FC2ブログ

記事一覧

週のはじめに考える 団結こそ平和を守る(2020年10月18日配信『東京新聞』-「社説」)

 75年前に誕生した国連は、基本的精神を盛り込んだ憲章を持っています。その前文が、今年あちこちで引用されました。

 「われら連合国の人民は、一生のうちに二度まで言語に絶する悲哀を人類に与えた戦争の惨害から将来の世代を救い…」

 国連の前身「国際連盟」には米国は参加せず、第二次大戦も防げませんでした。このため、二度と世界規模の戦争を起こさない。平和を守る。国連は、そんな願いのこもった組織でした。

◆全力で支援をした米国

 最も熱心に協力したのは米国でした。ルーズベルト大統領が創設に努力し、米議会も国連本部を誘致する決定を行いました。

 本部ビルの場所がニューヨークとなったのは、富豪のロックフェラー家が、マンハッタン島の中心部を購入する巨額な費用の寄贈を申し出たからでした。

 毎年秋に開かれる国連総会の一般討論演説で、米国が必ず二番手になるのは、多大な貢献に敬意を示してのことです。

 ただ米国は、徐々に国連への意欲を失っていきます。中核的組織である安全保障理事会で、旧ソ連が「拒否権」を使って抵抗し、思惑通りにならなかったためです。

 安保理の代わりとして米国は、国連総会の権限拡大を図りました。しかし、アフリカや中東などの国々が国連に加盟してくると、米国の意向は、総会でも反映されにくくなりました。

 米国は、国連に巨額な運営費を拠出しているのに…。そんな不満をあからさまに口にし、実際の行動に移したのが、トランプ大統領でした。

 世界では近年、自国中心主義が広がり、国連を軽視する傾向が強まっています。その代表的な国が米国というのは、歴史の皮肉というしかありません。

◆米中の激しいやりとり


 「トランプの米国」は、イランの核開発を巡る合意など多国間の合意に対して、「国益に合致しない」として離脱してしまいます。

 国連の専門機関である世界保健機関(WHO)には、運営が中国寄りだとして脱退まで通告してしまいました。

 9月22日の一般討論演説でトランプ氏は新型コロナウイルスを「中国ウイルス」と呼び、批判しました。同じ日に登場した中国の習近平国家主席は、政治問題化すべきでないとけん制しました。この米中首脳のやりとりに、失望を感じた人も多かったはずです。

 新型コロナによる死者は世界で100万人を超えました。グテレス国連事務総長は、このニュースを聞いて「われわれの未来は、人々と国々が団結し、連帯することにかかっている」と述べ、国際協調の必要性を訴えました。

 その国連は今、米中対立の影響で機能不全が深刻です。紛争地の即時停戦を求める安保理の決議採択に3カ月以上を要するなど、役割を果たせていません。

 国連は発足当時のままであり、複雑化している現状に対応できていないとの批判もあります。改革しようにも、各国の利害が複雑にからんでしまっています。

 しかし、現状を嘆く前に、国連としてできることをどう増やすかを考えたいものです。

 イスラエルの歴史学者、ユヴァル・ノア・ハラリ氏はコロナに関し、積極的に発言しています。

 彼は、ウイルスの感染を隔離によって防ぎたければ、感染症の大流行がなかった石器時代に戻るしかない、と指摘します。

 もちろん、そんなことは不可能です。「それなら」とハラリ氏は言います。

 「真の安全確保は、信頼のおける科学的情報の共有と、グローバルな団結によって達成されることを、歴史は語っている」(「緊急提言 パンデミック」)と。

 国連で国々が協力することこそ、平和や安全を守るということでしょう。

 ちょうど今年のノーベル平和賞に、国連傘下の世界食糧計画(WFP)が選ばれました。

 WFPは、世界各国の非政府組織(NGO)や、地元政府と協力して飢餓や貧困、紛争の撲滅を目指しています。「多国間協力」のモデルのような組織です。

◆米調査で7割国連必要

 トランプ氏の発言ばかりが目立ちますが、米国人の多くは、国連の必要性を認めています。

 米国の市民団体「より良き世界キャンペーン」が今年9月に米国で行った800人へのアンケートでは、73%の人が「国連は依然として必要だ」と認めていました。

 日本が果たすべき役割もあります。菅義偉首相は一般討論演説を通じて、国際社会の連帯を呼びかけました。

 米中の間に立つ日本だからこそ、国連に期待する大多数の国と市民をまとめていくことができるのではないでしょうか。




スポンサーサイト



プロフィール

gogotamu2019

Author:gogotamu2019
障害福祉・政治・平和問題の最新ニュース・論説紹介

最新記事

カテゴリ