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女性の合意なく避妊具を外すのが「軽い行為」? 「ステルシング」は罪(2020年10月6日配信『AERA.com』)

連載「おんなの話はありがたい」

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性暴力に抗議するフラワーデモ。女性たちが各地で声を上げている(北原みのりさん提供)

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フラワーデモの賛同者らは杉田水脈議員の「問題発言」にもいち早く行動を起こした(北原みのりさん提供)

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作家の北原みのりさん

 作家・北原みのり氏の連載「おんなの話はありがたい」。今回は、性行為の「同意」の考え方について。日本社会においては、それを学ぶ機会がほとんどないのだと指摘する。
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 性行為中に女性の合意なく避妊具を外す行為を「ステルシング」という。先日、フランスの男性外交官が、ステルシングの告発を受けて、警察が捜査をしているというニュースがあった。報道によれば、この二人は出会い系サイトで知り合い、この日は数度目のデートで性交は初めてのことだったとか。

 もし日本だったら……。出会い系サイトで出会った男女がラブホテルでセックスし、その途中で男性がコンドームをこっそり外したことに気がついた女性は警察に行けるだろうか? 「勝手にコンドーム外されたんです!」と訴える女性に、警察官はまずこう言うはずだ。「男性とはどういう関係だったんですか?」「どこで出会ったんですか?」「え? 出会い系で? よく知らない男とセックスするあなたにも責任あるんじゃないですか?」「今日で、その人とは何回セックスしたの?」「あなたは処女ですか?」「コンドーム外した証拠はどこにあるんですか?」

 暴行・脅迫を伴った性交や抗拒不能な状態での性交を訴えれば、そんな質問をしながらも警察は動くかもしれない。でも、性交中にコンドームを外された……という女性の声には? 性暴力事件が起きたときですら、問われるのはいつも女性の経験値や、女性の行動、女性の考え方の日本社会で。

 「同意」という考え方を、子ども時代に、もちろん大人になってからも学ぶ機会は私たちにはほとんどないのだと思う。特に性に関しては「同意」の手間を省くほうがスリリング、というような文化もある。例えば子ども時代のスカートめくりも、女の子としてはあれほどキモイ記憶はないが、男の子にしてみれば少年時代の明るい思い出くらいの軽さだろう。しかも女の子側も男の子の軽さにあわせて笑うことが求められたりもする。大人たちも、女の子の傷には無関心だ。男の子がスカートの中に関心を持つのは当たり前のこと、むしろ健全なことくらいの緩さで。

AV産業に巻き込まれた女性の話から見えてくるのは…

男の子が性的に関心を持つことと、女の子の意思を尊重しないことが、なぜかセットになってしまう文化で、やはり女性だから強いられる屈辱や、悔しさ、恐怖というものがある。そしてその恐怖を口にしたところで、「うそをついているのではないか」「男の人生を壊すのか」「これくらいのことで騒ぐな」などと口をふさがれてきたのが性暴力だ。こういう世界では、女の子に関心のない男の子も、相手の気持ちを考えられる男の子も生きにくい。女の同意などに思いをはせるより、スカートめくりをして男友だちと盛り上がれるほうが「男らしい」社会なのだし。

 先日、AV産業に巻き込まれた女性の話を聞く機会があった。有名になりたいという、うっすらどこかに持っていた思いを完全に利用され、彼女はAV業界に入った。高校を卒業したばかりの18歳だ。傍から見たら彼女は自分の意思でAV業界に入り、女優として頑張りキャリアを積んできた人に見えるかもしれない。でも、どこかでずっと、「これは私が選んだことなのか」という不安が人生につきまとっている。初めての撮影の日、成人男性数人に囲まれて、目の前に大人のオモチャを複数並べられ「選んで」と言われる。何のことかもよく分からないが、その場を早く終わらせたい気持ちでどれでもいいやと一本を選ぶ。「へー、そういうのが好きなんだ」という雰囲気が和やかに男性たちの間で生まれ、撮影が始まる。そのオモチャを使ってみて、もっと声をあげて、もっともっと。要求に応えれば、そこでは認められる。だからやっぱり求められるように頑張ってしまう。でも。

 自らペンを持ち「同意」の署名をしたAV出演ですら、自分がどこまで同意したのか、その結果がどのようなものなのか分からないと話す女性は少なくない。そもそも真摯な同意を取ろうとしていたら成り立たない産業なのではないかという思いが、被害女性たちの声を聞くほど募る。

 #MeTooの世界的な強い流れの中で、「同意」についての考え方は日々、進化している。男の子たちの軽いお遊び、軽い娯楽。そんなものが相手からみたら「同意」のないところで起きている暴力の可能性もある。ステルシングも、AVによくある「軽い行為」でもある。変えなければいけない根は深い。

■北原みのり(きたはら・みのり)/1970年生まれ。作家、女性のためのセックスグッズショップ「ラブピースクラブ」代表




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Author:gogotamu2019
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