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(論)携帯料金値下げに関する論説(2020年10月18・22・28・29・30・11月1・2・4・6・8日・12月6・24日・2021年2月8日・3月28日)

携帯新プラン 値下げの恩恵は行き渡るのか(2021年3月28日配信『読売新聞』-「社説」)

 携帯電話大手3社が、料金を大幅に引き下げた新プランをスタートさせた。幅広い利用者が、恩恵を実感できる仕組みにしてもらいたい。

 比較的データ容量の大きい20ギガ・バイト(GB)で、NTTドコモのプランは税込み月2970円だ。1回5分以内の通話は無料になるサービスが付いている。

 KDDI(au)とソフトバンクは月2728円で、通話料無料のサービスは含んでいない。

 20GBは、高画質の動画を1日1時間ほど視聴できる容量だ。その程度の利用状況の人は、これまでは60GB以上の大容量プランを契約する必要があった。それと比べれば半額以下となり、ロンドン並みの水準に下がった。

 政府の要請を受けたものとはいえ、国際的に割高だとされた料金の改革が前進したと言える。

 ただ、新プランには様々な制約や条件があり、注意が必要だ。

 各社とも契約手続きはオンラインに限定され、携帯ショップでは申し込めない。インターネットに不慣れな高齢者らに不親切だ。

 学生割引は適用されない。家族割引は対象外の場合があり、子供ら多くの家族と一緒に契約する人や家族同士の通話が長い人は、本当に割安かを確認することが望ましい。各社は事例を示すなどし、明快な説明に努めるべきだ。

 今回は20GBが値下げの目玉だが、総務省の調査によると、実際に20GB以上を使っている人は契約者の約1割で、2GB以下が半分を占めるという。

 データ利用が少ない人は、使用量に応じて決まる従量制が適しているものの、現状では新プランより割高になるケースがある。

 契約者の間で不公平感が出ないよう、小容量を合わせた料金体系全体を見直してほしい。

 小容量では、格安携帯電話会社が月1000円前後の料金を打ち出して対抗しており、有力な選択肢となる。だが、乗り換えが面倒だという人が多いのが実情だ。

 総務省は、会社を変える際の手数料の撤廃や手続きの簡素化を各社に要求している。利用者が自分に合うプランを探せるサイトも作っており、有効に活用したい。

 大手各社は新プラン以外に、光回線とのセット割引や、スマホを2年で買い替えることを条件に端末を半額にするサービスなど、あの手この手の囲い込み策を展開しているが、その中身は複雑だ。

 利用者が求めている、わかりやすい料金制度の実現にも、もっと力を注ぐべきではないか。





携帯大手新料金 寡占の固定化が心配だ(2021年2月8日配信『北海道新聞』-「社説」)

 家計には朗報だが、結果的に大手3社による寡占が固定化することにならないか。

 政府の携帯電話料金値下げ要請を受けた、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社の対応策が出そろった。

 海外より高いと指摘されたデータ通信容量20ギガバイトの新料金は、一定の条件をそろえると、月額2980円で横並びとなった。

 これを受け、新規参入組の楽天は20ギガ以下の料金引き下げを迫られた。大手から回線を借りて格安プランを提供する仮想移動体通信事業者(MVNO)も、相次いで値下げに動いている。

 菅義偉首相の意向から始まった「官製値下げ」は、消耗戦によって体力の弱い事業者の淘汰(とうた)を加速させるとの見方がある。

 大手の寡占が続けば、各種サービスの低下や技術革新の停滞などが懸念される。政治の動向次第で料金も先祖返りしかねない。

 健全で持続的な競争を通じて料金の引き下げを図るという、本来あるべき姿から逸脱したものと言うほかない。

 大手3社の20ギガの新料金は従来より6割程度安く、菅首相がかつて言及した「4割程度」を超える値下げ幅となった。

 ただ、契約手続きは3社ともオンラインのみで受け付け、店頭では対応しないという。

 値下げは事務経費の削減で捻出する面もあるのだろう。

 だが、パソコンやスマートフォンの操作に不慣れなために契約できないとなれば、使用実態より割高な料金を支払い続ける人が多く出る恐れがある。新料金を設ける意義も減じることになる。

 高齢者など店頭でのサポートが必要で、データ使用量の少ないプランの料金見直しは、大手3社ともに手つかずとなった。

 収益への影響が大きく慎重になっているとされるが、3社の営業利益率はなお高水準だ。取り残される利用者が出ないよう、前向きに取り組んでもらいたい。

 一方、低料金を売り物にしてきたMVNOは今後、撤退や再編が不可避とみられている。楽天に続く新規参入も難しくなろう。

 これまで政府は公正な競争環境を整備し、大手のライバルとなる新規参入事業者を後押しして、料金引き下げを図ろうとしてきた。

 大手3社による寡占の継続を実質的に容認するかのような現政権の動きは、こうした長年の競争政策の転換である。将来に禍根を残すと言わざるを得ない。



携帯料金改革 格安会社にも目配りが要る(2021年2月8日配信『読売新聞』-「社説」)

 携帯電話大手の大幅な料金引き下げは歓迎したいが、格安携帯電話会社が窮地に陥るようでは困る。政府は利用者の選択肢を狭めないよう、公平な競争環境を整えてほしい。

 政府の値下げ要請を受け、NTTドコモとソフトバンクは、データ容量20ギガ・バイト(GB)で、税抜き月2980円のスマートフォン向けプランを始める予定だ。

 KDDI(au)も、1回5分以内の通話料無料のサービスを加えれば、他の2社と同じ価格になるプランを発表し、大手3社の新料金が出そろった。

 3社横並びで、いずれも従来の7000円台から半額以下となる。各社とも、契約手続きはインターネットに限定するという。

 値下げ自体は家計に朗報だが、業界で価格競争を活発化させる役割が期待されていた格安会社からは、悲鳴が上がっている。

 格安会社は、電力など他業種の大手企業による参入のほか、独立系の小規模事業者も多い。自前の回線を持たず、大手にレンタル料を支払って営業している。

 携帯大手の新たな価格は、格安会社を下回るケースがある。危機感から一段の値下げに踏み切る動きがあるものの、新規参入組には消耗戦に耐える体力は乏しい。

 健全な会社まで淘汰とうたされてしまえば、結果として、再び大手3社による寡占が強まりかねない。

 総務省はこれまで、大手3社の市場占有率(シェア)が9割近くを占めていることが料金の高止まりを招いたとの認識から、格安会社を育てて競争を促進し、低価格化を図る戦略をとってきた。

