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(論)教員による性暴力に関する論説(2020年10月7日・11月4・26・12月22・27・2021年1月12.・26・30・2月18日・4月3・4日・5月2・13・16日)

教員の性暴力(2021年5月16日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆根絶へ法と環境の整備急げ◆

 児童生徒に対する教員のわいせつ行為などをなくそうと自民、公明両党の検討チームが新たな法律の素案をまとめた。野党との協議を経て超党派の議員立法で早期成立を目指す。現行制度では教員がわいせつ行為などで懲戒免職になり教員免許を失っても、3年たてば再取得できるが、処分歴を隠し再び教壇に立つ例が問題になっていた。

 法案は児童生徒への教員のわいせつ行為や性交を「児童生徒性暴力」と規定。免許再交付の申請に際し、都道府県の教育委員会が有識者らでつくる第三者委員会の意見や過去の処分歴を基に、再び性暴力を行わないと客観的に判断できる場合に限り認める。

 教え子に対する性暴力は地位・関係性を利用した極めて悪質な犯罪で、尊敬や信頼を裏切られた子どもの心に深刻な傷を残す。これまで文部科学省もさまざまな対策を重ねてきた。しかし目に見えるような成果にはつながっていない。

 わいせつ教員の数は高止まりしたままだ。あらゆる角度から教員の性暴力根絶に向け、法整備を急ぐ必要がある。併せて学校現場で、子どもがもっと相談しやすい環境を整えるなど、被害の早期発見と解明をより徹底することが求められる。

 文科省は2004年以降、児童生徒への性暴力で処分を受けた教員を原則として懲戒免職にするよう各教委に繰り返し通知。18年度以降に処分・教員免許失効の官報情報を検索できるシステムを教委や学校法人に提供した。しかし19年度、公立の小中高校などで、児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもにわいせつ行為をしたとして、126人が懲戒処分となった。

 処分歴を隠して別の学校に採用され、また処分された例もあり、教員免許を再取得できないようにする法改正を検討したが、刑法上、刑の執行が終わり10年で前科とみなされなくなることと整合性が取れず、断念。今年2月、処分歴を検索できる期間が当初3年だったのを40年に延長した。

 一方、刑法の性犯罪規定見直しを進めている法務省の検討会でも、性交同意年齢を現行の13歳から16歳に引き上げることなどが議論されている。地位・関係性を利用して性的関係を持つ行為を罰する規定を設けるべきだとの案も出ている。

 法整備とともに重要なのが、学校現場の対応だ。異変に気付いたり、子どもから被害を打ち明けられたりしたときに、学校・教委側がそれをしっかりと受け止め、二次的被害や偏見にさらされないよう配慮しながら調査を尽くせる態勢を取れるか。一連の対策の成否はそこにかかっている。





教員の性暴力 根絶に向け法整備急げ(2021年5月13日配信『東奥日報」-「時論」/『茨城新聞』-「論説」)

 児童生徒に対する教員のわいせつ行為などをなくそうと自民、公明両党の検討チームが新たな法律の素案をまとめた。野党との協議を経て超党派の議員立法で早期成立を目指す。現行制度では教員がわいせつ行為などで懲戒免職になり教員免許を失っても、3年たてば再取得できるが、処分歴を隠し再び教壇に立つ例が問題になっていた。

 法案は児童生徒への教員のわいせつ行為や性交を「児童生徒性暴力」と規定。免許再交付の申請に際し、都道府県の教育委員会が有識者らでつくる第三者委員会の意見や過去の処分歴を基に、再び性暴力を行わないと客観的に判断できる場合に限り認める。具体的な判断基準は今後詰める。

 また法務省の検討会では、性交同意年齢を現行の13歳から16歳に引き上げることなどが議論されている。教え子に対する性暴力は地位・関係性を利用した極めて悪質な犯罪で、尊敬や信頼を裏切られた子どもの心に深刻な傷を残す。文部科学省もさまざまな対策を重ねてきた。しかし目に見えるような成果にはつながっていない。

 わいせつ教員の数は高止まりしたままだ。あらゆる角度から教員の性暴力根絶に向け、法整備を急ぐ必要がある。併せて学校現場で、子どもがもっと相談しやすい環境を整えるなど、被害の早期発見と解明をより徹底することが求められる。

 文科省は2004年以降、児童生徒への性暴力で処分を受けた教員を原則として懲戒免職にするよう各教委に繰り返し通知。18年度以降に処分・教員免許失効の官報情報を検索できるシステムを教委や学校法人に提供した。しかし19年度、公立の小中高校などで、児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもにわいせつ行為をしたとして、126人が懲戒処分となった。

 処分歴を隠して別の学校に採用され、また処分された例もあり、教員免許を再取得できないようにする法改正を検討したが、刑法上、刑の執行が終わり10年で前科とみなされなくなることと整合性が取れず、断念。今年2月、処分歴を検索できる期間が当初3年だったのを40年に延長した。

 これに加えて与党案が成立すれば、文科省が当初検討していた法改正に近い形になるが、わいせつ行為を認め処分されずに自主退職するケースもあり、そうした情報の扱いや共有の在り方も課題となろう。ただし、更生を妨げることがないよう慎重な運用を要する。

