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(論)コロナ対策民間検証に関する論説(2020年10月10・11・12・15・18・19・21・23日) 

コロナ再燃 感染防止に改めて目を(2020年10月30日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルスが欧州で再び猛威を振るっている。各国で1日の新規感染者数が過去最多を更新、多くの国が外出制限や営業規制といった感染対策の再強化へかじを切り直した。

 今春の第1波を移動制限などで抑え込んだ。緩和に伴う人の移動や集まりが増え、10月に入って新規感染者が急増。欧州全体の累計は560万人を超え、米国、インドに次ぐ規模になっている。

 第1波に比べて検査や医療の体制が整い、死者が急激に増える事態は防いできた。ただ、世界保健機関は「今後数週間で集中治療室での治療態勢が許容量を超える」と警鐘を鳴らしている。

 欧州の状況は人ごとではない。日本の感染動向も気掛かりだ。

 7月からの感染再拡大は8月初めをピークに減少したが、9月以降は高止まりが続く。

 首都圏で新規感染者が減少していかない。地方でも、クラスター(感染者集団)が相次いで発生している。1日の新規感染者数を更新する県もあり、全国の感染者数の累計は10万人を超えた。

 厚生労働省の専門家組織は「10月以降、全国的には微増傾向が続いている」と分析している。

 政府が「GoToキャンペーン」など経済再生策に力を入れ、感染症に対する国民の警戒感は薄らいでいる。改めて感染防止策に目を向ける時ではないか。

 空気が乾燥する冬場はウイルスが遠くまで拡散し流行しやすくなるとの指摘がある。インフルエンザと新型コロナの同時流行に備えた医療体制の整備が不可欠だ。

 国の要請に基づき、長野県も来月中旬を目安に地域のかかりつけ医でも相談や診療、検査ができる準備を進めている。県内の3割に当たる491医療機関を「診療・検査医療機関」に指定した。

 発熱などの症状が出たらどこに相談すればいいか。診療や検査にはどうつながっていくのか。混乱を招かぬよう自治体や医師会は丁寧な情報公開に努めたい。

 指定された医療機関への支援も重要だ。国の補助金は感染対策をしたのに患者が来なかった場合の損失を補うことが目的で、診療すると減額される。現場を支える助成になっているか疑問が残る。

 医療従事者が感染し休業せざるを得なくなった場合の補償や風評被害への対応といった課題もある。望ましい支援のあり方を、早急に検討しなければならない。

 何より感染防止は一人一人の問題だ。危険な時季が近づいたと心得て慎重さを忘れずにいたい。



コロナ対応検証/場当たりの実情明らかに(2020年10月23日配信『神戸新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症への一連の政府対応について、民間シンクタンクの臨時調査会が安倍晋三前首相や閣僚、官僚ら83人への聞き取りを基に検証し報告書をまとめた。

 人口当たりの死者数や重症者数が欧米を大きく下回る現状を評価する一方、場当たり的な政策判断が繰り返された実情も明らかにした。医療資源の適正配置や優れた集中医療が「最後の防波堤」となって死者数を減らしたとも指摘した。

 前例のないコロナ禍で、手探りの政策立案を強いられた点は否めない。だが「国難」に際して、さまざまな知見や情報を分析し最善の策を取るという危機管理の基本が徹底されていたとは言い難い。インフルエンザの流行期も近づく中、政府は検証結果を真摯(しんし)に受け止め、謙虚な姿勢で備えを固める必要がある。

 報告書で改めて浮かび上がるのは、安倍氏や側近の独断専行だ。

 2月に突然指示した一斉休校について、安倍氏は子どもから高齢者への感染拡大を懸念したと述べている。しかし専門家会議に諮っておらず、世論の反発や批判は高まった。

 その点が官邸を消耗させ、欧州からの感染者の流入阻止に十分な指導力を発揮できず、後の感染拡大を招いたと報告書は指摘する。

 国民への布マスク配布についても「政策コミュニケーションとしては問題の多い施策」と位置づけ、官邸スタッフの「総理室の一部が突っ走った」との証言を記している。

 専門家会議の提言に首相サイドが抵抗し、数値目標を緩める「交渉」を余儀なくされたとの記録もある。安倍氏は会見に専門家会議の尾身茂副座長を何度も同席させたが、政策の後ろ盾には利用しても、科学的知見に誠実に向き合う姿勢は乏しかったと思わざるをえない。