 一方で、菅内閣が大手に強く圧力をかけ、一気に値下げが進んだことで、逆に格安会社の経営を圧迫する形になっている。今のままでは、政策のつじつまが合わなくなるのではないか。

 新規参入を含めた各社が公平に競争できるよう、対応策を早期に具体化せねばならない。

 総務省は、格安会社のコスト負担が大きい大手の回線レンタル料を、2022年度までに5割程度下げる目標を掲げている。格安会社の業界団体は、時期の前倒しと一段の低減を求めている。

 適正価格を精査し、速やかに引き下げを実現するべきである。

 利用者が、携帯会社の変更をしやすくすることも不可欠だ。総務省は、乗り換え後も同じ電話番号が使える「番号持ち運び制度(MNP)」の手続きの簡素化を検討している。利用者の事務負担を軽減する仕組み作りが重要だ。





デジタル化(2020年12月24日配信『高知新聞』-「小社会」)

 子どものコンピューターゲームの利用は平日60分、休日90分を上限にする―。大きな論議を呼んだ香川県のネット・ゲーム依存症対策条例が施行されたのは今年4月のことだ。
 
 その違憲性を問う裁判が高松地裁で始まった。家庭での過ごし方まで法律や条例で縛ってよいのか。審理が注目されるが、ネットやゲームに没頭し、心身の健康が損なわれる事態は現代社会の重い課題であるのも確かだ。
 
 折しも新型コロナウイルスの流行で在宅時間が増えている。デジタル機器やネットへの依存は増すばかりだ。そんな状況にスウェーデンの精神科医アンデシュ・ハンセンさんが話題の著書「スマホ脳」で警鐘を鳴らしている。「人間の脳はデジタル社会に適応していない」。
 
 携帯電話大手2社が大容量で月額2980円の新料金プランを相次いで発表した。スマホはいまや生活インフラ。安くなれば家計は助かり、より気軽に使えるようになるだろう。
 
 ただし菅政権による「官製値下げ」の側面が強い。健全な価格競争と言えるかは疑問だ。何より利用拡大で一層懸念される依存症への対策は十分なのか。料金が下がれば後は知らぬ、では「国民のために働く内閣」ではない。
 
 ハンセンさんは提言する。「人間がテクノロジー(技術)に順応するのではなく、テクノロジーが私たちに順応すべきなのだ」と。菅政権のもう一つの看板政策「デジタル化」にも求められる視点だ。
 




携帯大手3社が値下げ 消費者本位なお見極めを(2020年12月6日配信『毎日新聞』-「社説」)
毎日新聞2020年12月6日 東京朝刊

 携帯電話大手3社が通信料金の引き下げを相次いで打ち出した。菅義偉政権の強い意向に対応したものだ。

 NTTドコモは高画質の動画を1日1時間程度視聴できるデータ容量20ギガバイトで、月額2980円の新プラン「ahamo(アハモ)」を来年3月から導入する。

 競合する大手2社が先に発表した格安ブランドの値下げプランより1000円以上安い。2社はさらなる値下げで対抗する構えだ。

 携帯が1人1台の生活必需品となる中、料金高止まりが家計の大きな負担となっている。このため、値下げの動きは消費者からおおむね歓迎されているようだ。

 ただし、政治圧力による「官製値下げ」の色彩が濃い。この取り組みが定着するかどうかは、なお見極める必要がある。

 国内シェア約9割を握る大手3社は大企業平均を大きく上回る2割前後の高い営業利益率を享受してきた。にもかかわらず、これまでは本格的な消費者還元に背を向けてきた。

 ドコモが大幅な値下げに踏み切った背景には、親会社のNTTによる完全子会社化も影響している。経営一体化で原資を捻出する余力が高まった。「NTT巨大化への批判がくすぶる中、再編を容認した政府に恩を返す必要があった」との指摘もある。

 菅首相にとって、携帯値下げは官房長官時代からの肝いりの政策だ。なかなか思惑通りに進まなかっただけに、「ドコモが大きな一歩を踏み出してくれて、ありがたい」と歓迎しているという。

 だが、携帯料金は公定価格ではない。値下げは本来、民間の競争を促して実現するのが筋だ。電波割り当ての見直しを道具に圧力をかけた武田良太総務相のような手法は好ましくない。

 消費者の不満を解消するにはなお課題が残っている。料金メニューが複雑で自分に最適なプランが探しにくい。各社独自の手数料や違約金なども問題だ。

 携帯の使い方は消費者ごとにさまざまだ。幅広いニーズに応える良質で低廉なサービスが持続的に提供されることが肝要だ。一過性の値下げに終わらせないように、政府は競争環境の整備に力を注ぐべきだ。





携帯料金値下げ 幅広い利用者の負担減を(2020年11月8日配信『西日本新聞』-「社説」)

 菅義偉政権による携帯電話料金の値下げ要請を受けた動きが出始めた。大手3社のうちKDDIとソフトバンクが、これまでより割安な料金プラン導入を相次いで発表した。最大手のNTTドコモも今月中には新たな対応を発表するとみられる。

 国際的に割高とされる携帯電話料金の引き下げは利用者にとって朗報ではある。ただ手放しで歓迎できる内容ではない。両社の新プランは20ギガバイトの大容量で月額5千円以内に収まるが、恩恵があるのは動画視聴などでデータ通信量が多い一部利用者に限られるからだ。