 一方、刑法の性犯罪規定見直しを進めている法務省の検討会でも、教員の性暴力が取り上げられる中で「少なくとも義務教育を受けている間は保護の必要がある」と、16歳への性交同意年齢引き上げが提案された。被害者が16歳未満であることのみを犯罪成立の要件とし、処罰できるようにする案だが、同年代同士の性的行為を処罰するのは避けたいとの意見もあり、議論が続いている。

 地位・関係性を利用して性的関係を持つ行為を罰する規定を設けるべきだとの案も出ている。

 法整備とともに重要なのが、学校現場の対応だ。異変に気付いたり、子どもから被害を打ち明けられたりしたときに、学校・教委側がそれをしっかりと受け止め、二次的被害や偏見にさらされないよう配慮しながら調査を尽くせる態勢を取れるか。一連の対策の成否はそこにかかっている。





性暴力から子供守る新法に(2021年5月2日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 児童・生徒へのわいせつ行為で懲戒免職になった教員を学校現場に復帰させないため、自民・公明両党が議員立法で提出する新法の内容が固まった。

 現行法は、懲戒処分で教員免許が失効しても最短3年で再交付が可能だ。新法により、事案の悪質性や本人の更生の可能性などを総合的に考慮し、再交付しない裁量を都道府県教育委員会に与える制度に改める。教委が第三者委員会の意見を聴取して判断する。

 評価できるのは、わいせつ行為を「性暴力」と定義し、教委に厳正処分を義務付けた点である。体罰に関しては、学校教育法で問題のある児童・生徒に対して教師に一定の懲戒権を認める一方、肉体的苦痛を伴う行為は禁じる。

 新法では、児童・生徒の同意の有無にかかわらず、スキンシップなどの名目で行われる過度な身体的な接触も「性暴力」になる。法的根拠を明示する意義は大きい。

 課題もある。免許再交付の裁量を与えられた教委には、透明性のある審査で、問題教員を二度と教壇に立たせない厳正な処分を下す決意が求められる。

 国家資格である医師免許では、刑罰が確定した後、法務省から厚生労働省に情報が提供され、事件の経緯や示談の有無、再発防止策などについて本人の弁明を聞く。これを踏まえ、国の審議会が免許取り消しなどの処分を決める。

 教員免許は国家資格ではなく、都道府県教委が交付する。統一的な判断基準の指針を定める必要がある。望ましい手続きについて議論を深めてほしい。

 教員からわいせつ行為を受けた人へのアンケートでは、約8割が「その当時、性被害と認識できなかった」と回答した。後に被害を認識し、申告しても教委が問題発覚を恐れ調査しない事例が多い。

 児童虐待防止法は、虐待の疑いを発見した者に通報義務を課す。こうした制度も参考に、警察への通報、相談など早期対応を促す必要がある。まず、教委のことなかれ主義を改めることが肝心だ。





わいせつ教員 復帰させない法整備急げ(2021年4月4日配信『産経新聞』-「主張」)

 文部科学省が令和3年度から、懲戒免職となった教員の処分理由を官報に掲載する制度をスタートさせた。教育委員会や私立学校が教員を採用しようとする際に、応募者がわいせつ行為などで処分されていないかを確認できるようになる。

 だが、わいせつ教員から児童生徒を守るには官報への処分理由掲載だけでは十分でない。当面は新制度の運用に努めてほしいが、本質的解決策でないことを踏まえ、わいせつ行為で処分された教員を教壇に立たせないための法整備に進むべきだ。

 従来の制度では、懲戒免職で教員免許が失効すると、都道府県教委が官報に氏名や本籍地などを掲載することになっていた。文科省では平成30年以降、膨大な官報情報を集約して検索できるシステムを構築し、各教委や私立学校に提供してきた。

 ただし、免職理由を記さなかったため、教員免許を再取得し、わいせつ行為の処分歴を隠して採用されるケースがあった。そこで、令和3年度からは、わいせつ行為や交通違反など免職の理由を5分類して掲載することにした。

 従来制度の下では、官報に氏名が掲載されなかった懲戒免職者が元年度までの10年間で61人もいた。うち47人がわいせつ事案だった。ずさんな運用にあきれる。

 新制度は、わいせつ教員採用に一定の抑止効果が期待できるとはいえ、教委や私立学校には検索システムを利用する義務はない。わいせつ行為の懲戒免職者を採用することも禁じられていない。

 根本的な問題は懲戒免職で教員免許が失効しても、最短で3年後に再取得できる教員免許法にある。文科省は同法を改正し、再取得できない期間を延長したり、無期限にしたりすることを検討した。だが、憲法の「職業選択の自由」に反するなどの指摘に配慮して今国会提出を断念した。

 わいせつ教員の肩を持つ非常識な声に屈したのは極めておかしい。なぜ子供たちの安全を最優先にしないのか。自由は大切だが「公共の福祉に反しない限り」と憲法に明記されており、無制限ではないはずだ。更生の観点からも児童生徒のいる教室にわいせつ教員を戻してはならない。

 与党はわいせつ教員を教育現場から排除するため、法整備を検討中だ。教職の重みを踏まえ、実効性ある方策を講じてほしい。





わいせつ教員 子どもの尊厳を守らねば(2021年4月3日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 教育の場での性被害が絶えない。子どもの尊厳を傷つけ、学ぶ権利を損なう重大な人権侵害である。その認識に立って実態に目を向け、子どもをどう守るかを考えなければならない。