 感染が増えるにつれ、自覚症状があってもPCR検査が容易に受けられない点に国民の不満が高まった。安倍氏は5月に「目詰まり」と表現して厚生労働省に検査拡充を指示したが、実態は容易に改まらなかった。報告省はこのとき厚労省が作成した内部資料を示し、「反論に過ぎず検査体制戦略を明確にしたものではない」と断じている。

 7年以上も「官邸主導」を政権の軸と自賛しながら、重要局面でなぜ指導力を発揮できなかったのか。安倍政権の継承を掲げる菅政権は自らの課題として直視するべきだ。

 報告書が記した「泥縄だったが結果オーライ」とする官邸スタッフの言葉から、政府も一連の対応に危うさを感じていたことがうかがえる。

 菅義偉首相は官房長官として政策決定の中枢にいた。反省点を洗い出し、早急に改善せねばならない。





コロナ民間臨調 政府自ら検証して備えるべきだ(2020年10月21日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 日本が欧米に比べて新型コロナウイルスの死亡率が低いのは正しい対策の結果なのか―。

 この問いに対し、新型コロナ対応・民間臨時調査会(民間臨調)が政府の対応を検証し、報告書をまとめた。「泥縄だったけど、結果オーライ」という官邸スタッフの証言に象徴される「場当たり的な判断の積み重ねだった」との指摘を、政府は重く受け止めねばならない。

 民間臨調は、安倍晋三前首相や菅義偉首相ら83人から聞き取り調査し、国内初の感染者が確認された1月から7月までの半年間を検証した。委員長は三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長が務めた。死亡率や経済への打撃が欧米より抑えられたと評価する一方で、対策の多くが戦略的に練られておらず「今後も危機管理がうまくいく保証はない」と断じた。保健所の組織やPCR検査体制の強化といった2009年の新型インフルエンザでの教訓が生かされていない点を挙げ、政府の「備えの甘さ」を批判している。

 報告書で注目すべきは官邸主導で決めた学校の一斉休校の判断が、水際対策の遅れに影響したとの見方だ。「疫学的にはほとんど意味がなかった」とされた一斉休校は、専門家や文部科学省とも十分に協議せず、安倍前首相らがトップダウンで判断した。実施直後、世論の強い批判を浴びて「首相がかなり参っていた」ために、卒業する大学生を念頭に官邸の一部が検討していた欧州旅行の中止措置が提案されず、見送られた。官邸のスタッフは「一番悔やまれる」と振り返っている。

 マスクの配布も関係省庁との十分な事前調整なしに首相周辺の主導で決定され、国民の混乱や反発を招き、政権の体力を奪った。政府は「事態が収束した段階」として検証を先送りしているが、こうした不手際を自らが総括して認めない限り、国民に根付いたコロナ対策への不信は解消されないだろう。

 専門家による科学的根拠を基にした対策の選択肢を政治が選び取り、その責任を負うのが本来の姿だが、専門家会議との役割や責任の分担が不明瞭になったことも対策への不信に拍車を掛けた。科学的な正解が定まらない中、感染拡大防止と経済維持を両立させる最適解を求め、政治と専門家が衝突する場面もあるだろう。乗り越えるためには議論の過程を透明化し、国民に丁寧に説明するほかない。報告書が指摘しているように決定プロセスと結果の検証を可能にするためにも、議事録を残すことが課題となる。

 民間臨調は、行政の要請や指示に対する国民の自主的な協力を前提とした危機管理体制は重大な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えていると警告する。政府は法的強制力による行動制限を伴わないコロナ対策を今後も踏襲するのであれば、想定される第2波でも従来のやり方が通用するのかを見極めるために、自ら検証し備えることが必要だ。





コロナ民間検証 重い指摘、政策に生かせ(2020年10月19日配信『中国新聞』-「社説」)

 「場当たり的な判断の積み重ねだった」。新型コロナウイルスを巡る政府の対応に、厳しい評価が下された。

 独立系シンクタンクの設けた新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)による施策の検証結果である。最初に感染者を確認した1月半ばからの半年間を報告書にまとめた。

