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菅政権の目玉政策、不妊保険適用拡大へ課題山積み 治療法は?年齢、回数は?(2020年10月5日配信『東京新聞』)

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 菅義偉首相が実現を目指す不妊治療の保険適用拡大に向け、厚生労働省は検討を本格化させている。数ある治療法や検査を保険でどこまで認めるか、医療機関の収入に直結する保険点数をどう設定するかなど、課題は多い。治療を受ける人たちの負担軽減につながる一方、制度設計次第では医療の質低下といった悪影響が生じる危うさもはらむ。(川田篤志)

◆治療法の適用対象、難しい線引き

 不妊症は、検査をしても原因が見つからない「機能性不妊」が一定の割合を占める。そのため、治療は夫婦らの年齢や体の状態などを踏まえて複数の方法から内容を決めるオーダーメード方式が主流だ。費用は施設間のばらつきが大きく、自由診療の体外受精では1回当たり30万~100万円と幅がある。

 医療機関では自由診療が多い現在、豊富な治療法のメニューが用意されているものの、全てが保険適用されると見る向きは少ない。適用対象を選定していく線引きは難しく、田村憲久厚労相は「いろいろな治療法があり有効性や安全性を確認しないといけない。(保険適用拡大の)実現には一定期間かかる」と話す。

◆医療の質低下もたらす可能性も

 保険適用となっても、治療法の費用を定める保険点数が低く抑えられた場合、医療機関が利益確保を優先して人件費を削ったり、設備の更新を見合わせたりすれば、質の低下につながる恐れがある。割に合わない不妊治療を中止する施設が相次ぎ、結果として子どもを産みたい人たちの選択肢が狭まる可能性もある。

 現行の不妊治療には費用助成制度があり、年齢や回数に制限が設けられている。保険適用拡大後には制度存廃も含めた助成のあり方も議論になるとみられる。公明党が主張する事実婚の夫婦を新たに対象に加えるかどうかも論点だ。

◆国の負担、年間1120億円増の試算

 保険適用拡大により、国や健康保険組合の財政に与える影響も考慮に入れなければならない。自民党の議員連盟は、全面的な保険適用なら年約1120億円の負担増になると試算。不妊治療を受けない人の税や保険料にもかかわるため、国民の理解は欠かせない。

 保険適用については、厚労相の諮問機関の中央社会保険医療協議会(中医協)で今後議論していく。実現は最も早くて2022年度の診療報酬改定時になる見通しだ。
◇          ◇
◆「仕事との両立」促進に期待感

 不妊治療には、仕事との両立という課題がある。保険適用拡大が実現すれば、働きながら通院する環境整備を促進する効果も期待されている。

 厚生労働省の2017年の調査では、仕事と並行して不妊治療を受けている人の87%が「両立は難しい」と感じていると回答。両立できずに仕事を辞めた人が16%、治療を断念した人が11%いた。

 治療の負担は女性に偏りがちだ。体外受精なら、卵巣の状態確認や排卵誘発剤の注射、採卵などで頻繁な通院が求められる。職場には不妊を知られたくないなどといった思いから、治療中と明かせず、心身ともに疲弊する例も珍しくない。

 不妊治療のための休暇制度を設ける企業もあるが、まだ限定的。保険適用拡大で不妊は疾病という認識が広がれば、支援体制拡充の機運が高まる可能性もある。(坂田奈央)



不妊治療費支援 心身の負担にも目配りを(2020年10月5日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が少子化対策として不妊治療の公的保険の適用拡大を打ち出している。実現までの間も助成金を大幅に増額するよう厚生労働省に指示した。

 晩婚化を背景に不妊に悩む夫婦は多い。2018年は、治療件数が45万4893件、体外受精で生まれた子どもが5万6979人を数えた。いずれも過去最多だ。

 体外受精など高度治療には1回数十万円かかるとされる。保険が適用されるのは、不妊の原因検査や排卵誘発剤を使う治療など初期段階の一部。助成制度には回数や年齢、所得に制限がある。

 治療が一般化している現状を考えれば、患者の経済的負担を軽減する対策は必要だ。保険適用になれば、安全性が確認された治療を受けることもできる。

 一方で、不妊の原因によって異なる治療法が保険適用で画一化され、適切な治療につながらなくなるのではとの懸念がある。有効性がはっきりしない治療によって保険財政が圧迫されるようなこともあってはならない。

 厚労省は今月から実態調査を始め、21年4月からの助成制度拡充、22年度からの保険適用拡大を目指している。

 適用範囲をどこまで広げるか、助成制度をどう組み合わせるか。当事者や医療関係者の声を丁寧に聞いて議論を進め、国民が納得のいく合意を図る必要がある。

 経済的負担だけでなく心身の負担への支援も重要だ。

 治療に至るまでの基礎的な検査だけで数カ月かかる。検査時の痛みや薬剤による副作用に悩まされることが多い。

 特に女性は卵巣の状態などを調べるため通院を繰り返さなければならない。治療期間が長引けば、ストレスや不安が募る。働いている場合は、職場の理解がなければ仕事との両立も困難になる。

 妊娠に至らなかったり、流産したりする人も少なくない。精神的なダメージは大きく、家庭に深刻な影響を与えかねない。

 経済的な支援を充実させ、不妊治療を利用しやすくするからには、治療中や治療効果がなかった人たちへの目配りも欠かせない。企業に職場環境の整備を促し、当事者の悩みに応じる支援策も一体的に考えていくべきだ。

 菅首相は、少子化対策について不妊治療の対応など個別の政策しか語らない。不妊治療のニーズを高めている社会のありように目を向け、若者が結婚や出産をためらう現状を抜本的に改めるビジョンも示すよう求めたい。






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