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(論)出生数大幅減に関する論説(2020年10月22・28日・2021年3月1・6・8日・5月8日)

出生急減の克服へ若者の将来不安を拭え(2021年5月8日配信『日本経済新聞』ー「社説」)


 子どもの数が減り続けている。総務省の推計では、15歳未満の子どもの数(4月1日現在)は前年より19万人少ない1493万人だった。減少は40年連続だ。

 世界のなかでも日本の少子化は際立つ。総人口に占める子どもの割合は11.9%。調査時期が違うため厳密な比較はできないが、人口4000万人以上の32カ国と比べると、日本が最も低い。

 いま親になる世代は、そもそもの人数が減っている。コロナ禍による暮らしへの不安が、少子化に追い打ちをかけている。厚生労働省によると、今年1月と2月の出生数(速報)はいずれも前年同月より1割以上減った。人口危機ともいえる状況を直視し、対策を急がなければならない。

 政府・自民党は「子ども庁」の創設に向けた議論を始めた。縦割りを排し、子どもにまつわる施策を一元的に担うという。組織のあり方の議論も重要だが、さらに大事なのは具体的な施策の中身と実効性をいかに高めるかだ。

 欠かせないのは、多角的な対応である。最近の政府や自治体の取り組みは、幼児教育・保育の無償化など、個々の家庭への金銭的な支援が目立つ。助かる人は多くいよう。アピール力もある。ただ、若い世代が安心して結婚・出産を選択できる社会環境が整わないままでは、せっかくの施策の効果も損なわれてしまう。

 少子化の最大の要因は、未婚化・晩婚化だ。不安定な就労で将来不安を抱えていると、家族を持ち子どもを育てるハードルは高くなる。非正規の処遇改善や正社員への転換、実効性のある職業訓練などで安定した経済基盤を築けるよう、官民あげて後押ししたい。

 働き方、暮らし方を変えていくことも、対策のカギを握る。長時間労働を見直し、働く場所や時間を柔軟にすれば、男女問わず仕事と子育てを両立しやすくなる。

 これらは介護の担い手や病気を抱える人にも役立つ。企業は全社的課題として取り組んでほしい。女性に偏った育児分担を変えるうえで、男性の育児休業などの推進を大きな契機にしてほしい。

 少子化対策に特効薬はない。子どもが生まれにくい要因を一つひとつ、根本から変えていく覚悟が要る。菅義偉首相は、高齢者向けに偏る社会保障を「思い切って変えなければ」と強調する。長年にわたり進まなかった課題に、いまこそ答えを出してほしい。





出生数の減少 生活基盤安定させないと(2021年3月8日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 2020年の出生数が、統計開始の1899年以降で過去最少だった前年を下回る見通しになった。コロナ禍が長引けば、さらに減っていく推計もある。

 出生数の減少は将来の働き手や社会保障の担い手の減少につながる。有効な少子化対策をただちに打たねばならない。

 厚生労働省が公表した昨年の人口動態統計速報によると、出生数は87万2683人を数えた。

 速報値には日本で生まれた外国人や外国で生まれた日本人も含まれる。確定値となる日本で生まれた日本人はさらに3万人程度少ないと想定されている。「86万ショック」と呼ばれた19年の確定値を下回るのは確実だ。

 前年比の減少率は2・9%で、月ごとでみると秋以降に大きくなり、12月は7・3%に及ぶ。コロナ禍で家計や出産環境に不安が広がったためとみられる。

 出生数につながる婚姻数も12・7%減の53万7千組余りで、戦後2番目の減少率となった。

 こうした状況が続けば、今年の出生数は77万6千人になるとの民間試算がある。国立社会保障・人口問題研究所の将来推計より少子化が10年以上早まる計算だ。

 少子化は未婚化や晩婚化が主な要因とされる。結婚や出産は個人の意思が尊重されるべきだが、経済的な事情でためらう人をなくすための施策は必要だ。

 菅義偉政権は、不妊治療の保険適用拡大や男性の育児休業取得促進といった夫婦向けを重点にした対策を掲げる。その手前にいる結婚や妊娠に踏み出せない人への視点が足りない。

