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菅首相肝いり、不妊治療の保険適用はどうなる 専門家2人の意見(2020年10月20日配信『東京新聞』)

 菅義偉首相が議長を務める全世代型社会保障検討会議は、ごく一部に限られている不妊治療の保険適用を拡大するための議論を始めた。早ければ2022年度の実現を目指し、首相は年内に工程をまとめたい考えだ。患者の治療費負担軽減が期待される一方、制度を変えることにより生じる課題も指摘される。治療の最前線にいる専門医2人に聞いた。(川田篤志)

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◆菊地盤・メディカルパーク横浜院長 「治療が受けやすくなるのは歓迎」

―保険適用への賛否は。

 「基本的には賛成だ。費用面で躊躇する患者は多く、保険適用で治療が受けやすくなるのは歓迎すべきこと。体外受精は年齢的な限界があるので、35歳までに始めてほしい。お金に余裕がない若い夫婦が治療を先延ばしせず、必要な人に必要な医療が届けられるのは良いことだ」

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メディカルパーク横浜の菊地盤院長 ※新型コロナウイルス感染防止対策のため、写真撮影時のみマスクを外してもらいました。

 ―実現に向けた課題は。

 「必要最低限の治療は保険診療で行い、オプションの治療は自費で払う。つまり(保険診療と自由診療を組み合わせた)混合診療を認めてもらうしかない」

 ―厚生労働省は原則、混合診療を認めていない。

 「不妊の領域でエビデンス(科学的根拠)の高い治療は限られる。良い状態の受精卵を子宮に戻しても妊娠・出産に至らないケースもあり、いろんな手だてをしている。患者の卵巣機能や体質によって行う治療が全然違う。幅広い治療法を持っておかねばならない」

 ―混合診療は患者の不当な費用負担につながる恐れも指摘される。

 「自由診療が続いてきた不妊治療では薬や(受精卵を育てる)胚培養液に国内未承認が多い。混合診療を認めず保険適用になれば、多くの薬が使えなくなってしまう。製薬会社も今からお金をかけて全ての薬で治験を行うとは思えない」

 ―医療行為ごとの保険点数の設定も焦点だ。


 「病名と手術手技しゅぎによって一律の点数が決められる保険診療では、同じ手術でも患者の容体によって難易度が上がれば人件費や医療材料費が増え、病院側がやむなく負担する善意の搾取になっている。混合診療を含む国民皆保険制度のあり方を議論する良い機会になるのではないか」

混合診療 患者負担が原則1~3割の公的医療保険が適用される診療を受けながら、保険外の治療法や薬を使う自由診療を組み合わせられる制度。厚生労働省は、患者の費用負担が不当に拡大する恐れや、科学的根拠のない特殊な医療の実施を助長する可能性から、一部の先進医療などを除いて原則禁止している。現在は自由診療を併用すると、保険診療部分も含めて全額自己負担になる。

きくち・いわほ 1968年生まれ。順天堂大卒。同大医学部付属浦安病院リプロダクションセンター長などを経て、現在はメディカルパーク横浜院長、同大客員准教授。

◆杉山力一・杉山産婦人科理事長 「まず助成制度の大幅な拡充を」

―首相と9月21日に面会したが、どのような意見を伝えたのか。

 「私自身、保険適用に反対ではないが、慎重に議論してほしいと申し上げた。混合診療はだめという前提で保険適用になると、医療が縮小する。まず国の助成制度の大幅な拡充をお願いした」

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杉山産婦人科の杉山力一院長 ※新型コロナウイルス感染防止対策のため、写真撮影時のみマスクを外してもらいました。

 ―医療が縮小するとは。

 「体外受精には、例えば注射をたくさん打って卵子をたくさん採取するか、なるべく打たないで自然にやるかなど、いろんなやり方がある。保険適用になると、注射の回数など治療の標準を決めないといけない。7割の人はそれで良いが、注射が効かなかったり、効き過ぎたりする人もいるので、柔軟な対応ができなくなってしまう」

 ―弊害があるということか。

 「不妊症は本当に難しい病気で原因不明の患者も多く、だからオーダーメードの治療が主流になる。現場としては、標準の治療を決められるとやりにくいというのが正直な感想だ」

 ―今後の議論の行方をどうみるか。

 「標準治療を決めるとなると、大変な議論になる。それぞれの医師が自分のやり方を標準だと思っているからだ。結局は混合診療を認めてもらうか、(保険適用ではなく)助成金の大幅増で良いじゃないかとなるのではないか」

 ―患者たちは施設間の技術格差の是正など治療の質の向上も求めている。

 「保険適用が治療の質の担保になるとは思えない。学会が主導してガイドラインを作るだろうが、それで施設間の差が少なくなるか、いろんな医療機関が参入して差が広がるか、どうなるかは分からない」

すぎやま・りきかず 1969年生まれ。東京医科大卒。2001年に不妊治療専門クリニックを開院。現在、東京都内で3施設を運営。日本受精着床学会常務理事。





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Author:gogotamu2019
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