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(論)読書週間に関する論説(2020年10月28・29・31日)

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2020読書週間ポスター大 賞(賞金10万円)  なかいかおりさん(東京都)
【作者のことば】
思うように旅ができない世の中になってしまいましたー
本は、未知なる場所へ連れて行ってくれる、いちばん身近な移動手段かもしれません。
今年もいつもと変わらず、素敵な本との出会いがありますように。



読書週間 ひもとけば心の免疫にも(2020年10月31日配信『産経新聞』-「主張」)

 人が生きていくのに読書はやはり必要だ。コロナ禍によって経験したことのない日常が続く中でそんな思いを新たにした人は多いだろう。知識を得る、空想に遊ぶ、不安を和らげる。本にはさまざまな効能がある。

 読書週間(11月9日まで)が始まった。今年の標語は「ラストページまで駆け抜けて」だ。

 全国出版協会・出版科学研究所が発表した今年上半期(1~6月)の出版市場の推定販売金額(紙と電子の合算)は、前年と比べて2.6%増えた。「巣ごもり」で本に向かう人の数も、読書の時間自体も増えたのだろう。

 紙は2.9%の減少だった。新型コロナウイルスの感染拡大で緊急事態宣言が出され、多くの書店が休業した影響だ。分野別では、学校の一斉休校で家庭学習のニーズが高まり、児童書や学習参考書などに特需が生まれたという。

 自粛期間に利用者が増えた電子出版は3割近く伸びた。書店の休業や図書館の閉鎖を受けてのことだろう。漫画「鬼滅(きめつ)の刃(やいば)」のヒットで電子コミックが好調だったほか、これまで作品を電子化していなかった人気作家、東野圭吾氏らが解禁に動いたことなども背景にある。

 興味深いのはウイルスに関係する書籍がよく売れたことだ。

 例えばカミュの「ペスト」はさまざまな立場の民衆が伝染病に立ち向かう小説だ。人はわが身に降りかかるかもしれない危機に直面すると、先人の経験や知恵を学ぼうとする。小説であれノンフィクションであれ、本はよいテキストだ。読むことで頭の中で病を疑似体験し「心の免疫」を得ようとしているようにもみえる。

 日本財団が全国の17~19歳の男女千人を対象にした調査で、コロナ禍での読書量の変化を聞くと、全体の4人に1人が「増えた」と答えた。読書が好きな人は6割近くに上ったが、「全く読まない」という人も3割を超えた。

 情報を取得する際に、テレビやSNSに比べて読書は能動的な態度が必要になる。

 専門家は「本を読むという行為自体が主体性の強化になっている。教育現場ではますます必要とされるのではないか」とコメントしている。

 人生は短く本は多い、と辛口コラムニストの山本夏彦翁はいった。本を読もう。



「邪魔禁止」のルール(2020年10月31日配信『神戸新聞』-「正平調」)

 作家の池澤夏樹さんが子どものころに守っていた家庭のルールがある。「本を読んでいる人の邪魔をしてはいけない」。娘で声優の池澤春菜さんとの対談集「ぜんぶ本の話」で語っている

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◆詩人だった夏樹さんの母親は苦労の多かった暮らしの中で、読書を何よりの楽しみとしていた。だから母が本を読み始めると、「その日のおかずはコロッケに決まり」。夏樹さんが自分で買いに出掛けたという

◆あれこれとせわしない日常のつかの間、静かに本を開く。愛書家には至福の時間だろう。折しも今は読書週間(11月9日まで)、作家の昔にならって「邪魔禁止」のルールを試行してみるのもいいかもしれない

◆コロナで外出の機会はおのずと減った。17~19歳を対象にした日本財団の調査によれば、4人に1人が「読書量が増えた」と答えたそうだ。もうちょっと増えてもよかったかな、若者たちよ、とつぶやいておく

◆「ひとり、燈(ともしび)のもとに文(=書物)をひろげて、見ぬ世の人を友とするぞこよなう慰むわざなる」(徒然草)。異なる時代やなじみのない土地の人と本の中で知り合う。なるほど読書はひとときの旅に違いない