 唐突だった全国一斉の休校要請や、税金の無駄遣いと批判された「アベノマスク」などを考えると、うなずけよう。

 政府は、法的強制力や罰則を伴わない休業要請中心の感染拡大防止策と、経済ダメージ抑制の両立を目指した。そんな「日本モデル」の「力を示した」と緊急事態宣言を解除した5月の会見で安倍晋三首相は胸を張った。確かに死亡率や経済への打撃は欧米より抑えられていた。

 しかし内実は試行錯誤の連続で、施策も戦略的に練られていなかった。「泥縄だったけど、結果オーライだった」。報告書に載った官邸スタッフの本音が実態を表している。喜んではいられない。

 たまたま今回は何とかしのいだ。しかし次は…。そんな不安が拭い去れない。政府は、検証結果を重く受け止め、政策に生かさなければならない。自ら検証することも必要である。

 3月からの全国一斉休校は学校現場を混乱させた。反対意見を押し切って実施したため、給食や学童保育の対応が間に合わず、子どもだけではなく、保護者にもしわ寄せが及んだ。

 肝心の効果にも疑問符が付く。感染症の専門家によれば「疫学的にはほとんど意味がなかった」。子どもが感染源になることはあまりないからだ。

 アベノマスクについては、厚生労働省や経済産業省との事前調整なしに「総理室の一部が突っ走った。失敗だった」。そう官邸スタッフが漏らす始末だ。

 なぜ、こうなったのか。

 11年前の新型インフルエンザの教訓を政府が生かしてこなかったからだろう。当時、厚労省は新たな感染症に備え、さまざまな場合を想定して万全の対策を講じるよう、専門家会議から指摘されていた。

 学校封鎖や水際作戦などでは複数の選択肢を用意し状況に応じて、どの対策を講じるか、柔軟に決める▽国立感染症研究所や地方の保健所をはじめ専門組織や人員を拡充する―などだ。

 ところが、感染研や保健所の予算と人員を年々減らすなど、危機管理体制を強化するどころか弱体化させた。PCR検査の拡大が「目詰まり」を起こしたのも政策の過ちが一因と言えよう。猛省する必要がある。

 今回、「デジタル敗戦」と酷評された政府のお粗末な実態も明らかになった。一律10万円の給付金や、感染者データの全国集計でデジタル化の遅れが混乱を招いた。改善が急がれる。

 決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことも、民間臨調は課題として挙げている。場当たり的な施策を繰り返さないよう、政府は肝に銘じなければならない。

 新型コロナ特別措置法の改正も提言している。休業要請に応じやすいよう、経済的補償や罰則などの検討が欠かせないというのだ。国民の命や健康を守り、生活基盤を支えるためである。来週にも始まる臨時国会で議論を深めるべきである。





コロナ民間臨調 指摘生かし対策万全に(2020年10月18日配信『北海道新聞』-「社説」)

 政府の新型コロナウイルス対策は、場当たり的な判断の積み重ねだった―。

 政府の取り組みを検証した有識者による「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(コロナ民間臨調)がまとめた報告書の結論だ。

 長期の営業自粛に対する経済的補償やPCR検査の態勢強化など、大規模な感染症への備えが欠如していたと分析する。

 欧米に比べ死者が少ないことなどを根拠に「日本モデル」と胸を張った政府の自己評価との落差は、大きいと言わざるを得ない。

 現在も新規感染者数が高止まりし、収束の見通しが立たない。政府は指摘を謙虚に受け止め、これまでの施策を自ら検証して対策に万全を期さなければならない。

 民間臨調は、国内初の感染者が確認された1月から約半年間を対象に、安倍晋三前首相や閣僚、官僚ら83人に聞き取り調査した。

 報告書では、安倍氏が主導した全国一斉の休校要請について、政府の専門家会議の関係者が「疫学的にほとんど意味がなかった」と述べている。

 しかも、要請が世論の批判を受けたため、春の感染拡大を招いた欧州との往来を中止するよう安倍氏に進言できなかったと、首相官邸の関係者は証言する。

 科学的根拠の薄い施策で教育現場を混乱させ、水際対策の決定的な遅れにも至った可能性がある。

 緊急事態宣言を巡っては専門家会議が提案した解除基準を、経済活動再開を重視する安倍氏と官房長官だった菅義偉首相が難色を示して緩和するなど、官邸と専門家が衝突した経緯を明らかにした。