 安心して家族を持とうと思うには生活基盤の安定が要る。若い世代や女性を中心に広がる非正規労働者の待遇改善や雇用の確保、長時間労働の是正といった労働を巡る対策が不十分だ。

 対策をしても少子化が止まらない事態も想定するべきだろう。

 長野県では、日本人人口が2月1日時点で200万人を割り込んだ。相対的に比重を増しているのが3万人を超える外国人だ。

 農業や製造業、介護では外国人労働者に頼らざるを得ない現実が広がっている。外国人が多い地域は、日本語教室を開いたり住民との交流機会を設けたりと、共生に向けた取り組みも進む。

 政府は、こうした地域の実情にもっと目を向けるべきだ。日本の将来を支える人の裾野を広げるには、外国からの労働者と家族を受け入れる制度や社会のあり方も本気で考えていく必要がある。





出生激減に対策総動員急げ(2021年3月6日配信『日本経済新聞』ー「社説」)

 コロナ禍が出生数の減少に拍車をかけている。昨年来の急速な景気悪化で若者を中心に所得環境がより厳しくなったのが主因だ。

 政府と自治体、また経済界は出生数の激減を重大な国の危機と受け止めるべきだ。減少に歯止めをかけ、さらに反転させるための対策を総動員する必要がある。

 厚生労働省の人口動態統計速報によると、外国人を含む2020年の出生数は過去最少の87万2600人だった。前年より2万5900人、率にして2.9%の落ち込みである。このうち日本人は84万人台とみられる。

 出生数が100万人を下回ったのは16年だ。それからわずか4年でここまで減ったのは、出産適齢の女性が年々減っている要因が大きい。そこにコロナ禍が重なり、減少ペースに加速度がついた。

 主因は所得環境の悪化だ。最初の緊急事態宣言を政府が解除した昨年5月以降も、外出を控える傾向が続いた。飲食・観光・小売りなど主にサービス業で働く非正規社員の若者を中心に、将来への不安感から当面は結婚・出産どころではないという空気が広がった。

 コロナ感染症そのものへの恐怖感も影響した。当初は子供の感染リスクに関する知見が乏しく、妊娠を先送りする傾向が強まった。

 これらの影響は21年の出生数に強くあらわれる。最悪の場合、80万人を割り込む事態を想定しておくべきであろう。

 菅政権は不妊治療費の補助などを打ち出したが、出生減を反転させるにはもう一段の重層的な対策が欠かせない。効果と効率性が高い経済支援を通じ、若い層の将来不安をやわらげる必要がある。

 所得制限を前提に、財源を確保したうえで2人、3人目を出産した世帯への現金給付の拡充を期待したい。父親が気兼ねなく育児休業を取れる環境づくりも急務だ。

 出生数の激減は国力をそぎ、年金など社会保障制度の持続性を危うくする。経済界も当事者意識を強め、子供をもちたいと願う若者らを全力で支援するときだ。



コロナ下の出生数減少 産みたいと思える社会に(2021年3月1日配信『毎日新聞』-「社説」)

 2020年の出生数が速報値で約87万人となり、過去最少を更新した。婚姻数や妊娠届も前年より大幅に減った。

 この傾向が続けば今年の出生数は80万人を割り込むという研究者の試算もある。その場合、国の想定よりも10年速いペースで少子化が進むことになる。

 新型コロナウイルスの感染拡大が影響したのだろう。休業要請などでは女性が多い非正規労働者が雇用調整のしわ寄せを受け、生活が不安定になった。

 夫婦が理想とする数の子どもを持たない理由のトップは「子育てや教育にお金がかかりすぎる」ことだ。感染拡大の経済的な影響は家計にも及び、子どもを持つことをためらう原因になっている。

