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(論)東京女子医大;2歳児死亡に関する論説(2020年10月23・28・11月1日)

2歳児死亡事故 なぜ大量投与続けたのか(2020年11月1日配信『新潟日報』-「社説」)

 簡単な手術だと言われていたのに、なぜわが子は命を落とすことになったのか。最愛の幼子を失った親が望んでいるのは真相究明だ。

 その切実な疑問に正面から向き合ってこなかった病院側の不誠実な姿勢に憤りを覚える。

 東京女子医大病院で2014年、鎮静剤プロポフォールを大量投与された当時2歳の男児が死亡した医療事故で、警視庁は元准教授の医師ら担当の男性麻酔科医6人を書類送検した。

 男児には首に良性の腫瘍があった。病院側から簡単な手術で治ると説明を受け、7分ほどで手術は終わった。医師は、術後管理のため集中治療室(ICU)で、人工呼吸中にプロポフォールを投与した。

 容疑は、心電図や尿の色などに異常な所見が出たのに投与中止や別の薬剤に切り替えることなく投与を続け、急性循環不全で死亡させた疑いだ。

 プロポフォールの添付文書には、ICUで人工呼吸器を付けた子供への投与は「禁忌」と記されている。海外では子供の死亡例が報告されている。

 病院の第三者調査委員会がまとめた報告書によると、投与は約70時間、成人適正値の2・7倍の量に上っていた。長時間の大量投与が直接の死因とした。

 親は、手術が終わればすぐに帰宅できると信じていた。突然の悲劇に見舞われた衝撃、無念さはいかばかりか。

 使用を巡って、病院側からきちんとした説明はなかったという。事故後、病院内部で互いに責任をなすりつけるような言動も多く、不信感を募らせた。

 医師の証言を引き出すため、民事訴訟を起こし係争中だ。なぜ遺族がこれほどの理不尽を強いられねばならないのか。

 厚生労働省は15年、女子医大に対し高度医療を提供する特定機能病院の承認を取り消した。

 群馬大病院も14年に死亡事故が判明し取り消されたが、遺族も含めた医療安全を推進する委員会を設置するなどして再承認を受けた。群馬大と違い、女子医大は再承認されていない。

 事件発生から今回の立件まで6年8カ月かかった。警察は、多くの専門家に意見を聞くなど慎重に捜査を進めてきた。

 プロポフォールは「禁忌」となっているが、明確なルールはなく、医師の裁量で使用されるケースがある。

 このため、警察は投与自体は過失に当たらないとした一方、投与中の男児の異常に適切に対応しなかったことを重く見た。

 警察による医療事故の捜査は、医療現場の萎縮を招くとの懸念が根強く、重大事件などに限られているのが実態だ。

 警視庁は今回、東京地検に起訴を求める「厳重処分」の意見を付けた。起訴されれば裁判となる。審理が真相解明に資するものになってほしい。

 今回の事故を受け、専門家は副作用の認知度が医療現場で高まったと指摘する。

 尊い命を奪った教訓を医療関係者はしっかり共有し、再発防止を徹底してもらいたい。





【鎮静剤死亡事故】再発防止へ事実の究明を(2020年10月28日配信『高知新聞』-「社説」)

 2歳の男の子に投与された鎮静剤は成人適正値の2・7倍の量に上った。しかも人工呼吸中の子どもへの投与が「禁忌」として、原則禁じられた薬だった。

 2014年に東京女子医大病院で起きた2歳児死亡事故で、警視庁は医師6人を業務上過失致死容疑で書類送検した。

 安全管理を欠いたずさんな医療は許されない。さらに事故から6年8カ月たっても、遺族は病院側から納得がいく説明を受けておらず、「真実を知りたい」と訴え続けている。

 病院と医師は真摯(しんし)に対応するべきだ。

 医療事故の再発防止には、徹底した原因究明が基本になる。

 死亡した男児は首の良性腫瘍の手術を受け、術後管理のために集中治療室(ICU)に入り、鎮静剤プロポフォールを大量投与された。

 男児が体を動かして人工呼吸の管が抜けるのを防ぐ目的で、投与は約70時間に及んだという。

 警視庁は、投与自体は医師の裁量に委ねられた側面があり過失に当たらないと判断した。立件に踏み切った理由には、投与後に心電図や尿の色に異変があったのに、適切な処置を怠ったことなどを挙げている。起訴を求める「厳重処分」の意見を付けたとみられる。