 未知のウイルスだけに、専門家でさえ、見解が分かれることがある。決断の責任は政治にある。どういう理由でその施策を選択したかを国民に分かるように説明する必要がある。

 報告書は休業要請に応じやすいよう、新型コロナ特措法を改正して経済的な補償を用意することを提言する。

 対策の検証や特措法の改正に関し、菅首相は感染の収束後に行うとの姿勢を崩さない。

 だが、政府はいま、来夏の東京五輪開催をにらみ、イベントの入場制限緩和などを矢継ぎ早に打ち出す。だからこそ万全の感染対策が求められる。検証抜きでは場当たりの対応が続きかねない。

 ただちに対策に何が足りないかを探り、必要な法改正を講じるべきだ。26日開会の臨時国会でしっかり議論してもらいたい。





コロナ民間臨調報告/政府は自ら検証しないのか(2020年10月15日配信『河北新報』-「社説」)

 死亡率が比較的低く抑えられたのは、備えが十分だったからではない。「結果オーライ」と安易に受け止めることはできまい。

 「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(民間臨調)が、半年間の政府の取り組みを検証し、3月の一斉休校と緊急事態宣言など一連の施策について「場当たり的な判断の積み重ねだった」と断じた。

 民間臨調は独立系シンクタンクが設立した。財界、研究者らが安倍晋三首相(当時)や閣僚、官僚ら83人から聞き取った。

 検証の焦点は、一斉休校など初期の感染拡大防止対策の決定プロセスとその是非だ。

 一斉休校は、専門家の「コロナに対する闘いが瀬戸際にきている」との発言が影響し、安倍首相が急きょ決断した。教育現場や各家庭への影響が大きい問題にもかかわらず、文部科学省や専門家会議(現在は廃止)に事前相談はなかった。

 聞き取りに対し、専門家会議の関係者は一斉休校を「疫学的にはほとんど意味がなかった」と指摘した。

 学校での集団生活で生じる「3密」を回避するためとはいえ、混乱ばかりが目立った。

 ひとり親世帯などでは、子どもを預ける場を確保し、学校側は休校中の対応を急いで決める必要に追われた。準備期間が全くない突然の休校が批判されるのは当然だ。

 休校決定の連携不足が他の施策に悪影響も及ぼした。

 専門家会議は3月中旬、欧州で感染が拡大しているとして水際対策の強化を求めた。

 政府は首相が主導した一斉休校に対する世論の反発と批判の大きさに消耗していたという。このため欧州旅行の中止を首相に進言できなかった。その後感染が拡大し、官邸スタッフは「一番悔やまれる」と振り返った。

 大きな転換となる局面で、冷静さを欠いた判断ミスだ。施策を戦略的に練っていないのが要因だ。

 「アベノマスク」の全世帯配布も、官邸スタッフが「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と証言している。

 報告書は、決定プロセスと結果の検証を可能にするため、議事録を残すことも課題だと指摘した。休業要請に応じやすいよう経済的な補償の法制化なども提言した。

 休業補償に関しては、全国知事会が地域の実情に応じた対策を可能にするため、自治体の権限強化を訴えている。

 民間臨調の報告を待たずとも、経済と感染防止を両立させるためには、全国一律ではなく、地域ごとのきめの細かい、タイムリーな施策こそ有効なことが明白だ。

 安倍氏は欧米に比べて感染者数や死者数を抑え込んだとして「日本モデル」と自賛した。民間臨調の検証結果と認識のずれが、これほど大きいのはなぜか。政府は自ら検証する責務を負うはずだ。





コロナ民間臨調 検証結果を政策に生かせ(2020年10月12日配信『琉球新報』-「社説」)

 「泥縄だったけど、結果オーライだった」

 安倍政権下での新型コロナウイルス対策は、この一言に象徴される。8日までにまとめた新型コロナ対応・民間臨時調査会(コロナ民間臨調)の報告書に記された証言だ。

 誰もが想定しなかった感染症拡大への対応が難しかったのはやむを得ない。だがそこから何を学ぶのか。政府は民間の指摘を真剣に受け止め、政策に生かさねばならない。

 コロナ民間臨調はシンクタンクが設立した。財界、研究者ら4人の委員の下に専門家19人の作業部会を設け、安倍晋三首相(肩書はいずれも当時)や菅義偉官房長官、西村康稔コロナ担当相をはじめ、政府関係者ら83人に延べ101回のヒアリングとインタビューをした。検証期間は国内初の感染者が確認された1月から7月までの半年間だ。