 結婚や出産、子育てに対する若い世代の不安を取り除くことが急務だ。

 政府は少子化対策を「最大の課題」と位置付けているが、対応は不十分だ。不妊治療への公的医療保険の適用には踏み込んだものの、子育て世代全般を対象とする支援策は乏しい。

 まず力を入れるべきは、労働政策だ。

 未婚の人が増えていることが、少子化の大きな要因になっている。特に非正規雇用の人の未婚率は高い。雇用や収入が安定しないために結婚を諦めざるを得ない現状は、早急に改善すべきだ。

 政府は「同一労働同一賃金」の徹底を企業に促し、非正規の待遇改善につなげる必要がある。

 成長分野に合わせた職業訓練を充実させ、非正規から正規に移りやすい仕組みも整えるべきだ。

 今春卒業予定の大学生らの就職内定率が前年より下がっていることも気がかりだ。非正規で働く人が増える可能性がある。国や自治体が丁寧な情報提供をして、学生と企業をつなぐことが必要だ。

 子育て費用の軽減を図るため、児童手当や大学など高等教育の無償化の拡充にも思い切って取り組むべきではないか。

 安倍晋三前政権時代に掲げられた「待機児童ゼロ」の目標は、いまだに達成されていない。保育所の質の低下も指摘されている。

 若い世代が、子どもを産み育てる見通しが持てる社会の実現こそが、政府に求められている。



出生数減少 結婚支援へ有効な施策が要る(2021年3月1日配信『読売新聞』-「社説」)

 急速な少子化に手をこまねいてはいられない。出生数の減少を食い止めるためにも、まずは若者が安心して結婚できるように、効果的な施策を講じていくことが大切である。

 厚生労働省が公表した人口動態統計の速報値によると、2020年に生まれた子供の数は、前年比2・9%減の87万2683人にとどまり、過去最少だった。

 初めて100万人を割り込んだ16年以降、出生数は減少が続いている。急激な人口減は、経済や社会の活力の低下につながる。政府は、腰を据えて少子化対策に取り組まなければならない。

 今回の速報値は日本在住の外国人らを含んでおり、日本人に絞り込んで発表される確定数でも、19年の86万人をさらに下回る可能性が高いという。

 20~30代の女性の人口は年々減っている。出生数の減少は予想されていたとはいえ、これほどスピードが速まることは政府も想定していなかったのではないか。

 出生率に関する政府の見通しは甘すぎると言われて久しい。楽観論を戒め、足元の厳しい現実を踏まえた政策立案を行うべきだ。

 新型コロナウイルスの感染拡大が少子化に拍車をかけるのではないか、という懸念も出ている。

 昨年の婚姻数は53万件で、前年より12%減少した。終戦後の結婚ブームが一段落した1950年以来、70年ぶりの大幅な落ち込みだ。結婚式を自粛し、結婚自体を先送りした人が少なくないという。

 日本では結婚と出産が強く結びついており、現状のままでは出生数はさらに低下しかねない。一過性のものか、注視が必要だ。

 政府が果たすべき役割は、若者が経済的な理由で結婚や出産をためらうことがないよう、生活の基盤を安定させることである。

 国立社会保障・人口問題研究所の調査では、結婚の障害になっているものとして、資金や住居面の不安を挙げる人が目立った。

 若い世代は非正規雇用の割合が高く、コロナ禍で打撃を受けた飲食業や観光業で働く人も多い。若者へのしわ寄せは避けたい。

 政府は、積極的な採用や賃金の底上げを企業に働きかけるとともに、仕事に役立つ知識や技術を習得しやすくし、安定した雇用を広げることが重要だ。若い世代が住みやすい、良質な住宅を確保することも有効だろう。