 病院側はプロポフォールの禁忌を十分認識せず、安易に使っていたとされる。事故前の09~13年、人工呼吸中の子ども63人に投与していた。

 外部評価委員会の検証によれば、投与後に死亡した11人中5人については、症状の悪化などに影響を及ぼした可能性を否定できない。

 薬の副作用などは、専門知識のある医療従事者でないと十分に分からない。禁忌事項などの認識をスタッフ間で徹底することは、事故を防ぐ上の基本だろう。

 病院側は、男児への投与を家族に説明していなかった。こちらも基本中の基本が欠けた対応だ。

 事故後に設置された第三者委員会の報告書では、診療記録の不備や、第三者委の聴取に対する医師らの無責任な態度が批判されている。

 事実を知りたい遺族は、医師らの証言を引き出すため民事訴訟も起こした。東京女子医大病院は遺族と向き合い、事故から教訓を得る姿勢に欠けていると言われても仕方ない。

 同病院は医療安全管理体制に不備があるとして、特定機能病院の承認を取り消されたままだ。

 同時期に死亡事故で承認を取り消された群馬大病院が、遺族をメンバーとした医療安全の委員会を設置するなど、再発防止策を進めて再承認を果たしたのと対照的である。

 医療事故の再発防止の仕組みとしては、5年前から「医療事故調査制度」も始まっている。医療機関が「予期せぬ死亡」について院内調査をし、患者側に結果を報告する。

 ただ、患者側に制度が十分知られておらず、活用されているとは言い難い。医療機関も積極的に制度を活用し、安全な医療を目指すべきだ。





責任の所在 徹底解明せよ/2歳児死亡 医師書類送検(2020年10月23日配信『東奥日報』-「時論」)

 東京女子医大病院で2014年、首の良性腫瘍手術後に集中治療室(ICU)で人工呼吸中の2歳男児が鎮静剤「プロポフォール」を大量投与され死亡した医療事故を巡り、警視庁は業務上過失致死容疑で麻酔科医6人を書類送検した。容体に異変があったのに投与を続け、適切な処置をしなかったとし、東京地検に起訴を求める意見書を付けたとみられる。

 男児の首には小さな膨らみがあったが、痛みはなく、病院側は「簡単な手術」と説明。14年2月に手術は7分ほどで終わった。ところが3日後にICUで容体が急変、息を引き取った。人工呼吸器を装着された男児が管を自分で抜いてしまわないよう大量投与したプロポフォールが循環不全などの重い副作用を引き起こしたとされる。

 プロポフォールは副作用のリスクがあり、ICUで人工呼吸中の小児に使用するのは「禁忌」とされる。医師の裁量で使うことはあるが、事故の翌年に第三者調査委員会は、危険性への認識などが不十分と批判。長時間、大量の投与が直接の死因とする報告書をまとめている。

 禁忌薬にもかかわらず、両親が事前に説明を受けて同意を求められることはなかった。事故後、投与の経緯など何を聞いても病院側から納得のいく説明や謝罪はなく、「真相が明らかになれば」と主治医や麻酔医らに損害賠償を求め提訴し係争中。しかし医師らは自身の責任を回避することに終始しているという。

 病院が設置した第三者委は15年2月に公表した報告書で、投与は約70時間、成人適正値の2.7倍に上り、副作用のリスクに対する病院側の危機意識が不十分で、心電図の異常などへの対応が遅れたと指摘。禁忌薬の使用について家族に説明しなかったり、診療記録に適切に記載しなかったりした点も問題視した。

