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(論)キャッシュレス不正に関する論説(2020年10月10日)

キャッシュレス不正 官民の危機意識足りない(2020年10月11日配信『毎日新聞』-「社説」)

 キャッシュレス金融サービスを悪用して不正に資金が引き出される被害が拡大している。

 NTTドコモの電子決済サービス「ドコモ口座」を悪用した預貯金の不正引き出しは計約2800万円にのぼっている。発覚して1カ月余がたったが、被害の全容は不明なままだ。

 不正引き出しが多かったゆうちょ銀行では、他の電子決済サービスの悪用も判明している。計5000万円近くを補償したというが、顧客からの問い合わせが後を絶たない。

 不正を防げなかった背景には、決済事業者と銀行の双方が安全対策を相手任せにしたことがある。その結果、電子決済の口座を開設する時と銀行口座にひもづける際のいずれの段階でも「2段階認証」など適切な本人確認が行われていなかった。

 不正な取引はネット証券にも広がっている。SBI証券では顧客6人の口座から計約9800万円が流出した。

 証券口座のIDとパスワードを入手した何者かが不正にログインして株を売った上、本人になりすまして開いた銀行口座に資金を移した。銀行側は偽造された本人確認書類を見破れなかったというから深刻だ。

 いずれのケースでも銀行の口座情報がどのように盗まれたかは分かっていない。

 ネット金融犯罪は日々、巧妙化している。にもかかわらず、本人確認すら徹底しないままキャッシュレス事業を推進した業界や政府は、危機意識が足りなかったと言われても仕方がない。

 被害者への補償が遅れたことや、利用者自身が銀行通帳を確認しなければ不正引き出しの有無が分からないことも不信感を助長している。

 決済事業者と銀行は不正被害が起きた場合の責任分担ルールを決めていなかった。銀行業界は一連の問題を受け、ようやく異常なネット金融取引を検知するシステムの整備を検討し始めた。

 麻生太郎金融担当相は銀行などの対応を「遅い」と批判した。だが、そうした業界の実態を監督し切れなかった当局の責任も重い。官民あげて安全対策の再構築を急がなければならない。



ゆうちょ銀被害 情報開示の遅れが傷を広げた(2020年10月11日配信『読売新聞』-「社説」)

 国民に身近な金融サービスで、不正による被害が相次いでいるにもかかわらず、顧客軽視が目に余る。企業体質の抜本的な改革が急務だ。

 ゆうちょ銀行で、貯金口座にひも付けた電子決済サービスを通じて顧客のお金が流出する被害が多数、発覚した。

 不正引き出しは、9日時点で、NTTドコモの「ドコモ口座」やソフトバンクグループの「ペイペイ」など7社で210件、約5000万円が確認されている。

 口座とひも付ける際の本人確認が不十分だったという安全対策の不備が大きな要因だが、さらに問われるのは、情報開示に消極的なゆうちょ銀の姿勢である。

 ドコモ口座の不正引き出しが判明した後、記者会見で質問を受けた池田憲人社長は、ドコモ経由の被害以外は説明しなかった。その後、当時の高市総務相が「ドコモだけではない」と指摘し、不正被害の広がりが明らかになった。

 同様の不正は、2017年7月から起きていたが、それも公表していなかった。速やかに周知して注意を促していれば、被害の拡大を防げた可能性がある。

 不審な引き出しの相談を受けながら、数年以上、補償をしていない事例もあったという。顧客を保護する意識が、著しく欠如していると言わざるをえない。

 池田社長は、9月下旬になって記者会見で、「段取り調整が進んでいなかった。早く公表しなかったことは反省している」と陳謝したものの、失われた信用を取り戻すのは容易ではない。

 自社のプリペイド機能付きデビットカード「mijica(ミヂカ)」で不正送金が行われた問題でも、対処の遅れが目立った。

 8月に不正を確認していながら発表せず、9月半ばに送金の上限額を引き下げただけで、サービスの停止は見送っていた。それが被害を広げる結果を招いた。

 ゆうちょ銀は、約1億2000万の口座を抱える国民的な金融インフラである。丁寧な対応や説明など、「顧客第一」の営業姿勢を徹底することが不可欠だ。

 顧客からの苦情などの情報が、速やかに経営陣に伝わるような体制の整備が必要となろう。

 同じ日本郵政傘下のかんぽ生命保険では昨年、多くの不適切な契約が発覚して、強い批判を浴びた。現場の声が上層部に届かない風通しの悪さが一因とされた。

 日本郵政グループが一体となって問題点を洗い出し、再発防止につなげねばならない。



NTTとドコモ 利用者本位の経営徹底を(2020年10月11日配信新潟日報』-「社説」)

 一体的経営により、得られた果実は利用者にきちんと還元する。このことを肝に銘じてもらいたい。

 NTTは、上場子会社のNTTドコモを完全子会社化する。4兆円余りを投じて株式公開買い付け(TOB)を実施する。

 ドコモはNTTグループの中核で、国内携帯通信企業の最大手だ。完全子会社化するのは、迅速で一体的な経営判断をすることにより、競争力を高める狙いがある。

 背景には、第5世代(5G)移動通信システムが始まり、社会のデジタル化が加速する中、ドコモの対応が出遅れていることへの危機感がある。

 同じ国内携帯大手のKDDI(au)、ソフトバンクと比べると、ドコモは契約回線数こそトップを維持しているものの、営業利益ベースでは3位と劣っていることも理由だ。

 最終的な引き金になったのは、携帯電話料金の引き下げを強く求める菅政権の圧力だったとみられる。

 注目したいのは、利用者にとってのメリットだ。とりわけ携帯の料金引き下げにどう反映されるのか、ユーザーの関心は高いだろう。

 NTTの澤田純社長は「値下げと完全子会社化に直接の関係はないが、財務基盤を整えることで、値下げの余力が生まれる」と述べ、携帯料金引き下げの検討を明言した。

 ドコモの完全子会社化により、利用者が魅力を感じる新たな料金設定やサービスを打ち出すことができるか。

 日本が他の先進国と比べ「周回遅れ」とされる5G関連を巡っては、対応機種や通信網の拡大が急務となっている。NTTは今後、巨額の設備投資をする方針だ。

 利用者の利便性向上に資する研究開発の促進とともに、一体化によるコスト削減も目指すという。競争力強化に向けて大きな課題だろう。

 国内の携帯市場が頭打ちとなる中、ドコモは新たな収益源として電子マネーの決済サービス「ドコモ口座」を使った事業に力を入れてきた。

 ところが、9月にドコモ口座を巡る不正な預貯金引き出し問題が明らかになり、安全対策を置き去りにしてきたドコモの姿勢に強い批判が出た。

 こうした失態を繰り返さないための経営改革ができるかも問われよう。

 気掛かりなのは、NTTグループの肥大化だ。

 ドコモは1992年に移動通信事業の担い手としてNTTから分離された。NTTの肥大化を避ける意味があったが、今回の動きは、これに逆行するかのようにも映る。

 競合他社からは、公正な競争が確保できるか懸念する声も出ている。

 国は、携帯値下げにつながるとの観点から完全子会社化を肯定的に見ているが、NTTグループの支配力が強まることで市場にゆがみが生じないか。しっかり監視する必要がある。




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