 携帯電話、特にスマートフォンは今や生活必需品と言える。せっかくの料金引き下げも、対象が限定的なら看板倒れだ。大手3社には、幅広い利用者の負担軽減につながる料金プランの見直しを進めてもらいたい。

 総務省によると、携帯電話利用者の半数近くは月間のデータ通信の使用量が2ギガバイト未満である。10ギガバイト以上は2割にも満たない。

 しかも、両社の新プランは格安ブランドの「UQモバイル」「ワイモバイル」での提供となる。メインブランドの「au」「ソフトバンク」の利用者が新プランを利用するには契約をやり直して、乗り換える必要がある。手続きが面倒だと二の足を踏む利用者が出かねない。

 スマホは1人1台の時代となり、会員制交流サイト(SNS)やネットショッピングなどさまざまなサービスに利用されている。緊急地震速報や大雨の特別警報といった緊急速報メール受信や、新型コロナウイルスに対応した需要喚起策「Go To キャンペーン」で旅行や飲食店の予約をするにもスマホが欠かせない。

 菅政権が大号令をかける行政のデジタル化も、国民の多くがスマホを利用することが前提となろう。

 一方、家計の負担が年々重くなっているのも、見逃せない事実だ。家計調査によると、移動電話通信料は2人以上世帯で月1万円を超え、この10年間で3割以上増えた。大手3社の契約者の7割近くは料金が高いと不満を持っている。料金引き下げに政府が取り組むのは決して的外れではない。

 料金値下げに向けて総務省は行動計画を発表した。公正取引委員会も携帯電話市場の競争環境について実態調査を始めた。政府は事業者の競争を促す環境整備に一段と注力すべきだ。

 携帯電話と固定電話のセット割引が携帯電話乗り換えの障害になっているとの指摘もある。利用者目線で、最適な料金プランや携帯電話会社を選びやすい環境づくりを急いでほしい。



ドコモ値下げ 納得できる料金体系にせよ(2020年12月6日配信『読売新聞』-「社説」)

 多くの利用者が納得できるよう、値下げと同時に、わかりやすい携帯電話料金の実現に努めることが大切である。

 NTTドコモは、大手で最安値水準となる料金の新プランを、来年3月から導入すると発表した。月間のデータ使用量が20ギガ・バイト(GB)のプランで、税抜き月2980円に設定した。

 大容量の「ギガホ」など、現行の主力プランについても月内に見直し策を公表する方針だ。

 20GBは、画質の良い動画を1日1時間視聴できる容量だが、現在は、高画質動画を長時間見るには30GBのプランしか選べず、7000円以上かかっている。20GBでは、競争で値下げが進んだロンドンの水準に近づくという。

 菅首相は、ドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの大手3社による寡占で料金が高止まりしているとして、現状を問題視してきた。最大手が大幅な引き下げに踏み切った意義は小さくない。

 新プランは、ドコモショップなどの店頭では受け付けず、オンラインだけで手続きを行い、コストを抑える考えだ。高速・大容量通信規格「5G」を追加料金なしで利用できるようにし、若年層の取り込みを狙っている。

 ただ、新プランに移行すると、家族を対象にした割引が受けられなくなり、割安になるのかどうか判断がつきにくい。従来の携帯メールは使えなくなる。

 主力プランでは、データの利用量に応じて課金する方向だ。オンラインに不慣れな高齢者や、少ない容量しか使わない人にも、配慮してもらいたい。

 一方、KDDIとソフトバンクは、自社の格安ブランドで、5000円を下回る20GBのプランを発表したが、武田総務相は、本体のブランドではないことや、乗り換えに高額の手数料がかかることを批判していた。

 両社は早急に、ドコモへの対抗策を練らねばなるまい。

 これまで携帯各社は、様々な割引や手数料を組み合わせた複雑な料金体系で、利用者に負担を強いてきたと指摘されている。値下げに際して、顧客本位の明瞭な仕組みに作り直すべきだ。

 大手の値下げが進めば、4月に本格参入した楽天や、大手の通信回線を借りている格安携帯会社の経営を圧迫しかねない。

 市場を活性化させる役割を担っている新規参入組が、苦境に陥っては本末転倒だ。政府は回線貸出料の引き下げを促すなどし、健全な競争環境を整えてほしい。



ドコモ値下げ 透明性ある料金体系示せ(2020年12月6日配信『産経新聞』-「主張」)

 NTTドコモが携帯電話の新たな料金プランを打ち出した。通信容量が大きい契約では大手3社の中で最安値となる水準で、業界他社も追随値下げを迫られることになるとみられる。

 今回の新プランはインターネットによる受け付けに限定するが、同社は月内に既存プランの料金でも引き下げを表明するとしており、利用者に分かりやすい値下げを示してもらいたい。

 菅義偉政権は携帯各社に対して料金の引き下げを求めており、ドコモの値下げもこれに応えたものだ。ただ、本来の料金値下げは、民間の公正な競争を通じて実現することが筋である。そのために政府は通信業界の競争を促す環境整備にも努めねばならない。

 ドコモの新プランは、データ通信量20ギガバイトを月額2980円(税抜き)で提供する。1回5分以内の通話は無料とし、来年3月からサービスを始める。主に若者層を顧客に想定しており、専用サイトで申し込みを受け付ける。

 この値下げは同社の主力ブランドによるもので、第5世代(5G)移動通信システムにも対応するのが特徴だ。菅首相は4日の記者会見で新プランを「本格的な競争への一つの節目を迎えた」と評価しつつ、「本当の改革はこれからだ」と語った。

 携帯各社による本格的な料金競争につなげるには、ドコモが月内に公表する既存プランの値下げも大きな影響を与える。それだけに同社は、利用者が値下げを実感できるような透明性のある料金体系を打ち出してほしい。

 複雑な料金プランが林立することは、利用者サービスの低下につながることを携帯各社には厳しく認識してもらいたい。とくに高齢の利用者らに不要なオプションを勧めるなどの事例も見受けられる。何よりも利用者目線に立ったサービスが求められる。