 男女の出会いを促す事業を展開する自治体もある。若者が将来に希望を持てるように、国と自治体は工夫を重ねてもらいたい。





世の中の先行きを読むのは難しい…(2020年10月28日配信『西日本新聞』-「春秋」)

 世の中の先行きを読むのは難しい。突然の出来事で流れが一変したり、思わぬ副産物が生まれたり。政府の統計を見ていても、つくづく思う

▼例えば、生まれる子どもの数(出生数)。今年は統計開始以来最少だった昨年の86万5千人よりさらに減って84万人前後にとどまる見通し。少子化の加速を「86万ショック」と表現してきた政府にとって2年続きのショックだ

▼昨年の「令和婚ブーム」の余勢で、今年は婚姻、出産ともに増加が期待されていた。それがコロナ禍で暗転。1~8月の人口動態統計速報値によると、婚姻は前年同期比5万3千件減、出生は同1万4千人減と低調だ

▼婚姻の延期などに加え、「産み控え」もあるようだ。感染への不安が急速に広がった5~7月の妊娠届の件数は前年より1割以上減った。ただ、ほかにも見逃せない数字が

▼昨年、戦後最多の138万人に達した死亡数。こちらは8月末現在で前年同期比マイナス1万8千人のペース。呼吸器系の病死や不慮の事故死の減少が目立つ。マスクの着用や外出の自粛が功を奏したのか。今秋は現時点で季節性インフルエンザの流行も未確認

▼離婚は同じ前年同期比で1万4千件減。在宅時間が増えて夫婦関係が改善する例もあると聞く。コロナの社会への影響は多様で、そこには悲喜こもごもの人生模様もある。日々の報道に勝手な思い込みや予断があってはならない、と自戒する。





出生数大幅減へ コロナ禍の対策が急務(2020年10月22日配信『北海道新聞』-「社説」)

 来年出生する子どもの数が大幅に減る見通しとなった。

 厚生労働省はきのう、今年5~7月の全国の妊娠届の件数が前年同期比で1割減ったと発表した。

 新型コロナウイルス感染拡大の影響から、病院の受診控えや外出自粛で届け出を遅らせた可能性があると指摘する。

 ただ、緊急事態宣言解除後の7月も減り方にほぼ変わりはない。

 コロナ禍による雇用情勢の悪化などで世帯収入が減り、子どもを持つことを控えたり、広域移動を伴う里帰り出産が難しくなったりするなど、出産環境の変化も要因とみられる。

 そのため厚労省は防止策の強化に乗り出す。事態の重大さを考えれば当然だろう。

 出生数の減少傾向に拍車がかかり、少子化が加速すれば、将来の働き手が減り、社会保障制度の持続可能性がさらに危うくなる。

 国はコロナ禍の長期化を見据え、社会にまん延する不安の解消へ、公的支援や子育て対策を今以上に拡充する必要がある。

 昨年の推計出生数は予想より2年早く90万人を割り込み、「86万ショック」と呼ばれた。来年の出生数は70万人台の可能性がある。

 出生数の減少は経済的な要因が大きいとされてきたが、コロナの感染リスクで通常の出産が望めなくなったことも影を落とす。

 里帰り出産や立ち会い出産などの自粛を求められるケースが多いという。不妊治療を延期せざるを得なかった人たちもいる。

 日本周産期メンタルヘルス学会による緊急調査によると、妊産婦の診療にあたる医療従事者の6割超が、コロナ禍に関連した不調の相談を受けた。

 安心して産める環境の整備を急ぎたい。オンラインの相談態勢を整え、妊産婦を孤立させない仕組み作りが求められる。

 自治体にも独自の対策を打つ動きがある。4月以降、妊娠届に加え、婚姻届の減少も続く山形県では、出産を経験した人とこれから経験する人たちによるオンライン座談会を行う。

