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「しゃべくりに障がい者は出てない」28歳・猪狩ともか、“車椅子アイドル”への葛藤(2020年10月4日配信『文春オンライン』)

キャプチャ
猪狩ともかさん

「需要あるのかな」事故で脊髄損傷の28歳アイドル、劇的復帰の原動力 から続く

 2018年4月、強風で倒れてきた看板の下敷きになり、下半身不随となったアイドルの猪狩ともかさん。「たたき上げ」とも言うべき経験を原動力に、事故から復帰。今年7月には初の著書を出すなど順風満帆にも見える。


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 しかし一方で「車椅子アイドル」と呼ばれることへの違和感も抱えているという。それは何故なのか。

 また、著書『 100%の前向き思考 』(東洋経済新報社)のエピソードや胸に去来するメンバー達との思い出、卒業への率直な不安、そしてそれを越えた先に描く今後の芸能活動の展望などを語った。(全2回の2回目。 1回目 を読む)

メンバーには「すごく感謝してます」

――ライブでは車椅子でステージ上を縦横無尽に駆け巡るので、かなり体力が必要ですよね?

猪狩 そうですね。やっぱりまだフル出場はできていないです。でもトレーニングで体力がついてきて、前は2~3曲したらすぐバテバテだったんですけど、結構出れるようになりました。前回のワンマンライブでは全体の半分の11~12曲ぐらいは出たかな。

――ご著書『 100%の前向き思考 』の中で、ダンスの先生が「猪狩さんが入ることによって幅が広がることもたくさんある」とおっしゃってますが、具体的には?

猪狩 私が車椅子でみんなの間をS字みたいに抜けていったり、誰かが私の車椅子を押すパフォーマンスをすることで、「心のバリアフリー」みたいなものを表現できたりするのかなと思います。

 車椅子の周りに集まってくるというフォーメーションもあって。スチームガールズの『COLOR☆DAY』という曲で「みんなで集まって」っていう歌詞の時に本当に私の周りに皆が集まってくるんです。そこは結構お気に入りですね。

――メンバーとの横の交流がご著書『 100%の前向き思考 』の中に多く出てきます。やはりメンバーの皆さんは心の支えになっていますか?

猪狩 そうですね。入院中も、スケジュール調整して毎月1人1回は必ずお見舞いに来てくれました。復帰してからも、お着替えを手伝ってくれたり、移動してる時に荷物が置いてあって通れない時にサササッとどかしてくれたり。皆もきっと車椅子の人との関わり方を模索しながら一緒にいてくれていると思うので、すごく感謝してます。

メンバーの名言「続けてたら、なりたい自分になれるんやで!」

――卒業したメンバーの方々との関わりでいうと、現在渋谷区議の橋本ゆきさんは政治の世界に進んだきっかけとして猪狩さんを挙げています。橋本さんとの印象深いエピソードはありますか?

猪狩 一昨年の夏にまだ私が入院中だった頃、京セラドームでの西武の試合前に仮面女子として1曲パフォーマンスさせていただいたんです。その時の入退場の時間がめちゃくちゃタイトで、車椅子で超ビューンって行かないといけない感じだったんですけど、その時に車椅子を押してくれたのがゆきちゃんでした。

 リハーサルの時は「ちょっと間に合わないね」って感じで、本番1日目は「あっ、ピッタリ」ぐらいだったのかな。で、2日目に「余裕で着きすぎたね、今度は」って日々スピードアップしていって……「入院中に車椅子で野球場を暴走した人なんていないんじゃないかな」と思いました(笑)。いい思い出ですね。

――水沢まいさんともすごく仲が良いそうですね。

猪狩 まいぷぅは、私が仮面女子に上がれなくて「辞めちゃおうかな」って思っていた時に声をかけてくれたんです。その時にまいぷぅがいてくれなかったら、今の私はいないかもしれないです。格言をよく言う子で、本の中にもある「続けてたら、なりたい自分になれるんやで!」っていう言葉は、本当にずっと心に残ってます。

事故をきっかけに私を知って私推しになって下さった方もいます

――そういった方々がいたから諦めずに続けて来られた面もありますか。

猪狩 そうですね。前のセンターの立花あんなちゃんも、絶対ネガティブなことを言わないし、人が嫌がることを率先してできるので、センターでいることにすごく納得させられる子でした。例えば候補生(仮面女子に昇格する前の段階の1つ)に任されている仕事を「ありがとう、やってくれて。私もやるね」というふうに手伝ったりしてくれるんです。尊敬できる人はいっぱいいましたね。

――「メンバーだけで話さないように」といった方針のグループもあるらしいのですが、もしそうだったらどうなっていたと思いますか?

猪狩 「仕事」「ルーティンワーク」みたいな感じになっちゃうのかなと思いますね、パフォーマンスが。普段からのコミュニケーションがないと、ライブ中の遊びとかもできないんじゃないかなと思います。

――ライブには車椅子の方も来られますか?

猪狩 そうですね、事故後に結構増えました。「私をきっかけに来てくれたのかな」と思うとすごく嬉しくなりますね。実際に事故をきっかけに私を知って私推しになって下さった方もいます。

アイドルって必ず卒業がやってくるじゃないですか

――尊敬できるメンバーにも支えられ、猪狩さんにとってかけがえのない存在である仮面女子ですが、今年卒業し、タレントという新たな道に進まれます。卒業はどういった心境で決意されましたか?