 一方で携帯料金の継続的な引き下げを促すには、民間の健全な競争環境を整備することも欠かせない。とくにNTTがTOB(株式公開買い付け)でドコモを完全子会社化したことで、市場における同社の存在感が今後、再び高まるとみられている。

 総務省や公正取引委員会は携帯電話市場のルールを明確化し、公正な競争が繰り広げられるように促すことも重要な役割であると銘記してもらいたい。





携帯料金値下げ(2020年11月6日配信『宮崎日日新聞』-「社説」)

◆長期的な競争促進策必要だ◆

 総務省は菅政権の目玉政策である携帯電話料金値下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。海外に比べて割高な料金が下がることを期待したいが、民間の企業活動に政府が介入することには疑問も残る。競争環境を整備し、市場の自由競争に委ねるのが本筋ではないか。

 計画の柱は、携帯大手が格安スマートフォン会社に貸す回線の使用料を3年間で5割引き下げる目標や、携帯会社を乗り換えてもメールアドレスをそのまま使える仕組みの検討、オンライン上で契約者情報を書き換える「eSIM」の導入の促進などだ。

 総務省は、格安スマホ会社を大手と対抗できる存在に育て、より魅力的な料金プランを提案できるように支援するとともに、携帯会社乗り換えへの利用者の抵抗感を軽減することにより、携帯各社の競争を促し、料金引き下げを実現する道筋を描いている。

 日本の携帯電話市場は、NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が契約数のシェアの9割近くを占める寡占状態が続いている。4月には楽天モバイルが本格サービスを開始したものの、この構図に大きな変化はなく、これが国内の携帯料金が世界的に見て高止まりしている要因といわれる。

 事実、総務省が3月時点でロンドンやパリ、ソウルなど世界6都市を対象に実施した調査では、20ギガバイトの大容量プランで東京が最も高額だった。

 今回の行動計画は、この現状にしびれを切らした政府が、民間企業の価格政策に圧力をかけた形だ。各社には不本意な面もあるかもしれないが、計画に沿って事業の見直しに努め、価格競争の拡大から料金の引き下げにつなげるよう望みたい。

 重要なのは、携帯会社の乗り換えが容易にできる環境の整備だ。今回盛り込まれたeSIMが導入されると、契約者情報を記録したSIMカードを差し替える手間がなくなる。総務省は電話番号を変えずに乗り換えができる「番号持ち運び」制度の手数料3千円(税別)も、インターネット手続きでは無料とする方針を決めており、乗り換えの活発化を期待したい。

 値下げが国民に大きな恩恵となるのは間違いない。だが、携帯料金に法的規制はなく、政府に料金水準を決定したり指導したりする権限はない。政府は今回、事業者間の競争促進を建前としているとはいえ、事細かに料金値下げの方向付けをした。やむを得ない面もあるが、こうしたやり方が行き過ぎれば市場経済をゆがめかねない。長期的には公正な競争を促進する政策を基本とするよう望みたい。





携帯料金値下げ 幅広い利用者に恩恵を(2020年11月4日配信『北海道新聞』-「社説」)

 菅義偉政権の看板政策である携帯電話料金の引き下げに向けた動きが進み始めた。

 総務省は契約先乗り換えの障壁解消などを図るアクションプラン(行動計画)を公表した。

 大手事業者3社のうち、KDDI(au)とソフトバンクは、データ容量20ギガバイトで月5千円を切る新プランを発表した。

 大手3社は営業利益率が高く、さらに値下げを検討する余地はあろう。幅広い利用者に効果が及ぶ方策を探ってもらいたい。

 生活のインフラである携帯電話の料金値下げはだれもが歓迎することだが、政府の過剰な介入は健全な市場の育成を阻み、長い目で見れば国民の利益にならない。

 公正な競争環境の整備こそが政府の役割であることを、改めて肝に銘じるべきである。

 行動計画は、契約先変更後もメールアドレスをそのまま使える仕組みや、契約者情報をオンラインで書き換える「eSIM」の導入などを促す内容で、理解できる。

 ただ、見過ごせないのは武田良太総務相が電波(周波数)割り当てと値下げを絡めて今後検討する考えを示していることだ。

 大手3社には現在、プラチナバンドと呼ばれるつながりやすい周波数が割り当てられている。

 公共の電波は新規事業者を含めて有効に使われるべきだが、携帯電話料金は政府が決める公定価格ではない。

 事業に大きく影響する周波数割り当てを材料に値下げを求めるのは露骨な圧力と言うほかない。

 大手2社の新プランは、政府が目安としてきた「5千円以下」を意識したことは明らかだろう。

 ともに格安ブランドでの提供で、使用通信量の多い利用者を想定したプランとされる。5ギガ以下が多い一般的な利用者への恩恵は限定的との指摘もある。

 NTTドコモも今月中旬以降に新プランを発表するとみられる。

 ドコモも同じ手法と水準にとどまるのなら、3社いずれもメインブランドの料金を温存し、政府の要請に形だけ付き合った小手先の対応と言わざるを得まい。

 総務省の調査によると、データ容量にかかわらず海外より割高とされるのが、大手3社の回線を借りる格安携帯事業者の料金だ。

 回線使用料の高止まりが要因とされ、行動計画でも今後3年間で5割減を目指すとした。

 大手3社は料金や収益の構造を丁寧に説明し、見直すべきところは迅速に着手してほしい。



携帯料金/目先の値下げも大事だが(2020年11月4日配信『神戸新聞』-「社説」)

 携帯電話大手のKDDIとソフトバンクが相次いで料金値下げを打ち出した。かねて値下げを持論とする菅義偉首相が、政策の目玉として掲げたのに呼応した形だ。

 ただその内容は、データ通信量が極端に多い人向けであり、利用者全体にメリットがあるとは言い難い。政権からの圧力を小手先でかわそうとしている印象がぬぐえない。

 いまや携帯電話は生活必需品となっているが、日本の料金は国際比較でも高水準にある。各社が一層の経営努力によって、より幅広い層が恩恵を受けられる、分かりやすいプランを提示すべきだ。