 報告書から見えてくるのは、準備不足と場当たり的対応が積み重なったことだ。アベノマスクに代表されるように政策的、疫学的な検証もなく首相と周辺スタッフが暴走した状況も浮かび上がる。

 安倍氏が決断を下したもののうち、特に世論の反発を招いたのは全国一律の一斉休校とアベノマスクだろう。一斉休校の内情について報告書は「2月24日の専門家による『瀬戸際』発言がターニングポイントとなり、総理室は急きょ方針を転換」したと明かす。萩生田光一文科相(当時)から不満や疑問があったが、安倍氏が押し切った。

 マスク配布は「厚労省や経産省との十分な事前調整なしに首相周辺主導で決定」した。報告書で官邸スタッフは「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と認めている。

 こうした判断ミスの積み重ねは欧州からの旅行客流入制限遅れにもつながり、国内での感染拡大の一因になった。その背景を「一斉休校要請に対する世論の反発と批判の大きさに消耗し(中略)指導力を発揮できなかった」と報告書は結論付けている。

 法的な強制力を伴わない行動制限や集団感染対策、補償なき自粛・休業要請による拡大防止と経済の両立を目指すのが「日本モデル」と報告書は定義している。次に来るであろう感染拡大の波に対応するには、従来の「日本モデル」に不足する部分を補う政策立案と政権の指導力が必要だ。

 菅氏は安倍政権の継承を掲げたが、失敗と結論付けられたコロナ対策まで継ぐことはない。臨調の提言のうち専門家組織の総括・検証や危機対応法制見直しなど、できることを速やかに実行すべきだ。

 そもそもこうした検証は政府が主導して実施すべきものである。そのために不可欠なのが公文書による記録だ。安倍政権下では森友問題に見られるように公文書を軽視する姿勢が目立った。直面する課題への対応、将来世代への説明責任を含め、現政権には記録を残す重要性を肝に銘じてもらいたい。





口は一つ、耳は二つ(2020年10月11日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 話すこと以上に聞くことが大事だと説くことわざは洋の東西を問わずある。たとえば日本には「耳は大なるべく口は小なるべし」というものが。聞くことを多く、言うことは控えるようにという意味らしい。

 世界の名言辞典などを調べると、古代ギリシャの哲学者の言葉や、ユダヤのことわざには「口が一つなのに対して耳が二つあるのは、自分が話す倍の量、人の話を聞くため」といった意味のものが見つかる。顧みれば、その逆をいっているという方も多いのでは。

 新型コロナウイルス感染症に対する政府の取り組みを検証した、民間の調査会が報告書の内容を説明した。「アベノマスクは失敗だった」「一斉休校は疫学的に意味がない」。政府や専門家会議の関係者らの本音を紹介し「場当たり的な判断の積み重ねだった」と指摘した。

 安倍前首相は緊急事態宣言解除の際「日本モデルの力を示した」と強調。実際、欧米に比べ死亡率が抑えられたことなどは事実で調査会もそこは評価する。政府も口でもって自賛していいだろう。だが調査会が、多くの施策が戦略的に練られたものではなかったとしていることも忘れてはならない。

 ことわざ辞典を見ていて気付いたのは「諫言(かんげん)は耳に痛し」の類いの言葉の多さである。どれも先人が身をもって得た教訓なのだろう。厳しい調査会の報告。政府にとっては、さぞ耳が痛かろうが、ここはひとつ口の何倍もの「謙虚な耳」を持って受け入れたい。

コロナ対策民間検証 結果オーライでは困る(2020年10月10日配信『茨城新聞』-「論説」)

 政府の新型コロナウイルス対策について研究者、弁護士らの民間臨時調査会が、安倍晋三前首相らへの聞き取りに基づく検証報告書をまとめた。「場当たり的判断」の連続で、首相官邸と専門家が対立、政府内も足並みが乱れたと総括。それでも欧米より死亡率や経済への打撃を低く抑えられたのは「結果オーライ」(官邸スタッフ)にすぎないとの指摘は、深刻に受け止めるべきだ。

