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日常を抜け出す旅(2020年10月5日配信『北海道新聞』-「卓上四季」)

 大阪の町人、下駄(げた)屋の喜六と指物(さしもの)屋の清八はウマの合う親友だ。春の陽気に誘われてお伊勢参りに出かけることにした

▼奈良を抜け、野辺を歩いて念願の伊勢神宮を参拝し、鈴鹿から大津、京都を経て大阪に戻る旅程。途中、軽業師の綱渡りを見物したり、金を使い果たして宿屋から逃げたり。グルメあり、博打(ばくち)あり、色事ありの珍道中である。上方落語「伊勢参宮神の賑(にぎわい)」は旅落語の中でも底抜けに明るい

▼観光旅行が庶民に広がったのは江戸時代後期。中でも伊勢参りは一番人気だった。農民は年貢に苦しみ、町人の経済格差も広がった時期。社会には閉塞(へいそく)感が充満し、旅に出て日常を抜け出す。信仰に基づく巡礼は、領主の移動許可を示す「通行手形」も得やすかった(田村正紀著「旅の根源史」)

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▼新型コロナ禍におけるGoToトラベル事業も、巣ごもりの毎日から抜け出したい人々の需要があるのだろう。今月からは東京発着も加わったが、目的地の経済V字回復にたどり着けるか

▼専門家からは「科学的根拠に欠ける」などと、東京追加に慎重論が相次いだ。出かける側も受け入れ側も、感染拡大には細心の注意が必要だ

▼東洋大の谷釜尋徳教授は、江戸時代の伝染病の拡大経路を調べ、「幕府の交通環境整備で多くの旅人が往来できるようになり、伝染病の拡大を手助けした」と分析する。旅は病を運ぶ。そんな側面にも留意したい。

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