 それぞれのレベルで取り得る方策はあるはずだ。知恵を絞りたい。

 菅義偉首相は少子化対策として不妊治療の保険適用の拡大を打ち出した。だが、これだけでは少子化に歯止めはかからない。

 待機児童の解消など子育てと仕事が両立できる環境の整備、男女ともに育児と家事を担うべきだという意識への変革を促す総合的な施策は強化しなければならない。



コロナ禍と出産 不安の解消を一つ一つ(2020年10月22日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 減り続ける出生数が来年、一段と落ち込むかもしれない。

 5〜7月に全国の自治体が受理した妊娠届が昨年同期より11・4%減っている。今年末から来年初めにかけて出産を迎えるとみられる人たちだ。

 新型コロナウイルス感染防止のため、里帰り出産の自粛が望まれている。入院中の面会や出産時の立ち会いを断る医療機関も多い。出産を控えようと考えるのは仕方がない状況にある。

 出生数は昨年、統計を取り始めて最少の約86万5千人を記録。予想より2年早いペースで少子化が進んでいることが判明した。

 コロナ禍でさらに加速する可能性がある。早急に実態を把握し、対策につなげねばならない。

 産み控えの要因になっているのは、さまざまな不安だ。

 ウイルスに感染すると母胎にどんな影響があるのか。出産や育児で頼れる人がいるか。雇用環境の悪化で家計は大丈夫か。こうした不安の一つ一つに行政や社会が応えていく必要がある。

 ウイルスの妊婦に対する影響は未解明な部分が多い。これまでの症例で分かったこと、不明なことを広く共有できるようにしたい。出産や育児で孤立することがないよう、相談や支援の体制の充実も欠かせない。

 出産を予定する当事者たちの声に耳を傾け、実情に合った対策にすることが大切だ。不安解消が実現すれば、子どもをつくろうと考える動機づけになる。

 そもそも少子化対策は、コロナ禍に関係なく後回しにできない国の重要課題だ。

 政府が5月にまとめた第4次少子化社会対策大綱は、若い世代での未婚率の上昇や晩婚化が主な原因とした。

 背景にあるのは全労働者の4割に膨らむ非正規労働だ。安定した仕事や収入が得られない不安が、結婚や出産のためらいにつながっている。この不安を取り除くには、非正規労働が支える社会の構造を変えるしかない。

 菅義偉政権は、不妊治療の保険適用、待機児童の解消、男性の育児休業の取得促進と、施策を打ち上げる。未婚率の上昇や晩婚化の改善には直接結びつかない。

 不安定な雇用の下で子育てに追われ、仕事を休めずに悩んでいる人は依然多い。

 誰もが安心して産み育てられる社会をどうつくっていくか。コロナ禍が浮かび上がらせた子どもの貧困や格差にも目を向けて考えていく必要がある。



妊婦さん12%減 V字回復へ対策の総点検を(2020年10月22日配信『北国新聞』-「社説」)

 予想されていたとはいえ、現実に数字を見せつけられると、暗澹(あんたん)たる思いにさせられる。新型コロナウイルスの影響で、出産を回避する動きが全国的に広がり、5~7月に妊娠した女性が前年同期比で11・4%も減ってしまった。

 昨年、日本で生まれた赤ちゃんの数(出生数)は、統計開始以来最少の86万5239人だった。1割超の減少がこのまま続けば、来年の出生率は70万人台まで下落しかねない。

 石川県では、減少率が全国平均を上回る12・3%減となり、富山県は全国平均と同率の11・4%減だった。政府が5月に策定した新たな「少子化社会対策大綱」が指摘した通り、新型コロナは、安心して子どもを産み育てられる環境整備の重要性をあらためて浮き彫りにしたといえよう。

 それでも新型コロナの流行が最悪期を脱したとすれば、産み控えの反動は必ず起きるはずだ。V字回復を期待し、少子化対策の不備を点検し直す必要がある。

 少子化対策に特効薬はなく、出産や子育て全般に付きまとう、さまざまな不安や悩みを一つ一つ点検し、手を打っていくしかない。菅政権が打ち出した不妊治療の費用負担軽減は、有効な具体策の一つだろう。