◆ページをめくるのも惜しい、そんな本に出合うときがある。まあゆっくり読もう。夜も長くなってきた。



読書週間(2020年10月31日配信『高知新聞』-「小社会」)

 最近の冷え込みで夜中に目が覚め、慌てて厚手の夜具を押し入れから引っ張り出した。ところが、それがかび臭いのなんの。眠りたくても眠られず、うつらうつらして熟睡できなかった。
 
 この時季、そんな経験をしたご同輩もいるのではないか。「冬の布団というのも、急に引き出すと案外不機嫌なのね」。作家の幸田文が知人の言葉として、随筆に書き留めている。「布団が仏頂面だ、という表現はおもしろかった」と(「秋ぐちに」)。
 
 なるほど仏頂面でかぶさってこられたのではたまらない。おひさまをたっぷり浴びさせて機嫌を直してもらわなくては。そう思えば面倒な布団干しも楽しくできるというもの。
 
 秋の朝、冷えて澄んだ鏡に映る顔がおや?と思うほど鮮明に見える。たなごころに受けた化粧水の一瞬の冷たさ。文豪の父、露伴に少女のころから家事全般を仕込まれた文は、日々の暮らしに潜む季節の移ろいを見逃さない。
 
 ページを繰って何かほっと心が和むのは、日常を慈しんだ文の生き方に共感するからだろうか。私たち一人一人にとって、コロナ禍が暮らしを見つめ直す機会となっているからかもしれない。
 
 ことしも11月9日まで読書週間。日本財団が全国の17~19歳の男女千人に実施した調査では、約25%が読書量が増えたと答えている。巣ごもりは本に親しむきっかけにもなっているようだ。きょうは幸田文の没後30年の命日でもある。
 


たたかう本屋です(2020年10月31日配信『しんぶん赤旗』ー「潮流」)

 たたかう本屋です。地域とのつながりを絶やさないため、理不尽な出版流通の仕組みにあらがうため、まちの文化を守るために

▼大阪市中央区・谷町6丁目の駅近くにある隆祥館(りゅうしょうかん)書店。店主はシンクロ水泳の日本代表選手だった二村知子(ふたむら・ともこ)さん。小さな店内には日本や世界の今を映し出す骨太の作品が並びます。しかも売り上げた数がすごい。500冊を売って全国1位を記録した本も

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▼新刊を読みこみ、来店する一人ひとりの顔や好みを覚え、その人に合った作品をすすめる。読書は心の森林浴をモットーに、つくってきた信頼関係があります

▼もう一つの信念は差別を扇動するような本は置かないこと。そこには大手書店ばかりに優先配本しながら、ヘイト本を押しつけてくる取次店への怒りも込められています。先代の父、善明(よしあき)さんは「本は毒にも薬にもなる。右から左へ流すものではない」と。創業70年余の苦闘の歩みはジャーナリストの木村元彦(ゆきひこ)さんが『13坪の本屋の奇跡』にまとめています

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▼作家と読者の集いも頻繁に開いてきました。先月は「都」構想の問題点を考えるトークイベントを。大阪の伝統を継いでいくためにも「都構想には反対です」と知子さんはきっぱり

▼読書週間が始まりました。コロナ禍で読書量は増えているにもかかわらず、各地のまちの本屋は次々と姿を消しています。この20年でほぼ半減したとの調べもあり、隆祥館書店のたたかいは続きます。きょうも思いを込めて。「手にとる本を未来につなげていきたい」





本の愉楽(2020年10月29日配信『愛媛新聞』-「地軸」)

 壁や天井、カーテン、畳べりまで「坊っちゃん」一色。松山市の道後温泉のホテルの一室が3年前、道後ゆかりの夏目漱石の小説の文章に覆われた

▲手掛けたブックデザイナーの祖父江慎さんは独自に作った全文掲載の新聞を手に広げ、寝っ転がってみるなどちゃめっ気たっぷり。長年研究する「坊っちゃん」へのあふれる愛情を取材しながら感じた