猪狩 アイドルって必ず卒業がやってくるじゃないですか。年齢的なこともあるし。「じゃあ私にとって卒業の時期っていつなんだろう」と考え出したのは去年の8月頃でした。ちょうど仮面女子のワンマンライブ(当初は今年9月19日に予定。コロナ禍の影響で12月12日に延期)とパラリンピックがほぼ同時期だったんですね。

 大きなワンマンライブもあるし、事故後に関わるようになったパラスポーツのお仕事もパラリンピックを終えたら一区切りかな、というふうに考えて去年の12月に卒業を決心しました。

――卒業に際して、メイドカフェを卒業した時にファンが離れてしまったこと( 1回目 参照)を思って不安を抱くことはありますか?

猪狩 ちょっとよぎったりはするんですよ。あの時みたいになるんじゃないかって。でも今応援していただいてる方達は、アイドルじゃない普通のトークイベントにも来て下さったりするんです。「1人の人間として猪狩ともかを好きだから、卒業してからも応援するね」って言ってくださる皆さんがいるので「そこはちょっと信じてもいいかな」と思ってますね。

「車椅子アイドル」っていう言い方は分かりやすいけど

――仮面女子における猪狩さんと、個人としての猪狩さんとで、違いはありますか?

猪狩 やっぱり個人の時は障害や事故に関する意見を求められることが多いし、そこは「歌って踊る猪狩ともか」ではなく「意見を言う猪狩ともか」を求められていると思うので、「しっかり自分の伝えたいことを、障害者目線の発言を口にしないとな」と思っています。

――それとは別に、プライベートの猪狩さんはまた全然別の方という感じですか?

猪狩 いや、そんなことないと思いますよ。基本はこのまんまなんですけど。ちょっとゲームしてると口が悪いぐらいですかね(笑)。

――障害に関することでいえば、自身を「『車椅子アイドル』と呼ばないでほしい」とおっしゃっていました。それは何故でしょう?

猪狩 「車椅子アイドル」っていう言い方は一番分かりやすいとは思うんですけど、「私、車椅子ですよ」ってすごく言ってるわけじゃないんです。元々普通に活動していて、そんな中でたまたま車椅子生活になったわけであって。

「車椅子アイドル」という言われ方をしちゃうと、車椅子を取ったら何もない人みたいになっちゃう気がして。そこが「ちょっと嫌だな」と感じているのかな、と思います。

車椅子で活動していることを武器だと思って

――以前「車椅子で私にしかできない表現をしていきます」ともおっしゃっていましたが、今も同じ気持ちですか?

猪狩 そうですね。復帰前に母に「例えばバリアフリーのことにしても、あなたが発信することに意味があるんだと思うよ」というふうに言ってもらったことがあって。やっぱり当事者と言いますか、今まで健常者だったけど、突然車椅子になった中途障害者だからこそ気付けることってたくさんあると思うんです。そういうことを色々発信していきたいなという思いはあります。

――では、車椅子で定義されたくない、でも車椅子ならではの発信もしたい、という両方の思いがあると。

猪狩 「車椅子を取ったら何もない人になっちゃうんじゃないか」みたいなのも、ある人に相談した時に「逆に捉えて、車椅子になったことをプラスに考えたらいいんじゃない?」と言ってもらって「確かに」と思ったんですよね。

 あんまりいやらしく「車椅子女子です」みたいにアピールするのとはまた違うけど、車椅子で活動していることを武器だと思って、だからこそできることや発信をちゃんと見つけていければいいのかな、と思います。

――今はバリアフリーやパラリンピック関係のお仕事が多いと思いますが、それ以外だとどんなことに関わりたいですか?

猪狩 YouTubeでの発信だったり、メディアに出たりだとか、マルチに色々活動していきたいです。バラエティーのような普通のテレビ番組に障害を持っている方が出ることってないじゃないですか。障害を取り扱う番組には出るけど『しゃべくり007』とか『水曜日のダウンタウン』とかにいることってないので。

――そういったことに気づいたのは事故後ですか?

猪狩 そうですね。それまで何も思わなかったですね。今まで障害者が出てなかったような番組に、出ているのが当たり前に見えるくらい、日常的にどんどん呼ばれたら嬉しいですし、私もバシバシ喋っていけるようになりたいです。

「一日一笑い、猪狩ともか」で、よろしくお願いします

――今後打ち出していきたいキャラはありますか?

猪狩 キャラですか。今、結構「真面目軸」にいる気がするんですけど、そんなにお堅く行きたくないので、もうちょっと「弾けた、殻を破った、明るい子」みたいな感じで。

――ご自身にキャッチコピーをつけるとしたら?

猪狩 昔は「ライオンズファン、猪狩ともかです」って感じだったんですけど、何だろうな。キャッチコピーって難しいですね。仮面女子はそういう制度、「何とかかんとか何とか~(アイドルの身振りで)」みたいな名乗りが無いんですよ。

マネージャー 劇場では面白くて弾けてる感じだし、ブログでも一番気にするのはオチだよね。常に笑いは意識している。アイドルだけど「一笑い」だよね。何を伝えるにしても、その中に必ず一笑いは入れたいっていう。

猪狩 そう(笑)。

マネージャー たまにブログを公開する前とかに「このオチについて」みたいな相談があったり。

――では、「一笑い、猪狩ともか」?

猪狩 いいですね。「一日一笑い、猪狩ともか」で、よろしくお願いします。

写真=杉山秀樹/文藝春秋




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