 菅政権発足後、総務省は携帯料金引き下げに向けた行動計画を発表した。他社への乗り換え手数料の無料化や、乗り換えでそれまでのメールアドレスが使えなくなる点の見直しなどを挙げている。

 公正取引委員会は2018年、スマホを4年分割払いで販売することが独禁法上の問題となる恐れがあると指摘し、各社は販売方法を改めた。さらに今回、大手が格安スマホ各社に回線を貸しだす場合の料金などについても実態を調査する。

 日本の料金が高止まりしている背景には、自社回線を保有する大手3社でシェアの大半を握る市場構造がある。回線を借りて通信サービスを展開する格安スマホ会社は群雄割拠の状態だが、大手を巻き込む料金競争にまでは至っていない。

 電波は国民共有の財産だ。政府は公正な競争を促すために、必要な環境を整える必要がある。

 一方で忘れてはならないのは、公共の福祉に反しない限り、商品やサービスの価格は企業の経営判断に委ねられるべきであるという点だ。認可制ではない携帯料金の設定に、政権が前のめりに介入するのには違和感を覚える。

 菅首相は安倍政権で官房長官を務めた際、「日本の携帯料金は4割値下げできる」と発言したが、その明確な根拠は示していない。首相の命を受けた武田良太総務相は「1割程度の値下げでは改革とはいえない」と述べたが、民間企業の経営努力を政権の改革姿勢のアピールに結び付けるのは筋が違うのではないか。

 日本でもスマホで第5世代(5G)の移動通信システムが実用化されたが、利用できるエリアはまだ限られる。世界ではすでに6Gへの動きが加速しており、研究開発に官民が総力を結集している。日本が新技術への潮流に乗り遅れれば産業界にとって大きなマイナスとなる。

 目先の料金値下げも大事だが、そのことで携帯各社を疲弊させ、技術開発の体力を奪い将来の国益を損なう結果を招いてはならない。





携帯値下げ/広く恩恵及ぼす料金体系に(2020年11月2日配信『河北新報』-「社説」)

 家族や友人との連絡はもちろん、各種調べ物、撮影、買い物の支払いなど、今や生活必需品に近い存在になっている。スマートフォンである。

 菅義偉首相が新政権の看板政策として、スマホを含む携帯電話の料金引き下げを据えたことで、業界大手が割安料金プラン打ち出した。

 KDDIは20ギガバイトで月額3980円、ソフトバンクも20ギガバイトで4480円(いずれも税別)のプランを導入すると発表した。メインブランドとは別に、それぞれが手掛ける格安ブランドの「UQモバイル」と「ワイモバイル」から提供する。

 20ギガバイト以上が使える現行プランは両社とも7000円を超えており、大きな引き下げ幅になる。

 最大手のNTTドコモも来月以降、同様の値下げで追随する見通しだ。

 総務省は料金引き下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表。携帯のメールアドレスを電話会社の乗り換え後もそのまま使える仕組みを本年度内に検討するなど、利用者が契約する会社の乗り換えをしやすくし、事業者間の競争を促す。

 菅政権はいち早く成果を出したと誇るだろうが、素直に受け取ることはできない。今回の値下げで得をするのは主に動画やゲームを長時間楽しむ人たちだからだ。

 調査会社のMM総研によると、今年2月時点の調査でスマホ利用者のデータ通信量の平均は6.94ギガバイトにすぎない。多くの利用者にとって20ギガバイトは大きすぎるのが実情だ。

 両社の割安プランは格安ランドのプランのため、高性能の最上位端末では利用できない制約もある。

 携帯料金引き下げの動きは2018年に本格化し、19年10月には改正電気通信事業法が施行された。通信料高止まりの要因とされた端末の安売りを禁じ、端末と通信料を切り離した「分離プラン」が義務付けられた。

 しかし、通信料の大幅値下げには家族で契約するなどの条件があり、恩恵は一部にとどまった。

 第一生命経済研究所の永浜利広首席エコノミストによると、携帯料金が1割下がると国民1人当たり単純計算で年間5331円の負担軽減が見込めるという。電話会社は、多くの人に恩恵が及ぶような料金体系を提示するべきだろう。

 値下げは政府の圧力によって進みつつある。業界は寡占状態にあり経営努力の余地があるのは確かだが、政府が国民の人気取りのために大手3社を悪役に正義の味方を気取っているようにも見える。

 ただ企業は本来、自由な競争の下で価格を決め、利潤を追求するのが原則だ。政府はその環境を整えるのが役割のはずだ。
 政府介入は正常な経済をゆがめる可能性が大きいことも指摘しておきたい。





携帯料金値下げ 利用者目線で競争促せ(2020年11月1日配信『中国新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が強く求めている携帯電話料金の値下げに応じる形で、KDDI(au)とソフトバンクの携帯大手2社が割安な新料金プランを発表した。

 首相には携帯料金の値下げにこだわりがある。官房長官時代には「4割程度は下げられる」と公言。首相就任会見でも「大手3社が世界で最も高い料金で20%もの営業利益(率)を上げている」と指摘した。

 値下げを政権の目玉政策の一つに掲げ、総務省がその実現に向けた向けた「アクションプラン」を打ち出すなど、携帯会社への圧力を強めている。

 今や携帯電話は生活に欠かせないインフラであり、料金の引き下げは時代の要請と言える。家計への負担軽減につなげるとする狙いは理解できる。国民に分かりやすい目標を掲げることで、政権浮揚につなげる思惑もあるのだろう。