 児童・生徒へのわいせつ行為で免職や停職の懲戒処分を受けた公立校の教員は2019年度、126人に上った。教員との力関係から、子どもの性被害は表に出にくく、処分まで至るのはごく一部と指摘されている。

 深刻な実態を踏まえて文部科学省は、懲戒免職になった教員の再任を防ぐ対策を強めている。今月からは、処分を受けた教員の名前を公告する官報に処分理由を明示できるようにした。

 先行して、過去の処分歴を検索できる期間を従来の直近3年間から40年間に大幅に延長している。教員免許は失効して3年たてば再取得できるが、教育委員会が採用にあたり、過去にさかのぼって処分歴と理由を確認できれば、再び教職に就くのは難しくなる。

 教員免許を再取得できなくする制度改定も検討したが、今国会への法案提出は見送った。刑法は、禁錮や懲役を終えて10年が経過すれば刑は消滅すると定めている。憲法が職業選択の自由を保障していることも踏まえ、内閣法制局が、法制上の均衡が取れないとの見解を示したという。

 文科省はさらに検討を続ける姿勢だ。免許再取得の制限を強めることは許容されるとしても、生涯にわたって更生の機会を奪うまでの制約を課せるか。丁寧な議論が要る。処分理由を40年前まで調べられる仕組みも、一方で加害者の社会復帰を妨げる恐れがある。省令の改定で強い措置を取ったことの是非も問われるべきだ。

 考えなければならないのは、わいせつ行為をした教員をどうやって教育の場から遠ざけるかだけではない。被害を受けた子どもがためらわずに声を上げられるようにすること、その声をしっかりと受けとめ、子どもが心に負った深い傷を手当てすることが大事だ。

 教員同士の身内意識から見て見ぬふりをしたり、事を荒立てまいとして学校や教委がうやむやに済ませたりすることがあってはならない。学校が関与しない第三者機関に性被害の相談窓口を置き、調査にもあたる仕組みをつくることも一つの手だてだろう。

 性に関する理解が乏しく、被害を受けた認識を子ども自身が持てない場合や、自分を責めてしまう場合もある。性教育の大切さにもあらためて目を向けたい。





わいせつ教員対策/第三者委で徹底調査を(2021年2月24日配信『山陰中央新報』-「論説」)

 教員によるわいせつ行為やセクハラが後を絶たない。文部科学省によると、2019年度に懲戒処分や訓告を受けた公立の小中高校などの教員は273人。過去最多だった18年度より9人減ったが、高止まりの状態にある。そのうち、児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもにわいせつ行為をしたのは126人で、121人が免職となった。

 しかし、これは「氷山の一角」とみられる。子どもが被害を訴えても教員が否定した場合は校長や教育委員会による調査は身内に甘くなりがちで、処分に至らないケースが少なくないという批判は根強い。しかも懲戒免職となり教員免許が失効しても、3年経過すれば再取得は可能になる。

 被害者や支援団体が対策強化を求める中、文科省はこのほど、懲戒免職となった教員について氏名とともに、わいせつ行為など処分理由を官報に明記するよう教職員免許法施行規則の改正案をまとめた。各教委は教員採用時に文科省の「官報情報検索ツール」で過去の処分歴などを確認しているが、これまで理由は掲載されていなかった。

 わいせつ教員が再び採用されるのを防ぐ狙いがあり、一定の効果は期待できるだろう。とはいえ、被害が発覚した際に弁護士や専門家から成る第三者委員会を設置して事実関係を徹底調査するなど文科省や自治体、教育現場が連携し、さらに手を尽くす必要がある。

 文科省は、わいせつ行為をした教員を原則として懲戒免職にしたり、会員制交流サイト(SNS)による児童生徒との私的なやりとりを禁じるなど被害防止策を徹底したりするよう各教委に求めているが、思うように成果は上がっていない。

 免職・解雇された教員が処分歴を隠して別の教委に採用され、また処分された例もあり、教員免許を再取得できるまでの期間を3年から5年、さらに無期限に延長する教職員免許法改正をまず検討した。だが更生の観点から禁錮以上の刑の執行後10年で刑が消滅するとの刑法上の規定と整合性が取れず、断念した。

 また小児性愛と診断されると、教員免許を取得できないようにする法改正も検討したが、小児性愛の概念や診断基準が不明確として見送った。法改正以外の対策として残ったのが、わいせつ行為などの処分理由を官報に明記することだった。官報情報検索ツールの対象期間も現行の直近3年から過去40年に広げる。ただ被害をきちんと把握できなければ役に立たない。

 被害発覚時の調査で通常は校長や教委が主体となるが、事情を聴き事実関係を詰める作業は容易ではない。一方、子どもは信頼している教員との関係から話しにくい。その時は何が起きたか理解できず、大人になり被害を申告する人もいる。

 札幌市教委は1月、28年前に教え子にわいせつ行為をしたとして教諭を懲戒免職にした。被害女性は中高生の時にわいせつ行為を受け、20年以上たって懲戒処分を求めた。教諭は否定し、市教委は処分しなかったが、女性が教諭に損害賠償を求めた訴訟で昨年、裁判所が教諭の行為を認定。ようやく処分に至った。

 被害発覚当初の対応が鍵を握る。また児童生徒にアンケートを行い、被害の早期発見と防止につなげる取り組みも一部にあり、これを全国に広げることも検討したい。





第三者委設置 徹底調査を/教員のわいせつ行為(2021年2月18日配『東奥日報』-「時論」)