▲「内容にウットリすること」。ブックデザインでの心構えを祖父江さんが語っている(「太陽レクチャー・ブック001」)。デザイナーの個性が消えるのが理想で、本の内容に合う形をこの世に降ろしてくるのだという。その過程に編集者や著者、関わる人がいて、そういった人たちの「内容に関する思い」が大事だと。独創的なデザインの秘訣(ひけつ)が垣間見える

▲大手出版社の装丁担当者がかつて言っていた。編集者や作家との信頼関係の中で本の形ができてくると。ただデジタル化などで、人の間をぐるぐる回って本を作ることが少なくなってきたと寂しい思いも

▲新型コロナウイルス禍で本に向き合う時間が増えている人もいるようだ。日本財団の17~19歳計千人の調査で、外出自粛などで約25%の人が読書量が増えたと回答した
▲11月9日まで読書週間。今年の標語「ラストページまで駆け抜けて」の通りに最後まで読み通せなくてもいい。装丁であれこれ思いを巡らすのもいい。それぞれの楽しみ方で、本の豊かな世界を。

年齢を重ねてこその妙味(2020年10月29日配信『宮崎日日新聞』-「くろしお」)

 年を取ると賢くなる、か分からないが、何に対しても物おじしない度胸が備わってくるのではないか。そんなうれしい変化を期待させる本がみやざきエッセイスト・クラブの作品集「上を向いて歩こう」だ。

 四半世紀活動を続けている同クラブにとって25冊目。執筆者24人は常連がほとんどだ。さすがに高齢者が増えたが、お世辞抜きで年輪を重ねてこそ納得いく人生の妙味にあふれている。身辺雑事から思い出、社会への意見、コロナ禍における新生活などをつづる。

 中村浩さん「吼(ほ)える男」は、昨年亡くなった片山望さん(宮崎市フェニックス自然動物園初代園長)の思い出。市への移譲を巡り「動物園の価値は会社の帳簿で決まるもんじゃない!」と怒ったという。アフリカまで動物の選定に赴いた片山さんの園への思いが痛切に響く。

 柚木崎敏さん「九十二歳の呟(つぶや)き」は仲間が先立つ悲しみ、死への恐れを赤裸々に吐露。諧謔(かいぎゃく)を加味して深刻な内容を和らげる。他の作品も元々、文章の達者な執筆者ばかり。「ここまで書いて大丈夫?」と”放言”に見せて、説得力ある文章に仕立てる老練さがにくい。文章を書く人の参考にもなろう。

 読書週間(11月9日まで)。秋の夜長にお薦めの書はいろいろあるが、身近な人が書いて、気になれば本人に尋ねられる郷土の本は味わいが親しく身に染みてくる。ちなみに作品集には若い執筆者も寄せている。読者として育てていくのも地方出版の楽しさだ。





読書の秋(2020年10月28日配信『秋田魁新報』-「北斗星」)

「読書週間」が始まった。今年の標語は「ラストページまで駆け抜けて」。書棚を眺め、ゴールしていない本の多さに気付く。まずはそれらを読もうと思いながら、新たな本と出会いたいとも欲が出る

▼関心ある分野なら手に取りやすいが、たまには未知のジャンルに挑戦したい。そんな際、どう選ぶか。装丁やタイトルのインパクトに引かれることは間々ある。他にも決め手が欲しい

▼この時期、県内の各図書館はそんな手掛かりを提供しようとテーマ展示に力を入れている。ユニークなのが鹿角市立花輪図書館。「本は会話する」と題し、タイトル同士が会話するような図書をセットで紹介する

▼「なぜ泣くの」「泣くほどの恋じゃない」「つまらない男に恋をして」は恋愛小説3作。全く異なるジャンルの組み合わせもある。「ウチの子内定まだなんです」「そのうちなんとかなるだろう」は就職活動関係の指南書と自伝エッセーだ。ふと思い付いた展示だが効果てきめん、よく借りられているという

▼「正しい本の読み方」(講談社現代新書)で社会学者の橋爪大三郎さんは読書の魅力について、いろんな意見や性格を持った著者や登場人物が「頭に住み始める」ことと説く。困難なことなどがあった際、解決や理解の糸口となり助けてくれる