 もちろん大幅な料金の引き下げが実現すれば、消費者にとっては朗報だろう。だが民間企業の経営戦略や価格決定に、政府が過度に介入することは原則、避けなければならない。

 政府の役割は、新規参入を容易にしたりサービスの透明性を高めたりするなど、利用者目線で競争環境を整備することだ。料金は市場の自由競争に委ねるのが筋だろう。

 日本の市場は、NTTドコモとKDDI、ソフトバンクの大手3社で契約数の9割近くを占める。ことし4月には楽天モバイルが新たに参入し、格安スマートフォン会社も登場しているが、寡占状態が続いている。

 顧客の流動性が低い市場では競争原理が働きにくい。これが国際的に見て割高な料金に高止まりしている要因とされる。

 総務省がまとめたアクションプランでも、顧客が利用する携帯会社の乗り換えをしやすくすることを柱の一つに据える。

 同じ電話番号のまま他社へ乗り換えられる「番号持ち運び制度」の手数料は来年度から原則無料とし、メールアドレスをそのまま使える仕組みの検討も始めることなどを盛り込んだ。

 現行の料金体系は、家族ぐるみの加入や光回線とのセットで割り引くなど、複雑で分かりにくい。内容を十分把握しないまま、中途半端な理解で契約している人も多いのではないか。

 総務省は専門用語を解説するなど料金プラン選びを手助けするサイトを年内に設ける。携帯各社も、契約手続きの煩雑さを解消し、分かりやすい料金体系への見直しに努力すべきだ。

 料金体系のうち、首相は特にデータ通信量が20ギガバイトの大容量プランが海外に比べて割高なことを問題視していた。KDDIとソフトバンクがいち早く打ち出した割安プランも、この20ギガバイトのものだ。

 新型コロナウイルスの影響でオンライン授業やテレワークが広がり、大容量通信の需要は高まっている。サービスが始まった第5世代(5G)移動通信システムを活用した動画などの新ビジネスにも追い風となろう。

 ただ利用者の多くは3ギガバイト以下のライトユーザーとされる。通話や電子メールで事足りる人たちで、高齢者に多い。政府が「家計への負担軽減」をうたうのなら、値下げの恩恵を広く長く行き渡らせる必要がある。「官製値下げ」を政権の人気取りで終わらせてはならない。 





[携帯料金下げ] 恩恵受ける層の拡大を(2020年10月30日配信『南日本新聞』-「社説」)

 総務省は菅政権の目玉政策である携帯電話料金の引き下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。

 携帯の利用者が契約する会社を乗り換えやすくするのが柱だ。大手事業者を格安スマートフォン事業者との競争に巻き込むことで料金の引き下げにつなげる狙いがある。

 大手3社のうち、KDDIとソフトバンクは早速、料金体系を見直し、割安プランを打ち出した。だが「値下げ」の対象は一部の利用者に限られる。

 携帯電話は今や生活必需品である。大手各社は幅広い層が値下げの恩恵を受けられるプランを検討、提示し、割高な料金に対する利用者の不満に応えてほしい。

 行動計画は、契約先を乗り換えてもメールアドレスをそのまま使える仕組みを年度内に検討するほか、大手が格安スマホ事業者に回線を貸し出す際、データ通信接続料の5割減を今後3年間で目指すなどとしている。

 日本の携帯市場は、NTTドコモを含めた大手3社の契約数が9割近くのシェアを占めている。こうした寡占状態が国際的にみても割高な料金水準になっている要因とされる。

 料金体系の中で、菅義偉首相が照準を合わせたのが20ギガバイトの大容量プランだ。KDDIとソフトバンクが今回発表した割安プランは大容量が対象で、大幅な引き下げになっている。

 ユーチューブなどで長時間動画を見たりゲームで遊んだりする若年層らには利点がある。だが、多くの利用者にとって20ギガバイトは容量が大きすぎて必要性に乏しい。菅首相は値下げを「経済対策の一環」とも説明するが、効果は限定的だろう。

 携帯電話は行動計画が位置づけるように、国民の生命・財産を守り、社会経済活動を支える重要なインフラである。その機能を十分引き出すには値引きとともに、利用者にとって分かりやすい料金体系が求められる。

 いざ乗り換えようとしても料金プランは複雑で、なじみのない専門用語も多い。キャンペーンによる割引などもあり、どれが自らにとって必要で最も適したプランなのか、判断に迷う人は少なくないはずだ。

 総務省は専門用語を解説し、比較を助けるサイトをつくるという。公正取引委員会も消費者が最適な料金プランを選びやすい環境が整っているかなど実態調査を始めた。携帯各社は行動計画が掲げる「分かりやすく納得感のある料金・サービスの実現」が可能になるよう努めてほしい。

 ドコモも引き下げに追随する見通しで、菅首相の値下げ圧力が実った形だ。だが、市場は自由競争に委ねるのが本来の姿だろう。政府の介入が他の業種にも及びはしないか。注視していく必要がある。





携帯料金値下げ(2020年10月29日配信『茨城・佐賀新聞』-「論説」)

競争環境の整備が本筋だ

 総務省は菅政権の目玉政策である携帯電話料金値下げに向けたアクションプラン(行動計画)を公表した。海外に比べて割高な料金が下がることを期待したいが、民間の企業活動に政府が介入することには疑問も残る。競争環境を整備し、市場の自由競争に委ねるのが本筋ではないか。

 計画の柱は、携帯大手が格安スマートフォン会社に貸す回線の使用料を3年間で5割引き下げる目標や、携帯会社を乗り換えてもメールアドレスをそのまま使える仕組みの検討、オンライン上で契約者情報を書き換える「eSIM」の導入の促進などだ。乗り換えの利益や手続きを分かりやすく説明するサイトの年内開設も打ち出した。

 総務省は、格安スマホ会社を大手と対抗できる存在に育て、より魅力的な料金プランを提案できるように支援するとともに、携帯会社乗り換えへの利用者の抵抗感を軽減することにより、携帯各社の競争を促し、料金引き下げを実現する道筋を描いている。

 日本の携帯電話市場は、NTTドコモとKDDI(au)、ソフトバンクの大手3社が契約数のシェアの9割近くを占める寡占状態が続いている。4月には楽天モバイルが本格サービスを開始したものの、この構図に大きな変化はなく、これが国内の携帯料金が世界的に見て高止まりしている要因といわれる。