 教員によるわいせつ行為やセクハラが後を絶たない。文部科学省によると、2019年度に懲戒処分や訓告を受けた公立の小中高校などの教員は273人。過去最多だった18年度より9人減ったが、高止まりの状態にある。そのうち、児童生徒や卒業生ら18歳未満の子どもにわいせつ行為をしたのは126人で、121人が免職に。本県でも19年7月、教え子にわいせつな行為をしたとして、小学校の男性教諭が懲戒免職となった。

 しかし、これは「氷山の一角」とみられる。子どもが被害を訴えても教員が否定した場合、校長や教育委員会による調査は身内に甘くなりがちで、処分に至らないケースが少なくないという批判は根強い。しかも懲戒免職となり教員免許が失効しても、3年経過すれば再取得は可能だ。

 被害者や支援団体が対策強化を求める中、文科省は懲戒免職となった教員について氏名とともに、わいせつ行為など処分理由を官報に明記するよう教職員免許法施行規則の改正案をまとめた。

 各教委は教員採用時に文科省の「官報情報検索ツール」で過去の処分歴などを確認しているが、理由は掲載されていなかった。改正案はわいせつ教員が再び採用されるのを防ぐ狙いがあり、一定の効果は期待できるだろう。とはいえ、被害が発覚した際に弁護士や専門家から成る第三者委員会を設置して事実関係を徹底調査するなど文科省や自治体、教育現場が連携し、さらに手を尽くす必要がある。

 文科省は、わいせつ行為をした教員を原則として懲戒免職にしたり、会員制交流サイト(SNS)での児童生徒との私的なやりとりを禁じるなど被害防止策を徹底したりするよう各教委に求めているが、成果は上がっていない。免職・解雇された教員が処分歴を隠して別の教委に採用され、また処分された例もある。

 そこで、教員免許を再取得できるまでの期間を3年から5年、さらに無期限に延長する教職員免許法改正をまず検討。だが更生の観点から禁錮以上の刑の執行後10年で刑が消滅するとの刑法上の規定と整合性が取れず、断念した。また小児性愛と診断されると、教員免許を取得できないようにする法改正も検討したが、小児性愛の概念や診断基準が不明確として見送った。

 法改正以外の対策として残ったのが、わいせつ行為などの処分理由を官報に明記することだった。官報情報検索ツールの対象期間も現行の直近3年から過去40年に広げる。

 ただ被害をきちんと把握できなければ、それも役に立たない。被害発覚時の調査で通常は校長や教委が主体となるが、事実関係を詰める作業は容易ではない。一方、子どもは信頼する教員との関係から話しにくい。その時は何が起きたか理解できず、大人になり被害を申告する人もいる。

 札幌市教委は1月、28年前に教え子にわいせつ行為をしたとして教諭を懲戒免職にした。被害女性は中高生の時に
わいせつ行為を受け、20年以上たって懲戒処分を求めた。教諭は否定し、市教委は処分しなかったが、女性が教諭に損害賠償を求めた訴訟で昨年、裁判所が教諭の行為を認定。ようやく処分に至った。

 被害発覚当初の対応が鍵を握る。また児童生徒にアンケートを行い、被害の早期発見と防止につなげる取り組みも一部にあり、これを全国に広げることも検討したい。





学校での性被害 子供守る体制整備急げ(2021年1月30日配信『北海道新聞』-「社説」)

 28年前に当時の教え子だった女性に性的行為をしたとして、札幌市教委が市立中学校に勤務する男性教諭を懲戒免職処分とした。

 女性は中学時代は性被害を訴えられず、成人後に心身に不調をきたしながら対応を求め続けた。

 その痛苦の大きさは想像を絶する。札幌市教委が不備を認め、女性に謝罪したのは当然であり、遅きに失したと言わざるを得ない。

 今回は20年以上前の被害が問題となった上、教諭が行為を否定する中で民事訴訟の事実認定を基に異例の処分が下された。市教委の過去の対応はもちろん、処分に至った過程の検証が欠かせない。

 最優先すべきは、再発を防ぎ子供を守る体制を整えることだ。市教委は相談窓口の拡充や被害を調べる第三者機関の設置など、あらゆる対策を急がねばならない。

 市教委の発表によると、女性は中学3年の時から約2年間、通っていた学校や教諭の自宅などでわいせつ行為を受けた。

 女性は2019年に市と教諭に損害賠償を求めて提訴した。昨年末の東京高裁の控訴審判決は、損害賠償を請求できる20年の除斥期間を過ぎたとして訴えを棄却したが、性的行為の事実は認めた。

 市教委は裁判所の事実認定を重視し、わいせつ行為で処罰されれば原則免職とする指針に基づき教諭を処分した。

 市教委は「懲戒処分に時効はない」と説明するが、教諭は刑事罰を受けておらず、今回の調査期間は1カ月に満たない。処分対象となった事実については調査を続け説明する必要があろう。

