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脱ハンコ(2020年10月19日配信『佐賀新聞』-「有明抄」)

 活字文化が全盛だったころ、流行作家の逸話には信じがたいものがある。『丹下左膳』の林不忘は複数のペンネームで連載を抱え、毎日締め切りに追われていた。鎌倉の自宅に原稿をもらいにきた編集者が早く東京に帰社できるよう、山にトンネルを掘った

◆忙しすぎて執筆中に眠ってしまうので、水風呂に漬けられたのが吉川英治。本を出版する際には家中がもうもうと白くかすんだ。むかしは発行部数を確認するため、著者が奧付に検印しなければならなかった。切手のようなシートから検印用紙を破るときに出る紙の粉が大量に舞った、というのである

◆「国民作家」ほどではないにせよ、省庁で年間1万件以上も使われている押印手続きはほとんど無駄だと、政府が廃止を進めている。たしかに、紙にいちいちハンコを押してやりとりするのは効率が悪い。実印ではなく認め印ですむ書類なら、ハンコを押す必要があるのかどうか

◆こうした動きに、県内の自治体も「脱ハンコ」を検討しているという。ただ、押印の手間がなくなったぐらいでは行革の実感は見えづらい。本人確認のために手間やコストがかかったら本末転倒だろう

◆婚姻届までハンコがいらなくなりそうな時代である。ハンコのない書類でも互いを信頼する…これからの社会に求められるのは、結婚と同様の覚悟だろうか。




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