▼何げなく読み始めた本が職業を決めたり人生観を変える契機になったりすることもある。読書の秋、1冊でもいいからしっかり読み切り頭の中の住人を増やすのもいい。

読書週間/本と向き合う時間つくろう(2020年10月28日配信『福島民友新聞』-「社説」)

 深い思索をシンプルな言葉で紡ぎ続けた福島市出身の詩人、長田弘さんは「本は読まなくてもいいのです。しかし、自分にとって本を読みたくなるような生活を、自分からたくらんでゆくことが、これからは一人一人にとってたいへん重要になってくるだろうと考えるのです」(「読書からはじまる」日本放送出版協会)と書き残している。

 インターネットの普及で、必要な情報を得ることが数十年前と比べ、極めて簡単となった。人工知能(AI)は飛躍的な進化を遂げている。経済協力開発機構(OECD)は、AIによる自動化などで14%の仕事で機械が取って代わり、およそ半分の仕事に影響が及ぶとしている。

 インターネット、AIをはじめとする技術は、人の暮らしを便利にしてくれるものだ。しかし、技術は、人が「こうなれば便利なのに」「こんなことが知りたい」と考えなければ生かし切れない。人の考える力、想像力があってこそのものである。

 読書週間が始まった。本には、知識だけではなく、人が人生や科学について考えた過程などが書き込まれている。本に親しむことで、人にしか持ち得ない、深く考え、新しい何かを思い浮かべる力を培っていくことが重要だ。

 気がかりなのは、子どもの読書量の減少だ。県教委の調査によると、1カ月に1冊も本を読まない生徒の割合が、中学生の2割弱、高校生の4割強に上る。

 中高生が本を読まない理由については、部活動や勉強が忙しいことを挙げる生徒が最も多い。一方で、県内の中学生の7割が、1日当たり1時間以上の時間をスマートフォンや携帯式を含めたテレビゲームに費やしている。

 本を多く読む生徒ほど、成績上位の割合が高いことも明らかになっている。ゲームの時間を少し減らすなどして、本を読む時間をつくることが大切だ。

 日本財団の調査によると、新型コロナウイルス感染症の影響で社会活動が停滞したことにより、本を読む量が増えたのは、読書が好きな人の4割に上った。一方、読書が好きでも嫌いでもない人や、読書が嫌いな人が本を読む機会はほとんど増えていない。読書の二極化が浮き彫りとなった状況だ。

 コロナ禍で、カミュの「ペスト」や小松左京の「復活の日」をはじめ、感染症の流行をモチーフとした小説などが人気を集めた。非常時への向き合い方を本に求めた結果だろう。本の持つ力を改めて見直したい。



すべて良き書物を読むことは、過去の最もすぐれた人々と会話をかわすようなものである(2020年10月28日配信『中日新聞』-「中日春秋」)

 室町期の武将、太田道灌(どうかん)には古歌にまつわる知られた言い伝えがある。いくさの際に夜行く道を選ばなければならなくなった。今は引き潮だからと、海辺の道を主君に進言し、味方を無事移動させたという

▼<遠くなり近く鳴海(なるみ)の浜千鳥鳴く音に潮の満干(みちひ)をぞ知る>。鳥の声と潮のつながりを詠んだ古歌を知るがゆえの手柄と伝えられる。古きを知ることで道を間違えることはないという説話のようでもある

▼古人の知恵が、よりいっそう重く感じられる、コロナ流行下の世の中ではないだろうか。この春以降、何冊か古い書物を手にしてきて強く思う

▼英国の作家デフォーが18世紀に書いた『ペスト』には、感染症の流行下で、主人公の商人が仕事か命を守るための行動か、と悩む場面がある。第2波の恐ろしさも記されていて、まるで今日の世界のために書いているように思える。日本の古典では『徒然草』を開くと、世の中は虚言ばかりだと書かれている。フェイクニュースが相次ぐ今、道を間違えないための言葉のようにも読める

▼読書週間が始まった。11月1日は古典の日という。コロナ関連に限らず、読書で古きを知ることは道を間違えないための重要なすべであろう

▼<すべて良き書物を読むことは、過去の最もすぐれた人々と会話をかわすようなものである>。デカルトのものという言葉も今年は重く感じられる。




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