 女性が市教委に訴え出たのは3回目だ。2001年の初回は応対せず、記録すら残していない。16年の2回目で調査に踏み切ったものの、処分には至らなかった。

 対応の落ち度は明白で、被害者の女性に寄り添う姿勢を著しく欠く。市教委に猛省を求めたい。

 性暴力は「魂の殺人」とも言われる。まして信頼すべき教師から被害を受ければ、心身の健やかな成長を阻害し、その後の人生に多大な影響を与える。

 近年、再発防止を求める被害者の動きが広がっている。その声を誠実に受け止め、被害をなくすよう努めなければならない。

 表面化する教員の性暴力は氷山の一角にすぎないとの指摘もある。逸脱行動を抑えるため精神医学者らの助言を生かしている長野県教委などの試みも参考になる。

 子供が身を守るための適切な性教育の重要性も強調したい。





わいせつ教員 教壇に立たせぬ法改正を(2021年1月26日配信『産経新聞』-「主張」)

 児童生徒らへのわいせつ行為で失効した教員免許の再取得を厳しくする法案について、文部科学省は今通常国会への提出を断念した。

 わいせつ教員を教室に戻してはならない。文科省は、改めて法改正に取り組むべきだ。

 教員免許法では、わいせつ行為などで懲戒免職や禁錮以上の刑に処せられると免許は失効するが、最短3年で再取得できる。これに対し保護者らでつくる市民団体などが、わいせつ教員を再び教壇に立たせないような法改正を求めていた。

 文科省は、再取得できない期間の延長や無期限にすることを検討していた。しかし、憲法が定める「職業選択の自由」に反するとの指摘や、禁錮以上の刑でも終了後10年で消滅する刑法の規定があることなどから、内閣法制局が法改正に難色を示していた。

 憲法22条による職業選択の自由は「公共の福祉に反しない限り」と明記され無制限ではない。多くは被害者が子供である特殊事案である。刑法の「刑の消滅」と矛盾するなら、教員免許法を特別法として優先させればいいことだ。

 文科省の調査によれば、わいせつ行為やセクハラで昨年度に処分された教員は273人で、過去2番目の多さだった。このうち170人は自校の児童生徒を含む子供を相手にしている。信頼していた先生からわいせつ行為を受けた子供たちのショックは大きい。沖縄県では平成25年、中学3年時にキスなどをされた女子生徒が1年後に自殺する事件も起きた。

 文科省は2月から、懲戒免職となった教員のデータを検索できるシステムの閲覧期間を、現行の過去5年間から40年間へと大幅に延長する。各地の教育委員会が、処分歴があるとは知らずに教員を採用するのを防ぐためだ。

 こうした措置は、わいせつ教員を再び教壇に立たせない取り組みとして高く評価したい。だがそれで十分とはいえない。わいせつ教員をめぐっては各教委で処分に差があるなど対応が分かれている。検索漏れや、私立学校に入り込む可能性もある。法改正によって厳格に教室から遠ざけるべきだ。

 わいせつ教員の教壇復帰は、子供たちや保護者を不安にさせ、学校の信頼を揺るがす。犯行時の環境に戻ることは当の教員にとっても更生の阻害要因となる。何もいいことはないはずだが。





教員のわいせつ行為 実効性ある対策が急務だ(2021年1月12日配信『熊本日日新聞』-「社説」)

 文部科学省は昨年末、2019年度にわいせつ行為やセクハラで処分された公立学校などの教員が273人に上ったことを明らかにした。最多の18年度から9人減ったものの、高止まりしている。

 被害者の半数近くは18歳未満の教え子らである。子どもを教え導く立場にある教員が、「魂の殺人」とも言われる性被害を引き起こしている現実をもっと深刻に受け止めるべきだ。実効性のある対策を早急に講じたい。

 教員のわいせつ行為が根絶できない背景には、性被害が表面化しにくいという教育界の構造的、組織的な問題があるといわれる。調査で明らかになった数字も氷山の一角だろう。

 学校での性被害は「スクールセクハラ」と呼ばれ、性犯罪だけでなく、子どもが不快に感じる行為も含まれる。「軽いスキンシップのつもりだった」などという言い訳は通用しない。教員は児童生徒に対して圧倒的に優位な立場にある上、被害が密室で起きることも多いからだ。

 耐え難い思いをしても子どもは拒否できず、行為が次第にエスカレートすることさえある。教員には、誰もが加害者になり得るという自覚が求められる。

 専門家は被害が減らない要因として、発生時点での調査が不十分な点を挙げる。教員が否認した場合、学校現場が真相究明に消極的になるとの批判も少なくない。何より、調査の主体を“身内”の校長や教育委員会が担うことが通例となっている。有識者や弁護士など第三者も交えて解決策を探り、そこで得られた成果を現場に還元する仕組みを整えるべきだ。

 国が昨年定めた「性犯罪・性暴力対策の強化の方針」は、20年度から3年間を対策の「集中強化期間」としている。具体的な施策として「わいせつ行為を行った教員等の厳正な処分」という項目も盛り込まれている。

 文科省は各教委に対し、わいせつ行為をした教員を原則懲戒処分にするよう要請。懲戒免職で失効した教員免許の再取得が可能となる期間を3年から5年に延ばす検討や、教委が免職処分歴を閲覧できる期間を3年から40年に延長するなど、対策を強化し始めた。

 福岡県では本年度から、専門の研修を受けた性暴力対策アドバイザーを小中高校などに派遣する事業を始めた。児童・生徒の発達段階に応じ、性暴力の根絶や被害者支援に関する総合的な教育をするという。静岡県では政令市以外の全公立学校で、小5~高3を対象にセクハラの有無を問うアンケートを実施している。いずれも被害の予防と早期発見を目指す取り組みで注目に値する。

