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行政と押印 廃止ありきでいいのか(2020年10月20日配信『東京新聞』-「社説」)

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 国がハンコの原則廃止方針を打ち出している。行政効率化が最大の狙いだが、ハンコは日本社会に古くから根付く文化でもある。生産者や小売りへの配慮も含め公平で慎重な姿勢を求めたい。

 コロナ禍で在宅勤務が増える中、押印のためだけに出勤せざるを得ないケースがあったという。これがハンコ廃止のきっかけをつくったことは間違いないだろう。

 経団連の中西宏明会長(日立製作所会長)は「(ハンコを)美術品として残せばいい」と発言。河野太郎行政改革担当相が行政手続きにおける原則廃止を各省庁に要請し流れが加速した。

 ただ国が廃止の号令をかけた場合、その影響力は絶大だ。地方自治体や民間の各事業所などで、一気にハンコが消えていく可能性がある。

 ハンコという特定の製品の存廃について、国が方針を掲げることにも疑問を呈せざるを得ない。行政の効率化に異論はない。だが、どの程度行政の妨げになっているのか国民による十分な合意形成がないまま「廃止ありき」という考えであるのなら看過できない。

 ハンコは主に山梨県で生産され、取り扱う小売業者は全国にある。急激な廃止政策はハンコの生産・販売を仕事としてきた人々の生活手段の一部を奪う。廃止を進めるのなら、暮らしを保護するための施策は必須である。

 さらにハンコの廃止は国が進めるデジタル化推進の一環である。デジタル技術の活用をめぐっては、個人情報の取り扱いについてさまざまな議論がある。

 電子化された個人情報を国が把握することに抵抗感を持つ国民は多い。ハンコ廃止についてもデジタル推進をめぐる議論の流れの中で慎重に行うべきだ。

 ハンコは8世紀の大宝律令以降、国内で本格的に使われるようになったとされる。明治時代には、欧米にならってハンコをやめて署名に統一すべきだとの意見も出た。しかしハンコ文化は生き残った。

 今後、技術の進歩と共にハンコの形態も変わらざるを得ないだろう。印章大手のシヤチハタ(本社・名古屋市)は早くから「電子印鑑」を開発し商品化してきた。電子認証が広まる中、評価できる取り組みだ。

 最新技術を取り入れ仕事を効率化することは官民を問わず必要だ。ただその流れの中で置き去りにされる中小零細事業者への配慮を忘れてはならない。

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