 事実、総務省が3月時点でロンドンやパリ、ソウルなど世界6都市を対象に実施した調査では、20ギガバイトの大容量プランで東京が最も高額だった。

 今回の行動計画は、この現状にしびれを切らした政府が、民間企業の価格政策に圧力をかけた形だ。携帯大手各社には不本意な面もあるかもしれないが、計画に沿って事業の見直しに努め、価格競争の拡大から料金の引き下げにつなげるよう望みたい。割高な料金に対する利用者の不満に応えてほしい。

 重要なのは、携帯会社の乗り換えが容易にできる環境の整備だ。今回盛り込まれたeSIMが導入されると、契約者情報を記録したSIMカードを差し替える手間がなくなる。総務省は電話番号を変えずに乗り換えができる「番号持ち運び」制度の手数料3千円も、インターネット手続きでは無料とする方針を決めており、乗り換えの活発化を期待したい。

 携帯料金では、複雑な料金体系もしばしば問題にされる。なじみのない専門用語が多い上に、キャンペーンによる割引などがあり、どれが割安なのか判断に苦しむ。総務省は専門用語を解説し、比較を助けるサイトをつくるという。携帯各社には、分かりやすい料金体系の構築に努力するよう求めたい。

 携帯料金値下げが国民に大きな恩恵となるのは間違いない。だが、携帯料金に法的規制はなく、政府に料金水準を決定したり指導したりする権限はない。政府は今回の計画で、事業者間の競争促進を建前としているとはいえ、事細かに料金値下げの方向付けをした。やむを得ない面もあったが、こうしたやり方が行き過ぎれば、市場経済をゆがめかねない。

 携帯市場への新規参入を促し、活発な競争を実現することにより、料金低下を目指すべきではなかったか。今後、長期的には公正な競争を促進する政策を基本とするよう望みたい。(共同通信・柳沼勇弥)打ち消し文





携帯料金値下げ 公正な競争が前提だ(2020年10月28日配信『東京新聞』-「社説」)

 総務省が携帯電話料金の値下げに向けた新計画を公表した。菅政権の最重要政策であり本気度が伝わる内容だ。ただ製品価格の設定は企業の自由裁量に委ね、介入は原則避けるべきである。

 公表された「アクションプラン」には「eSIM」の普及が盛り込まれた。携帯を使う場合、電話番号情報などが記憶されたSIMカードと呼ばれるチップを差し込む必要がある。携帯会社を変更する際、SIMも新たに入手する必要があり変更の妨げになっていた。

 eSIMは携帯に内蔵されるのでチップ入手の手間が省ける。さらにプランでは会社を変えてもメールアドレスがそのまま使えるよう求めた。いずれも利用者の契約会社選択の幅を広げる施策であり支持したい。

 携帯料金について菅義偉首相は「世界で最も高く(携帯各社は)20%もの利益率を上げている」と指摘する。総務省も各国と比べ料金が高いと分析している。大半の利用者も異存はないだろう。

 携帯の契約では複雑な料金体系も問題視されてきた。契約の際、その場で内容を把握することは難しい。中途半端な理解で契約してしまうケースも多いはずだ。

 この点が「料金が高い」という感覚に拍車をかけていることは否定できない。携帯各社には契約の複雑さの解消や料金体系の分かりやすさへの努力を求めたい。

 政権側は料金高止まりの背景には、NTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社による約9割(契約数ベース)という市場寡占があるとみる。この状況は長く続いており、価格設定に影響していることは間違いない。

 ただ価格について安易に政府が口を出すことには異論を唱えざるを得ない。製品市場は新たな参加者を自由に迎え、公正な競争が行われることが理想だ。自由競争の下での価格設定が最終的に消費者利益になるからだ。

 今回の動きと並んでNTTドコモがNTTの完全子会社になることが決まった。NTTは政府が3割以上の株式を保有しており、その子会社も政府の影響を受けることは容易に想像できる。NTTを通じ業界全体が政府の支配下に置かれる恐れもある。

 携帯電話は社会基盤であり時には命をつなぐ道具にもなる。政府が深く関心を持つことは理解できる。ただ長期的な消費者利益を考慮すれば、介入を避け公正な競争を促す政策に徹するべきだ。



携帯の値下げ 政治圧力が行き過ぎては(2020年10月28日配信『信濃毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉政権の求めに応じる形で、携帯電話大手3社が料金の値下げに動いている。

 料金引き下げは、菅首相が官房長官時代から強く主張してきた。自民党総裁選でも、値下げしない場合は携帯会社が国に支払う電波利用料を引き上げる可能性に言及し、圧力を強めていた。

 3社は圧力を受け、割安な料金プランの追加を急ぐ方針だ。

 携帯市場ではNTTドコモ、KDDI(au)、ソフトバンクの3社のシェアが約9割を占める。第4勢力として楽天モバイルが新たに参入、格安スマホも出てきたが、乗り換えはあまり進まず、寡占状態が続いている。

 乗り換えを促すため、顧客を囲い込んでいる障壁をどれだけ取り除けるかが今後の鍵となる。

 政府はこれまで、通信料と端末代金の分離義務付けや、契約途中で他社に乗り換える際の違約金の引き下げなどを進めてきた。

 総務省は今回、携帯料金の引き下げに向けた新たな計画を発表した。他社に乗り換えた後もメールアドレスをそのまま使える仕組みや、大手が格安スマホ会社に回線を貸し出す際の料金の引き下げなどを盛り込んでいる。

 スマートフォンの普及もあり、携帯はすっかり生活必需品になった。通信費の負担軽減は国民の大きな関心事となっている。

 総務省の調査によると、最大シェアの事業者の料金プランを世界の主要都市で今年3月に比較したところ、東京はロンドンやパリの2倍以上だった。

 高止まりの状態が続いており、1割安くなれば国民1人当たり年間約5300円、家計全体では6700億円以上の負担軽減になるとの試算がある。一方、大手各社は高い利益率を維持している。