 日本の教員は「世界一忙しい」と言われる。19年度に精神疾患で休職した教員は過去最多の5478人に達した。大半の教員はそうしたリスクを背負いながら、子どものために精いっぱい働いている。一部の不届き者のために信頼が損なわれている状況を、一日も早く打開してもらいたい。





わいせつ教員 子ども守る策、細やかに(2020年12月27日配信『中国新聞』-「社説」)

 教員による児童生徒へのわいせつ事案が後を絶たない。2019年度に全国の公立学校でわいせつ行為やセクハラを理由に処分された教員は273人に上ることが、文部科学省の調査で分かった。最多だった18年度に次ぐ多さで、高止まりの状態が続いている。

 そのうち126人は、勤務校の児童生徒らに対して加害行為に及んでいた。教え導く立場を使って、児童生徒を傷つけることは断じて許されない。性被害は子どもの心に深い傷を残す。政府は、再発防止策はもちろん、未然に防ぐためのあらゆる策を練らなくてはならない。

 文科省は既に、児童生徒にわいせつ行為をした教員を原則として懲戒免職にするよう全国の教育委員会に要請している。しかし処分数の高止まりを見ると、それが加害行為の歯止めになっているとは考えにくい。

 教育職員免許法では、懲戒免職となり教育免許が失効しても3年経過すれば再取得が可能となる。過去には懲戒免職となった人物がその後に別の地域で教員に採用され、再びわいせつ事件を起こした事例がある。

 そうしたことを防ぐため、政府は法改正し、再取得できない期間を無期限にすることで教育現場に戻れないようにすることを検討してきた。年明けの通常国会への法案提出を目指していたが、内閣法制局が個人の権利制限につながるとの見解を示したため、断念するという。

 わいせつ事案での処分歴のある人への免許取得が厳格化されれば、適性を欠く人材を見極める効果が一定に見込めよう。一方で憲法が保障する「職業選択の自由」との兼ね合いもある。

 議論は必要だが、子どもの人権を守ることを最優先に考えなければなるまい。そこで重要になるのは法改正以外の対策だ。

 文科省は教員の懲戒免職情報を官報に掲載する際、わいせつ行為が理由であることを明記する規定を設ける。さらに採用時に懲戒免職の処分歴を確認できる検索システムも見直し、閲覧できる期間を過去3年間から40年間に延長する。

 それでも処分歴のある人を教壇から排除するだけでは、子どもを性被害から守れまい。表面化している事案は「氷山の一角」と考えられるからだ。

 教員と子どもとでは立場や力関係に圧倒的な差がある。子どもが教員から受けた行為を被害だと認識できなかったり、抵抗できなかったり、声を上げられなかったりする事例も多い。

 文科省は毎年の処分件数を公表するだけではなく、潜在している被害についても把握する努力を続けるべきだ。そのためには全国の学校を対象につぶさに実態調査をする必要があろう。

 加害行為が行われた場所は、教室や部活動など学校施設内が多い。こうした構造的な危険性も踏まえ、対策を進めてほしい。教員と生徒が二人きりにならないよう複数の教員が関わるなど、指導体制の検証や意識改革、ルールづくりも要る。

 発生時の調査が不十分なことが、教員による加害行為が減らない要因との指摘もある。現在は学校長や教育委員会が調査主体となるのが通例で、身内である教員に甘くなりがちだという。第三者を交え、子どものSOSを受け止められる体制づくりを急がなくてはならない。





学校での性被害をなくすには(2020年12月22日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 教員の暴力など、教育現場での不祥事が後を絶たない。

 文部科学省が発表した教職員のわいせつ行為などの統計。処分を受けた者は氷山の一角だという指摘も。
とりわけ悪質で弁解の余地がないのが、会話での性的いやがらせや、体を触るなどのわいせつ行為だ。昨年度、全国の公立学校で懲戒処分を受けた教職員は273人で、過去2番目に多かった。

 そのうち126人が児童生徒への加害だった。教室や保健室、プールなどで行われた。教師と教え子という力関係から被害を周囲に打ち明けられず、問題教員が教壇に立ち続ける事例もある。

 今月、わいせつ行為に及んだ教員に損害賠償を求めた訴訟の控訴審判決があった。原告の女性は中学時代の性的被害を当時、申告できず、成人後に心身に不調をきたした。裁判所は被害の事実を認めたが、請求権が消滅する期間が過ぎたとして訴えを退けた。

 一方、教育委員会は事実関係を調査せず、教員は処分を免れた。専門家は、文部科学省が公表するわいせつ教員の統計は、氷山の一角にすぎないと指摘する。

 被害者や保護者でつくる市民団体は、わいせつ行為で懲戒免職処分になった教員に免許を再交付しないよう求める署名を国に提出した。同様の対応を促す意見書を可決した地方議会もある。

 近年、性暴力の被害者が連帯し、苦悩を分かち合う「フラワーデモ」が各地で行われている。再発防止を訴える切実な声に、真摯に向き合うときである。

 現行の教員免許法は、処分を受けて教員免許を失っても、3年たてば取得が可能だ。文科省は再取得までの制限期間を延長する法改正を検討する。

 欧米では再犯リスクが高いとして性犯罪歴がある者を、教員など子どもと接する職に就くことを禁じる国や州がある。各国の法制度も参考に刑事政策などの識者も交え、踏み込んだ議論を望みたい。