 国を挙げた危機管理の評価は民間任せではいけない。政府は既に進めている対策効果の科学検証とは別に、この間の自らの対応を徹底検証し教訓を今後に生かすべきだ。

 安倍氏は、ロックダウン(都市封鎖)のような強制措置なしで感染拡大防止と経済活動を両立できたのを「日本モデル」と誇った。だが報告書は「失敗でないにしても安易に成功と評することも適切でない」とした。日本モデルの「成果」を巡り、打った対策との因果関係が不明なまま「結果オーライ」と総括するのは次の危機管理を危うくするとの見解は的確だ。

 安倍氏の「今までの知見がない中、最善を尽くした」との自己評価にも疑問符が付いた。報告書は「2012年制定の新型インフルエンザ特別措置法は短期の自粛要請しか想定していなかった」と指摘。長期化の場合の経済的補償を検討せず、保健所などの予算・人員は年々削減、PCR検査能力も1日300件程度しか保持していなかったことを挙げ、政府の「備えの欠如」を批判した。

 そして報告書は数々の問題事例を示す。2月末、「ウイルスとの闘いは瀬戸際」との専門家見解を重く見た安倍氏は急きょ全国一斉の休校要請を決断。専門家に諮らず、萩生田光一文科相は「もう決めたんですか。本当にやるんですか」と驚いたという。このスタンドプレーの思わぬ悪影響も報告書は明らかにする。3月中旬、感染拡大の一因だった欧州への渡航の中止を専門家が要請したが、休校要請に反発する世論への対応で政府は「消耗」して中止措置が取れず、官邸スタッフは「あれが一番悔やまれる」と振り返った。危機管理は一つ歯車が狂うと連鎖反応を呼ぶ。安倍氏は自らの判断の結果を改めて見詰め直すべきだ。

 4月上旬の緊急事態宣言発令の前、小池百合子東京都知事が都市封鎖の可能性に言及し、国民の不安が高まったため「宣言が遅れた」(西村康稔経済再生担当相)とも報告された。だが当時の政府では菅義偉官房長官をはじめ経済への配慮から発令に慎重論が強かったことも指摘しており、都知事発言にかかわらず政府自体が発令をためらった側面も否定できない。

 宣言解除を巡っても、経済再生を急ぐ安倍氏は専門家提案の数値基準を「東京で解除できなくなる」、菅氏も「1桁違う」と緩和を要求。解除方針を決めてから意見を求める政府に専門家が「責任を持てない。国民が不信を抱く」と抗議したことも報告された。影響力を強める専門家を「ありがた迷惑」(官邸スタッフ)と煙たがった政府は、科学的根拠の薄い政策判断を押し通したと言われても仕方あるまい。

 報告書は、今回の教訓は10年前の新型インフルエンザ対策総括報告書に網羅されているとし、「国を挙げてのど元を過ぎると熱さを忘れてしまった」と断じた。政府は今度こそ学ぶ責任がある。



民間臨調の検証 指摘を今後に生かさねば(2020年10月10日配信『新潟日報』-「社説」)