 こうした現状に菅政権は、分かりやすい成果を示して国民の支持を得る上で、圧力を強めることが有効とみたのではないか。

 市場経済は、自由な競争環境の下で価格が決まっていくのが本来の姿だ。公共の電波を使うビジネスとはいえ、政治の介入が行き過ぎれば市場はゆがめられ、長期的には業界の健全な発展が妨げられる可能性もある。

 携帯料金は自由化されており、政府に決定権限はない。寡占化の要因を探り競争環境を整える政策に注力しなければならない。

 公正取引委員会も調査に乗り出す方針を示している。消費者の利益を確保していくため、独立して職務を担う同委員会が積極的に役割を果たす必要がある。





携帯電話料金 引き下げの実現は健全な競争で(2020年10月22日配信『愛媛新聞』-「社説」)

 菅義偉首相が重要政策に掲げる携帯電話料金の引き下げが実現に向けて動き始めた。政府は携帯大手3社に引き下げを強く要請。各社は応じる姿勢で具体的な検討に入っている。

 携帯電話は生活に欠かせず、料金引き下げは消費者にとって朗報となる。一方、政府による企業への過度の圧力は、自由な経済活動を萎縮させる恐れがあり見過ごせない。政府の役割はあくまで健全な競争が行われる環境を整えることだ。料金の引き下げは、その結果として実現が図られるべきである。

 携帯電話事業は大手3社の寡占状態で、料金の高止まりや料金プランの複雑さが指摘されている。菅氏は官房長官時代から「4割程度下げる余地がある」などと発言し、料金引き下げが持論だ。武田良太総務相も「1割程度では改革にならない」と下げ幅に言及。各社トップと面会して対応を促した。

 大手3社のうち、NTTドコモに関しては、親会社のNTTが完全子会社化に向けて株式公開買い付け(TOB)の実施を決めた。親会社主導で財務基盤を整え、料金引き下げに対応する構えだ。ソフトバンクは大容量の料金プランを見直し、新たな割安プランの導入を検討している。KDDI(au)も11月までには新プランを打ち出す考えを示している。

 日本のスマートフォンの料金は国際的に割高な水準にあるとされる。総務省が世界6都市を対象に行った調査では、20ギガバイトの大容量プランでは東京は8175円と最も高額で、ロンドンやパリの2倍以上だった。料金が1割安くなると国民1人当たり年間約5300円、家計全体では6700億円以上の負担軽減になるとの専門家の試算もある。新型コロナウイルス禍への対応で求められるテレワーク、オンライン授業などの普及の後押しにもなるだろう。

 大手3社は公共の電波を使いながら高い利益率を維持し、利用者への還元は不十分だ。複雑で分かりにくいままの料金プランには利用者の不満が根強い。今の風当たりの強さは業界自らが招いた側面もある。

 総務省は昨年、電気通信事業法を改正し、2年契約を中途解約する際の違約金の上限を引き下げるなどした。電話番号を変えずに携帯会社を乗り換える際の手数料を原則無料とする方針も決めたばかりだ。「第4の携帯」として参入した楽天は、第5世代(5G)移動通信システムで攻勢をかけている。政策などにより事業者間の競争が進みつつはあるが、値下げへの効果は限られているのが現状だ。

 携帯電話料金は自由化されており、政府は介入に慎重であるべきだ。まずはこれまでの政策や各社の取り組みを検証して、値下げを阻害する具体的な要因を分析し、改善を図るのが筋ではないか。各社も利用者本位の経営に転換できるか、本気度が厳しく問われていることを自覚しなければならない。



政府主導の携帯値下げ 競争環境の整備も必要だ(2020年10月18日配信『毎日新聞』-「社説」)

 菅義偉首相がNTTドコモなど携帯電話大手3社に対し通信料金の大幅な引き下げを迫っている。

 携帯は今や生活に欠かせないインフラとなり、1人が1台以上持つまでに普及した。にもかかわらず、料金は高止まりしている。利用者の不満が大きいのは確かだ。

 総務省の調査によると、動画サービスなどに適したデータ容量20ギガバイトのプランで、東京の料金は8000円強と、ロンドンの約3倍だ。2人以上の世帯が払う携帯の通信料金は平均で年間10万円を超え、この10年で約3割も増えた。

 新型コロナウイルス流行でテレワークも広がった。総務省の意見聴取では「ビデオ会議でデータ容量が食われ、追加料金がかさむ」と訴える声も出た。家計の負担は重くなっている。

 背景には、大手3社が約9割の国内シェアを握る寡占の問題がある。経営体力を消耗する競争を避け、顧客の囲い込みで収益確保を図る傾向を強めている。

 実際、3社の営業利益率は軒並み20%前後と、トヨタ自動車の約8%をはじめ有力メーカーを大きくしのぐ水準だ。限られた公共電波を使うビジネスである以上、超過利潤が発生しているなら、利用者に還元すべきだ。

 菅氏は官房長官時代の2018年に「携帯料金は4割値下げする余地がある」と打ち出した。それを受けて、総務省は端末代と通信料金のセット割引を原則禁止する措置などを講じたが、成果が上がらなかった。

 首相は今回、政治主導で値下げを実現させる構えだ。ただ、携帯料金は政府が決める公定価格ではなく、過度の政治介入は本来、好ましくない。

 ソフトバンクはデータ容量20ギガバイトで月額5000円以下の格安プランを検討し始めたが、「官製値下げ」では一過性に終わりかねない。利用者が望むのは、手ごろな価格で高品質なサービスが幅広く提供されることだ。

 総務省は番号を変えずに携帯会社を乗り換える際の手数料を撤廃する方針だ。競争を促す狙いだが、これだけでは十分ではない。

 新規参入した楽天や格安スマートフォン業者がもっと独自性を発揮できるような競争環境づくりを徹底すべきだ。




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