 被害者の人権に配慮しつつ、深刻な事案に警察などが速やかに関与する仕組みをどう整えるのか。教育委員会以外の専門家による相談窓口の拡充も急務だ。





教員のわいせつ行為 未然に防ぐための対策が急務だ(2020年11月26日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 教員による児童生徒へのわいせつ行為が後を絶たない。2018年度に全国の公立学校で、わいせつ行為などを原因に処分された教員は計282人。過去最多を更新しているが、処分に至るケースは「氷山の一角」と指摘される。

 性暴力は被害者に長期にわたって深刻な影響を与える。ましてや心身が成長途上の児童生徒が被害に遭い、加害者が信頼を寄せる教員であれば、その苦痛は計り知れない。一人たりとも被害を出さないとの意識で、防止対策に取り組むべきだ。

 文部科学省は04年以降、児童生徒へのわいせつ行為をした教員を、原則として懲戒免職にするよう各教育委員会に要請している。だが、歯止めとなっているとは言い難く、不祥事に関する報道が続いている。

 加えて、懲戒免職となっても3年たてば教員免許の再取得が可能だ。過去には別の地域で採用されて同様の事件を起こした事例もある。

 文科省は11月から、わいせつ行為に及んだ教員の免許再取得を厳格化するため、採用時に処分歴を検索システムで確認できる期間を直近3年から5年に変更し、来年2月には40年に延長する予定だ。法改正で免許の再取得までの期間を3年から5年に延長する案も検討している。適性を欠いた人材を採用段階で見極め、教壇から遠ざける効果が一定程度は見込めるだろう。

 一方で被害を未然に防ぐための環境を整えることが急務だ。

 18年度の文科省調査では、被害者の半数は勤務先の児童生徒や卒業生。わいせつ行為が行われたのは放課後や授業中、部活動など学校に関わる場面が3割近くに上った。教員は児童生徒と一対一になりやすく、両者の立場や力が対等でないという構造的な問題がある。

 子どもや保護者は教員を選べない。密室性が高い場面は、複数の教員が関わることを必須とするべきだ。また、教員が一人で抱え込まない環境づくりも欠かせない。児童生徒への指導は学校というチームで対応するという意識改革が学校や教委に求められる。

 当時は、わいせつ行為の被害を認識できず、大人になってトラウマ(心的外傷)を発症したケースもある。どういった行為が性暴力に該当するのかといった知識や、巻き込まれそうになった際の対処法を、保護者だけでなく学校側が児童生徒に伝えることで意識を高める必要がある。安全・安心であるべき学校内で被害が発生している現実を直視し、立場の弱い子どもたちの人権を守ることに万全を期さなければならない。

 近年は、教員が保護者に知られることなく児童生徒と連絡が取れる会員制交流サイト(SNS)が温床になっているとの指摘がある。児童生徒へのアンケートなどで実態把握に努めるのはもちろん、SOSを早期に受け止められる相談しやすい窓口づくりにも力を注ぐべきだ。





[わいせつ教員] 子ども守る対策厳格に(2020年11月4日配信『南日本新聞』-「社説」)

 鹿児島県議会が、児童生徒へのわいせつ行為で懲戒免職処分となった教員に免許を再交付しないよう、国に求める意見書を可決した。

 現行法では処分を受けて教員免許を失っても、3年たてば取得が可能だ。半面、教員のわいせつ事案は後を絶たず、他県では処分歴を隠して復職し、再び問題を起こした例もあり、子どもを守る厳格な対策が急がれる。

 性暴力で受ける傷は深く、先生と教え子という力関係を悪用した行為は卑劣極まりない。保護者らでつくる市民団体は再犯リスクを恐れ、問題教員が再び教壇に立たないよう法改正を求める陳情を5万4000人分の署名を添え、文部科学省に9月提出した。

 憲法が保障する「職業選択の自由」との兼ね合いもある。教育現場に復帰させないことの是非について議論を深めたい。

 文科省によると、わいせつ行為やセクハラで処分された公立学校の教員は2013年度に200人を超え、18年度は過去最多の282人に上った。被害者のほぼ半数は勤務先の児童生徒や卒業生だった。

 鹿児島県では12年度、わいせつ・セクハラ行為で6人が懲戒処分を受けた。この年はそれ以外の不祥事も相次ぎ、県教育委員会は有識者会議を設け、以来モラル向上の取り組みを続ける。しかし、この5年間でも4人がわいせつ事案で処分を受けているのが実情だ。

 フラワーデモなど性暴力の根絶を求める機運の高まりを背景に、文科省はわいせつ行為に及んだ教員の免許再取得の厳格化を進めている。採用時に懲戒免職の処分歴を官報で確認できる期間を直近3年から、来年2月には40年に延長する予定だ。免許再取得の制限期間の延長なども検討している。

 ただ、水際対策だけで十分とは言えないだろう。明るみに出る性被害は氷山の一角とされるからである。ましてや、子どもにとって教員は親の次に身近な大人といえ、信頼されるべき存在だ。絶対的な立場の相手に対し、ノーと言いづらい。

 性知識の乏しさから、被害として認識できていないケースも考えられる。中学卒業前から4年にわたって被害を受けた女性は「子どもは違和感や不快感を覚えても声を上げるのは困難。国が実態把握を」と訴える。

 近年は、学校の連絡手段となった会員制交流サイト(SNS)やメールによって、学校外で教員と子どもがつながりやすくなっていると指摘される。周囲の目が届きにくいため、私的なやりとり禁止をいま一度徹底したい。