 ベネッセコーポレーションの調査では、コロナ感染に不安を抱えている妊婦は9割超に上る。具体的には「育児を学ぶ『両親学級』などの中止で情報不足」が61・0%と最多で、「入院中の面会ができなくなった」が55・1%、「立ち会い出産の中止」が51・8%だった。

 コロナ禍特有の課題について、政府は早急に医療機関と協議し、不安解消の手助けをしてほしい。都会から地方への「里帰り出産」を歓迎しない風潮を払拭していく必要もある。

 最も懸念されるのは、若い世代の収入が減り、子どもを持つ余裕がない世帯が増えていることだ。新型コロナによる社会経済活動の縮小が、産み控えに拍車を掛けているのは間違いない。遠回りなようでも、景気を回復させることが、最大の少子化対策であることを理解しておきたい。



【出生数大幅減へ】不安解消へ幅広い支援を(2020年10月22日配信『高知新聞』-「社説」)

 新型コロナウイルス感染症が少子化に追い打ちを掛けている。政府は感染の長期化も見据え、子育て世代の不安解消に向けた幅広い支援策の検討を急がなければならない。

 全国の自治体が今年5~7月に受理した妊娠届の件数が、前年同期比で11・4%、2万6千件余りのマイナスになった。来年出生する子どもの数は大幅に減る見通しだ。

 昨年の日本の出生数は1989年の統計開始以来初めて90万人を割り込んで約86万5千人になり、「86万ショック」と呼ばれている。

 現状の「妊娠控え」が続けば、来年は70万人台となる可能性もある。コロナ禍の非常事態とはいえ、より深刻な状況になる。

 妊娠を避ける、あるいは収束後に先延ばししようとする背景には、感染が母胎に与える影響に未解明な点があり、平常時のような出産や育児が望めないことがある。

 妊婦は肺炎になると重症化する可能性がいわれるほか、胎児に影響が出る恐れからコロナ治療薬候補のアビガンは使えず、感染への不安を抱える人が多い。

 出産環境も悪化している。感染防止のため立ち会い出産や見舞いが制限され、都市部から地方に帰省する「里帰り出産」も難しい。

 全国に緊急事態宣言が出ていた4月の民間調査によると、自分や家族の感染に不安を抱える妊婦は9割以上に上った。出産時の影響は、「育児を学ぶ『両親学級』などの中止で情報不足」「立ち会い出産の中止」などが5割を超えた。

 厚生労働省は妊婦へのオンライン相談の強化や里帰りできない人への育児支援などを打ち出している。より重要性が高まっている孤立防止を含め、今後も不安を解消する柔軟な支援策が求められよう。

 雇用情勢悪化による家計不安もあるのは間違いあるまい。

 厚労省の今月中旬のまとめでは、コロナ禍に関連する解雇や雇い止めが見込みを含めて6万6千人を超えた。実際の解雇者はもっと多いとみられる情勢だ。

 世帯収入が減り、子を持つのを控える夫婦もいる。感染症が収束しても経済が回復しなければ出生数は相当減るとみる専門家もいる。政府は状況を詳しく分析し、より有効な手だてを検討しなければならない。

 むろん、感染症がなくても少子化対策は以前から政府が掲げてきた重要政策である。

 5月に閣議決定した第4次少子化社会対策大綱では、若い世代が希望通りの数の子どもを持てる「希望出生率1・8」を目標に掲げた。だが少子化はとどまる気配がない。

 若い世代の非正規労働者の正社員化や、育児休業への支援、待機児童の解消といった政策がどこまで機能しているのか。コロナ禍を機会として幅広く点検し、効果的な環境整備を進める必要がある。

 コロナ禍が転換の背を押し、スピードを速めている分野は幅広い。少子化対策も例外ではあるまい。







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