 両親は投与を知らされていれば手術はしなかったとし、大量投与や不十分なインフォームドコンセント(説明と同意)、警察への届け出が死亡の4日後となったことなどについて理由をただしたが、大学からきちんとした説明はなかったという。医師らからヒアリングをした第三者委の報告書も「過剰ともいえる防御的姿勢が認められ、調査を困難にした」と振り返り、「記憶がない」「他の医師に聞いて」と説明を避けようとする発言が目立ったとしている。

 病院側による遺族への対応は不誠実極まりない。第三者委調査にも非協力的で、事故から6年8カ月たった今もなお、責任の所在など真相は埋もれたままだ。遺族が納得できる答えを出せるよう、刑事責任追及の場で徹底的に解明すべきだ。

 15年6月、病院は医療安全管理体制に不備があるとして、高度医療を提供する特定機能病院の承認を取り消された。4カ月後には患者の予期せぬ死亡が発生した場合、医療機関に第三者機関への報告や院内調査を義務付け、責任追及ではなく事実解明による再発防止を目指す医療事故調査制度がスタートした。

 それから5年になるが、報告や調査をしない事例が相次いでいるとされ、そうした医療機関名の公表など運用改善や制度改革を求める声が上がっている。医療事故を巡り、より患者や家族に寄り添った仕組みにするため、不断に検証と議論を重ねていく必要がある。



2歳児医療事故 なぜ起きたかに答えねば(2020年10月23日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 さして難しくはない手術を受けた後に、なぜ命を落とさなくてはならなかったのか。

 遺族と真摯(しんし)に向き合い、納得のいく答えを示す責任がある。2歳の男児に鎮静剤のプロポフォールを大量投与し、死亡事故を起こした東京女子医大病院である。

 事故の発生から6年8カ月を経て、警視庁が6人の麻酔科医師を業務上過失致死の容疑で書類送検した。手術後の安全管理を怠った疑いだ。

 男児は首の良性腫瘍を取り除くため約7分間の手術を受けた。その後、管理のため集中治療室(ICU)に入った。人工呼吸器が装着され、動いて管が抜けないようプロポフォールを投与された。

 心電図や尿の色などに異変が現れたが、投与は約70時間続き、量は成人の適正値の2・7倍に達した。手術から3日後、急性循環不全で死亡した。

 原因を調べた病院の第三者委員会は、鎮静剤の大量投与が直接の死因と結論づけていた。報告書では、医師間の情報共有の不足、鎮静剤の使用に対する危機意識の欠如などを指摘している。

 鎮静剤が原因としても、誰が何を根拠に投与の継続を判断したのか。危険性や使用基準はどう認識していたのか。病院側は遺族への説明責任を果たしていない。

 プロポフォールは即効性が特長とされる。製薬側の添付文書は人工呼吸中の小児への投与を「禁忌」とし、原則禁じている。法的拘束力はない。厚生労働省の実態調査でも事故の前年に国内で200近い投与例が確認された。

 警視庁は投与自体は医師の裁量に委ねられると判断。投与後の適切な処置を怠った点に過失があるとみて立件に踏み切った。

 刻々変わる患者の容体に応じ、適切な処置を施していくのが集中治療現場のはずだ。医師の判断が問われなくてはならない。

 同病院では、男児の事故前の6年間で同じ鎮静剤を投与後に死亡した子ども11人のうち5人が同剤の影響を受けた可能性がある。外部の評価委員会が指摘した。高度医療を提供する特定機能病院の承認も取り消されている。

 男児の両親は主治医らに賠償を求める民事訴訟も起こしている。投与前の説明が不十分だったことにも不信を募らせていた。

 事故は、日々さまざまな症例と向き合う医療現場に警鐘を鳴らした。医師、看護師らの緊密な情報共有とともに、患者側に丁寧な説明を重ねる重要性を改めて浮かび上がらせている。




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