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不妊治療の保険適用/令和時代の社会保障 構築を(2020年10月8日配信『河北新報』-「社説」)

 菅内閣は9月の発足時に閣議決定した基本方針で、不妊治療への保険適用を柱とした少子化対策、誰もが安心できる社会保障制度の構築に力を注ぐ考えを示した。

 不妊治療で公的医療保険が適用されるのは現在、医師の指示で夫婦生活を営むタイミング法、薬物で卵巣を刺激する排卵誘発法など一部に限られる。それ以外の生殖補助医療は所得、年齢といった制限の下で助成を受けられるにすぎない。

 保険適用の拡大には議論に一定の時間がかかるため、厚生労働省は所得制限の撤廃など既存制度の拡充を先行させる方向で検討に入った。少子化対策は喫緊の課題だけに、迅速な対応を評価したい。

 国内初の体外受精児は1983年、東北大病院で誕生した。当時は倫理問題などが浮上し、世論は反対派が多くを占めた。以降、医療技術の普及、成功率の上昇を背景に加速度的に増えている。

 日本産科婦人科学会の調査によると、不妊治療の体外受精によって2018年に誕生した乳児の数は5万6979人で過去最多を更新した。この年の総出生数は91万8400人で、おおむね16人に1人が体外受精で生まれた計算になる。

 子どもが欲しくても、授かることができなかった夫婦の救いの手になっていることは間違いない。

 一方で、高額な費用が大きな負担、治療の障壁になってきたことも無視できない。配偶者間の人工授精は1回当たりの平均額で1万~3万円。体外受精や顕微授精ともなれば20万~70万円にも上る。

 02年7月、当時の坂口力厚生労働相は不妊治療への対応について「保険の中でやるのか、一般財源でやるのかは別にして、何らかの形で支援する態勢を取り入れなければならない」と表明した。

 それから18年余り。田村憲久厚労相は就任後、「子どもを産むかどうかは個人の自由で、産みたいけど産めない人を手伝うのが国の役割、というのが首相の思いだ」と言及している。

 厚労省は21年度予算の概算要求で、不妊治療を受ける人への助成金制度に20年度と同額の151億円を計上した。助成額の拡充や対象範囲が決まれば、年末の予算編成過程で上積みされる見込みだ。

 時代の流れとともに、不妊治療への社会認識は大きく変化した。同時に支援制度の抜本的な転換期を迎えているとも言える。

 国は5月に公表した第4次少子化社会対策大綱で、希望するタイミングで希望する数の子どもを持てる「希望出生率1.8」の実現に向け、令和の時代にふさわしい環境を整備すると明記した。

 対策を通して多くの子どもたちの笑い声が響く社会をつくり、確かな社会保障制度の構築に結び付けなければならない。

不妊治療助成 当事者の実態踏まえ議論深めよ(2020年10月8日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 政府は、不妊治療を受ける人への助成制度に関し、現在の所得制限を撤廃する方向で検討に入った。年末までの予算編成過程で詳細を詰め、来春から実施する方針を示している。

 不妊治療は、一部を除き保険適用外のため、患者の自己負担が大きいことが課題となっていた。所得制限の撤廃で幅広い世帯が対象となり、経済的な理由で治療を諦めるケースが減ることが期待される。

 菅義偉首相は、少子化対策の柱として不妊治療の保険適用拡大を打ち出しており、今回の方針はその前段となる。子どもを望む人たちが安心して治療を受けられる環境の整備に向け、当事者らの声を聞きながら議論を深めることが肝要だ。

 晩婚化などの影響で不妊治療を受ける人は増えている。日本産科婦人科学会によると、2018年の体外受精の件数は45万件を超え、過去最多の約5万7千人の子どもが生まれている。

 公的医療保険が適用されるのは、不妊の原因検査や排卵誘発剤を使う治療など一部に限られる。高度治療の体外受精や顕微授精は1回数十万円かかるとされ、総額500万円以上かかったという人が7%いたというデータもある。治療を望んでいながら、諦めたケースが相当数あることは想像に難くない。

 現行の助成制度は、所得の合計が730万円未満の夫婦などが対象だったが、政府はこれを撤廃する方針。そのほか、最大6回と定めている助成回数を、不妊治療で一度出産した後に再び治療を受ける場合に限り、回数制限の緩和を検討する。経済的なハードルを下げ、第2子以降でも治療を受けやすくすることは意義があろう。

 政府は、最終的に保険適用の拡大を目指しているが、議論に時間がかかるため、今回は既存の制度を拡充する形をとった。今後、治療にどの程度の費用がかかっているかなどの実態調査を始める。医療機関のほか、一般の人も対象とする予定だ。

 制度づくりの上で、治療の安全性や有効性の確認は大前提となる。現場の医師からは、保険適用の内容次第では治療の自由度が担保できず、柔軟な対応が難しくなるという危惧や、医療サービスの価格が低く抑えられた場合に、治療の質の低下につながるといった指摘がある。こうした課題について、専門的な見地から慎重に検討することが欠かせない。

 公的医療保険の財源は、主に国民の保険料や税で賄われている。適用する範囲の線引きや、財源確保もテーマとなろう。

 経済的な支援だけでなく、治療による心理的な負担の軽減や仕事との両立の支援も求められる。民間企業では、不妊治療を理由とする特別休暇や在宅勤務を認める新制度を導入するなどの動きもある。こうした先進例を踏まえながら、望む人が子どもを産み、育てやすい環境づくりを官民で進めていかなければならない。




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