃業を検討する」がおよそ60%に上り、
経営が成り立たないと考える事業者も少なくないことが分かったということです。

協議会などは、規制が適用されれば、犬と猫を合わせて13万匹以上の引き取り先を確保しなければならなくなると推計していて、アンケート結果を受けた声明では、「それぞれの団体でも譲渡先や一時的な保管先について検討を続けているが、その確保は極めて困難な状況になっている。行き場を失う犬猫が生じないよう、環境省や地方自治体は、事前に対応策や準備計画を提示してほしい」としています。

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不安募らせるブリーダー

新たな規制に不安を募らせているブリーダーもいます。

中部地方の70代の女性は、夫と2人で20年以上、犬のブリーダーを続けていて、今はチワワやポメラニアンなど40匹の小型犬を飼育しています。

エアコンのついた専用の小屋で、1匹ずつ金属製のケージに入れて飼育していて、ケージは毎日、水洗いし、清潔に保つようにしています。また、1日2時間は屋外で放して運動させるなど体調管理に気をつかっているといいます。

しかし、環境省が示した数値基準が適用されると、半数近くのケージはより大きなものに買い替える必要があるうえ、従業員も新たに1人雇わなければなりませんが今の経営状態では、どちらも難しいと考えています。そのため、飼育する犬の数を減らすことを検討していますが、引き取り手を見つけられるか不安を感じています。

女性は、「規制が始まれば、全国の多くのブリーダーが大量の犬を手放さざるをえなくなると思うので、すぐに引き取り手を見つけることはできないと思います。ブリーダー仲間との間では、『このままではやっていけない』という話で持ちきりです。犬を引き取ってもらえなければ廃業することすらできず、どうしたらいいのかわかりません」と話していました。

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専門家「相談体制の構築も

動物をめぐる政策に詳しい成城大学法学部の打越綾子教授は、「ペット業界が自主的な努力を重ねてもいまだに劣悪な業者が少なくないのが現実で、数値基準を設けることは妥当だ」としています。

そのうえで、「行き場を失う犬や猫の引き取り手は社会全体で探さなければならずブリーダーなどに対する相談体制を構築する必要がある。動物の問題は、動物をめぐる人間の問題だと認識して、社会全体で議論すべきだ」と指摘しています。

環境省は、多くの犬や猫が行き場を失うことにならないよう譲渡先の確保など、対策を検討する場を新たに設けることにしています。




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