 大規模な感染症への備えが欠けていたにもかかわらず、死亡率は低く抑えられてきた。報告書からはそうした状況が強くうかがえる。

 だが今後もうまくいくという保証はない。政府は報告書の指摘を真摯(しんし)に受け止め、新型コロナウイルス感染症対策に確実に生かしてもらいたい。

 民間有志グループ「新型コロナ対応・民間臨時調査会」(民間臨調)が、新型ウイルス対策を巡る半年間の施策を検証した報告書をまとめた。

 民間臨調は独立系シンクタンクのアジア・パシフィック・イニシアティブが設立した。三菱ケミカルホールディングスの小林喜光会長らが委員を務める。

 安倍晋三首相(当時)や閣僚、官僚ら83人に聞き取り、全国一斉の休校要請や緊急事態宣言発令時の状況などを調べた。

 半年間の政府対応について、報告書は「場当たり的な判断の積み重ねだった」と断じた。

 欧米に比べて死亡率や経済への打撃を抑えられたと評価する一方で、多くの施策が戦略的に練られていないとし、今後の危機管理に懸念を表明した。

 看過できないのは、首相と政権内部や専門家会議が十分に連携できていなかったことだ。

 3月からの一斉休校は、教育現場や各家庭への影響が大きい問題にもかかわらず、文部科学省や専門家会議に事前に相談することなく決定した。

 専門家会議の関係者は一斉休校を「疫学的にはほとんど意味がなかった」と振り返った。

 深刻なのは、連携不足が引き金になって他の施策が後手に回り、感染が広がる一因になったとみられることだ。

 専門家会議は3月中旬に、欧州で感染が拡大しているとして水際対策の強化を求めたが、一斉休校に対する批判などで消耗していた政府は、欧州旅行の中止措置を見送った。

 その後感染が拡大し、官邸スタッフは「一番悔やまれる」と証言した。

 一つのズレが、その後の対策のブレーキとなる。危機管理の上で肝に銘じるべき教訓だ。

 全世帯への「アベノマスク」配布も、官邸スタッフが「総理室の一部が突っ走った。あれは失敗」と証言している。

 報告書は、決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことも課題だとし、政府として対応を検証する必要性があると訴えている。政府はきちんと実施すべきだ。

 4月に発令した緊急事態宣言は強制力がなく、安倍首相は調査に「国民みんなが協力してくれないことには空振りに終わってしまう」と話したという。検証はより効果的な宣言の在り方を考える上でも意味があろう。

 菅政権になり、政府は観光支援事業の推進や全世界からの入国再開など、経済再生の取り組みを加速させているが、人の往来が国境を越えて広がれば、感染拡大の危険性はまた高まる。

 再び混乱を招かぬように、菅政権にはしっかりと足元をチェックしてもらいたい。



【コロナ民間臨調】政府は自ら検証を急げ(2020年10月10日配信『高知新聞』-「社説」)

 不確実性に包まれたウイルスが相手とはいえ、政府の対応は試行錯誤の連続で、失敗や課題も多いことを浮き彫りにしている。
 企業経営者や大学教授、弁護士らでつくる民間有志グループ、「新型コロナ対応・民間臨時調査会」が政府の新型コロナウイルス対策を検証し、報告書をまとめた。

 民間臨調は、日本で最初の感染者が確認された1月から半年間の政府対応を調査対象にした。安倍晋三前首相や閣僚、官僚ら83人に聞き取りを行っている。

 その上で、全国一斉の休校要請や緊急事態宣言の発出など一連の施策を「場当たり的な判断の積み重ねだった」と指摘した。

 報告書からは、政権内部や専門家会議(現在は廃止)との連携不足が混乱を招いたことがうかがえる。

 3月からの一斉休校は、専門家の「コロナに対する闘いが瀬戸際にきている」という発言で当時の安倍首相が急きょ決断。教育現場に与える影響の大きさにもかかわらず、事前に文部科学省や専門家会議への相談はなかった。

 専門家は「疫学的にはほとんど意味がなかった」と批判している。

 国内での3月中旬以降の感染拡大は、欧州で感染した人の流入が一因とされる。専門家会議は水際対策の強化を求めた。

 しかし政府は一斉休校に対する反発に消耗し、欧州旅行の中止措置は葬られた。首相官邸スタッフは「一番悔やまれる」と述べたという。

 巨額を投じて国民に配った布マスク「アベノマスク」も厚生労働省などと事前調整なく首相周辺が突っ走った。ここでも官邸スタッフは「あれは失敗」と証言している。

 疑問を感じるのは、ここまで政府自らの検証や総括がなく、そんな反省は国民に伝わっていないことだ。

 感染拡大防止に大きな役割を果たした専門家会議と、経済を重視する首相官邸は緊急事態宣言の解除基準などで「時に衝突した」とする。

 根拠を持った対策の選択肢と効果は専門家が示し、選んだ対策の責任は政治が負うのが本来の姿だ。

 今後の感染拡大期に向けては、より良い協働態勢の構築や役割分担の明確化が求められる。民間臨調が、対策の決定プロセスと結果を検証できるような議事録を残すことを課題としたのは、これまでの各分野からの批判とも重なる。

 安倍前首相は欧米と比べて感染者数や死者数を抑え込んだとし、「日本モデル」と自賛した。

 しかし、民間臨調は国民の自主的な協力を前提とした危機管理体制は重大な脆弱(ぜいじゃく)性を抱えると指摘。休業補償の法制化などを提言した。反省すべきは反省し、今後に備えるのは政府の国民に対する責任である。

 政府は相変わらず検証は事態収束後としているが、批判や責任の追及を避ける思惑がありはしないか。感染症対策の情報は現政権だけのものではない。菅政権は情報を隠さず、自ら対応の検証を急ぐべきだ。




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gogotamu2019

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