 文科省や教育委員会は研修などを通じて教員のモラル向上に努めるのはもちろん、潜在被害の早期発見のためにも児童生徒のSOSをすくい上げるきめ細かい対応が求められる。





わいせつ先生 教室に戻してはならない(2020年10月7日配信『産経新聞』ー「主張」)

 児童生徒らへのわいせつ行為で処分される教員が後を絶たない。教育全体への信頼を損なうものだ。彼らが再び教壇に立つことに保護者らが反対するのは当然である。

 文部科学省は、児童生徒へのわいせつ行為は原則、懲戒免職とする方針を教育委員会などに伝えてきた。それでも不祥事が連日のように報じられる。

 保護者らでつくる「全国学校ハラスメント被害者連絡会」などは児童生徒らへのわいせつ行為で懲戒免職処分となった教員に免許を再交付しないよう求める署名を文科省に提出した。

 現行の教員免許法では懲戒免職や禁錮以上の刑が確定した場合、免許は失効するが、3年後に再取得できる。これに対して再取得できるまでの期間延長や、再取得できないようにすることが検討されている。

 萩生田光一文科相が「わいせつ教員を教壇に戻さないという方向で法改正していきたい」と述べたのは当然である。

 首をかしげるのは「更生を阻害する」「法改正は、職業選択の自由をうたう憲法に反する」といった慎重意見があることだ。

 萩生田氏も「職業選択の自由を拒むことが憲法上できるのか大きな課題もある」などと言及し、どうやら腰砕けになっている。


 憲法22条1項は「何人も、公共の福祉に反しない限り、居住、移転及び職業選択の自由を有する」と定めており、無制限にその自由を認めているわけではない。

 教え子へのわいせつ行為は、立場や力の違いを利用した極めて卑劣な犯罪である。政府が6月に決定した性犯罪・性暴力対策の強化方針でも教員のわいせつ行為に一層厳正な措置を求めている。

 文科省の平成30年度調査では、わいせつ行為により懲戒処分などを受けた公立小中高教員は282人で過去最悪を更新したが氷山の一角との指摘もある。わいせつ教員の勤務先の児童生徒や卒業生が被害者の半数に及ぶ。処分歴を隠して他地域で教壇に立ち、事件を繰り返す問題も起きている。

 更生の観点からも、児童生徒へのわいせつ教員を教室に戻すべきではない。薬物常習者の更生で大事なのは、薬物やこれを入手できる環境から遠ざけることだ。教室は彼らにとって更生に最も適さない環境であり、その復帰は児童生徒にとって恐怖でしかない。



教員による性暴力 被害根絶へ対策を進めよ(2020年10月7日配信『山陽新聞』-「社説」)

 わいせつ行為などが原因で処分される教員が増えている。2018年度は公立学校で過去最多の282人に上り、被害者の半数は勤務先の児童生徒や卒業生だった。

 こうした教員が再び教壇に立たないよう、被害者や保護者らでつくる団体が先月、懲戒免職処分を受けた教員に免許を再交付しないよう求める陳情書を文部科学省に提出した。賛同する約5万4千人分の署名が集まった。

 文科省は児童生徒にわいせつ行為をした教員について、原則として懲戒免職にするよう各教育委員会に要請している。ただ、免職で教員免許を失っても、現状では3年たてば再取得は可能だ。過去には別の地域で採用され、再び加害者になった例もある。

 被害を防ぐ対策強化が必要なことは間違いない。政府が6月に性犯罪・性暴力対策を強化する方針を決めたのを受け、文科省もすでに対策に乗りだしている。

 教員の懲戒免職処分歴を閲覧できるシステムを見直し、確認できる期間をこれまでの3年から40年に延ばした。各教委や学校法人がチェックし、処分を隠して採用されるケースを防ぎたい考えだ。免許の再取得についても、教員免許法改正などで厳格化する方向で検討している。

 保護者らの団体が求めるように再交付を不可能にすることは、憲法が保障する職業選択の自由との兼ね合いも出てくる。医師の場合も免許の取り消し処分があり、5年たてば再取得できる。ただ、医師は患者側が受診するかどうかを選べるが、教員の場合は子どもに選択の自由はない。文科省は再取得までの期間を3年から5年に延ばす案も検討しているようだが、問題の根本的な解決にはなるまい。

 性犯罪者の更生を支援する専門家からは、子どもの近くにいることが再犯リスクにつながるとの指摘も出ている。医学的な知見も踏まえ、議論を進めてもらいたい。

 教員の性暴力があらためて注目される背景には、被害者と支援者が街頭で花を手に被害撲滅を訴える「フラワーデモ」の広がりがある。教員から被害を受けた当事者が各地で体験を語り始めている。

 在学中、中学校の教員から被害を受けた女性は、性的なことをするのが恋愛だと思い込まされ、当時は被害を認識できず、20年以上たってから心的外傷後ストレス障害(PTSD)を発症したという。こうした被害の実態に、多くの大人がこれまで目を向けてこなかったのではないか。

 教員と児童生徒はそもそも対等でなく、圧倒的な支配関係が存在する。学校は性暴力が起こりやすい構造であることを教員自身に自覚させるために、研修の強化なども必要だろう。

 教員が処分された事例は、氷山の一角である可能性が高い。児童生徒へのアンケートなどで定期的に被害の実態を把握することが求められる。






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